魔人三姉妹と頭のおかしな魔法少女が戦う話

特殊性癖モリモリ

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おかしな魔法少女たち

「ん……まさかあの靄は!?」

 

「みんな逃げて、魔人よ~!」

 

 休日のショッピングモール。日常の象徴といえるその場所に黒い靄のようなものが現れた。それを見た人々は叫びながら我先にと逃げ出した。

 

『ショッピングモール内に次元門が現れました。ご来場の皆さま、速やかにご退場いただくか、安全な場所にお隠れください繰り返します……』

 

 遅れて警報が流れる。黒い靄の正体は地球と異世界をつなぐ次元の穴であり、その出現は異世界からの侵略者の前兆だった。

 

 そして警報が流れる中、黒い靄からそれぞれ中学生、高校生、大学生ぐらいに見える三人の少女が姿を現す。もっとも紫がかった青色の肌、頭の角、背中の翼と通常の人間でないことは明らかだった。

 

「魔人だ。早く逃げろー」

 

 彼女たちの登場に人々のパニックは増す。彼女たちは『魔人』呼ばれる異世界からの侵略者であり、その目的は人間を絶望させることで得られる負のエネルギーの収集だった。

 

「わあ~、人間がいっぱ~い」

 

 まず、中学生ぐらいの魔人が逃げ惑う人々を見渡して口を開いた。彼女はキャミソールにミニスカートというかわいらしくもラフな格好で、動くたびに小振りなツインテールがわずかに揺れる。

 

「重要なのは数じゃねえ。質の方だ」 

 

 次に口を開いたのは高校生ぐらいの魔人。筋肉質な彼女は動きやすいよう髪はショートカットに服装も動きやすさを重視した露出の多いものだった。

 

「ふふ、当たりの場所を引いたわね」

 

 最後に口を開いたのは大学生ぐらいの魔人。大人びたロングヘアの彼女はビキニアーマーのような恰好をしており、その豊満な体を際立てた。

 

「逃がさないわよ」

 

 ロングヘアの魔人がパチリと指を鳴らすとショッピングモール中に冷たい風が駆け抜け、そのままショッピングモールは氷に覆われてしまった。

 

「そんな……」

 

「寒っ……」

 

「まだ魔法少女は来ないの?」

 

 脱出経路が閉ざされた人々は歩みを止めた。だが、次の瞬間氷の壁が外から破壊された。

 

「みなさん、大丈夫ですか?」

 

 助けに来たのは中学生ぐらいの少女だった。赤を基調にした改造セーラー服のような服を着た彼女の登場に人々は安堵の息を漏らす。

 

「おお、魔法少女だ」

 

「……助かった」

 

 彼女は魔法少女。魔人から世界の平和を守る正義の味方だった。

 

「みんな、お待たせ」

 

「お久しぶりです」

 

 続いて雲のようにフカフカしたスカートが特徴的な青の魔法少女、全体的にシャープで剣士を思わせるような黄色の魔法少女が駆けつける。

 

「まさかこんなにかち合うなんて」

 

「まあ、目立ってましたし」

 

 更に魔法少女というより格闘家といった雰囲気を持つ緑の魔法少女、胴着と巫女服を合わせたような紫の魔法少女が合流する。

 

「うわっ、いっぱいいる」

 

「これだけいれば上位魔人でも楽勝だね」

 

 更にロリータファッションのピンクの魔法少女、忍者のような黒の魔法少女が遅れて合流した。

 

 こうして計7人の魔法少女がショッピングモールへと駆けつけた。彼女たちは周辺にいた人々を外へ逃がすと魔人たちの元へと急いだ。

 

「あなたたちが魔法少女?」

 

「そうよ」

 

 少しして魔法少女が魔人と対峙した。その周辺には逃げ遅れ、氷の檻に捕まってしまった人々がいた。

 

「おお、魔法少女が来てくれた」

 

「助かった」

 

 駆けつけた魔法少女たちを見て人々は歓声を上げる。若干の凍傷はあるものの大きな外傷を負った者は見当たらなかった。

 

「まだ誰にも手を出させてないのは褒めてあげるわ」

 

「勘違いしないでほしいわね。正面からあなたたちを潰した方が効率よく絶望エネルギーを集められるからよ」

 

「ふざけたことを……っ!?」

 

