超空軌道交通管理隊 ―〝異世界サービスエリア〟異常事態、急行せよ―   作:えぴっくにごつ

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臨時10便:「―チカラ ト パワー―」

「な……!」

「……!」

 

 まさに〝超常〟の域のそれの踏み込む、とてつもない。そして一方的な、侵外の独壇場となっている戦いの光景に。

 SAの施設建物の近くでそれを目の当たりにしながら、驚きの色の零し見せているのは桜井にクアクレス。

 

 退避を促され、戦いの場より距離こそ取って一応の避難はしたが。

 状況がどうなるのか気が気でならず、ギリギリの場所よりそれを見守っていた桜井等は。

 しかし今に在っては、異世界の名だたる脅威を前にした不安に恐怖も、どこかへと消え去り。

 ただただ、向こうで繰り広げられる驚愕の光景に、唖然としていた。

 

「……どれほどに超常に踏み込めば、これだけの力を……」

 

 そして、その驚愕の様々を見せつけた侵外の、今の悠々と立ち構える姿を目の留め。

 思わず浮かんだ、そんな言葉を零す桜井。

 

「!」

 

 しかしそこで桜井は、その侵外の背後の迫った「脅威」に。その存在の出現に気づく。

 そして熱波の如くここまで届いたのは、ここまでで一番の恐ろしく身の毛のよだつオーラ。

 

「管理隊さんッッ!!」

 

 それに、背筋に凍るものを感じながらも、しかしその危機を侵外に伝えなければと。

 桜井は恐怖のオーラを身構えて堪え踏みとどまり。そして侵外に向けて、怒号に近い警告の声を張り上げる。

 

 

 ――――大丈夫。

 

 

 ――しかし。

 それに気づいた侵外が、静かにこちらに向いて見せたのは。

 淡々とした、しかし確固たる色を見せる顔色のみでの。そう伝える旨。

 

「――戯れは、ここまでじゃ」

 

 そんな侵外の、背後真後ろ。

 その宙空に、その脅威の姿――鴉天狗のシェンの姿はあった。

 

 宙空で足を組みふんぞり返る、器用かつ優雅なまでの居住まいで。

 そして透る少年の声で。しかし怒気を込めた静かな色で紡がれたのは、宣告の言葉。

 

 明かせば、この集った名だたる面々の内でも最強格たるシェン。

 しかし同時に傲岸不遜の極みたる彼は。

 矮小な存在とみなす人ごときが、己に無礼甚だしい大言を吐き。

 己の預かり知らぬ御業の数々を見せ。さらには己を小手先の数々で不快にし、果てには不愉快に暴れ周る姿に。

 『面白くない』その数々に、大変に心を害していた。

 

 ブワ――と。

 シェンの宣告の直後、彼の身から膨大な『妖気』零れ広がる。

 只人ならそれだけで発狂し、絶命しえる程の恐怖のそれ。

 

 しかし。

 

「――少しも寒くない」

 

 侵外が零したのは、その妖気を感じ取っての、しかしそんな「感想」。

 そして立ち構え続け。そんなシェンを挑発するかのように、片手を翳して拳を作る。

 

「痴れ者がっ」

 

 それが、シェンの堪忍袋の緒を切るに至った。

 

 そして、瞬く間もなく直後瞬間。

 まさに瞬間移動のごときで、シェンはその侵外へ迫り背後を取った。

 

 その顔に、一筋の青筋を。そして虫を甚振り殺さんとする、あまりにも冷酷な表情を見せて。

 その手にしていた彼の得物たる、雅と言う言葉が担う装飾の、巨大扇を。

 侵外の身を裂き、断ち屠るべく。

 一閃を薙いだ――

 

 ――しかし。

 

「ぇ――?」

 

 その何人の逆らいも認めぬはずの一閃は、しかし、空を切った。

 想定もしていなかったそれに。シェンはそれまでのあまりに冷酷な表情を、しかし崩してしまい呆けた色を漏らす。

 

 そしてシェンの側方、目に映ったのは、

 半歩、身を捻り後退。シェンの一閃を、最低限の動きのみで見事に回避し。

 そして――予備動作の形を取、侵外の姿――

 

 

 ――ボ――

 

 

 衝撃の、音が劈き轟いた。

 

 侵外の、その携える健脚が。

 ここまでで一番の渾身のそれで、蹴撃を繰り出し。

 それを、シェンの腹へと「ぶち叩き込んで」いた。

 

「――こぇぁ……っ?」

 

 腹に入る、あらゆるを超えるまでの衝撃。それにより漏れる、シェンのえずく声。

 そして、その蹴撃の一撃により。シェンの体は駐車場の、SA施設の上空空高くへと、「打ち上げ」られた。

 

「――ッ」

 

 侵外は、それを見上げて追うことは無く。静かに、前方の定めた一点を見据えながら。

 ドゴンッ――と。

 四股を踏むような、駐車場の表面を割らんがまでの踏み込みで、構えの姿勢を取る。

 

