ある日、おデジがコミッションの報酬を銀行に移したいと言い出した。銀行口座か・・・確かに無いと不便だ。だが・・・作るには銀行支店に行く必要がある。おデジはなるべく外に出したくないんだが・・・
「お願いしますよ〜コミッションの報酬は50000円まで貯められて他のコミッションに出す依頼料に使えるんですが半年で無くなってしまうんで〜」
「はぁ・・・仕方ないな。」
「それじゃあ!」
「ああ。行くぞ。」
「はい!」
そして近所の支店に行き、銀行口座を作った。特に怪しまれる事も無くすんなり行ったな。
「ふへへ・・・」
「これでいいか。」
「はい!ありがとうございます!あなた♡」
「はいはい。」
今日はもう特筆するような事は無かった。だが、事が起きたのは翌日だった。
「・・・。」
「おはようおデジ・・・おデジ?」
「あ、はい!おはようございます!」
「・・・どうした?」
「あ、いえ、なんでも、ないです。」
「・・・。」
俺は、向こうで10年もトレーナーをやった。ベテランにはならずとも、中堅くらいのトレーナーにはなった。おデジは、体調を崩している。確信があった。まだ寝込むものでは無い様だが時間の問題だと脳内で警鐘が鳴った。
「おデジ。」
「はい?」
「何があった。」
「え?特に何も・・・」
「俺はこれでもお前のトレーナーだぞ。体調の変化なんて手に取るようにわかる。」
「えと・・・」
「どうしたんだ?体調、少し変だろ。」
「・・・はい。」
さて・・・問題発生だ。原因はなんだ。食べ物が合わなかったか?それともまた別なストレスか・・・見当があり過ぎる。
「ふむ・・・」
「とりあえず、ご飯たべませんか?お腹空きました。」
「そうだな。」
一階へ降りて母ちゃんの作ったご飯を食べる。最初はウマ娘の食べる量に驚いていた母ちゃんだが今はもう慣れたもので、朝から大量に作っている。
「もぐもぐ・・・」
「ふうお義母さんおかわりもらえますか。」
はーいと母ちゃんのおかわりをもらうおデジ。食欲はあるようだ。じゃあなんだ・・・?
「・・・。」
「お茶漬けにしましょ。」
ガツガツ食べていくおデジ。食欲ほんと問題無いな。だが体調は不調と行った感じだ。向こうだとトレーニングを休ませるのだが・・・もしかして。
「なるほど・・・」
「はい?」
「母ちゃん、後で車出してくんない?」
はいよーどこに?と母ちゃんが言ったので海までと答える。多分、おデジは運動不足で体調が悪いのだ。それもそのはず。向こうではバリバリのアスリートとして毎日ガンガントレーニングを熟していたのだ。それがこっちに来て外出出来なくなり運動量がガクンと減った。おデジは走行欲は薄い方だがウマ娘並にはある。多分これで解決だ。
「おデジ、ジャージに着替えて、走る準備しろ。」
「え、でも、それはマズイんじゃ・・・」
「まぁ・・・見られたら確かにマズイ。だけどおデジに体調を崩される方がもっとマズイ。こっちじゃウマ娘を見てくれる医者なんていないんだから。」
「・・・わかりました!」
おデジはちゃっちゃとご飯を食べ終えると早速準備しに部屋に行った。これで解決してくれ。
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海に出た。出来れば芝のコースで走らせたかったが、そんなもの無い。ちょうど海の砂浜は夏のシーズンでも無い為、誰もいない。好都合だ。
「じゃあおデジ。好きなだけ走ってこい。」
「はぁい!」
準備運動を済ませたおデジは早速飛ばしていった。あっという間に砂浜の向こう側に行ってあっという間に戻ってくる。
「ふぃー・・・」
「どうだ。」
「まぁダートの感じとは違いますがまぁまぁ走れますね。」
「そうか。じゃあ今度はきっちり2000メートル走れるか?」
「行けますよぉあたしを誰だと思ってるんですか?」
「そうだな。」
「行ってきまーす!」