 会話の最中、高校生ぐらいのショートカットの魔人が話していた赤の魔法少女の腹を殴りつけた。反応が遅れた彼女はまともに攻撃を受け、ショッピングモールの壁へと叩きつけられる。

 

「レッド!?」

 

「いいからとっととやろうぜ。……なんだよ、一発で伸びたのかよ」

 

「相変わらずリサ姉は喧嘩早いなあ」

 

「全く、あの子ったら」

 

 赤の魔法少女を殴り飛ばしたショートカットの魔人は起き上がらない彼女を見てため息をつく。更にその勝手な行動にツインテールの魔人は笑い、ロングヘアの魔人はため息をつく。

 

「レッドの仇!」

 

「おお、いいぜ。かかって来いよ」

 

 仲間をやられた魔法少女たちは魔人に向かって駆ける。そんな魔法少女に対し魔人は余裕な顔で挑発した。

 

「ねえ、私とも遊んでよ~」

 

「少しは楽しませてちょうだいね」 

 

 そんな中、炎で出来た狼と氷の壁が魔法少女たちを分断する。こうして魔人一人に対して魔法少女二人で戦う形になった。

 

 

――――

 

 

「ほらほら、早く逃げないと火だるまになっちゃうよ~」

 

 ツインテールの魔人、リリカ。彼女は炎で作った鳥たちをミサイルのように操り、魔法少女たちへと放つ。

 

「熱っ!」

 

「……近づけない」

 

 リリカと対峙することになった青と黄色の魔法少女は炎の鳥から逃げるだけで精いっぱいだった。炎の鳥は魔法少女に当たるか、地面や壁にぶつかるかすると一撃で四散するが、その都度新しい炎の鳥が生成されていく。

 

「……私が囮になるよ」

 

「そんな!? ……分かった」

 

 絶え間ない炎の鳥を前に青の魔法少女が囮になることを提案する。提案された黄色の魔法少女は驚くが、他に打開策がないためその提案を受け入れた。

 

「それじゃあ、後は任せるね」

 

「……ごめん」

 

 言葉を交わすと青の魔法少女が炎の鳥の群れへと駆け出す。そしてそれに合わせて黄色の魔法少女が遠目からリリカの後ろに回る。

 

「きゃああああ!」

 

「……無事でいて」

 

 直後、数十羽の炎の鳥が青の魔法少女に殺到し、彼女は爆炎に呑まれた。そんな彼女の犠牲を無駄にしないため黄色い魔法少女は一人、爆炎に紛れリリカの背後に回り込む。

 

(これで……)

 

「いけると思った?」

 

 黄色の魔法少女は攻撃のため振りかぶる。だが、そんな少女相手にリリカは視線を向けることもなく笑う。その直後、黄色の魔法少女の足元に炎の狼の顎が現れ、彼女に噛みついた。

 

「いやあああああ!?」

 

 炎の牙が黄色の魔法少女の腰に食い込む。少女はその激痛に悲鳴を上げるが、体内を直接焼く炎のせいで声を上げることすらすぐに出来なくなった。

 

「……もう終わり~? つまんな~い」

 

 炎の鳥の集中放火で全身が焼けた青の魔法少女と腰に深々と牙の跡が刻まれ、下半身を焼かれた黄色の魔法少女。そんな二人の魔法少女を見てリリカは嘲り笑った。

 

 

――――

 

 

「オラオラオラオラ!」

 

「きゃっ」

 

「うわっ」

 

 ショートカットの魔人、リリサ。対する緑と紫の二人の魔法少女も近接戦には心得があったが、リリサはそれを正面から圧倒する。

 

「……あれ、使うしかないか」

 

「そうね」

 

 苦戦する二人はそれぞれ奥の手を使うことを決意する。

 

「出来るだけ短めに決めるぞ」

 

「ええ」

 

 魔法少女の二人は魔法で限界まで肉体を強化する。後で反動が来る能力だが使わざるを得なかった。

 

「行くぜ!」

 

「はあ!」

 

「お、おお?」

 

 息の合った二人がかりのコンビネーションラッシュ。その乱打に徐々にだがリリサの手が追いつかなくなっていった。

 

「……っと」

 

「これで終わりだ!」

 

「これで終わりです!」

 

