隠岐紅音ちゃんの初恋の人たる従兄の”あなた”は、ひょんなことから彼女の村へと遠路はるばるやってきました。
どうやら彼女は、あなたに大事な話があるようです。
あなたの台詞はありませんので、各自脳内補完してください。
『初恋の相手は既婚の従兄』という原作設定は撤回された。
他タイトルにおけるオリキャラ夢女の解像度を高めるべく自分でも少し書くことを試みたところ、閲覧者をローグライク・オリ主に仕立てあげるという天才的発想に至ったのでこうなりました。新しいオリ主の設定考えるのが面倒とか、そんなことはありません、トラストミー。
……というわけで紅音ちゃんにタメ口を叩かれる従兄たる”あなた”はお前です。
お前が屈強なオスになるんだよ(人類補漢計画)
あなたが高校生になってから最初の夏休み、その週末。
家族から借りた
16歳になる年度から取得出来るとはいえ高校あるいは大学卒業後に免許を取る若者が多数の中、せっかちに行動範囲を広げたがっていたあなたは中学時代からコツコツとバイトで教習所をはじめとした各種費用を計画的に貯蓄し、三ヶ月前に念願を叶えたのです。*2
『じゃあ夏休みになったら遊びに来て! ぜったい全国大会出るから見にきて! 叔母さんっ、良いですよね!?』
直後に口の軽い家族から田舎の親戚にまで伝わったらしく、二つ下の従妹から招待されたのが今回のドライブ旅行のきっかけでした。
『辺鄙な』という形容が見合う限界集落手前な目的地の村へは、本来なら新幹線で最寄り駅まで行き交通機関を伴いつつ送迎を頼るのがベターでした。
しかしながら従妹の希望と周囲の不自然なまでに強い勧めによってあなたは自家用車で、それも一人で向かう羽目になったのです。
仕事がある彼女のご両親に代わって大会当日の送迎と競技のサポートをトレーナーの卵として担う……というのが、一応の建前となっています。
良くも悪くも大雑把な気質のあなたは深く考えることをしないため、交通費にお土産代にと多めにお小遣いを貰ったためよしとしました。
基本的に落ち着きがないあなたは高速道路の運転も慣れたものとヒヨッコのくせにタカをくくっていたものの、初めての長距離運転により想像以上の疲労を覚え細かな休憩を挟む重要性を学びました。
『どこまできたの?』
『まだ?』
『はやくー』
あなたはめっちゃ
……そうこうしつつ最後の峠も越え、目的地の親戚宅に到着しました。駐車を済ませたところで音に気付いたのでしょう、玄関から出てきた叔母に出迎えられました。
「いらっしゃい! 朝からずっと運転で疲れたでしょ?」
ゼロシュガーコーラで糖分を補給してすっかり元気なあなたでしたが、気使いを無下にしないよう適当に合わせつつ家に上がらせて貰った。
普段自宅からはしない匂い。公務員向けらしいその借家の、日本の伝統を感じさせる木材の香りがあなたは嫌いではありませんでした。
トッ……トッ……
……と、あなたの耳は微かな足音を拾いましたが、頭はストライキ中のようで見向きもしません。視線は居間のテーブル中央に安置された菓子桶のお饅頭に釘付けです。
脳髄に刺さるような甘い匂いを感じた時には、完全に手遅れでした。
「お
荷物を下ろして一息ついたタイミングでかけられたその快活な声に振り返ろうとしましたが、そんな間もなく声の主は柔らかな肉感を起点にポスッと身体をぶつけてきました。
「おかえりっ!」
背から腕を回して離すまいとするそれは、あなたが幼少の頃から馴染んでいる二歳下の従妹によるいつものアクションです。
彼女────隠岐紅音が物心ついた時から続く再会の挨拶でした。
いつもながら厚い雲から陽が射すような、人を前向きにする声だと思いつつ……あなたは『ただいま』と応え、軽く身体を揺すって自分より二回り小さい彼女を振り回して遊びました。
あなたは良くも悪くも大雑把です。紅音ちゃんの言動や意図についても、深く考えることをしません。
◇ ◇ ◇
あなたは今回、自宅から隠岐家にVRデバイス一式を適当なソフトも合わせて持参して来ました。あなた自身としては置いてきても良かったのですが、紅音ちゃんのご両親からお願いされたためです。
