仮面ライダーガヴ Decoration G3 作:ただの人間
アギト-超能力戦争-公開を記念して!
まさか令和の世に新しいGenerationシステムが出てきてメインを張るとは…!この小説を書いた時点ではマジで思ってなかったが、いいタイミングでしたね
「み、味川さん!?」
氷室の目の前で己を庇ったG3-P、味川が舌のような器官に巻かれると同時、その姿を瞬間的に縮めて地に落ちる。
人知を超えた怪物と互角に渡り合っていた戦士の結末としては呆気のない幕切れであった。
強化スーツを装着していて尚、怪物の未知の攻撃に対処が出来ない。
カラリと転がったその姿はまるでその状態で時が止まってしまったかのようだった。
氷室にはそれが先ほど拾った人物と同じ状態だと直ぐに分かった。
「あ?」
しかしこれは怪物にとっても予想外のことだったらしく一瞬呆けたように動きを止める。そして目の前の現象を理解して次第に笑い声を上げる。
「ふっ、ふへへへへっ。何だよ。俺らと戦えるからってちょっとばかしビビってたが、普通にヒトプレスに出来るんじゃねえか。最初っからそうしとけば良かったぜ」
圧倒的に優位に立ったグラニュートが愉快そうに手を叩く。
ヒトプレスと化してしまった味川を拾って、その功績を確かめるように空に掲げてかざす。
「そ、そんな…。味川さん。お、俺のせいで……」
最早脅威は去ったとばかりに余裕を取り戻したグラニュートとは対照的に、氷室は失意から立ち直れていなかった。
自分が下手に現場に戻ったせいで優位に立ち回っていた味川の足手まといになってしまった。怪物の言葉からすると人を捕獲する攻撃は自分を庇ったばかりに通用すると気づかせてしまった。
あのまま自分が戻らなければあの攻撃が有効と気づかせずに倒すことが出来たのではないか。自分なんかを庇わなければ味川はこの怪物に勝てたのではないか。
その考えがぐるぐると巡り心を軋ませる。
『駄目!氷室くん!いいから逃げなさい!』
通信機越しに悲鳴のような声が届くが、それより前にグラニュートが氷室の前でこれ見よがしに味川のヒトプレスを掲げて嘲るような声を出す。
「そこの人間。感謝するぜえ?お前のお陰で面倒なこいつをヒトプレスに出来たんだからよ」
「あ、ああ……」
「へっへっへ、ヒトプレスにするなら幸せな所を狙わなきゃいけねえが……。ま、今回ばかりは仕方ねえよな。ビビってても多少は足しになるだろ」
わざわざ屈んでまで煽る様からは、ただ生体の違いを超えた悪辣さが滲み出ていた。
最早氷室に関しては脅威にも感じていないのだろう。彼をよそに顎に手を当てて考え事をする始末だ。
「しっかし、この妙な装甲のせいで顔が分かんねえな。これじゃ品質もどうだか。それに復活されても困るしな…。勿体ねえが、ここで殺しても……」
そう言って、グラニュートが味川のヒトプレスをまるでビスケットでも割るかのように力を込める。
「や、やめろっ!」
「おっと。危ねえ危ねえ」
氷室は咄嗟にその行動を阻止すべく飛びかかる。しかしそれを予期していたのか、グラニュートはひょいと後方に避ける。
「ふーっ!ふーっ…!」
「おいおい、さっきの見ただろ?あの妙な装甲でも俺には勝てねえんだ」
氷室はGS-03〈デストロイヤー〉を拾い上げると闘志の籠った瞳でグラニュートを睨みつける。その様子を理解できないとばかりに鼻で嗤うグラニュート。
『冷静になりなさい!逃げるのよ!』
「う、うおおおおおおおおぉぉぉ!!」
GS-03〈デストロイヤー〉が唸りを上げてブレードを振動させる。迸る闘志そのままに駆ける氷室に対して、グラニュートは面倒臭そうに一瞥するだけだった。
「ちっ、流石に長居しすぎたか?仲間もさっさと潰さないと俺等の存在がバレちまう」
迫る氷室をまるで何とも思っていないかのように、心配するのは後のことばかり。
だからこそ、異常に気づけなかった。
「おおおおおおおおっっ!!」
「ぎゃあぁっ!??」
完全に油断しきった所に不意の一撃。人間の膂力のままではあるもののGS-03〈デストロイヤー〉は超高周波振動により鉄骨ですら両断できる切れ味を誇っている。
不意打ちの様な形でそれを受けたグラニュートは驚愕と共に倒れ伏す。
「はっ…はっ…!味川さん…!」
咄嗟に顔を抑えて転げ回るグラニュート。その隙に乗じて手放された味川のヒトプレスを確保する。
その安否を確かめるとほっと破顔した氷室はすかさずGS-03〈デストロイヤー〉でヒトプレスの帯を斬り裂く。
「…うっ…!……これは、どういう…?」
解放された味川が戸惑いながらも己の体を確かめる。
