彗星の軌跡   作:ニトロP

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第二話 春風に揺れて

 春の朝。やわらかな陽射しが事務所の窓から差し込んで、淡く色づいた空気が静かに流れていた。

 街路樹には若葉が芽吹いていて、すれ違う人々の服装も少しずつ軽やかになってきた。

 そんな穏やかな季節のなかで、私の心だけが、春の嵐みたいに落ち着かない。

 

 「……おはようございます、プロデューサーさん」

 

 できるだけ普段通りの声で言ったつもりだった。でも、胸の奥がどくんと高鳴って、自分でも聞き慣れない声色になってしまった気がする。

 

 「おはよう、ほたる」

 

 変わらない声。それなのに、ほんの少しだけ、昨日より優しく聞こえた。

 そのことがうれしくて、でも恥ずかしくて、私は小さく頷くことしかできなかった。

 

 「今日もよろしくね」

 

 「……はいっ。よろしくお願いします……」

 

 ――まだ誰にも言えないけれど。

 ――でも、私たちはもう、恋人同士。

 

 たった一晩しか経っていないのに、すべてが違って見えた。

 プロデューサーさんの姿、声、距離、目線。どれもが愛おしくて、胸がぎゅっとなった。

 

 「……ふふっ」

 

 「ん? どうかした?」

 

 「あ、いえ……なんでもないです……っ」

 

 笑みがこぼれたのは、嬉しさがあふれて止まらなかったから。けれどその直後、私は慌てて視線をそらした。隠さなきゃ。まだ、誰にもバレちゃいけない。

 

 その時、扉がばたんと開いて、朝の静けさが打ち破られた。

 

 「おっはよーっ☆ Pチャン、ほたるちゃん」

 

 元気な声で現れたみくさんに、笑顔でおはようと返すプロデューサーさん。私も彼女の急な登場に少し驚きながらも挨拶を返す。

 

 「お、おはようございます!みくさん」

 

 「おっ、なんか今日のほたるちゃん、ちょっと明るいんじゃない?春の陽気にあてられたかにゃ?」

 

 「そ、そんなこと……ないですよっ……!」

 

 みくさんの言葉に思わず声が裏返る。ぎこちない笑顔をつくりながら、私は思いきり首を振った。

 

 「……ふーん?」

 

 みくさんはじっとこちらを見つめてきた。その目は、笑っているようでいて、鋭くて。冗談交じりの軽口のなかに、観察の鋭さが隠れていた。

 

 「ねぇ、ほたるちゃん。なんかいいことあったでしょ? 顔に書いてあるよ?」

 

 「い、いえっ、ほんとうに、なんにも……っ」

 

 必死に否定しながら、書類を拾おうとした瞬間、袖が引っかかって棚の上のファイルが落ちてしまった。

 

 「あっ……!」

 

 「危ない!」

 

 プロデューサーさんが即座に手を伸ばし、私の頭を庇うようにファイルを受け止めてくれた。咄嗟のことに驚いて、私は彼の肩に手を添えてしまう。

 

 「す、すみません……また、私……」

 

 「大丈夫。怪我がなくてよかったよ」

 

 「……ありがとうございます」

 

 目が合って、少しだけ沈黙が流れる。

 この空気の変化に、みくさんの目がさらに細くなった気がした。

 

 「……ん?いや、まさか……」

 

 「えっ……?」

 

 「んーん、なんでもないよ〜。今日もがんばろっか!」

 

 そう言って笑ったみくさんは、普段と同じように明るかった。けれど私は、ほんの一瞬、その瞳の奥に、なにかがよぎったように感じてしまった。

 

 「おはようございます〜。春ですねぇ、いいお天気です」

 

 ふわりとした声とともに、穏やかな笑顔の茄子さんが事務所に入ってきた。軽やかな桜色のカーディガンが、春の陽射しにやさしく映えている。

 

 「茄子さん、おはようございます」

 

