ヴィシア戦記 鬼神と呼ばれた男   作:kiakia

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第五話 メルセルケビール海戦

 

 

 

 

 例えどんな苦境で、誰に忘却されようとも──

 

 

 

 決してくじけず、諦めず、己の勇気を捨てず──

 

 

 

 

 弱気を助け、強きを挫き、仲間たちのために命を捧げる──

 

 

 我が主機の轟きは正義のために戦う宣誓の言葉。

 

 

 

 我が剣先の閃きは栄光のために戦う決意の印。

 

 

 

 我、ロイヤル騎士隊の一員として、碧き航路の安寧を守りし者。

 

 

 

 我、ロイヤル騎士隊の一員として、沈まぬ太陽の輝きを体現せし者。

 

 

 

 この誓いのもとで、我、刃を振るわん。

 

 

 

 ロイヤルに栄光あれ!そして女王陛下に栄光あれ!

 

 

 

 

          ロイヤル騎士隊の誓いより。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイリスのことは致し方ありませんが……戦士としては己の祖国のために力を振るうのが本懐のはずです。もう一度お考えくださいませ。私たちロイヤルと一緒に戦いませんか?」

 

 

「全く……話になりませんね……」

 

 

 

 北アフリカ大陸アイリス領アルジェリアの海上にて、ロイヤル王国とヴィシア聖座による会談が行われていた。草案を持ち込んだロイヤルネイビー所属のフッド達だ。

 

 

 

 

 kansen内ではクイーン・エリザベスの摂政として辣腕を振るうフッドは外交文書をダンケルクに手渡しながらそう提案するも、ダンケルクは呆れ気味な声音で一刀両断に答えてみせる。

 

 

 

「私達は、はっきりと護教騎士団は内政干渉や異国の指図を受けるつもりはありませんと説明しました。だと言うのに、これは何のつもりでしょうか?」

 

 

 

 ロイヤルネイビーはケビール港に所属するヴィシア聖座の面々に以下の提案の選択を求める。

 

 

 

 一、速やかに港から出て、ロイヤルネイビーと合流し。対鉄血と対レッドアクシズとの作戦行動に当たること。

 

 

 二、武装を解除し、ロイヤル勢力下の港に移動すること――移動中の安全はロイヤルネイビーが保証する

 

 

 三、ロイヤル立会の元、ユニオンの指揮下に入り、武装を解除すること。

 

 

 四、今この時点で自沈すること。

 

 

 

 

 

「これが隣国に対する……数十年来共に肩を並べてセイレーンと戦った盟友相手に対する要求だと貴女達は胸を張って言えるのですか?」

 

 

 

 ダンケルクの質問に対してフッドは一瞬、目を伏せるものの、特に顔色を変えずに平然と言い返す。

 

 

 

「えぇ。もちろんですとも。我々は友好国同士として、そして盟友として当然の申し出をしていますわ」

 

 

 

 フッドはにっこりと微笑みながら答える。だがその表情とは裏腹に瞳の奥には冷酷な意志が込められていた。彼女にとってヴィシア聖座は既に友ではないのだ。

 

 

 

「アイリスのことは致し方ありませんが……戦士としては己の祖国のために力を振るうのが本懐のはずです。もう一度お考えくださいませ。私たちロイヤルと一緒に戦いませんか?リシュリュー枢機卿猊下はこちらで保護なさっています。分裂してしまったアイリスを統一する為に───」

 

 

 

「お断りよ」

 

 

 

 それまでの丁寧語を投げ捨てダンケルクは艤装に装着しているサーベルを片手に構えた。その一瞬でロイヤル、ヴィシアの双方のkansen達は剣呑な雰囲気に包まれていく。

 

 

 

「我々の認識としてはリシュリュー枢機卿は……祖国を捨て、多くの民を見捨ててロイヤルに亡命した裏切り者。己の祖国の為、牙を無き人々の盾となり、剣となる護教騎士団は最早『元』枢機卿の元で戦うつもりはない」

 

 

 

「……リシュリュー枢機卿猊下はあくまでも祖国の平和を何よりも考えている愛国者。親レッドアクシズに染まりつつある現状を憂慮され、アイリスから脱出してこちらに保護を求められましたわ。貴女方はこの想いを理解して差し上げてくださいな」

 

 

 

「愛国者……?売国奴の間違いでは?」

 

 

 

 

 なおも弁護しようとするフッドに対してダンケルクは容赦なく言葉の刃を振り翳していく。最早聞く耳を持たない態度にロイヤルの面々からは困惑の声が上がるが彼女はそれを意に介さず話を進めていく。