陸上アスリートとしてメキメキと頭角を顕してきた彼女へのプレゼントを奮発しようとしているようで、具体的に何を与えれば喜ぶのかリサーチ中なのだとか。
「おにいっ! これ欲しい!」
あなたが美少女格闘ゲームをオススメした際のジトっとした目付きは影ほどもなく、
1時間ほど自室で遊んでからVRゴーグルを手に居間に来てそうのたまった彼女に、ご両親は意を決したようです。肩を寄せ合いタブレットに映る数字とにらめっこを開始しました。
ちなみに彼女がプレイしていたのは『インフェルニティ・ネキ』という、オシャレに命を懸ける主人公がファッションの未来とついでに終末を迎えつつある世界を救う高難易度アクションゲーム……いわゆる
「スンスン…………あうっ」
あなたのVRゴーグルに鼻を押し当てる彼女を
「ううん、続きは夜にする! それより一緒に走りに行こっ!」
頭頂部のハネた髪の毛が意志を持っているようにピクピク動いて見えるのは、きっと錯覚ではありません。
それはさておき、運転で長時間座ったままだったあなたとしても彼女の提案は嬉しいものでした。親戚とはいえ客人という立場からの遠慮と、土地勘が無く一人で遠くまで行けない不安感があったのです。
今は夕方ですが、一人で行けば戻る頃に暗くなって道が分からなくなる自分の姿が目に浮かぶようでした。
「へへー! やったぁ」
言うやいなや、上下半袖の部屋着姿のまま元気に飛び出した彼女に対し貴方はTシャツにジーパン姿でいいものかと数瞬考えましたが、どの道洗濯物になるのだから良いかと結論付けて紅音ちゃんの小さな背中を追い掛けました。
……ところで大半の世界線の”あなた”はご存知かと思われますが、ご存知でない”あなた”のために少しだけ隠岐紅音ちゃんについてお話します。
彼女は陸上部所属の女子中学生で、
さて、そんな彼女にあなたは走りで追いつけるのかというと……
「ぜぇ……ぜぇ……! お、おにい……っ!」
もちろん追い抜くことが出来ました。
中距離以上であれば、あなたは同学年の陸上部のほとんどを上回る走力とスタミナを有しています。特に800m走に関しては一定以上の自負があり、一本あたり三分を切るペースで毎日十二本走っていることに加えて本気で走ると二分を切る事が出来るタフガイです。
繰り返しになりますが”あなた”は屈強な男です。そのためバック走で紅音ちゃんの様子を伺いつつもペースを乱さず、途中で後頭部をぶつけタンコブを作っても涙ひとつ見せていません。
「ふぅ……もー! ペース上げすぎ!」
彼女の限界を見定め自動販売機が設置された役場前にて立ち止まったあなたは怒りの体当たりを見舞われました。効果はいまひとつのようです。
飲み物を献上してご機嫌を取ろうと試みたあなたでしたが、現在は後ろから胴に手を回され背に頭突きを繰り返されています。
押し付けられた柔らかな感触越しに心臓の早鐘が伝わってきて、プンスコといった擬音が聞こえてくるようです。
甘噛みされていた時期もあったと懐かしがりつつ、『暑いからそろそろ離れて欲しい』『もう少しこのモチモチを堪能したい』と振り子のように心が揺れているあなたはどうしたものかと悩んでいると
「あらあら、紅音ちゃん?」
「あ、村長さん! こんばんは!」
「こんばんは。……そちらの彼は?」
「はい! 私の
あなたの脇から顔を出して言った彼女の言葉に対し『具体的には
2本の杖を手にノルディック・ウォーキング中らしい初老の女性は、あなたと紅音ちゃんの顔を交互に見やり……ウフフ、と控えめに笑います。
「お兄さんはどちらからいらしたの? しばらくこちらに? …………それはそれは。若い子には村は退屈でしょうけど、ゆっくりしていってくださいね。では、邪魔にならないうちにおばあちゃんはお暇しますわ…………頑張ってね」
「……えへへ。はいっ!」
地元民同士で何を以心伝心したのかあなたには分かりませんでしたが、とりあえず紅音ちゃんのお怒りモードは解消されたようでした。頭頂部のハネっ毛がくりんっくりんっとしています。
……ただ、あなたの目にその村長さんは口から生まれてきたようなおしゃべりさんに映っていただけに、少し肩透かしを食らったような心地でした。