 度重なる乱打でリリサの体勢が崩れる。魔法少女二人はその隙を見逃さず大技を叩き込んだ。その威力にリリサは吹き飛ばされ、地面に倒れる。

 

「……やったか?」

 

「やっててほしいけど」

 

 魔法少女二人は肉体強化の反動で息を切らす。そのままリリサが立ち上がらないことを願った。──だが現実は非情だった。

 

「おー、少しはやるじゃねえか」

 

「マジかよ」

 

「そんな……」

 

 起き上がったリリサは体を慣らす。ダメージが全くないわけではないようだったが、その動きにとても有効といえるダメージではなかった。

 

「こっちもちょっとは本気を出してやるぜ」

 

 リリサが体に力を込めるとその体は帯電し、髪の毛が逆立つ。

 

「構えろ」

 

「ええ」

 

「簡単に終わってくれるなよ」

 

 第二ラウンドの開始に魔法少女とリリサはお互いに構える。

 

「……かはっ」

 

「……嘘」

 

 勝負は一瞬だった。帯電したリリサのスピードと破壊力は先ほどまでの比ではなく、魔法少女二人は回避や防御どころか反応すらできなかった。

 

「……なんだよ。もう終わりかよ」

 

 落雷を受けたように黒焦げになった魔法少女はピクリとも動かない。あまりにあっけなく終わってしまったことにリリサはため息をついた。

 

 

――――

 

 

「……近づけない」

 

「……あぶなっ!」

 

「ふふふ、どこまであがいてくれるかしら?」

 

 ロングヘアの魔人、リリア。彼女は氷を操り地面からの氷柱、巨大な氷の槍という二方向からの攻撃で魔法少女たちを苦しめる。

 

「このままじゃ……」

 

「でもゆっくりと近づいていっている」

 

 リリアの苛烈な氷の攻撃。ピンクと黒の魔法少女二人は攻勢に出るどころか回避するだけでも精いっぱいだった。だが、よけながらも少しずつではあるが距離を詰めていた。

 

「……あっ」

 

「しまっ……」

 

 もう少しで攻撃に転じれそうな距離に届きそうなところで魔法少女二人は足を滑らす。なぜならその部分だけが凍りついていたからだった。

 

「まさか私たち……」

 

「誘導されて……」

 

「今頃気づいてももう遅いわ」

 

 魔法少女二人はここまで誘導されたことがリリアの罠だったことに気づく。二人は急いで立ち上がろうとしたがもう手遅れだった。慌てて体勢を立て直そうとする魔法少女二人の前にリリアが立ち、凝縮された冷気を二人に向けて解き放つ。

 

「ふふ、いい絶望顔ね」

 

 全身凍らされ氷像となった二人の魔法少女を見てリリアは笑う。

 

「でもコレクションにはいらないわね」

 

 笑い終わるとリリアは凍りついた魔法少女の体を軽く蹴る。倒されたその体は氷の彫像のように砕け、粉々に散った。

 

 

――――

 

 

「そんな魔法少女が……」

 

「ランカーだっていたのに」

 

 魔法少女たちと魔人三姉妹の戦いを遠目で見守っていた人々は、あっけなく全滅した魔法少女たちを見て絶望の表情を浮かべる。魔法少女が負けること自体がないわけではなかったが人数有利でここまで一方的に負けることは稀だった。

 

「ああ、これこれ。希望がついえた人間の絶望はおいしいわ」

 

「バトルはちょっと消化不良だけどこっちは中々だな」

 

「おいし〜い」

 

 一方、絶望の表情を浮かべた人々からから溢れた負のエネルギーが嗜好品な魔人の三姉妹は笑みを浮かべる。そしてそれを見た人々が絶望する負の連鎖が生まれた。

 

「……誰か、誰か強い魔法少女は来ないのか」

 

「半端な魔法少女じゃ駄目だ。それこそトップランカーの……」

 

 人々はこの場を救う救世主の登場を祈るしかなかった。そしてその祈りを聞き届けたのか二人の新たな魔法少女が氷の檻を破り、駆けつけた。

 

「カラフルペコ参上!」

 

「ゴールデンエレガント参上ですわ」

 

 ほとんど同タイミングで現れた二人。一人は中学生ぐらいに見える少女で魔法少女というより普通の女児のような服装だった。一方でもう一人の魔法少女は高校生ぐらいの見た目で金色で煌びやかなドレスのような服装をしていた。

