数年前、隣接する複数の国が統合され一つの国となった。民主制の形を取り法治国家としての軌跡を歩むと誰もが思っていた。しかし、そうはいかなかった。旧支配者層や貴族たちが統合に反対し武装蜂起したのだ。すぐに新政府軍により鎮圧されると思ったが世界中の民間軍事会社が両軍に兵員を派兵しこの内戦は泥沼化・・・かく言う私たちも新政府の要請に応じて「某国」へと赴く。国土の45%が戦場と化し某国は混沌を極めていた。


1 / 1
ウマ娘の二次創作を執筆していたはずが人間視点にしたせいでウマ娘が舞台装置化してしまいボツにしたやつです。純粋なウマ娘ファンには刺さらないかもしれないので期待しないでください。
評価が気になるので冒頭部分だけ試しに投稿してみます。


第1話

その日はやけに静かだった。聞こえてくるのは、建物の間を抜ける風の音だけで昨日までの喧騒が嘘のようだった。「先輩・・・ここまで静かだと気味が悪いですね」「こんな日があってもいいんじゃないの?別に何かあるわけじゃないし」こんな会話で時間をつぶすくらいしかやることがなかった。

「昨日まで向かいの建物に鉛玉ぶち込んでたのが夢みたいですよ」「夢じゃないんだよなぁ」そういって重機関銃を指さしていた。銃身は焼け切って最早銃としては機能しなかった。「敵は殲滅できたんでしょうか?」「確認しようにも指示がない限りはな」待機の命を受けてから半日が過ぎようとしていた。

「半日前まで定期連絡来てましたよね?無線で」先輩はため息をつくと「あれを見てまだ同じことが言える?」と言って視点を無線機の方に向けた。「あっ・・・」榴弾を食らっていた。「伝令でも来ない限り・・・」遠くからエンジン音が聞こえた。

エンジン音はだんだんとこちらに近づいて来る。「敵の残党でしょうか?」こちらには自動小銃しか無かった。「いや、方角的に味方だろう・・・伝令が来たんだ」先輩が立ち上がった。「随分と楽観的ですね?」「もし敵に戦力が残っているならとっくに再編成して攻撃してるはずだ。それがないってことはこちらと同等かそれ以上の損害があるとみていい」

エンジンの音が壁の向こう側で止まった。「敵じゃないって確証あるんですか?」不安だった。民間人のふりした民兵を保護したせいで3人死なせていたからだ。先輩は舌打ちすると「これはクライアントからの要望だ!」と叫んだ。すると、壁の向こう側から「そのクライアントからだ!」と聞こえた。先輩は「な?言っただろ?」と言わんばかりの顔でこちらを見ていた。

伝令が入ってきた。「田畑さんじゃないですか!最終防衛ラインにいたのになんで・・・」「こっちまで砲撃とんで来なかったからね、君たちが最初のコンタクトだよ」彼はニコッと笑って答えた。「伝令って言うのは?」「敵は無力化したものとして前進せよ」申し訳なさそうに言った。「なっ!」私も先輩も面食らっていた。「他にも適任がいるじゃないですか!なんで・・・」言いかけたところで先輩が割って入った。「聞いてなかったのか?最初のコンタクトということは私たち以外の前線配備されたヤツらは死んでるって事だ」「え?」田畑さんは俯いて何も言わなかった。

「とにかく承った。君はこれでも食べて元気出せ」と田畑さんにチョコレートを渡した。「これ・・・本国の・・・どうやって?」「私くらいになればこの程度はな」そう言って背を向けて歩き出した。「待ってくれ!」呼び掛けに足を止める。「この戦場に現れたんだよ・・・」「何が?」先輩が怪訝そうな顔をした。「死神だよ・・・」

「死神?」私は思わず聞き返してしまった。そんなものは聞いたことがなかった。それを察したのか田畑さんが説明してくれた。「ものすごい速さで走れて、銃弾を回避できるほどの動体視力と反射神経・・・そして人とは思えない程の怪力・・・目にしたら二度と生きて帰れない・・・死神だよ・・・」先輩はため息をついた。「例のやつか、数は?」田畑さんは掠れた声で「1人だ」とだけ呟いた。

先輩はしゃがみこんだ田畑さんの肩を叩き「まぁ、心配する必要はない。こんな近くにいるわけないだろ?」そう言って立ち上がると自動小銃に弾倉を装填した。「さぁ、行くぞ、碓氷」「はい・・・」戦況があれだけ膠着していた理由を垣間見た気がした。

