異端宗派やめたい
教会味方につけて 楽したいし
執政で 尊厳で 教会で 行進で
カエサル賜う テオみたいに
Я
「ん...」
私は目を覚ました。
どうやら今度は貴族に生まれたらしい。これは良い。軍を率いたり国王に意見できる。フランク王国と言う国家もある。これならば。フランク王国を千年帝国に昇華できれば。
私はまだ幼く、まだ何もできない。だが人間関係を深めることと才能を磨くことはできる。今のうちから人脈を構築しておこう。
私はすぐに行動を起こした。
「まぁ!エリカちゃん。まだ幼いのに、もう文字の読み書きができるのね!」
「おお、手伝ってくれてありがとう。ちょうど困っていたんだ。こんなことまでできるようになるなんて、君は実に優秀だな。」
「ありがとうございます!」
(ふっふっふ...幼いうちから才気を発揮し媚を売れば国の実権を握れるかもしれない。王位を継承できれば万々歳だが、そう簡単には行かないだろう。最低でも軍は支配したい。あわよくば宰相に...)
***
(今日は弓と護身術の特訓でもしようかな...でももう少し語学能力を高めて起きたい...ラテン語を完成させようか...)
と、そんなことを考えていたからか、曲がり角で人と当たってしまった。
「あ...申し訳ございません。大丈夫でしょうか」
「大丈夫だよ...君の方は?」
「私も大丈夫です。此処で会ったのも何かの縁でしょう...お名前を」
「私の名前はクローヴィス。君の名は?」
「...私はエリカ。貴方とは仲良くなりたいです。」
幼き頃のクローヴィス。現在13歳。奇しくも今の私と同い年だ。
まさかこんなところで会えるとは。
メロヴィング朝を作り、フランク王国をローマの後継者まで至らせた立役者。協力するに越したことはない。
それから私は彼と親睦を深めていった。時には一緒に訓練し、時には一緒に学び、時には一緒に遊んだ。
彼は優秀で、若干15歳にして王位を継承した。
そして次々と征服していき全フランクを統一しガリアの大部分を征服した。
私も政治に大きく干渉し軍を率いて戦うことも度々あった。
協力体制を築き、絆が深まっていた私とクローヴィスは結婚することになり。結婚と同時にメロヴィング朝も開いた。
順風満帆のように思える。私自身、これならば千年帝国を実現できると考えていた。それくらい順調で、ロワール川の全てを統べる大王国となっていた。
しかし問題があった。
宗教である。
この中世において宗教、特に宗派は大事なことであった。
今はイラン以東、そしてヴィスワ川以東はゾロアスター教とスラブと言う違う宗教だが。ヴィスワ以西の国家のほとんどがキリスト教である。しかし宗派はまばらで、後にカトリックと呼ばれるアタナシウス派や正教会、そして私たちはゲルマン関連の宗教色が色濃く残るキリスト教。アリウス派であった。しかしそれではローマ教皇の支持を得られずに孤立してしまう。それはいけない。
そう考えた私は夫となっていたクローヴィスに改宗のお願いをすることにした。
「ねぇクローヴィス」
「なんだ?」
「この国は確かに発展してきたわ。ロワール川の全てを抑え、あとヒスパニアとイタリアを制圧してしまえば西ローマと同等まで版図が大きくなる。でもこれ以上の拡大のはとある弊害が出てくると思うの」
「ほぉ...して、その弊害というのは?」
「宗派」
「...」
「このフランク王国は現在キリスト教アリウス派。一方で多くの国から信じられているのはアタナシウス派。ローマ協会もアタナシウス派を支援してる。これが意味するのは外交的な孤立。包囲網なんか組まれたら洒落にならないわ。だから改宗したほうがいいと思うの。」
「...」
ひとえに改宗と言っても簡単なことではない。国の宗教を丸々変えるということは国民や配下にも考えを変えろということ。反対があるのも当たり前だろう。だが、アリウス派はこの国が強くなるのに邪魔。孤立するのは良くない。事実私もそれで失敗した。
「...わかった。改宗する方針で行く。ただ簡単にはできない。」
「わかってる。そこは私が一計を案じる。だから待ってて。必ず皆んなをあなたについて行かせるから。」
「頼もしいよ。」
それから私は人前で演説を繰り返しアタナシウス派に改宗することの合理性を訴え続けた。臣下にも直接有用性を語り。
無事、フランク王国はアタナシウス派に改宗できた。
無論、少数の反乱軍は沸いたが、すぐに鎮圧できた。大規模にならなかったのは私のおかげだろう。
よし、これで教皇から支持を得られる。もっと拡張し...千年帝国を。
***
「エリカ。私は西ゴート王国に侵攻しようと思う」
「西ゴートに?」
「そうだ。彼らは地中海沿岸の大部分を支配している。彼らの持つアキテーヌやトゥールーズを支配すれば。地中海へ身を乗り出すのも容易となるだろう。」
「...」
西ゴート王国、イベリア半島に拠点を置くゴート族。そして前世で私が斬られつつも逃した味方。それを今度は自らの手で滅ぼせと言うのか。
「...少し考えさせて。」
「あぁ。決めるのは今じゃなくていい。軍務を担う君の判断は私のより遥かに信用できる」
自室に戻り、私は考える。
私に、かつての同胞を殺せと言うのか。それが私にできるか。なぜ私は必死になってゴートを逃したんだ...
そうだ、前例を作るためだ。ゲルマン民族大移動を起こすため。
ゴートである必要はなかった。偶々だ。ならば滅ぼしたところで何も変わらない。もし再度西ゴートに生まれたのなら私はフランクを滅ぼしたであろう。
そう、偶々なのだ。
偶々私がフランクに生まれてしまっただけ。
何も臆することはない
よろしい、ならば戦争だ。
「クローヴィス」
「結論が出たか」
「西ゴートに侵攻しよう。
このエリカ・メロヴィング。必ずや敵将の首を獲って見せよう。」
そして、私たちは西ゴートと戦争をした。
ブルグントを滅ぼし。
アラリック2世をヴイリの戦いで撃ち倒し、クローヴィスは勢いそのまま西ゴート王国首都トゥールーズまで進軍。
アキテーヌの大部分を征服し、西ゴート王国はピレネー山脈の向こう側まで追いやられてしまった。
508年:ローマ
「今日はいい日だ。小鳥は囀り、花は咲き誇っている。こんな日には、冠をかぶってローマを歩いてみたいものだ」
「聞き覚えがあるのなんでかなぁ...」
私たちはローマへ来ていた。
教皇に呼ばれた嬉しさからかクローヴィスは少し興奮しているようだ。
「クローヴィス1世。そなたに、“アウグストゥス”の称号を与える。」
クローヴィスは跪いて答える。
「ありがたく存じます。本当に、ありがとうございます。」
この年、クローヴィスはローマ教皇であるアナスタシウス1世より称号を得たのだった。
しかし、彼の寿命は迫っていた。
511年。クローヴィス一世死亡。国土はサリカ法典によって子息に分配され、フランク王国は多くの国に分かれてしまった。
フランク王国は西ローマを後継して早々に崩壊してしまった。
あと一歩だったのに。
しかしどうにもできない。人には寿命がある。それは変えられないのだ。
嗚呼またダメでした
転生しよう
...ムシャリ
次回「鉄槌の宮宰」