 

 

 

 同時にヴィシア側もダンケルクの言動に衝撃を覚えたのか不安視するkansen達も多い。それもそうだろう、ダンケルクはリシュリュー枢機卿との関係も決して悪くはなく。誤解されがちなジャン・バールや秘匿性質故に本音を話せないクレマンソーの仲立ちとして洋菓子を片手に姉妹間を取り持ってきた穏やかな女性だ。

 

 

 

 そんな誰にも愛され、誰からも慕われるダンケルクがはっきりとリシュリューを否定したと言う事実は、今もなおリシュリューの帰還や穏便な統一を心の底では馴染んでいる面々に衝撃を与えたのは当然と言えるだろう。

 

 

 

「我々はヴィシア聖座陣営代表ジャン・バール。もしくは審判廷代表クレマンソー以外の指示に従わない」

 

 

「……枢機卿を、信仰を否定すると?」

 

 

 

「信仰は否定しない。けれど、リシュリュー一派と現状統合する事はあり得ない。何よりも私達の仲間に死ねと命じる貴女達ロイヤルに従えると本気で思ってるのかしら?」

 

 

 

 

 フッドの静かな問いかけにダンケルクは即答する。

 

 

 

 

「そもそも。私達はヴィシア聖座は軍事組織であって国じまない。臨時政権が発足しているとは言え国名は相変わらずアイリス教国と名乗っているし、正統な手続きを持って成立しているわ。だと言うのにロイヤルがそこまで介入出来る正当な権利をどこで入手したのか伺いたいところだけど……?」

 

 

 

「私達はあなた達は盟友です。ですから貴女方のことを考えたからこそこのような提案をしているのです」

 

 

 

「盟友であるならば尚のこと不愉快極まりない。仮に貴女達が我々の事を想い助言するこなら理解できるわ。けれどこれは交渉や譲歩ではなく命令。我々がロイヤルの傘下に降った事は……百年戦争の後、同君連合になった事はあるけれど。それ以外は一度もない。まさか今更五百年以上前のカビの生えた古びた遺物を持ち出してくるつもりなの?」

 

 

 淡々と皮肉混じりに非難するダンケルクにフッドは以前と変わらない言葉を繰り返すだけだ。まるで心を閉ざし、己を捨て、自身の役割をただただ演じる様に。

 

 

「それでも……攻撃を加えてこなければ、鉄血公国、そしてサディア帝国のほうに加勢しないことを約束するわ。確かに我々が親レッドアクシズ思想が蔓延しているのは事実ではあるけれど、ジャン・バールは他国との戦争を一切望んでない。もし、ロイヤルが望むのなら私が人質になって中立を維持を約束しましょう」

 

 

 

「ダンケルクさん!?」

 

 

 

 ダンケルクの提案に駆逐kansenのケルサンは悲鳴をあげる。敬虔な使徒である彼女の叫び声に同調するかのようにヴィシア陣営からも「お止めください!」「危険なことを!?」といった幼い叫び声が響き渡る。

 

 

 

「……先に行ってるわね」

 

 

 

 反対に全てを察知したのだろう。彼女と共に会談に参加していた戦艦kansenストラスブールを彼女達をそんなケルサン達を伴い後方に下がっていく。一瞬、モガドールは自分だけでも残ろうと振り返るが。ストラスブールに肩を軽く叩かれ、無言で立ち去っていく。

 

 

 

 まるで会談は終わりだと言わんばかりに。そして、ダンケルクの覚悟を尊重する様に……。

 

 

 

 

「……でしたら、その証明として皆の武装を解除していただけないかしら。立ち去った面々に加え、ケビール港の砲台も含め。全てを」

 

 

 

「……盟友だというのに、この程度の約束すら信じてもらえないのね」

 

 

 

 

 盟友という言葉に思う所があるのか、フッドの傍らのヴァリアントは物憂げな表情で視線を逸らす。

 

 

 

「この海域にあるセイレーンの動きからしても、今のあなたの言葉を額面通りに受ける事は出来ません。私達はこの会談の少し前、セイレーンへの出撃を受け。これを撃退しました。まるで会談を予感し、待ち伏せを狙っていたのかのように」

 

 

 

「それが口実?もし、ヴィシアやレッドアクシズが黒幕なら。私が襲撃の下手人なら確実に貴女達を葬る為に大戦力を用意する。だと言うのに傷一つ貴女達が傷ついてない以上、私から見れば嘘をついているか。それとも適当なセイレーンと「わざと」交戦して大義名分を勝手に作り上げたと思ってしまうのだけど?」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

