超空軌道交通管理隊 ―〝異世界サービスエリア〟異常事態、急行せよ―   作:えぴっくにごつ

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臨時9便:「―散乱脅威 全空間より排除―」

「――自分は、ここだ」

 

 微かにだが、構える姿勢を取って見せ。

 そして端的に、しかし向けた相手を貫き崩すさんまでの気配を込めた声での。そう促す言葉を。

 周囲各方の向こうに相対する、名だたる存在たちに向けた侵外。

 

「!、おのれ……、我らを侮るかぁぁっ!!」

 

 それを挑発と受け取り、怒りに火をつけ。真っ先に飛び出し掛かったのは、英雄勇者の少女エトリア。

 

 異質な、心を騒めかせ不安を誘う光源に音響――警光灯にサイレンの現象下で。しかしエトリアは踏みとどまり、力を失いはせず。

 その小柄な体躯に似合わぬ大剣を、しかし悠々と構え。

 一瞬の後には、ほとんど一っ飛びで侵外へと肉薄。侵外の身体を断ち切るべく、瞬くよりも早い動きでその大剣を薙ぎ降ろした――

 

「――え?」

 

 ――しかし。

 そのエトリアは直後に、何か妙な「浮遊感」を感じ。かと思えばその時には、その視界はすでに一転。

 彼女の眼は、「逆さに引っくり返った」天地を。

 そして大剣を振り降ろしたはずの相手――侵外を。しかし宙より眼下の少し向こうに、また逆さに見ていた。

 

「――ぎゃぷ゛っ!?」

 

 そしてエトリアは、その己の状況に原因を認識するよりも前に。

 惑星の重力に引かれて、地面に、駐車場のアスファルトに。脳天からダイレクトに落ちて叩きつけられ、濁った悲鳴を上げた。

 エトリアの、英雄勇者としてその身に魔法の加護を受ける体で無かったら、死んでいたであろう。

 

 そのまま、脳を襲った衝撃で意識を失い。ぐしゃりと地面に崩れ沈んだエトリア。

 

 そして、その向こうを見れば。

 そこには健在の姿で、少し腕を動かし翳しただけの様子を伴い立つ、侵外の姿。

 

 明かそう。

 侵外は、エトリアの襲撃を。襲った大剣の断ち切りを、しかしその刃が届くまさに直前。

 その身を、半歩身を捻って後退させるだけの移動で回避。

 そしてそのまま、その「片手」によって大剣を白刃取りのそれで止めて捕まえ。大剣ごと、エトリアを背後の宙空へと「ぶん投げた」のだ。

 

「――一つ目、ヨシッ」

 

 そして、まずは一つ目の脅威の「排除」完了の旨を。まるで崩れぬ淡々とした色に言葉で張り上げた侵外。

 

「エトリア!?っ……おのれぇっ!」

 

 そんな侵外に、次に牙を剥いたのはハイエルフのクレンだ。

 

 魔法国家と亜人同盟は微妙な関係であるのだが。エトリアとクレン本人たちにあっては、良き友でありまたライバルである仲。

 そんな友が飛び出し、それを見てすぐさま続き援護に動いていたクレンは。しかし、その友の退けられて沈められた姿を今に見せられ。

 怒り、そしてその仇を討たんと。『魔導魔術』を発動する腕を振るい、それにより生み出した『風魔法』を向け放った。

 

 侵外に向けて放たれたのは、魔法により生み出された無数の『風の刃』。

 それが仇敵を切り刻まんと、侵外に群れを成して迫る――

 

 ――だが。

 

 その風の刃が届き、侵外の身を裂かんとする直前。

 立ち構える侵外が、また端的な動きで繰り出したのは――〝旗〟。

 

 〝交通管理旗〟と呼ばれる、蛍光色の旗。管理隊を代表する基本装備の一つ。

 さらには、管理隊が超空に進出しての任務業務を担うようになってからは。危険脅威に立ち向かうべく、簡易な〝重力操作機構〟を内装したそれ。

 

 侵外が持ち備えていた、そんな飛び道具にも程があるそれが薙ぎ繰り出され。そして生み出されたのは、〝重力変動効果〟。

 その効果を伴う、侵外の旗の一撫では。

 迫り襲った風魔法による刃の群れを、見事に容易く。まるで猛牛をいなす闘牛士のように、軽やかに流し反らして明後日の方向へと退けた。

 

「な、え……!?――ふぷぁっ!?」

 

 そしてさらに風の刃を退けた流れの動きで、大きく薙ぎ上げて払われた旗は。同時にその重力変動効果で一種の衝撃派を生み。

 それはお返しのように、己の魔法を退けられ驚愕していたクレンへ飛び、直撃。

 そのクレンを見事に吹っ飛ばし、向こうの地面へと投げ出した。

 

「さらにヨシッ」

 

 それを、薙いだ旗を戻し控える動きを見せつつ見止め。また喚呼確認の声を零す侵外。

 

「――ニンゲン如きが、調子にのるんじゃないよぉぉっ!!」

 