「味川さん…!あなたはあの怪物の舌に巻かれて縮んでしまっていたんです。幸い帯を切断すれば解放されるようですが……。その様子だと、記憶は…」
「ええ。巻き付かれたと思ったら……」
「すみません。僕がいたばっかりに…」
「そんな。現に私を助けてくれたじゃないですか。…それに、荒唐無稽な怪物の噂を信じて、こうして共に戦ってくれる。それだけで百人力です」
「味川さん…」
二人が言葉を交わす合間に回復したのか、ヨロヨロとグラニュートが立ち上がる。
しかしその様子に先ほどの余裕は消え去り、むしろ焦燥と驚きに支配されているようであった。
「そ、そんな馬鹿な…!何故ヒトプレスにならねえ…!まさかお前もグラニュートなのか…!?」
「……氷室さん?」
「え?……っていやいや!僕は人間ですって!ほらっ!お腹!何にも無いでしょう!?」
グラニュートの言葉に訝しんだ味川の視線に慌てながらも服をめくって素肌をさらす。そこには目の前のグラニュートのような口はなく、ほどよく鍛えられた腹部と臍があるだけだった。
「クソ…!どうなってやがる…!改造の失敗。いや、故障か…?巫山戯るなよ。そうなったら俺はヒトプレスを集めることが…!そうなったら闇菓子集めはどうなる…!?俺の評価は…!」
認められないとばかりに頭を掻き毟るその姿は一種の狂気を感じられる。
「これも全てお前らのせいだ…!殺してやる…!殺してやるぞ…!」
「氷室さん。下がって」
「は、はい。これを…」
「GS-03…!」
「まだ3分は使える筈です。ご武運を…!」
そう言って氷室は離脱していく。それを逃さんとグラニュートが攻撃を仕掛けるも、そんな見え見えの行動妨害するのは容易かった。
「この野郎…!くそっ!殺す!殺してやる!俺の邪魔しやがって!!」
「ぐっ…!」
グラニュートも意地になったのかなりふり構わず体を振り回す。一見幼稚なその行動も人外の膂力で行われれば脅威になる。
しかし、亀のように耐えながらも視線だけは外さない。こうまでムキになった行動はいつか何処かで破綻する。
「クソックソッ!……クッソがぁーッ!!!」
「そこっ!」
大振りのスレッジハンマー。がら空きの胴体にタックルをし、しがみつくようにして引き倒す。
直後、パワーアシストに任せた筋力で頭部を地面に押し付けて引きずり回す。
「うおおおおおぉぉぉっ…!」
「ぐぉぉぉぉぉっっ…!?」
放り投げられたのは、何処かの廃倉庫。
グラニュートが活動しやすい場所を選んでいたのだろう。既にそこは人の気配がなかった。
「ぐあっ…!」
ドラム缶に投げられ息を漏らすグラニュートを他所に、味川は何処か既視感を覚えていた。
(あの時と似ている……)
かつて、自分がこの世界の怪人と初めて出くわした日。あの時もこの様な廃倉庫で相対した筈だ。そして、奮戦虚しく8人の同僚を喪った。
しかし、今回は違う。
空は晴れ、G3-Pを装着し、自身がここまで追い詰めた。
「ちくしょう…!」
「ハァッ!」
負けじとグラニュートも殴りかかるが、肩で流されGS-03〈デストロイヤー〉が一閃。散る火花。
両断することは敵わなかったが、それでとこれまでにない有効打。怯むグラニュートに構わず次々と斬撃を繰り出していく。
「せやぁぁっっ!」
「ぐぎゃっ!?」
大きく払った一撃によってグラニュートは悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。
如何に装甲を纏っているとはいえ、味川自身はただの人間。疲れもすれば衝撃によるダメージも蓄積されていく。
既に息は切らしていたが、ゆらゆらと立ち昇る闘気は衰えることはない。
「ひっ…!な、何なんだよお前たちは…!人間のくせに…!」
「ああ、そうだ。そうやって見下している人間に、お前は倒されるんだ」
「くっ……!ふう…!ふうっ…!」
「………最後通告だ。今全てを白状して、二度と人間に危害を成さず、闇菓子とやらを諦め、今後罪を償うというのならば命までは奪わない。……投降を、勧める」
構えるG3-Pに気圧されたのか、グラニュートは及び腰でたじろぐ。しかしその問が気に入らなかったのか恐慌しながらもなりふり構わず走る。
「闇菓子を諦めて罪を償えだぁ…?そんなこと、出来るわけねえだろうがっ!」
「……そうか」
静かに。怒気を隠さずに味川は腕に渾身の力を込める。
迎え撃つ姿勢だろう。待ち構えるG3-Pを見てグラニュートはほくそ笑む。
「馬鹿が!」
不意打ち気味に腹から舌を延ばしてG3-Pを取り囲む。