「おにい、そろそろ戻ろっ!」
言われてみれば結構な距離を走った末に空は紫色になっていました。あなたの辞書に”限界”、”ガス欠”、”満身創痍”などの記載が無いせいで今更気付いたのです。
……と、あなたが少し空を見上げていた隙に、紅音ちゃんはあなたの手を取り五本の指を絡ませていました。
手を繋がれることは想定していたものの、ここまで密接な形には虚をつかれたため視線を落としたところ
「むふー!」
その左右対称なしたり顔にすっかり毒気を抜かれてしまいました。
アホ毛で頬をペチペチされながらもどうか気を落とさないで、彼女が強かなのです。
それはそれとしてあなたは馴染みの従妹にとっっっても甘いため、紅音ちゃんが嬉しそうにしていればそれだけで良しとしてしまいがちですが。
「ねっ、インフェルニティ・ネキなんだけど、チュートリアルのボス倒すまで一時間かかっちゃった!」
「おにいって、あの格闘ゲームのパッケージみたいな胸の大きな子が好きなの? …………エッチ。……フフ」
「あのね! この辺り、人が少ないから同級生の数も街の学校より少なくって! まだ彼氏とかいたことなくて……おにいも、そういうのは? …………! そうなんだ! うん、うん……っ! ……やった」
取り留めのない会話をしつつ、あなた達は帰路につきました。
そんな中であなたは、こちらに来る前から気になっていたあることを尋ねました。
というのも、あなたがVRデバイスを持参するにあたり、今春発売後から『神ゲーを超えた神ゲー』という評価を欲しいままにしている”シャングリラ・フロンティア”も勿論のこと持参しようとしました。
しかし紅音ちゃんからシャンフロに関しては『持ってこないで!』と言われたため置いてきたのです。
「デバイスもソフトもないのにハマっちゃったら困るから……それにシャンフロやるならおにいと一緒に遊びたいっ!」
青黒い空の下に夕日を幻視するような笑顔と共に語られたその理由にあなたは納得しました。
VRデバイスに関しては近日中にどうにかなるとしても、ソフトの方はいつ手に入るかわかったものではありません。
あまりの人気からパッケージ版はおろかDL版すら抽選販売が行われる程に需給バランスが崩れており、神ゲー故に中古も滅多に出回らない始末です。
また販売元のフロンティア社、ならびに開発元の
ついでに定価だと単純に高額なため、お小遣いの少ない彼女ではおいそれと手が出せない点も無視できません。
「うーん……時々ご近所の農家さんの野菜の仕分けとか、椎茸の菌を原木に打ち込む内職とかでお駄賃貰ってるけど……うん」
都会っ子のあなたには後者がどんな作業なのかピンと来ませんでしたが、紅音ちゃんのお小遣い事情は推して測るべきでしょう。あなたの飲みさしであるスポーツドリンクを我が物顔で口にしている彼女を咎めることはしませんでした。
「!! ねっ、あそこまで競走しよっ! 負けた方は奢りね!」
潰したペットボトルをあなたのポケットに押し込みながら、紅音ちゃんは少し先を指差しました。
そこには往路で通り過ぎた小さな商店がありました。年季の入った田舎のコンビニとでも言うような風情でバス停も近くにあります。
そしてあなたはこう思いました、『こいつ謀ったな』と。
……勘のいい”あなた”なら既にお気づきでしょう。指差せばすぐにピンと来て、街灯が少なく月明かりが主たる光源という状況下で店の周囲まで見て取れる程度に近い……おおよそ100から200メートルの距離にその商店はあるのです。
「────よーい、ドン!!」
紅音ちゃんが望んだその瞬間から、あなたに競争を受けないという選択肢はありませんでした。
さながら反り返った弓から放たれた矢のように、瞬く間に彼女はトップスピードに到達しました。直前まで隣に立っていたとは、あなたはとても思えませんでした。
……さて、あなたは走ることが本職の女子中学生にタフネスで黒星を既につけている上に、中距離以上のフィールドにおいては大半の高校男子陸上部員を見下せるほど卓越した走力を有しています。
では『短距離』は?