 私が頭を下げると、茄子さんは微笑みながら手を振ってくれた。

 

 「おはよ、茄子さん!」

 

 みくさんもリボンを揺らして挨拶する。

 

 「おはようございます、おふたりとも。今日も元気そうですね」

 

 茄子さんはふたりの顔を見て、やさしく頷いた。

 

 「みくちゃん、そのリボン……桜色ですか?」

 

 「気づいた? 春っぽいでしょ〜。桜も咲いてるし、合わせてみたにゃ!」

 

 「とっても似合ってますよ。春風に揺れる桜みたい」

 

 「えへへ〜、茄子さんにそう言ってもらえると、嬉しいにゃ〜!」

 

 「……おはよう、茄子」

 

 少し遅れて、プロデューサーさんも顔を上げて挨拶をする。彼の言葉に、茄子さんはふんわり笑って会釈を返す。

 

 「今日もよろしくお願いしますね、プロデューサー」

 

 「こちらこそ、よろしく」

 

 私のすぐそばにいるプロデューサーさんの声。

 その距離感に、鼓動が速くなっていくのがわかる。意識しちゃいけないのに、意識してしまう。

 

 「……ほたるちゃん?」

 

 みくさんが少し首を傾げて、私の顔を覗き込んだ。

 

 「は、はいっ! なんでしょうか……」

 

 「なんか今日、すっごくほんわかしてるっていうか……いつもより、やさしい空気出てるにゃ〜?」

 

 「そ、そんなこと……ないです、よ……」

 

 「ふーん……? ほたるちゃん、春の精にでもなったのかにゃ?」

 

 「う……うぅ……ちが……っ、ちがいます……!」

 

 私は顔を赤くして、思わず目を逸らした。

 隠してるつもりなのに、どうしてこんなに見抜かれそうになるんだろう。

 

 「おはよー……」

 

 そこへ、扉がのそのそと開いて、杏さんが現れた。両手にクッションとお菓子の袋を抱えていて、いつものように眠たげな目で部屋を見回す。

 

 「杏ちゃん、おはよ〜!」

 

 みくさんが元気に手を振る。

 

 「おはようございます、杏さん」

 

 私も会釈した。

 

 「今日はちゃんと来たな。おはよう、杏」

 

 プロデューサーさんも笑いながら声をかける。

 

 「たまにはね。てかさ〜……みんな朝から元気だねぇ。杏、もう帰って寝てもいい?」

 

 「ダメに決まってるにゃ。ほら、今日午後からレッスンでしょ?」

 

 「レッスン……聞こえないなぁ……夢かな……」

 

 杏さんはソファに倒れ込んで、大きく伸びをした。

 そのまま私の方を見て、何気なく首を傾げる。

 

 「ほたる、なんか今日は機嫌よさそうだね?」

 

 「えっ……そんなこと、ない……です……」

 

 「いやいや、顔がふわふわしてるもん。にこにこしてるし。昨日良いことでもあったの?」

 

 「……い、いえっ……!別に……とくに何も……!」

 

 「あ、宝くじでも当たったとか?杏にも何か奢って〜」

 

 「私がそんなの当たるわけないじゃないですか!……茄子さんならよく当たってそうですけど……」

 

 私はあたふたと手を振る。

 

 「ふふっ。私は外れたことがほとんどないから、かえって緊張するんですよ」

 

 茄子さんが苦笑する。

 

 「うらやましすぎて参考にならないにゃ……」

 

 みくさんが小声でぼやいた。

 

 「でも……いいことがあったなら、それでいいんじゃないですか?」

 

 茄子さんが私にそっと微笑みかける。

 

 「春は、何かが芽吹く季節ですから。ね?」

 

 「……っ……」

 

 私の胸がきゅっとなった。茄子さんの言葉は優しいけれど、それがどこまで見透かしているのか、わからなくなる。

 