ダンケルクの厳しい追及にフッドは沈黙するしか無かった。しかし、暫くすると意を決したように口を開く。

 

 

 

「………そろそろ時間です。これは……本部として、「ヴィシア聖座の正式な回答」を期待しておりますわ」

 

 

 

 

到底不可能としか言いようがないだろう。ダンケルクはヴィシア聖座に於ける幹部級の人材であり、ジャン・バールから多くの権限を与えられているものの。正式な協議を行う為には植民地政府との折半や締結のための準備が必要となる。権限はあっても筋を通す必要や、住民や現地政府への根回しは必須なのである。

 

 

 

 到底今すぐ彼女の権限だけで決められるはずもない。それでもなお、副案として提示されたダンケルクの自身を人質とした中立宣言は、最早彼女の進退をかけた一世一代による独断と言っていいもの。

 

 

 

 

 ジャン・バールと関係も深く、彼女の本心を理解しているからこそ。自身を投げ合った中立宣言の提案を行ったのだが、ロイヤルはそれを黙殺した。

 

 

 

 ロイヤルにも事情もあるのだろう。ロイヤルからすればヴィシアは最早交戦国である鉄血の傀儡にしか見えないのだろう。

 

 

 

 

 最初から完全に自分達を潰す為に大部隊を展開して会談に挑んだロイヤルの態度は、口よりも如実に真意を示していた。

 

 

 

 

(ごめんなさい……ジャン・バール。クレマンソー。敵が精鋭で固められ、アークロイヤルがいる以上制空権も敗北。勝てる訳ないのは分かってる)

 

 

 

「『ロイヤル艦隊は信じずるに値せぬ。最後まで戦う」――これが回答よ」

 

 

 

 

 それでも。護教騎士団として最後まで時間稼ぎ、皆が防衛する時間を稼ぐことが唯一の貢献であった。

 

 

 

『ヴィシアは祖国の為に戦い続けます。この身果てようと、この魂が燃え尽きようと……我らの誇りと球の命の共に!!総員戦闘配置に付け!侵略者達から民を守れ!』

 

 

 

 

 ダンケルクは凛々しい号令が通信越しにヴィシア所属のkansen達に響き渡る。その声には力強く確固たるものがあった。本当はダンケルクの元で戦いたかった。肩を並べて戦うべきだった。しかし、完全武装のロイヤルネイビーと違い。会談を緊急で申し込まれた彼らは今すぐにでも防衛の為の処置を行う必要がある。

 

 

 

 国民の避難、弾薬の装填、防衛設備の機動。それら全てを行う為に、たった一人でロイヤルネイビー全てを足止めしようとするダンケルクの覚悟を誰も咎めることが出来なかった。

 

 

 

「……そうですか………」

 

 

 

 ダンケルクが交戦をの意図を見せると同時に後方から大量の戦力が出現する。予定通りだと言わんばかりのロイヤルの騎士達は続々と猟犬の様に忠実に侵攻ルートを進んでいく。

 

 

 

「フッド。気にするな。あなたのせいではない。この時代がそうさせた」

 

 

 

 

 空母、アークロイヤルは次々と爆撃機、雷撃機の展開準備にかかる。轟音を響かせながら滑走路上に整列すると次々と離陸していく。

 

 

 

「それでも……」

 

 

 

「作られた存在である私たちは、ただ祖国の命令を実行する為の兵器。兵器として目の前の敵を撃ち貫くのは当然の事だ。兵器は何も考えないのだから」

 

 

 

 フッドは俯く。己の行動を恥じているわけではない。ただ悔しさを感じているのだ。本当ならこんな手段に出るべきではなかったはずなのに。

 

 

 

 それでも止むを得ない理由があるのだ。そう自分に言い聞かせてきたつもりであった。最早定められたレールを歩むしかなく、敬愛する女王陛下の苦悩を知るフッドは吐き気を堪えて前を向く。

 

 

 

「……騎士だの王家だのと美辞麗句を並べ、都合が悪い時は兵器面して慰め合う。本当に器用ね。二枚舌って言葉をロイヤルは知らないのかしら?」

 

 

 

 ダンケルクの皮肉への回答はフッドの砲撃によって迎えられた。それはまるで言葉にならない怒りのようにも見えるし、あるいは諦観かもしれない。いずれにせよその銃声は両国に間にある深い溝を象徴するかのように響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海を切り裂く様に黒い船体が猛スピードで突っ込んで行く。水飛沫が上がりながらも速度を落とすことなく接近していく姿はまさに疾風迅雷の如き勢い。その動きを目で追うだけで精一杯であるほど速く、さらにその背後に続く僚艦の姿もありその光景は圧巻の一言だった。

