FINAL FANTASYⅫ Revengence   作:ナタタク

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第1話 イヴァリースの歴史

「うわあ!!」

大きく吹き飛ばされたレンが背中から岩に激突する。

手にしていた訓練用の模造剣は手から離れており、手にはつぶれた豆ができていた。

「その程度か?まだ打ってこい、休むにはまだ日は高いぞ」

「くっ…!」

痛みを我慢しながらレンは再び剣を手にし、余裕な態度で模造剣の刃を肩に置くウォースラへと走る。

その様子をほかの兵士とともに少女も見ていた。

「こいつですか?昨日将軍が拾ってきたっていう若い奴は」

「腕が細い上に動きも雑。こりゃ、少年兵の方がまだマシだろう」

しかし、それでもいないよりもいる方がマシなほどに今の戦力は少ないのは確かだ。

2年前の戦いに敗れたことで多くの兵士は投降を選び、あるものは除隊して一般人に戻り、あるものはナルビナ城塞の牢獄の中にいる。

だが、自分たちダルマスカ解放軍のように、来るべき独立の日のために地下に潜り、水面下での活動をしている者たちもいる。

その中心人物が今、ひよっこの訓練をしているウォースラと観戦している少女だ。

ウォースラ・ヨーク・アズラス将軍は先祖代々ダルマスカ王家に仕えてきた名家の出身であり、その実力と人柄から彼女からの信頼も厚い。

それゆえに、帝国から解放軍の最重要人物として狙われている。

(まったく…帝国のスパイと疑ったかつての自分がバカに思えてくるほどの弱さだ)

ウォースラが驚いたのはこの目の前の青年レイが戦いに関する知識も技術も何もなかったことだ。

最初は疑いの目が強かったため、肉体面を完全に見落としていたが、レイの体つきはどう見ても一般人と同じ程度であり、訓練を受けた痕跡も何もない。

ライセンスもろくに覚えておらず、こんな状態で一人で町の外に出るのは自殺行為に等しい。

なお、今のレイは着ていた服の上に一般兵用の鎧をつけている状態だ。

一度ありあわせの服で着替えさせようと考えたこともあるが、レイはダルマスカの人々のような露出の多い服装が苦手だという。

そして、剣を交える中でウォースラは少なくとも自分が知る範囲でイヴァリースのことを教えた。

「アルケイディア帝国って、何がしたいんですか!?こんな、侵略戦争をして、そんなに、ロザリアと、喧嘩、したい、と!?」

「ロザリアもアルケイディアも、軍部が強い権力を持っているらしい。元々ロザリア帝国そのものが、軍事国家だ。軍の力が強すぎて、いつ東西で激突が起こってもおかしくない。だから、狙われたのだ!我々も、ナブラディア王国も!!」

イヴァリースを構成する大陸の一つ、オーダリア大陸の西を支配するロザリア帝国は確かにアルケイディア帝国と同じく皇帝が存在するが、軍事国家であることから軍の権力が皇帝をしのぐほど大きく、たいていの皇帝は軍の傀儡として在位期間を終えることになる。

時折、その状況を打開しようとする皇帝も出ていたものの、その多くが早々に幼少の後継者へ譲位することになるか、何らかの形で夭折することになったという。

近年では皇帝を輩出している家であるマルガラス家が中心で軍縮の改革が始まっているらしいが、そう簡単にはいかないらしく、そのために1年前の戦争においては独自にナブラディア王国と協定を結び、それが戦争勃発の原因となってしまった。

協定では、ナブラディア王国の国境付近にロザリア軍を駐留させる内容も入っており、これにはアルケイディア帝国第11代皇帝のグラミス・ガンナ・ソリドールも見過ごすことができなかった。

しかし、グラミスは戦争を避けようと外交圧力によって、ナブラディア王国にロザリア帝国との協定を破棄させようと努めたが、ナブラディア王国は方針を変えず、その結果開戦することとなった。