 その後も、しばらくみんなで雑談が続いた。

 茄子さんは今日の衣装合わせの話を、杏さんは最近買ったゲームの話を。みくさんは相変わらず鋭い視線を時折向けながらも、楽しげに話に混ざっていた。

 

 やがて、それぞれが仕事の準備に向けて動き出す。

 

 茄子さんはスタイリストとの打ち合わせへ。

杏さんは「とりあえず寝る」と言い残して、休憩室へ逃走。

 みくさんはレッスン前の確認をするためにスタジオに向かっていった。

 

 事務所には、私とプロデューサーさんだけが残った。

 

 「……ほたる」

 

 プロデューサーさんが、私の隣に立って言った。

 

 「少し、時間ある?」

 

 「はい……あります」

 

 私は頷いて、小さな会議室へと向かった。扉を閉めると、ほんの少し静寂が増す。

 

 「昨日のことだけど……」

 

 プロデューサーさんは言った。

 

 「しばらくは……ふたりの関係、秘密にしておこう。俺からも、そうお願いしたい」

 

 「……わかってました」

 

 私は小さく笑った。

 

 「みんなには……まだ、言えないですよね」

 

 「うん。もちろん、ずっと隠すつもりはないけど……今のうちに、気持ちも整理しておきたいし、仕事に影響が出たら、誰も得しないから」

 

 「……はい。私も、同じ気持ちです。秘密でも……大丈夫です。嬉しい気持ちは、消えませんから」

 

 私がそう言うと、プロデューサーさんは少しだけ目を細めて、私の手にそっと触れた。

 

 「ありがとう。無理はさせないよ。俺がいるから、大丈夫」

 

 「……はい」

 

 その声が、あたたかな春の風のように胸に染みて、私はそっと目を閉じた。

 

 ――

 

 午後の陽射しが、事務所の窓から差し込んでいた。

 外では桜が風に舞って、街を淡く染めている。

 

 この事務所には、いま私を含めて四人のアイドルが所属している。

 前川みくさん、鷹富士茄子さん、双葉杏さん、そして私――白菊ほたる。

 みんな、それぞれ個性的で、だけど不思議とバランスが取れていて。

 何より共通しているのは、全員が同じプロデューサーに担当されているということ。

 

 その中でも、みくさんは特別だった。

 

 彼女は、プロデューサーさんがアイドルのプロデュースを始めて最初に担当したアイドル。

 長く一緒にやってきた分だけ、ふたりの間には自然な信頼と距離感があって――

 

 「おつかれ、みく。レッスン、調子どうだ?」

 

 「バッチリにゃ!Pチャンが組んでくれたメニュー、最初はキツかったけど、最近はもうへっちゃらだよ〜!」

 

 「そっか、それならよかった。前よりバランスもよくなってるし、自信持っていいよ」

 

 「えへへ、ありがと♪さっすがみくのこと、よくわかってるにゃ〜」

 

 「当たり前だろ?長いつきあいだしな」

 

 ふたりが笑い合っているのを、私は少し離れた場所から見ていた。

 その様子はとても自然で、肩の力が抜けていて、なんだか“家族”みたいだった。

 

 プロデューサーさんは、誰に対しても平等で優しい。

 それでも――やっぱり、みくさんとの関係には、深い時間の積み重ねがあるように思えた。

 

 「……楽しそう」

 

 ぽつりと呟いた言葉は、自分でも聞き取れるかどうかというほどの音量だった。

 

 プロデューサーさんは、私にもやさしい。

 むしろ、私みたいな子にここまでしてくれるなんて、信じられないくらいだ。

 

 でも、それでも――

 

 「……少し、羨ましいな」

 

 そんな気持ちが、胸の奥で小さく灯っていた。

 

 「でさ、Pチャン。みくが最初に猫耳つけてステージ立った日のこと、まだ覚えてる?」

 

 「忘れるわけないだろ。衝撃だったよ。あの時の会場の反応、今でも鮮明に覚えてる」

 

