超空軌道交通管理隊 ―〝異世界サービスエリア〟異常事態、急行せよ―   作:えぴっくにごつ

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臨時8便:「―警告実施 誘導開始―」

「渥美さん、大丈夫ですか?」

 

 渥美に歩み近づき、安否確認の言葉をしかし「決定事項だろう」と言うような色で向けた侵外。

 

「ゴメン、制服一つダメになっちゃった」

 

 そんな侵外に、渥美はまた。今の状況はひとまず置いておくような色で、それよりもそんな事を優先してまず返す。

 

「それなら心配いりませんよ、事務所に予備がありますから」

 

 渥美からのそれに。ここで詳細を言うと、事務所にて装備物品の係を担当する侵外は、そう制服の損傷は問題ない旨を返す。

 

「それよか。あの面々に、お引き取り願いたい所ですが」

 

 そして、その後にようやく主題に戻るように。侵外が背後をチラと見ながら、そんな意見具申の一言を発する。

 

「一言お願いするだけでは、いかなそうなんだよねー」

「やぁれやれだな」

 

 それにしかし返された、渥美の今の状況への推察の言葉を受け。

 また倦怠交じりの言葉を零す侵外。

 

「とりあえず、自分が「やっときます」。それと予備のシャツを今日は持って来てるんで、渥美さんそれ使ってください」

 

 そして侵外は、自分が「やっておく」という旨をまず告げ。

 合わせて、今程のアリュシェンの攻撃を受けたせいで、その上半身を見せつけている渥美に。そう代わりの着替えがある旨を伝え勧める。

 

「あー、ごめんねお願い、シャツも借りちゃうよ。それとついでに管制にはボクから一報しとく」

「願います」

 

 渥美はその侵外からの具申提案に甘え、代わりに管制センターへの通報を行っておく事を返す。

 そんなやり取りを挟んだ後に。

 渥美は場を離れて、巡回車の方へと歩み向かい。

 侵外はそれを少し見送った後に、そこで身を翻して向こうへ向き直り、立ち構える。

 

 そして侵外が直面したのは――無数の殺気。射貫き殺すような視線、そしてオーラの数々。

 

 それは英雄勇者、エルフの戦士、オーガの将軍。

 天使長、鴉天狗。

 そんな名だたる面々に。さらにはそれぞれの伴う仲間、配下従者から向けられ、集められるもの。

 

 強大過ぎる、恐ろし過ぎるそれらの数々に。

 只人が晒されたなら、震え上がり泣き崩れ。命を乞うか、あるいは気を失い。

 気の弱いものはその気配、オーラに晒され当てられただけで絶命したであろう。

 

「何を企む!不穏な行いの気配、最早捨て置けん!」

「理の害となり得る存在、討たせてもらう!」

「気に入らないねぇ――ちょいと、ビビらせてやらないとかねぇっ!」

「この大地に不穏を招く因子――排除せざるを得ません!」

「この我らに、よくも傲岸不遜を貫けるのう――不愉快じゃ」

 

 そしてそれぞれの代表、筆頭者は。立て続けに何か警戒、怒りや不愉快の色を見せ。

 それぞれの意志に心情を、それぞれの様相と言葉で向けてくる。

 

 ただでさえ得体の知れぬ存在である侵外等。それの、己たちに見向きをせずの、何かまた得体の知れぬやり取りを交わす様子に。

 不穏を感じ、いやそれ以上に焦れや苛立ちや不快を感じ。

 彼等彼女等は、最早「排除」に遠慮も手心をいらぬとの考えに至ったのだ。

 

「面倒だな」

 

 しかし、そんな面々からのあらゆる形の、筆舌に難い殺気にオーラに晒されながらも。当の侵外が見せるは。

 引き続きの何でもないような、いや少しの億劫さすらをその顔に見せての。悠々悠然としたまでの自然な姿で立ち構え、零す姿。

 

 そして、直後。

 

「――!?」

「!?」

「!!?」

 

 相対した者に絶望を与え。視線と気配にて、射貫き殺すまでのまでの様相を見せていた面々は。

 しかし直後。「轟き聞こえ始めた」それに一様に目を剥き、身を固くした。

 

 今に彼等彼女等の耳に届き、その鼓膜を揺さぶり。そして何よりその本能を、「歪」さから騒めかせ始めたものの正体。

 

 ――その音は――サイレン。

 

 一定の間隔リズムで、独特の甲高い電子音声を響かせる。緊急自動車に装備される音響装置のそれ。

 発生源は、駐車場の一角。今は侵外の背後の少し向こう置かれる、道路パトロールカー――巡回車だ。

 

 ルーフ上の標識器に搭載する、赤色警光灯と黄色警光灯を煌々と回し灯し。そして併設のスピーカより、サイレンをけたたましく響かせている。

 

 明かせば。

 超空軌道交通管理隊の運用する巡回車に搭載されるサイレンに警光灯は、ただ音を鳴らし光を瞬かせるのみでは無い。

 

 そのサイレンや警光灯機器に組み込まれるは――特殊な威嚇効果を発生する機構。

 それぞれが特定広範囲の存在に、心理的制圧効果が期待できるもの。

 超空へと飛び出した人々が手に入れた、新たな強力な「力」に「技術」。

 

 それが現在。『魔』の力を宿す、この惑星世界の彼等彼女等の。本能からの危機と嫌悪、恐怖を煽り誘っていたのだ。

 

「なんだ……!この音に光は……!」

「何か、心がざわつく……!」

「なんだい……気持ち悪い……!」

「嫌な……感じがします……!」

「っ、我を不快にさせるとは、小賢しい……!」

 

 その効果に、異世界の彼等彼女等の嫌悪恐怖を煽る音に光に。それぞれの勢力の筆頭者を始め、この惑星世界の存在たちは。

 忌々し気に発しながらも。いずれも少なからずの『臆し、及び腰』の色を見せ始める。

 

「――参考連絡。ユトロンSAの接触トラブルは状況好転せず、現在も沈静化に向けて対応継続中。どうぞ――」

 

 そんな最中。その巡回車の助手席側にて、半身を突っ込んで無線機を手にして(実は安全規則上は禁止されている行為)。通信の言葉を紡ぐは渥美。

 

 現在は完成センターへ現状の一報中。サイレンに警光灯の作動は、その渥美が同時に行ったもの。

 そして今は。その朗らかで飄々とした顔を崩さず、通信やり取りを優先している。

 

「――」

 

 その巡回車から零れ届く、渥美の通信の言葉を背後に聞きながら。

 侵外は、自身を包囲する強大過ぎる異界の存在たちを。しかしまた倦怠感の少し宿る、印象の良くないその眼で、視線を向けて回し確認する。

 

 只人など、指先一つで捻ることのできる、不条理までに強大で破格の存在ばかりのそれらが。

 

 しかしその強大な存在の誰もが、今に在っては頬や喉元に一筋の汗を垂らし。

 中央に囲う侵外を、仇敵を見るような険しい顔色で見つめ降ろして来る。

 

 

「――こいよ、SA施設は壊したくない」

 

 

 そんな。自身を囲う、巨大で過ぎる異世界の存在たちに向けて。

 侵外、一言を端的に紡ぎ促した――

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