外は恐ろしいほどに静かだった。瓦礫が崩れる音と風の音以外は自分たちの足音くらいであとは何もなかった。「なにか潜んでそうで気味が悪いんですけど」「これくらい別に普通だろう?」似たようなやり取りをさっきもしたような気がする。「そもそも今まで・・・」タタターンという発砲音が響いた。

空気を切る音と共に鉛玉が飛んでくる。「だから言ったじゃないですか!なにかいるって!」「いいから身を隠せ!」そう言って私を障害物の方に蹴った。「ついてるな」ついに気が触れたのか?「この状況で何言ってるんですか!」「分からないか?あの撃ち方・・・相手は素人だ。そしておそらく1人・・・」先輩の口角が上がる。「十分勝機はある」

しばらくすると銃声がやんだ。再び静寂が包み込む。「何故撃って来ないんでしょうか?」 「恐らく弾切れだろう。敵さんも兵站は安定してないようだ」そういって拳銃を取り出した。「小銃弾を使うまでもない・・・これで十分だ」正面から飛び出して来た人影にためらいなく発砲した。

その人影は身を翻した。拳銃弾を回避したのだ。「嘘・・・あり得ない」私は予想外の出来事に驚いていた。状況を察した先輩は拳銃を放棄すると素早く自動小銃に持ち替えた。「例のやつだ!まさかこれほどとは・・・」先輩が自動小銃で弾幕を張った。

「だめだ、早すぎて追いきれない・・・」小銃弾の到達速度より速いのか、それとも先輩が動揺して狙えてないだけなのか定かではなかったが弾は全く当たっていない。カチンッという撃鉄が落ちる音がした。ガチャガチャと槓桿を引く「クッソ!ジャムった!こんな時に」ここぞとばかりに敵が急接近してくる。凄まじい速度だった。先輩は小銃をスリングベルトからリリースすると背中に手をまわす。ジャケットの下からソードオフショットガンが出てきた。敵に向けるのとほぼ同時に敵が散弾銃を蹴り飛ばす。散弾銃は宙を舞った。

散弾銃は私の足元に転がった。「先輩!」慌てて応戦しようと小銃を向ける。「待て!撃つな!私にも当たる!」手を止めた。どうすればいい?このままでは先輩が・・・敵は先輩の首に手をかけていた。成す術なく死んでいくところを見ているしかないのか?そして私も死んでしまうのか?

先輩は手を伸ばすと先程手放した拳銃を手に取った。それを敵の脇腹に当てると引き金を引いた。一発で十分なはずなのに先輩は敵が離れるまで撃ち続けた。拳銃がホールドオープンするのと同時に敵は地面に転がった。撃たれた所を押さえてうずくまっている。先輩は激しくせき込み、呼吸を整えて立ち上がった。先輩は散弾銃を拾い上げる。「桂の高跳び歩の餌食ってね」拾い上げた散弾銃を敵に向ける。「Non… Je… je veux pas mourir… pas encore… 」敵が何を言っているのか私には分からなかったが先輩が散弾銃で敵の胸元を貫いたことから察するにろくなことじゃないんだろう。

「死んだんですか?」小銃で敵をつつきながら問いかける。「近距離で12ゲージスチール弾を食らって生きていられる生物なんていない」そういうと敵の帽子に手をかけた。「へぇ・・・こいつ女だよ」そういって帽子を取った。特徴的な耳があった。「ウマ娘?どうして・・・」私は動揺を隠せなかった。「まあ、そんな事だろうなとは思ってたけど」なぜ先輩はこうも冷静でいられるのか?恐怖すら感じていた。

「どうしてこんなところにウマ娘が?彼女たちは走るために生まれてきて・・・」先輩はどうしようかなという顔をして答えた。「国籍とか身元の曖昧な個体がえげつない値段で途上国とか新興国とかで売れるんだよ。それが機動兵器として戦地に送られるってわけ」 「信じられない」「いるんだよ・・・極稀な話だけど」

「しかも、元のスペックが高いから銃の撃ち方だけ教えて戦場に放り込むんだ。それでも十分な脅威になるからな」撃ち方が素人と言っていた理由が釈然とした。「でも・・・どうするんです?これ」転がった遺体を指さす。「脅威は排除した。これ以上は私の管轄ではない。指示通り前進する」先輩はおもむろに立ち上がり歩き出した。カツンと先輩の足に自動小銃が当たった。ウマ娘が持っていたものだ。「チッ・・・人外が・・・手間取らせやがって」先輩はそう言うと小銃を蹴って先へ進んだ。




原文
Non… Je… je veux pas mourir… pas encore…
日本語
いや・・・私、まだ死にたくない

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。