創神のセレヴィアン   作:眠りの竹月

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第六話: 星の下に灯る焔

戦いの終わった村に、静けさが戻っていた。

焦土に立ち込める灰煙の中、かすかな風が吹き抜けていく。

村人たちは倒壊した家々を片づけながら、無言で夜明けを迎えていた。

 

セレヴィアンは丘の上に立ち、村の様子を黙って見下ろしていた。

破壊と悲嘆の中にも、消えないものがあった――生きようとする意志。

そのことが、どこか、彼の胸に深く残っていた。

 

「人は弱い。だが、弱いままで歩き続ける力がある……」

 

「感傷にでも浸ってるのか?」

 

落ち着いた声が後ろから響く。ゼーリエだった。

杖を片手に、彼女もまた村を見つめていた。

 

「魔族の死骸は全部燃やした。気配を残せば、また別のやつが寄ってくるからね」

 

「合理的だな。だが、わたしには“葬る”という行為が、単なる処理に見えなかった」

 

「そう思うようになったなら、ずいぶんと変わったものだね」

 

セレヴィアンは小さく笑った。

 

「観察を続けた甲斐があった。……ゼーリエ。そろそろおまえと歩む旅も終わりだ」

 

「別行動か?」

 

「しばし、ひとりで考えたい。……いくつか試したい魔法もある」

 

ゼーリエはそれを否定もせず、頷いた。

 

「いい判断だ。わたしも本を読みたいし、寄る場所がある」

 

「また、いずれ会うだろう」

 

「そうだろうね。あなたみたいな異常な存在、そう簡単に忘れられない」

 

彼女は背を向け、歩き出す。その姿に、セレヴィアンは声をかけなかった。

ただ、静かにその背を見送った。

 

⸻

 

その夜、セレヴィアンは村外れの森に足を運んでいた。

清らかな水が流れる小川の傍に、彼の足が止まる。

 

ふと、木々の間を風が通り抜けた。

葉が揺れ、その振動に共鳴するように、淡い光が立ちのぼる。

 

「……久しいな」

 

その声に応えるように、光が形を取る。

姿を見せたのは、かつてセレヴィアンが言葉を交わした“翠の精霊”だった。

 

『久しぶりだね、セレヴィアン。ずっと眠っていたと思っていた』

 

「眠っていた、というより、時を外れていた」

 

『また歩き出したのだね』

 

「そうだ。……そして、かつてよりも、この世界が“違って”見える」

 

セレヴィアンは腰を下ろし、静かに問いを投げかけた。

 

「おまえたちは、魔族の変化に気づいているか? あの“ディルファ=ラザル”のような」

 

『言葉を使う魔。かつてのそれとは、根本的に異なるものだ』

 

「虚偽の言葉で心を操る。――それが“魔”の進化なのか、それとも……」

 

『それは“意志”を持った進化だ。魔族もまた、己の種の生存を求めて、言葉を手にした。けれど――』

 

「欺くために言葉を使うとは。人と似て、そして最も異なる」

 

静かに、夜の風が流れる。

 

『セレヴィアン。あなたは“この世界の創造”を見届けようとしているのか?』

 

「否。わたしはこの世界を“理解”しようとしている。

知識だけでは足りない。触れ、揺らぎ、観測しなければ」

 

精霊は微笑むように光を揺らした。

 

『それは……ずっと前のあなたには、なかった言葉だ』

 

「そうかもしれない」

 

セレヴィアンは立ち上がる。

その眼差しは、遠い空へと向けられていた。

 

「行こう。まだ見るべきものが、この地にはある」

 

風が再び吹き、精霊は姿を消した。

そして夜明けが、静かに、森と村を包み始めていた。

 

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