 そしてそれに伴い、同時にに見え始めのたのは。

 侵外の身体の――強化膨張。

 その腕が、脚が、胴が、その筋肉が。只ならぬ気配を纏いながら、みるみるうちに強化膨張して強靭な様へと変わり。

 纏う管理隊の制服越しにも分かる程の、えげつないまでのぶっとい腕っぷしが、健脚が。身体の全身が露わになり主張する。

 

 それこそ、今程の渥美と同様に、しかしまた異なる形の。

 侵外がまた私的に体得する、「身体強化」が成す御業。超常まかり通る超空空間にて、戦うために手に入れた力。

 

 ――方法の詳細は不明だが、強制的に進化したのだ。

 ――脅威を倒せるほどにまで。

 

 そして侵外は、その身体にて。

 静かに、片手に作った「最初の拳」を。もう片方の手で包み込むような姿を形作る。

 

「――……ぁぁあ……っ!?」

 

 そんな侵外が待ち受ける地上へ。打ち上げられた空高くから、反転して真っ逆さまに落下してくるのはシェン。

 今程の「一撃」のダメージも相まってか、最早持ち直し、自ら飛ぶ事すら不可能に陥っている。

 そして、その真っ逆さまの落下の果てに。ついに侵外の懐まで、シェンが落ちて来た瞬間――

 

 

 ――〝衝撃〟を、叩き込んだ――

 

 

「――ぶぃ゛びぇ゛ら゛ぁっ!!?」

 

 入った、侵外の拳が。

 シェンの身の「あらゆる」を拉げ、砕き。

 そしてシェンは、生き物の身から鳴ったものとは思えない。悲鳴と「破壊」の音をしかし響き上げて。

 

 そして体現されたその一撃は、衝撃派すらを生んで。

 シェンは一撃のエネルギーが向くままに、前方向こう一直線に、叩きぶち飛ばされた。

 

 シェンは一瞬の後に、延長線上の向こう。SA周りを飾る樹林へと消え。そして爆発の如き噴煙が上る。

 

「――……ぴく……ぴく……」

 

 その煙が晴れ、見えた樹林の内の一点。太い樹木の側面元。

 そこに叩きつけられ、半分埋まった状態でようやく停止したシェンの体が。

 

 痙攣して、白目を剥いて泡を吹き。その美しくもしかし恐ろしい顔立ちを、しかし台無しなまでにして。

 気絶して沈むその有様が、露わとなった。

 

「――」

 

 それを向こうに見ながら。

 一撃を、衝撃を成した腕に拳を。静かに戻しながら、立ち構え直す侵外。

 

 そこ顔には、いつもの皮肉気で倦怠な色は今に在っては消え。

 超空にありし者の、「あらゆるをもって戦う覚悟」の色が。静かにしかし確たるそれで見て取れた。

 

 

 その身姿は、まさに異質――超常の体現であった。

 

 

「え……シェン……さま……?」

「勇者さま……?」

 

 そんな、衝撃の最たる光景に。

 眼下でその元凶たる侵外が、静かにしかし悠然と、かつ確たる姿で。

 ただ一人、場の勝者、支配者として立ち構える姿に。

 

 呆けた声を零したのは、異界の只たる存在の。今に軒並み気絶して沈んだそれぞれの、仲間に配下従者たち。

 

「……ぅ、うわぁぁぁ……!?」

「そんな……に、にげろぉ……!」

 

 少しの静寂沈黙ののち。しかしそれを誰かが叫び声で破り、そして場よりの逃走の姿を見せ。

 それを皮切りに、それは面白いように瞬く間に伝播。

 

 各勢力の筆頭者が沈んだ事態を受け。その仲間に配下従者たちは、驚愕に動揺困惑から戦意喪失。

 そのほとんどが、蜘蛛の子を散らすように我先にと逃げだしたのだ。

 

「え、あ……エトリア!?」

「クレン百葉長……!?」

「ミリエル天使長……!!?」

 

 一部の者、各勢力の筆頭者と親密な関係の者たちにあっては。仲間、友人に上司を見捨てては行けず。

 しかし、超常の存在――侵外に抗うには、無謀すぎるとその本能が警笛を鳴らし。

 

 狼狽え慌てながら。とにかくそれしかできないと、それぞれの友人に上司の元へ駆け寄る姿を見せる。

 

「――完了――」

 

 そんな、周りの騒々しい光景を。「処理終了」の証明と見た後。

 侵外は「作業完了」を確かとする一言を、淡々と静かに発する。

 

 そして絶妙なタイミングで、その完了を飾る様に。

 SAの向こう遠くより、「応援」が。超空隊(警察)や救難救急隊(消防救急)などの到着を告げる。

 いくつものけたたましいサイレンの音が、響き届いた――




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