 

 カラフルペコ、ゴールデンエレガント。魔人討伐ランキング三位と二位の二人は人々が願った最強クラスの魔法少女だった。

 

「あっ……」

 

「……まあ、勝てるだろ」

 

「魔人もご愁傷さまって感じだな」

 

「いや、あいつらも魔法少女たちをやってたんだから大概だぞ」

 

「それはそうなんだが」

 

「ゴールデンエレガントのコレクションがまた増えるのか。……また見に行こう」

 

 しかし、人々の反応は芳しくない。二人は確かにトップクラスの魔法少女だったが人気はあまりない方だった。

 

「ねえ、ゴルちゃん? 三人とも私に譲ってくれない♪」

 

「突然なんですの? なぜわたくしがあなたに獲物を譲らなければなりませんの?」

 

「「……はあ?」」

 

 そして当の魔法少女二人は魔人を前に自分に譲れと言い争いを始めた。

 

「ねえ、なにあれ?」

 

「何かの作戦? ……いや、本気のようにしか見えないわね」

 

 二人の魔法少女の言い争いにリリカとリリサは困惑の表情を浮かべる。周りの人間の反応からも演技のようには見えなかった。

 

「なんだっていい。体が冷える前に俺がやる」

 

 まどろっこしくなったリリサは攻撃の構えを取る。だが、魔法少女の二人はまだ言い争いをしていた。

 

「まずはチビの方からだ!」

 

 帯電したリリサはカラフルペコに向かって一直線に突っ込む。疾風迅雷──だが、その一撃は空を切った。

 

「は?」

 

 攻撃を外したリリサは周りを見渡す。左右には巨大な二本の柱、でなく巨大な足。一部の魔法少女は固有能力を持っており、カラフルペコの能力は巨大化だった。

 

「捕まえた♪」

 

「ちょっ、待て……」

 

 巨大化したままリリサをその両手で掴み上げるとそのまま頭から口にする。

 

「リリサ」

 

「リサ姉!」

 

「仕方ないですわね」

 

「あ~」

 

「終わったな」

 

 その衝撃的な光景にリリアとリリカの二人は驚愕するが、ゴールデンエレガントと周りの人々に驚きはなく諦めた顔つきになる。

 

「は、離せ~、舐めるな〜」

 

「ダメ~、もう逃がさない♪ あなたたちは私のご飯なんだから♪」

 

 リリサは食べられないよう暴れるがカラフルペコは全く意に返さない。またリリサの必死な抵抗も外から見れば口から出ている下半身がなんとも滑稽だった。

 

「離せ!」

 

「ん~、ビリビリして刺激的~♪」

 

 リリサは自傷も問わない強さの電撃を放つ。しかし、それすらカラフルペコには効いておらずリリサの体はゆっくりと呑み込まれていく。

 

 魔法少女の力は想いの力に呼応する。魔人を丸呑みしたいと並々ならない思いを持つ彼女の最大の武器は巨大化ではなく、消化器官の強靭さだった。

 

「リリ姉!」

 

「リリカ、待って」

 

「えっ……ぐえっ!」

 

 リリカは姉の窮地を救おうと炎の狼を生成する。しかし、その隙に急接近したゴールデンエレガントによって飛び蹴りを食らってしまう。リリアもその急襲に気づき、氷の壁をリリカの前に展開したが間に合わなかった。

 

「まだまだ行きますわよ」

 

「この……がはっ……ぐふっ……うげっ……」

 

 ゴールデンエレガントはそのまま蹴りを中心にした連撃を浴びせる。その連撃は絶え間なく、リリカは炎の動物による反撃どころか防御すらままならなかった。

 

「……この」

 

 リリアはゴールデンエレガンスをリリカから引き離したかったがリリカとの距離が近すぎるせいで手出しが出来なかった。またこうしている間にリリサの体はカラフルペコに呑み込まれ、もう太ももより先しか残っていなかった。

 

「ごめんあそばせ」

 

 散々リリカを蹴り続けたゴールデンエレガンスはとどめとばかりに蹴り飛ばす。

 

「うう、リア姉助け……」

 

「リリカ!」

 