 「でしょ〜? あれがみくの猫キャラ開花の瞬間だったにゃ!」

 

 「うん。あの時、みくが自分の色を掴んだって確信した。……それに、あの頃の俺、まだ右も左もわかってなかったし、みくがいなかったら今の俺はないよ」

 

 「ふふっ、素直に感謝されると照れちゃう〜でも、嬉しい……にゃ」

 

 ソファに並んで座るふたり。

 みくさんの横顔は明るく、目を細めるプロデューサーさんの表情には安心と信頼がにじんでいる。

 こうして笑い合える関係が、長い時間の中で築かれてきたんだとわかる。

 

 それを見ている私は、胸の奥にじんわりと温かく、それでいて少しだけ切ない気持ちが広がっていった。

 

 私は、まだプロデューサーさんと出会ってから、そんなに時間が経っていない。

 彼の優しさに惹かれて、恋をして、そして――

付き合うことになった。ほんの、つい昨日のこと。

 

 だけど……。

 

 (私で、いいんでしょうか……)

 

 みくさんのように、長い時間を共に過ごしてきたわけじゃない。

 杏さんや茄子さんみたいに、はっきりした個性も才能もない。

 それでも、私は彼のそばにいる。彼の「特別」になってしまった。

 

 それが、少しだけ怖くなった。

 

 「ほたるちゃん、どしたの?」

 

 不意に、みくさんから声をかけられた。

 私は思わず、肩をぴくりと震わせてしまう。

 

 「えっ、い、いえ……あの、何でも……」

 

 「うーん、そうは見えなかったにゃ〜。なんか、さっきからぽけーっとしてたし」

 

 「そ、そんな……すみません……」

 

 「謝ることじゃないよ?ほたるちゃん、疲れてない?」

 

 「……少し、だけ」

 

 私は小さくうなずいた。

 嘘ではなかったけど、全部でもなかった。

 でも、みくさんはそれ以上聞いてこなかった。

 

 「そっか。じゃあ、こっち来て座るにゃ。ほら、こっちあいてるよ〜?」

 

 「え……で、でも……」

 

 「いーのいーの♪いっしょにおしゃべりしよ〜う。ね、Pチャン?」

 

 「……ああ。ほたる、こっち来なよ」

 

 プロデューサーさんが、優しく微笑んで手を差し伸べてくれた。

 

 胸がきゅっとなる。

 どうしてこんなに、温かくて、まっすぐな人たちなんだろう。

 

 「……はい。失礼します……」

 

 私は、おずおずとふたりの間に座った。

 

 すると、みくさんが小声でささやくように笑った。

 

 「……ほたるちゃん、もっと甘えていいんだよ」

 

 「……っ」

 

 涙が出そうになった。

 でも、私は笑って頷いた。

 

 「……よし、じゃあ魚の話でもしようか」

 

 不意にプロデューサーさんがそう口にして、近くにいたみくさんの肩がびくっと震える。

 

 「うわっ、またそれ!?Pチャン、それほんとにやめてって言ってるでしょ!」

 

 「いやぁ、みくがあまりにも楽しそうだったから、ついな」

 

 「うそにゃ!明らかにわざとだよね!?この前だって、昼にサバ味噌の画像送りつけてきたじゃん!」

 

 「“昼飯なに食べてる?”って聞いたら、“パン”って返ってきたから、ちゃんとしたもの食べろって意味を込めてだよ」

 

 「分かってるくせに……お魚がほんっっっとにダメなこと……」

 

 「もちろん知ってるよ。でも、みくの反応が面白いからさ」

 

 「うぅ……ドS……にゃ……」

 

 みくさんは肩を落としながらも、どこか楽しげに唇を尖らせた。

 まるで兄妹のような、信頼しきった空気がそこにある。

 

 「……本当に、お魚、苦手なんですね……?」

 