またもやドギャン!と加速するおデジ。あれ現役より速くなってないか?母ちゃんはすごい速いのねーと呑気に言っている。
「ふぃーただいま戻りました!」
「おかえりおデジ、調子を見る。」
「はい。」
靴と靴下を脱がせ、足の調子を診る・・・予々問題無し。
「よし、後はいつものメニュー、覚えてるよな。」
「ダート用ですか?」
「そうだ。砂浜だからな。」
「大丈夫ですよ〜」
「じゃあそれ初めてくれ。」
「はぁい。」
元々向こうで施していたトレーニングメニューを熟させる。もう何度もやったからメニューを書いた紙など見なくても平気だ。1人しかいないからショットガンタッチ等は出来ないが・・・まぁいいか。
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運動を初めて、3時間ほど。もうすぐお昼だ。そろそろ帰ろう。
「おーいおデジ、終わりだ。帰るぞ。」
「あ、はーい。」
おデジの顔を確認する・・・よし、不調から好調くらいには変わってるだろう。だがこれからどうする。定期的に運動させるのは良いとして海で走らせるだけで良いか。ジムとかは連れて行けないし・・・まぁ走行欲を発散させるだけなら砂浜でトレーニングだけで良いか。もうレースは出ないんだし。
「ふぅ!たっぷり走りましたねー」
「そうだな。休憩無し3時間ぶっ続けでやるとは思わなかったが・・・はいスポドリ。」
「ありがとうございます。」
ごっきゅごっきゅと一息で全部飲み干すおデジ。とりあえず一安心だ。
「母ちゃーん帰るぞー」
車に戻っていた母ちゃんに声を掛けて帰る。腹も減ったな。
「お義母さん、ありがとうございます。」
いいのよーと返事をする母ちゃん。これからは日々のおデジの体調を良く見なきゃならないな。ただの風邪でさえ、こっちの薬が効くかもわからない。もっと大きな病気や怪我だった場合、病院に行けるかもわからない。ウマ娘の人間との違いは向こうでかなり学んだ。体組織に関しては大きな違いは無いが体格、組成、筋組織、それと頭頂部の耳と尻尾など人間と異なる部分は多岐に渡る。おデジが体調を崩したら一貫の終わりだ。下手しなくても死んでしまう。
「・・・。」
「あなた・・・?」
どうにか・・・向こうへ帰せる方法が無いか考えた。俺が向こうに行った時、スマホに吸い込まれたんだがあれを再現するというのは不可能だろう。もう一つは俺が帰ってきた時の様にゲートを開いてもらうこと。これも不可能だろう、こっちに到達する手掛かりが無いんだから一度開いた事のある世界でも再び開くというのは不可能な筈・・・詰んでない?
「・・・。」
「あの・・・」
俺が出来る事は限度がある。こっちで最もウマ娘に詳しいのは間違いなく俺だ。だけど俺は医者じゃないから治療どころではない。今から論文等を作ってウマ娘を浸透させるのも現実的では無い。まずウマ娘の存在を証明しなきゃならないし、その後も大変だ。どうにもならない。
「祈るしか・・・無いか。」
「え?」
おデジが怪我も病気もしない事を祈る事しかできない。まいったな・・・
「はぁ・・・」
「すみません・・・」
「ん?なんだおデジ。」
「いえ、あたし、運動不足なんかで体調を崩して・・・」
「それは気にすんな、ウマ娘なんだから仕方ない。」
「・・・あの薬。」
「あの薬?」
「あのこないだ届いた。ダーレーなんたらとかいうウマ娘ちゃんの薬、アレ、人間になる薬なんじゃ・・・」
「ばか。そうとは限らない。ウマ娘に未練が無くなったらと書いてあったんだぞ。自害する薬の可能性が高い。絶対飲むなよ。」
「・・・はい。」
不確定要素ばかりだ。そもそも異次元からの来訪者だ。簡単に行くとは思ってないが・・・しんどいな・・・
「はぁ・・・おデジ、大変だぞ・・・これは・・・」
「あははは・・・しゅみましぇん・・・」
「反省しろ。」
「はい・・・」
まぁでもホントに来ちまったもんは仕方がない。ちゃんと面倒見ないとな。