 まだ息のあるリリカは倒れたまま、リリアに助けを求める。しかし、その瞬間に彼女の体は黄金へと変わってしまった。

 

「……実にいい表情ですわ」

 

 黄金像と化したリリカの横にゆっくりと歩いたゴールデンエレガンスは姉に助けを求めたポーズで固まったその姿を見て笑みを浮かべる。

 

 ゴールデンエレガンスの固有能力は黄金化。瞬間的に相手を黄金像に変えるその能力は強力だが、発動のために相手の心を折る必要があった。だが、彼女は凄まじい格闘センスでその欠点を補っていた。

 

「貴様……っ!!」

 

 リリアは激昂し、右手に作り出した巨大な氷の刃で切りかかるが横から巨大な腕が迫る。リリアはそれをぎりぎりで回避し後ろに下がった。

 

「今のは危なかったねえ♪」

 

「あれぐらいの対処、全く問題ありませんでしたわ」

 

 二人の間に割って入ったカラフルペコはゴールデンエレガンスに声をかける。リリサは完全に呑み込まれ、カラフルペコの腹には彼女のボディラインがうっすらと浮かび上がっていた。

 

「ではいつも通り早い者勝ちということで」

 

「姉妹丼食べる、絶対食べる♪」

 

「貴様ら~!!!!」

 

 リリサとリリカをそれぞれ倒したゴールデンエレガンスとカラフルペコは最後の獲物に目を向ける。そしてリリサとリリカの姉であるリリアは更に怒り狂い、全力の猛吹雪を放った。

 

「……姉からやった方がよかったでしょうか」

 

「寒い~」

 

 手加減や遊び抜きのリリアの全力。その威力に二人は苦戦を覚悟した。

 

「……あの二人でもきついのか」

 

「勝つには勝てそうな気もするけどなあ」

 

「やっぱりパティたんしか勝たん」

 

 やり口や見た目に問題があるとはいえトップランカー二人の苦戦に人々の表情も曇る。そして更なる魔法少女の登場を願った。 

 

「さっさと凍りなさい」

 

「……厄介な」

 

「……危ない!」

 

 猛吹雪。近接主体の魔法少女二人は相性も悪く、中々手出しができない。そんな中、巨大な何かが空から落下し、吹雪を遮る壁となった。

 

「……チョコだ。チョコの壁だ!」

 

「ホワイトパティが来てくれたんだ!」

 

「……勝ったな」

 

 吹雪を抑えたものは壁のように大きな巨大な板チョコだった。それに気づいた人々は最強の魔法少女の登場に歓声を上げる。

 

「時間切れですわね」

 

「あー、来ちゃったか」

 

 人々が沸き立つ中、二人の魔法少女はため息をつきながら新たに現れた魔法少女を見つめる。

 

「……なんだ、お前は?」

 

 全力の吹雪を防がれ、リリアは苛立ちながら新たに魔法少女にその名を尋ねる。

 

「私はホワイトパティ。お菓子の魔法少女よ」

 

 純白のパティシエ衣装の魔法少女が名乗ると同時に巨大化したカラースプレーが鮮やかに飛び散る。ホワイトパティ―、その名と見た目の通りお菓子を操る魔法少女で堂々の魔人討伐ランキング一位の魔法少女だった。

 

「邪魔だ!」

 

「チョコシールド!」

 

 二人の妹の仇を早々に打ちたいリリアはその前に立つ障害であるホワイトパティに数十の細かい氷の刃を放った。だが、それは新たに作られたチョコに防がれる。

 

「これならどう?」

 

「わたがしガード!」

 

 続いてリリアは全長三メートルはある氷の槍を何本も放った。その壁はチョコの壁を突き破ったが新たに展開されたわたがし状のバリアによって止められてしまう。

 

「ならこれは」

 

「キャンディケイン!」

 

 リリアは直径三十メートルはある巨大な氷塊をホワイトパティの頭上に生成し、落下させる。だが、それもホワイトパティが作り出した巨大なぺろぺろキャンディに粉砕される。

 

「死ねえええ!」

 

「チョコレートスプラッシュ」

 

 ブチ切れたリリアは凝縮させた冷気エネルギーをらせん状に打ち出す。対抗したホワイトパティは同じようにらせん状になった液体チョコレートを打ち出し、二つは正面からぶつかりあう。

 