 私はおずおずと声をかける。

 ふたりの距離感に、少しだけ圧倒されながら。

 

 「うん、ダメなの。姿が怖いし、匂いもムリ。食感も生臭いし、絶対無理にゃ」

 

 「でも、魚って……身体にもいいですし……」

 

 「そう言われても!もうね、お魚の目と目が合った瞬間、無理ってなるの。目玉攻撃……トラウマにゃ……」

 

 「そ、そんな……怖い目で見られたことが……?」

 

 「あるよ〜。しかも給食で一度、鯖がこっち見てたんだから……!」

 

 「……かわいそう……」

 

 「魚が?」

 

 「いえ……みくさんが……」

 

 そんなやり取りに、プロデューサーさんが吹き出すように笑った。

 

 「なあ、ほたる。今度、みくの隣で焼き魚弁当でも食べるか?」

 

 「やっ、絶対やめてよね!においが移る!ほたるちゃん、あんなの食べられるの!?」

 

 「えっと……わたしは、たぶん……平気です……」

 

 「えらすぎるにゃ。……うぅ、ほたるちゃん勘弁してよ……」

 

 「泣くほどですか……?」

 

 「うん、泣くにゃ……だって……お魚こわい……」

 

 その言葉に、思わず笑ってしまいそうになった。

 

 みくさんの誇張気味な嘆きと、プロデューサーさんの悪ノリ。

 そのやり取りは、とても親密で、自然だった。

 

 (……長い時間、一緒に歩いてきたんだな……)

 

 その関係性が、まぶしく見えた。

 私には、まだ知らない時間。

 積み重ねていない思い出。

 だからこそ、少しだけ……胸が痛くなる。

 

 (……私なんかが、そばにいていいのかな……)

 

 けれどその時、みくさんがにこっと笑って私の方を向いた。

 

 「でも、ほたるちゃんがいてくれて助かるにゃ。今度魚が襲ってきたら、守ってね?」

 

 「そ、そんな……襲ってくるような魚なんて……」

 

 「にゃふふっ、冗談だよ。でも、頼れる味方ってことで♪」

 

 「……はい……私で、よければ……」

 

 不安な気持ちが、少しずつほどけていく。

 みくさんの優しさが、ちゃんと私にも届いていた。

 

 そして、しばらく三人で会話した後も、みくさんとプロデューサーさんはまだ笑い合っていた。

 その空気はあたたかくて、まぶしくて、ふたりの間にある信頼や絆の深さを、ひしひしと感じさせた。

 

 (……私には、まだないもの)

 

 不意に、胸の奥に小さな影が差す。

 ほんの少し前までの私なら、その影に負けていた。

 私なんかが……と、また自分を下げて、距離を取って、離れてしまっていたと思う。

 

 でも――

 

 みくさんは、そんな私にも優しかった。

 輪の中に自然に引き入れてくれて、笑いながら名前を呼んでくれた。

 

 「ほたるちゃんがいてくれて、助かるにゃ」

 

 あの言葉が、今も心に残っている。

 

 (……私も、ちゃんと……)

 

 隣を見れば、プロデューサーさんが変わらないまなざしで皆を見守っていた。

 その視線には、信頼も、温かさも、そしてきっと――私に向けてくれた想いも、ちゃんとあって。

 

 (私も、もっと……近づきたい。あんなふうに、自然に笑い合えるようになりたい)

 

 誰かに守られてばかりじゃなくて、自分の足で、ちゃんと隣に立てるように。

 

 いつか、堂々と。

 胸を張って、彼の隣に――

 

 「……がんばろう」

 

 小さくつぶやいた言葉が、自分の心に届いて、ゆっくりとあたたかく広がっていった。

 

 春の風が、窓からやさしく吹き込んでくる。

まるで、背中を押してくれるように。

 

 ――そう。きっと、大丈夫。

 少しずつでも、私は変われる。

 そんな気がした。

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