そして、当時ナブラディア王国の同盟国であったダルマスカ王国も巻き添えを食うこととなり、結果として両国はともにアルケイディア帝国に敗れることとなった。

ナブラディア王国は謎の爆発によって消し飛び、王族も国民も全員その中に消えた。

「今のダルマスカはいずれ発生するロザリア帝国との戦いで、間違いなく矢面に立つことになる。そうなる前に、再び独立せねばならん。もう二度と、戦場にせんためにも!!」

「だから、こうして反乱軍…というか、解放軍を!?」

「…そうだ。来るべき時のために…こうして準備をしているのだ」

ようやく日が下がり始めたところで訓練が終わり、クタクタになったレイは壺の近くまで走るとコップで中の水をすくって飲む。

乾いた喉を潤す一杯でようやく気持ちが落ち着き、フラフラとあおむけに倒れる。

「お疲れ様」

「ん…?」

声が聞こえ、体を起こすと少女がいて、少女から受け取ったタオルで汗を拭いていく。

「ありがとう、ええっと…アーシェ、でいいのかな?」

「ええ…」

隣に座る少女、アーシェを見たレイは顔を赤く染めて少し距離を取る。

露出の多い服装なうえに見とれてしまうような容姿の彼女を直視できず、これまでも会話しようとするとどうしてもこうして距離を取ったり、視線を合わせられずにいる。

「それで、どうなの?」

「どうって…?」

「記憶よ。あなたの」

「…さっぱり」

ウォースラ達による訓練で多少なりともマシになったが、記憶のことについては何も成果が上がっていない。

身の回りでは着ていた服と今手にしているスマートフォンだけ。

スマートフォン用にイヤホンと充電ケーブルもほかのポケットを調べたら見つかったら、あるのはそれがすべてだ。

電気のないイヴァリースだが、充電については時折魔物を倒して手に入れることがあったり、王都ラバナスタの商人が売っている雷の魔石に接触させることで、簡単に充電ができた。

唯一の手掛かりであるスマートフォンを訓練後に何度も調べているが、記憶に関する手掛かりは何もない。

あるとしたら、中に保管されている音楽のデータだ。

時折音楽を再生させ、イヤホンで聞いているが、どの曲も聞き覚えがあるくらいの記憶しかなく、どこでだれと聞いたのかは何一つ思い出せなかった。

「…その、いろいろ、聞いたよ。1年前のこと。ウォースラさんから。えっと…その…」

「何?」

「…ごめん、言い出しっぺは僕なのに、いい言葉が思いつかない」

彼女の夫であり、ナブラディア王国の第2皇子であったラスラ・ヘイオス・ナブラディアは1年前の戦争で命を落としたことをウォースラから聞いている。

ダルマスカ王国とナブラディア王国は同盟関係とはいえ、円満なものとは言いにくい事情があった。

アルケイディア帝国とロザリア帝国のはざまであるガルシア半島において、ダルマスカ王国の領地は文化・軍事的重要性ゆえに他国からの侵略を幾度となく経験しており、戦乱の中心となった歴史がある。

実際に1年前に滅亡する以前にも、国境は接していないものの蛮族や遊牧民族による侵略に対して戦争を行ったこともある。

そして、外交にも最大限の努力を続けたことで、700年近くの独立を勝ち取っていた。

だが、独立を長く維持するということはそれだけ恨みを買うということでもあり、ダルマスカ王国は自国の独立を維持するために同盟国を見捨てるという所業に出ており、実際に20年近く前にそれによってアルケイディア帝国に滅ぼされている。

そのことから、ナブラディア王国としては同盟はよしとすれどもお互いに見捨てることがないだけの保証が求められ、それゆえにアーシェとラスラの結婚が成立することとなった。

政略結婚ではあったが、ラスラもアーシェもお互いに愛し合い、将来を誓った。

最も、ナブラディア王国で起こった謎の爆発によって祖国を失ったショックで家族への復讐のためにナルビナ城塞の戦いにおいて前線に出てしまい、その際に流れ矢を受けて絶命することとなり、その将来も幻と化したが。

アーシェは夫だけでなく、帝国によって父も失っている。

その無念は1年を経過した今でも消えない。

「ラスラは…無念だったと思うわ。父も…。ただ、生きていたかっただけなのに。それを踏み潰した帝国を私は許せない…」

「…」

アーシェの言葉にレイは何も言い返すことができない。

記憶のない自分だが、戦争のことはおそらく教科書や映像の中でしか見たことがないのだろう。

それゆえに、当事者であり、奪われた側であるアーシェたちの怒りや悲しみに対して何かを言えるとは思えず、いったとしても上っ面なものでしかない。

「…」

スマートフォンを操作し、保存された曲の一つを流す。

低めに音量を設定して、アーシェの耳元に当てて聞かせる。

Linked Horizonの『暁の鎮魂歌』。

アーシェたちの話している言語と同じ言語で歌っているため、聞いて意味は分かると期待して聞かせていた。

アーシェはしばらく何も言わずに聞いていた。

やがて、途中で聞くのをやめたアーシェはスマートフォンを置くと、何も言わずにテントの中へ走り去ってしまう。

スマートフォンを回収し、アーシェがこもったテントを見つめるレイは何も言うことができなかった。

(これはたぶん、鎮魂のための曲なんだ。僕だって思うよ。アーシェや、ウォースラさんの話を聞いたら。でも、まずはせめて…祈りたいな。死んでしまった人たちに)

 




進撃の巨人で有名なLinked Horizonさんの『暁の鎮魂歌』。
ほかにも、アニメでこうした鎮魂の曲ってあるんでしょうか。
少し探してみようかなって思います。
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