あなたは基礎体力においてありとあらゆる数値が優れており、短距離走の記録も優れています……が、それはスプリンターに準ずる程度です。
陸上競技では才能と努力について界隈で議論されることが多く、中・長距離走に関しては選手の努力の比重が高いとされています。
一方の短距離走、なかでも100メートル走は
才能の面では膝関節の柔らかさ、足の指の長さ、筋線維の種類とその比率。主にこの三点がスプリンターとして大成するか否かを左右するとされています。
そして感覚の面では身体性能をしっかり機能させ、地面を捉え、最高率でスピードに転化すること。それは俗に
……あなたは一所懸命に脚腰を躍動させ駆けたものの、後ろに束ねられ大きく揺れる髪と小さな背との距離は縮まりませんでした。
「フ、フ……ハッ! 私の勝ちッ!!」
小柄な紅音ちゃんよりも重量差から制動距離を要したあなたは、彼女に奢ってやろうという魂胆は断じて抱いていませんでした。
だからでしょうか、振り返った先の満面の笑みが、あなたにはより一層眩く映りました。
「先に入ってるねー。……こんばんはっ!」
背筋が凍るような走りを見せた彼女は、全力を尽くした証左に膝がケタケタと笑っているあなたをおいてルンルン気分で入店していきました。
彼女のご両親ほどではないにせよ、ちょっとした出費を強いられる未来を既に確信していました。
……少し先のことより、とりあえず目先の心配をしようとあなたは気持ちを切り替えました。紅音ちゃんは遠慮が出来る良い子ですが、あなたのお財布であれば迷わず1個300〜400円する庶民向け高級アイスに手を伸ばす一面があるのです。
◇ ◇ ◇
近代テクノロジー革命を経た現代においても現金決済オンリーを貫く店主の姿勢に、あなたは一周まわって感動を覚えました。
紅音ちゃんのご両親の分も含めた分のアイスのお会計をしてもらおうとしたタイミングで、既に紙袋に入れられ中身が見えなくされた何かがあったため気になりました。あなたは何の気なしに尋ねたところ
「えっ!?!? そ、そのっ……………………あうぅ」
耳まで真っ赤にした紅音ちゃんは口元を隠すだけで何も言わなくなり……それを見かねたらしい店主にデリカシーを説かれたことであなたは大方察しました。
あなたは自らの愚かさを受け入れ今後に活かせる謙虚さを有しています。自らに縁が一生ない異性の事情について、ハネとか漏れないとかいうテレビCMの販促を聞き流している程度でしかない無知を素直に受け止め頭を下げました。
二人は何か言いたげでしたが、歯を食いしばるように何も口にしませんでした。
閑話休題。
隠岐家に戻りお風呂とお夕飯を済ませたあなたは、肉厚シイタケの塩焼きの名残を口中に感じつつ紅音ちゃんの部屋にてくつろいでいました。あなたは彼女の陸上競技選手権が終わるまでの間はこちらで夏休みを過ごすのですが、それはそうとこの部屋で寝起きすることになるとは想定していませんでした。
あなたは大雑把ですがこの状況を問題と思わないほど常識知らずではありません。こんなことが許されていいのでしょうか。
「いいでしょ?」
他でもない部屋の主によって許されたので『ならいいか』となりました。
気を取り直してあなたは漫画でも読もうとタブレットを取り出し、壁を背に胡坐をかきました。
「あっ、私も読みたい! んー……これがいい!」
そういって紅音ちゃんはあなたの上に腰かけ身体を預けて来ました。直前にあなたが使ったものと同じシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐります。
あなたの膝の上は幼い頃から彼女の席です。本を読んでもらうときやテレビを見るとき、また親戚の集まりで座布団が足りないときも決まって我が物と主張してきました。
中学生になってからはさすがの彼女も恥ずかしいのか人前でやらなくなりましたが、今のように人目がなければ積極的に陣取ってくるのです。
「読むのはやいー」
あなたはタブレットを操作する指を何度か制された末、彼女が読み進めるペース……あるいは呼吸をすっかり掌握しました。