 

 

 

「ピヨ!!」

 

 

 

 

『ケビール港より入電。現在ロイヤルネイビーと交戦中。至急救援を求む』

 

 

 

 

 旗艦の通信士として配属された一匹のマンジュウがメモ用紙を差し出し、ジャン・バールは苦虫を噛み潰したような表情。更に通信文を見るなり舌打ちをして唸り始めた。

 

 

 

 

「遅かったか…!あと1日余裕があれば…!」

 

 

 

 

 盗聴の危険性により、ローンが使者としてやってきて以降。ケビール港と本国では最低限の通信以外は行えていない。防備を整えろと忠告を行った瞬間それを察知したロイヤルネイビーに奇襲攻撃を受ける可能性だってあったのだ。故にジャン・バール達本土組は、味方が傷つく未来を知っておきながらそれを彼女達に伝える事ができないというもどかしい日々を送っていた。

 

 

 

 せめて、後2日も早くローンが来ていれば……モガドールやケルサンといったその日に配属を変え。ケビール港に向かう面々に情報を与える事もできたと言うのに。ありとあらゆる意味で情報のすれ違いが起きてしまった結果、ロイヤルの攻撃を万全の形で防げなかったという事実は、彼女の胸に重くのしかかる。

 

 

 

 

 

・既に防衛戦は突破されブルターニュが中破、プロヴァンスはフッドや、別働隊であったヴァリアントの攻撃により大破し撤退するも意識不明。

 

 

・ストラスブールは民間人の防衛の為に後方で防衛線を構築。

 

 

・無人艦の損耗率は未確認だが損害多数。敵空母よりアーク・ロイヤルに制空権を奪われ、嫌がらせに徹する彼女により戦艦達は自慢の主砲で反撃する事すら出来ずに傷を負っていく。

 

 

 

 

 次々と送られて来る報告はどれも芳しくないものばかり。完全武装で対セイレーンではなく、対kansen用装備で身を固めたロイヤルネイビー相手に護教騎士達は次々と倒れていく。死者が一人も出ていないのが奇跡としか言いようがない惨状と蹂躙だ。運命と勝利の女神は王家の戦士達に味方している。

 

 

 

 

 ……そう、彼らは想定しているのだろう。しかし、蝶の羽ばたきは偶然にも歯車を狂わせる。鉄血からの情報提供を得たヴィシア本国の部隊はジャン・バールの名の下に集っている。あと数分もすれば作戦領域に突入するだろう。

 

 

 

 

 作戦参加者達の腕の震えは恐怖ではなく怒り。武者部類ではなく殺意によるもの。ロイヤルネイビーは一方的な要求を突きつけ仲間達を殺そうとした敵なのだ。故に慈悲は無い。

 

 

 

 

 指揮艇とは別方向から救援に向かう部隊もまた同調しており。野蛮な偽善者共に、神の名の下に裁きを下せという意思の元で纏まっている。殺すか、捕虜にした上で罪人として衆目に晒すか。

 

 

 

 戦場の狂気に身を任せかねない事実に皆は必死になって雑念を払おうと怒りを込めた拳をぎゅっと握りしめている。彼らは騎士であって殺戮集団ではない、しかし、次々とマンジュウ経由で届く被害状況を耳にすれば統制と規律を保てるのがある意味奇跡と言えるだろう。

 

 

 

 

 あと数十分もすれば戦いの火蓋が切って落とされる。次々と艤装を整え、刻一刻と出撃を待つ中。指揮艇に直属で配置されていたル・マルスはといえば、つい数分前にドア越しから耳に届いた怒号を思い出し、まるで冷や水を浴びせられたかのような不安な表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『巫山戯るなよ…!!!』

 

 

 

 

 それは偶然であった。出撃前、指揮官を気遣った彼女は自作の蜂蜜レモンを片手に指揮艇の司令ルームに訪れた際。扉をノックしようとした時。その一言が聞こえて来た。聞き覚えのある人物の声だが。その荒げた声色は明らかに怒りに染まっていた。

 

 

 

 

『……黙っていた事は謝罪します。しかし、こちらとしても仕込みが万が一、バレて仕舞えば取り返しのつかない事態に繋がりかねませんでしたから』

 

 

 

 

 感情を爆発させた声に対し、冷静に応対するのは鉄血からの使者兼、監視役でもあったローンだ。激怒している男……指揮官とは打って変わって柔らかい物腰で話しかけているが、それが指揮官の神経を逆撫でする。

