創神のセレヴィアン   作:眠りの竹月

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第七話: 交差する旅路

村を発ったセレヴィアンの背に、朝陽が射していた。

陽光は森の梢を金に染め、霧の立ちこめる谷間に清らかな川音が響く。

 

人の営みというものを、ほんの少し知った。

その記憶を胸に刻み、セレヴィアンは静かに歩を進める。

今はただ、自らの足で地を踏みしめ、この世界の“今”を知りたいと願っていた。

 

旅の途上、幾つかの村を遠くから観察し、街道沿いで行商人の一団とすれ違った。

だが、言葉を交わすことなく、セレヴィアンは姿を木陰に隠した。

 

人々の表情は多様で、声は不確かに震えていた。

魔族の影が、人の世を日々侵食しているのが感じ取れる。

 

そんなある日、風の匂いが変わった。

 

――鉄と、血。そして、焦げた大地。

 

山間の谷に足を踏み入れたとき、斜面の下で火花が散っていた。

魔族の群れが、小さな集落を襲っている。

村人たちは粗末な槍や弓で応戦していたが、魔族の圧倒的な力の前には、ただ退くばかりだった。

 

「……このままでは全滅する」

 

セレヴィアンが視線を細めたとき、魔力の奔流が空気を裂いた。

 

「……《天鳴の閃》――上空に雷鳴を響かせ、一点に落雷を集束させる魔法」

 

天から光が降り、魔族の頭上で爆ぜた。

その中心から現れたのは、赤銅色の鎧をまとった若い男。

その手に杖はなく、詠唱とともに構えた掌から再び青白い閃光が放たれる。

 

魔族の一体が咆哮し、氷の魔法を放つ。

冷気が地を這い、男の足元へ迫るが――彼はそれを側面にかわし、さらに水の魔法で流れを操る。

 

無言の戦いの応酬が続く中、セレヴィアンは木陰から静かに姿を現した。

 

「……多属性の運用。知識だけではなく実戦も積んでいるな」

 

男は魔族を退けたあと、警戒の色を浮かべてこちらを睨んだ。

 

「誰だ、おまえは……魔族か? それとも人間か?」

 

「名を告げる必要はない。だが、敵ではない」

 

その声音に、男の緊張が少し緩む。

 

「……助けてくれたなら礼は言う。名はカラム。かつて王都で魔法を学び、今は旅をしながら世を見ている者だ」

 

「旅をしながら……護るためではない、知るための旅か」

 

「どちらも、だな。必要とされれば、力は使う。それだけだ」

 

「ふむ。おまえの魔法の在り方は……面白い。理屈ではなく、“必要性”に応じて自在に属性を使っていた」

 

「そんな風に言われたのは初めてだな。あんた、ただ者じゃないな」

 

セレヴィアンは肩をすくめて応じた。

 

その夜、ふたりは焚き火を囲み、互いの過去や旅のことを語り合った。

魔族の言葉の嘘――人の無力と、それでも灯し続ける希望について。

 

「俺は、ただ……目の前の誰かを護りたいだけなんだ」

 

「それで十分だ。護ろうとする意志は、世界を変える最初の一歩になり得る」

 

「……なんだか、おまえを見てると……昔、読んだ英雄譚に出てくる人物を思い出すよ」

 

セレヴィアンは微笑むと、火の揺らめきの奥に目を細めた。

 

こうして、新たな出会いがまたひとつ、セレヴィアンの旅路に刻まれていく。

それは、やがてさらなる旅路と選択の先に待つ、数多の邂逅へとつながっていく。

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