「……こんな、ふざけたやつにこの私が~!!」

 

 最初は拮抗していた両者だったが徐々にリリアが押されていき、彼女はチョコレートの濁流にのみ込まれていった。

 

「勝利―!」

 

「やったあ」

 

「流石ホワイトパティだ」

 

 ホワイトパティがポーズを決めると、最初の名乗りの時と同じく巨大なカラースプレーが飛び散る。そしてその勝利を人々は称えた。

 

「あ~あ、もっと食べたかったなあ」

 

「仕方がないですわ。でももったいないですわねえ」

 

 一方、カラフルペコとゴールデンエレガントはリリアという獲物を取られたことにため息をついていた。

 

「それじゃあゴルちゃん、またね」

 

 魔人が全滅したのでカラフルペコはゴールデンエレガントに別れの挨拶をかけた。

 

「お待ちなさい。巨大化したままですわよ」

 

「……そういえばそうだった」

 

 カラフルペコは巨大化を解くと元の大きさに戻った。もちろん腹の中のリリサの大きさは変わらないのでそのボディラインや中での抵抗がより分かりやすくなった。

 

 

――――

 

 

「……ふわああ、よく寝た」

 

 夕方。かえって昼寝をしていたカラフルペコは目を覚ました。

 

「……もう溶けちゃったみたいだね」

 

 カラフルペコは膨らみが消え、元に戻った腹に手を当てる。つい数時間まであった抵抗は完全になくなっており、それはリリサの消化が終わったことを示していた。

 

「お腹すいてきたな。また怪人出てこないかなあ」

 

 リリサを消化したばかりだというのにカラフルペコの腹の音はなる。カラフルペコは新たな獲物を求めた彼女は外へと飛び出した。

 

 

――――

 

 ゴールデンエレガントの実家は日本でも有数の資産家で正体が知られている数少ない魔法少女だった。そして彼女はその立場を生かし、黄金像にした魔人を私設の博物館に展示していた。

 

「この辺りにしましょう」

 

 その博物館の中、ゴールデンエレガントはリリカの黄金像の置く場所を決めた。そこはリリカと同じような少女の姿をした魔人の黄金像が置かれているエリアで、その多くが命乞いや助けを求める姿で固まっていた。

 

「タイトルは『手を伸ばすもの』……はあ、やっぱり姉も手に入れて姉妹セットにしたかったですわね」

 

 ゴールデンエレガントは姉妹揃えることが出来なかったことを改めて後悔した。

 

 

――――

 

 

「……ああ、綺麗♡」

 

 魔法少女ホワイトパティは薄暗い自室で恍惚の表情を浮かべていた。彼女が手に持っているのはチョコレート。それはつい数時間前に倒したリリアの形をしている。

 

 それはリリアを真似て作ったものではなくリリア本人をチョコに変えたものだった。ホワイトパティの能力は世間的にはお菓子を操る能力とされているが、そのお菓子で倒した者をお菓子に変える力もあった。

 

「匂いも最高~♡」

 

 ホワイトパティはリリアチョコを顔に近づけるとその匂いを嗅いで悦に浸る。

 

「……甘さの中にちょっぴりビターでいい感じ~♡」

 

 更にホワイトパティは舌先でリリアチョコの顔を舐めるとその味に表情が緩む。そしてその舌の勢いはとまらず、何度も舐めた。何度も舐められたリリアチョコは首から上のほとんどが原形を保っていなかった。

 

「……それじゃあ食べるね。食べちゃうね。さようなら♡」

 

 最後にホワイトパティはリリアチョコに話しかけると大口を開け、リリアチョコに齧りつく。彼女は口に頬張ったリリアチョコを舐めたり、噛み砕きながらその身の全てを摂取した。

 

「食品化食品が食べ放題なんてほんとに魔法少女最高~♡♡♡」

 

 リリアチョコを完食したホワイトパティは改めて魔法少女になったことに感激する。魔法少女になる前からそういいた性癖をしていた彼女にとってこの環境は最高のものだった。

 

 表向きは見栄えも性格もいい魔法少女ホワイトパティ。その裏を知る者は彼女と彼女の精神の強さを見込んで力を与えた存在だけだった。

 




モブ魔法少女の生死やリリア、リリカの精神状態についてはご想像にお任せします。

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