 そんな侵外に。しかし間髪いれずにさらなる襲撃が迫る。

 側方背後に踏み込み現れ、襲い掛かって来たのはオーガの将軍のレスティ。

 

 得物の巨斧が、そのオーガ自慢の腕っぷしで振り上げられ。次にはそれは何の遠慮も容赦も無く、侵外に向けて叩き降ろされた。

 

「――え?」

 

 だが、パシ――と。

 何か気の抜ける程の、簡単な音が響いたのは直後。

 そして同時に上がったのは、ここまでの獰猛な色とは正反対の、レスティの呆けた声。

 

「は……――なっ!?」

 

 そしてしかし、数秒後に。レスティはその音の正体、己の身に起きた自体を把握し、そして驚愕にその顔を染めた。

 

 降り降ろしたはずの巨斧、それを支える彼女の強靭な腕っぷしは――侵外の片手に「捕まえられ」、動きを封じられていたのだ。

 

「なぁ……!?この……なん……っ!?」

 

 驚愕に顔を染めつつも、次にはその己の手を捕まえ止める侵外を押して崩さんと。さらにその腕っぷしに力を込めるレスティだが。

 いくらその腕に力を籠め、藻掻き、抵抗を試みようとも。レスティのその自慢の強靭な腕っぷしは、しかしびくともしない。

 

「――え?――ぎゃぐぇっ!?」

 

 そして、「じゃれつき」に構っている暇は無いとでも言うように。

 

 グル――と、レスティの視界の天地が引っくり返ったのは直後。

 そしてそれも一瞬。次にはレスティの体を、衝撃と鈍痛が襲った。

 

 レスティは、駐車場のアスファルトに叩きつけられていた。

 侵外の片腕が彼女を「捻り」。彼女のその巨体をしかし易々と持ち上げ、そして地面に思いっきり叩きつけたのだ。

 

「ぃげっ……――ぎゃっ!?ぎゃぶっ!げぇっ!?」

 

 そしてそれは、一度切りに留まらない。

 侵外は、レスティの体を強靭なものと判断してか。念入りに、何度も反復動作で地面に叩きつける。

 

 持ち上げ、叩きつけ、ぶん回し、叩きつけ。

 レスティの強靭なオーガに肉体を、しかしまるで人形を無邪気に扱う子供のように。

 拉げ、壊し、〝ぶち叩く〟。

 

「ぎゃぷ゛ぇぁっ!?」

 

 そして最後に、止めのそれである叩きつけによって。レスティは頭部顔面を半分以上、地面に突っ込み埋め。

 侵外がそこで、まるで飽きたように手を放したことにより。レスティはようやく解放され。

 しかしその時にはレスティはすでに気絶しており。その恐るべきまでの強靭なオーガの肉体を、しかしくにゃりと崩して、地面に様にならない姿で沈んだ。

 

「――デカブツだな」

 

 そんな、気絶して地面に埋まり沈んだレスティを見下ろし。

 「排除」対象の大きさをそう表現しつつ、しかしあまり興味は無さそうな一声だけを零した侵外。

 

「――最早明確な脅威……凶悪な存在と見なさざるを得ません……――排除します!」

 

 そんな侵外の元へ、頭上上空の向こうより声が届いたのは直後。

 上空の一点、そこに滞空する形で見えたのは、天使長のミリエル。

 その彼女が見せるは、巨大な弓を構える姿。そしてそれに番え引かれるのは、長大な『光の矢』。

 邪悪な存在の『浄化』を成し得る、天界の使徒が扱う得物。

 

 それがミリエルの透る声での宣告が、発し降ろされると同時に。侵外を標的として撃ち放たれ。

 その光で形成される見た目に違わぬ、光の如きの速さで侵外へと襲い迫った。

 

 ――ハシッ、と。

 

 だが、何か小さな。なんでもないような一音が上がったのは直後。

 

「はぇ?」

 

 それに、そして見えた光景に。気の抜けた素っ頓狂な声を漏らしたのはミリエル。

 その原因は、眼下にある。

 

 また悠然と立ち構える侵外が。各作業用の特殊手袋を装着したその片手にて――光の矢を掴み捕まえた姿がそこにあった。

 

「――返す」

 

 そんな様相を侵外が見せたのも、わずか。直後には侵外は、わずかな予備動作のみを伴い見せ。

 そして捕まえ止めた光の矢を、槍投げを思わせる動きで。おもいっきり、ぶん投げてミリエル目掛けて投げ返した。

 

「ふぇ?――はびぇゃっ!?」

 

 あまりの驚愕から、その動きに諸々への理解も追いつかぬまま。

 また呆けた声を上げてしまったミリエルは、次には「お返し」された光の矢の直撃を受け。

 光の爆発に包まれ、その内より悲鳴を届ける。

 

 そして数秒の後、その光の爆発が晴れて止むと同時。気絶し、宙空を蚊トンボのように真っ逆さまに墜ちて行くミリエルが見えた。

 

「撃墜」

 

 それを目視確認しつつ。

 侵外は今度は、管理隊業務ではあまり口にすることのない、そんな喚呼の一言を零した。

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