グラニュートは恐慌状態に陥って、視野の狭まった思考で考えた。あの人間はヒトプレスにできなかったが、目の前の存在はヒトプレスに出来た。
自身の機能を疑っている存在が頼る一手ではなかったものの、それでもグラニュートは暗い勝利の喜びを見つけたのだ。
「ふっ!」
「がっ…!?」
しかし、それは既に何度も見ている。1度目は無力な警察時代。2度目は映像越しに。3度目は庇う形で自ら食らった。
ならば、そのタイミングはある程度は読むことが出来る。
体を前方に転がしてそれを躱すや返す刀で伸び切った舌を叩き斬る。
いくら巻き付くことができれば終わりの
「う、うおおぉぉぉぉっっ!?く、来るんじゃねえっ!」
「はあぁぁぁぁぁっ…!!」
片膝立ちから駆けるG3-Pは、迫る舌のような器官を次々と斬り伏せながら勢いを落とすことはない。
既にそこは間合いの内側だった。
「ぜりゃああっ!!!」
腹の口目掛けて振るわれた渾身の一刀はグラニュートの体を貫通し、命に届く傷を与えた。
「そんな馬鹿な…!この俺が、人間ごときにぃっ……!うわああぁぁぁぁぁっっ!!??」
肩で息をする味川が残心を終えた時。既にグラニュートは事切れていた。
―――…
「あの…まだ体洗っちゃ駄目なんですか?ぬちゃぬちゃしてて気持ち悪いんですけど…」
「だーめ。聞いてたでしょ?あの怪物……グラニュートの言葉からすれば、同じグラニュートならあのアクスタプレス?は効かないんだからさ。予防とG3システムの改良のためにも必要なの」
「それは、分かってるんですが……」
氷室は安置されているグラニュートの遺体に目を向ける。あの舌のような器官を真っ先に研究したかったものの、その体内には何故かその様な器官は存在せず、肉体の一部という扱いではなかったことが判明した。
千切ったはずのそれもいつの間にか消えてしまい、辿ることはできなかった。
故に、実際にそれが効かなかった理由を探るため、氷室の肉体をそのままに倒したグラニュートと比較しているのだ。
「あった!」
「見つかりましたか!」
その甲斐あってか、とうとうその理由が判明する。
そしてデータと共に映し出されたのは、黒い塊に黄色が指す謎の器官。
「この内臓器官で作られている怪人特有の体液と同等のものが氷室くんの体に付着してるわね。外見的特徴から考察するに、ナマコのような見た目からその特性が類似しているのだとしたら、吐き出されたのは恐らく直腸の一部かしら?」
「うぇっ!?内臓ってことですか…!?」
「そういうこと。だから怪人にしかない筈の体液を全身に身に纏っていた氷室くんは、圧縮されなかった。っていうのが私の見解かな。流石に一例でしかないから決めつけることは出来ないけれど、他の怪人も同じ器官を有しているのだとすれば……この体液こそが圧縮を防ぐ鍵になるわ」
彼女、味川の協力者である大沢はそう結論付ける。
「ま、とにかく今後のGシリーズはこれを活かした装備に更新することは間違いないでしょうね。…似た性質の液体を装甲内で循環させて全身に巡らせれば……うん。いいかも。詳しい内容は味川くんが起きてからになるけど……」
ちらりと一瞥するのは、今も寝息を立てている味川。
グラニュートの遺体を引きずって帰投した味川はG3-Pを脱ぐや疲労がピークに達したのか、そのまま眠ってしまった。
バイタルチェックや傷の手当てなどは進めているが、致命的なケガなどは負っていない。
一息ついた大沢だったが、そこで氷室があっと声を上げる。
「思いついたんですけど、それを移植できればどんな状態の時でも圧縮は免れたりして…」
「何馬鹿なこと言ってるの…。同じ人類の臓器移植ですら拒絶反応は出るのよ?ましてや人間にない器官を増やして、その体液が体に入るのよ?どんな悪影響が出るか分かったものじゃないわ。第一、それで圧縮されなかったとして、素の状態でそれを食らってる時点で対抗できないじゃないの。まさかその場でいきなり装着出来る訳でもないのに」
「……ですよねー」
祝!初勝利!
このグラニュートがナマコモチーフだったのは自身の内臓すら吐き出せる特徴を持っていたからなんですよね…。
グラニュート器官から分泌される体液に塗れていたから、氷室さんはヒトプレスにならずに済んだと。
相当マヌケに見えますが、まずそもそもバイトはこっそり攫うのが前提で、仮に姿を現しても妨害できる存在を考慮してないので、普通に眷属で巻いてヒトプレスに出来るので、この特性を知らなかったんですね。
まさかわざわざ擬態を解いて本来攻撃の体液飛ばしをして、その上でヒトプレスになるか確かめる。なんて行動は普通しませんし。
因みに名前はグラニュート・マナコ