 

 

 

 

『何が仕込みだッ!!何が仕掛けだ!お前達のやっている事は…!!』

 

 

 

『でしたら……今から、向こう側にでも付きますかぁ?』

 

 

 

 

 バキッと何かが折れたような音が響く。一瞬二人が取っ組み合いになり、骨を折ったのではと思ったル・マルスだが。直後に激高していた指揮官の息を飲む音を聞いて、ただ机にあったペンを握りつぶしただけと理解出来たのは幸いだろう。

 

 

 

『貸しは一つ、いや三つにしてでも後でお返ししましょう。技術、物資、人材に至るまで手を尽くす事を我が同胞の鉄血海軍……いえ、『公王陛下の名の下に』誓います』

 

 

 

 マルスも思わず目を見開く。公王制である鉄血において、公王の名を下に誓うという行為は自身の命を賭ける以上に尊い儀礼である。

 

 

 

 

 例え、どのような犠牲が出ようとも。例え、相手がどのような任務であろうとも。必ず自身の命を掛けてでも責務を果たすという鉄血流の契約。それが重荷になる事を承知しつつも、それを選択した事で指揮官はそれ以上の詰問を諦めざるを得なくなってしまったのだ。

 

 

 

 

『……それで納得すると思うのか』

 

 

 

『しません。ですから私に出来ることは謝罪と戦場で貴方に命を預ける事ですから。既にビスマルクさんには許可を貰ってます。私の命をすり潰してでも必ずこの海戦だけは勝利を掴みましょう。その為に私はここにいます』

 

 

 

「………クソっ…」

 

 

 

 

「レッドアクシズと共に歩む道を選んだ以上、覚悟は決めてください。これが私達の『戦い』です。それでは戦闘の準備がありますから、残りは手筈通りお願いしますね?」

 

 

 

 ローンはそう言ってその場を後にしようとするが、ニコニコと柔らかな声音で話し続けていた彼女が最後に本音を漏らすように小さく呟く。

 

 

 

「……貴方と私は同類だと思っていましたが、少し違っていたようです……まぁ、それはいい事ですけどね」

 

 

 

 

 

 あまりにも、小さな声量にル・マルスだけでなく指揮官も気が付かない程に小さな愚痴。指揮官がその言葉に反応する事もなく、彼女はそのまま指揮艇から去っていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ---鉄血、及びヴィシアの介入を確認。

 

 

 

 

 

 第◆◆◆◆◆◆◆◆世界 

 

 

 

 

 

 事象名 メルセルケビール海戦

 

 

 

 

 

 未知の変化を多数確認、未観測の展開を予測。

 

 

 

 

 観測優先度 C→Bに修正。

 

 

 

 

 観測の許可ーーー了承。

 

 

 

 

 介入行動の許可ーーー拒否。

 

 

 

 

 個体名◆◆◆ー◆ー、観測を開始する。

 

 

 

 

 

「例の鉄血の指揮官のお陰で、色々と新たな研究の予知は産まれたのだけど……果たして貴方に、運命を変えられる程の奇跡を起こせるかしら?ヒトの可能性の発露を」

 

 

 

 

 

 全ては世界と人類のより良きの未来のために。

 

 

 

 

 

 この観測がその礎になる事を私達は願おう。

 

 

 

 






 少々遅れて申し訳ございません。難産だったうえ離島経営が悪いんだ……次回は早く進めるといいな。


・ダンケルク
史実ではこの時点においてもリシュリュー枢機卿への敬意を忘れないダンケルクでしたが、今作では売国奴とまで言い放つ事に。どちらかといえばロイヤルに対する外交的なメッセージという側面が強いとはいえ彼女にとって、リシュリューを否定するというのは枢機卿との決別を周りの仲間達な見せつけるという意味もありました。


・参加兵員
ロイヤル側はゲーム内のイベントでは未実装という事もあって存在しなかったヴァリアントなどが参戦。一方ヴィシア側もストラスブールが参戦していますが彼女達はケビール港防衛に動いておりメインはアークロイヤル・フッドvsダンケルクという構図に。そんな中、できる限りの武器弾薬を積み込んだヴィシア聖座が複数のルートから救援に向かっており、この時点史実再現展開は崩壊しています。


・激怒する指揮官とローン
次話までお待ち下さい。とはいえある意味凄くわかりやすく、予想はしやすい展開だとは思いますが……


次回はいよいよメルセルケビール海戦にヴィシアが乱入。侵略者を撃破しようとするヴィシア陣営にローンは何を企んでいるのか?

モチベーションに繋がりますので!
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