「おにいの一個ちょうだい?」
あなたは少しためらいましたが、モチモチ大福アイスの二個あるうちの一つにピンを刺して差し出します。
「あー、んっ……おいしい」
手に取るつもりは微塵もないらしい彼女の小さな口にムイっと押し当てると柔らかな唇が波打ち、少しずつついばむように減らしていきます。愛玩動物の餌付けみたいだとあなたは思いました。
「もう一個ちょうだ……むー」
とんでもないことを言う彼女をあなたは無視し、ずんだ餅風味のアイスをペロリと一口で平らげました。
口の中が空いたところで、あなたは明後日から四日間にかけて行われる陸上全国大会について尋ねました。送迎と応援、そして練習やウォームアップの補助を行うのは一向に問題ありませんが、当日の流れ等を多少なりとも聞いておきたいのです。
「明日が開会式で、私が出る100m走は3日目に予選で4日目に決勝だよ! 決勝には友達も来る……というか一緒に行くからおにいの車に乗せてね?」
若葉マークのあなたは見ず知らずのお子さんの命を預かることになる事実に震えました。現代では自動車による事故率は限りなく低くなったものの、決してゼロではないことを教習所では繰り返し指導されるのです。
また紅音ちゃんはよほどタイムが下ブレない限りは決勝に進出できる実力であるため、それはすでに決定事項と言っても過言ではないため、あなたは下見運転の計画を立て始めました。
「…………ね、おにい。お願いがあるんだけど、いい?」
マップアプリを使って紅音ちゃんの同級生を車で拾う集合地点を含めたルートを彼女と確認し終えたところで、似合わないほど落ち着いた声であなたに尋ねてきました。俯いているため表情は伺えませんが、太陽が落ちるとパワーダウンするのかとさえ思いました。
「あのね……決勝なんだけど、自己ベ更新出来ないとたぶん優勝出来ないの。だから、優勝できた時の”ご褒美”……
今にも泣き出しそうな震えた声でしたが、それに対してあなたは『そんなことか』と肩を落としました。
あなたは幼い頃から何かと彼女の望みを叶えてきました。直近でも同じアスリートとしてトレーニングメニューの調整や、五輪の陸上選手のフォームの研究に付き合うなどしてきました。
あなたはそれらを当然のことと考えています。
『おそとであそびたい』
幼い頃。まだ酷く虚弱であった彼女自身が叶わぬ思っていた願いを、あなたは強行して見せました。
あなたは彼女とは対照的に生まれながらに強い存在でした。
だからこそ真夏の空の下で彼女を背負い手足が棒になっても弱音を吐かず、飲水の全てを彼女に与え熱中症寸前になっても不屈を示しました。
強者とはそういうものだと自分を追い込み意地を貫き、苦境は越えられるのだと手本を見せました。
幼いながらにそうすべきとしたのです。
あなたはそれが
彼女が己に勝つにあたり必要だと言うのなら、そこに迷いも躊躇いもありませんでした。
「…………っ!! い、いいの? なんでもっ、本当に!? ホントのホントに
あなたに二言を弄する話術はありません。
……とは言え自分に用意できる範疇に限るのとあまりに
「大丈夫! お金はかからないし、おにいにしか出来ないことだから!」
あなたにはそれが何であるのか皆目見当がつきませんでしたが、ならばよしとして就寝準備に取り掛かりました。
「ぜったいっ、ぜったいだからね!」
明日は早起きしなければならないため、興奮冷めやらぬ様子の紅音ちゃんを抱きかかえ無理矢理お布団へと寝かしつけました。
……今は知り得ないことですが、彼女にとってあなたは極星のような
彼女は『諦める』ということを知りません。
彼女はあなたを含め誰よりも速く駆けることができます。
故に彼女の手は、彼方の星へも届きます。
『”あなた”をください』と。
願いは叶う、彼女は決して疑いませんでした。
”あなた”のバックボーンがどこかのオリ主に似てる気がしたとしても気のせいです、エセ関西弁の巨漢が脳裏にチラついたあなたは疲れています。
次回、紅音ちゃん視点に続きません。