ポケモンとは?
非常に種類が多く、それぞれが個性的な特徴を持ち、世界や相互との関係がある生き物のことである。負傷や身を隠すといった意味で、彼らはポケットの中に入るほど自己の肉体を自在に縮小することが出来るために、「ポケットモンスター」と呼ばれるようになった。
それはかつての世界でいう、召喚術に通ずるものがあり、記憶の中では深く身体に馴染んだ職でもあったからか、グライスは出会ってすぐさまポケモンの虜になった。
傷つく荒んだ心に訪れたオアシス。だからこそ、世界に誕生してすぐ、彼が虜になったポケモンと邂逅できたのはグライスにとって僥倖だった。
初めて目にしたのが竜であったのなら自身を薪にくべる行為をとるしか出来なかった無力感に苛まれ、人間であったのなら” 記憶にない ”記憶に蝕まれて無気力感に溺死した。” 妖精 ”のポケモンであったことが、彼のそばで長年ずっと支え続けた精霊の気配であったことは、彼にとっても誰にとっても幸いなことであったのだ。
彼は、そうして無力感と無気力感の間を彷徨うようにして、人知れず溺れかかった意識を支え続けた精霊たちのおかげで誕生した。
しかし、意識もハッキリとせぬままの赤ん坊の身ではあるものの、その魂は過去の苛烈な経験を刻んだものでもある。周囲の気配には人一倍敏感であった。世に誕生してすぐ素直に喜ぶことすら許されぬ状況を肌身で感じ、得も言われぬ感覚が伸し掛かってきたのである。
赤子の身を抱えて走る女性は喘鳴が酷く、どうにかして助けなければと思っても赤子の肉体はとても非力で、激しく無力で、ただただ何も出来なくて。
あまりのやるせなさに震えながら遠ざかる気配にひとつ赤ん坊としての仕事をしてやるぜと意気込んだ瞬間に、何の冗談か最初の一声が零れたのだ。一般的に赤ん坊の泣き声と言えば、可愛らしかったり、あまりの声量で憎たらしかったりするのだろう。
しかし、常識を覆すようにグライスは現状を把握した途端に零れた泣き声は「おぎゃあ」でも「びええん」でも「ふええ」でもなく不可思議な鳴き声であった。
後のグライス・エトワールもサーナイトにこう語る。自分でも思ったんすよ、流石にねーな、って。それではどうぞ遠慮なくお聞きください。そしてどうか笑ってください。バックナンバーイチ。こちらが今生におけるグライス・エトワールの第一声である。
「ぴえん!」
そう、「ぴえん」である。
緩むを通り越してたるんでおる。
赤ん坊ながらに流暢に喋りおるものだ。とんだ珍妙な生き物だろうか。こんな生き物だろうよと現在の自分が呻く。羞恥のあまり<記憶の廻廊>に居たグライスは、過去の自分より幾分か成長した両手で顔を覆って昔っから口癖ってそれだったんすね、と。
妙なダメージを受けた気がする。確かにとても泣きたい気分ではあったのだけれど、「ポケモンの世界に転生したぜんだぜ!」と云う感動を味わう前に、それを自分で感動ブレイクしたことには思うことしかない。自分でやったこととは云えども、今でも当時のことを思い返すと己のしでかしたことへ心が震える。羞恥でな。
ポケモンの世界に転生して最初の言葉が「ぴえん」ってどうなんだよ。なァどう思う? だなんて周囲に意見を求めようにも此処はすでに見慣れた学校でも、見知った友人たちの顔はなかった。当然のことである。
一度目の人生では、母親としてはそんなつもりはなかったのかもしれないが、感情を捨てろと繰り返しに受けた教育を” 卒業 ”した瞬間、世界の隅っこに置いて行かれた。所謂、捨て子のような存在だったから、ウマイこと諜報員として使い捨てのコマにされて来たと言うに。
同じ道をたどってなるものかと現実逃避も兼ねて将来設計をたてようとした矢先に、グライスは見知ったポケモンから手厚い保護を受けるようになって意識は宇宙にとんだ。
(ポケモンが保護者……、マァそんなこともあるか……。)
適応力も判断も早かった。
あまり困ることはなかったかと言えば、それはそれで問題がなかったというわけではない。異種族が親として、保護者として役割を果たす場合は、周囲の人間の目は厳しくなる。ポケモンの子どもはポケモンの親が育て、人間の子どもは人間の親が育てることで、それぞれの社会で生きるための知恵や能力を確立してゆくからだ。
差別ではなく、区別。どうしたって人間社会の輪を生きようと思えば、その社会で先んじて生活する人間から教わるに必要がある。と言ってしまえば冷淡だが、不要必要の観点で語るならば認識の一つとして
そして、グライス・エトワールは、ポケモン社会で生きるのではなく人間社会に重きを置く生活をした。側で教え育むのは明らかに
それもそれぞれのパートナーを通じた又聞き状態になり、ニュアンスによっては語弊が生じることもあり、言葉や物事を知らなければ通じないこともあるからだ。
筆談可能なポケモンはその限りではなく、とも言い切れず。たとえば、担架で病院に運び込まれるような緊急時に、文章を書く時間を待ち、書きあがった文字を確実に読み取れるような余裕や時間はあるか、と言われれば――――専用のサポートがあったとしても、もどかしさによる焦りは生まれるだろう。
国が想定する最悪は、最低限のラインでもそれらをカバー出来るかどうかに掛かる。幸いなことに、グライス・エトワールはあまり体調を崩さぬ健康体であった。病院にかかることもなければ運び込まれるような事態にもならず、問題視されるような場面に遭遇することなくすくすく成長したのである。
それに、グライスのように人間の保護者が基本的にほとんど側におらず、ポケモンが保護者を代理する家庭は自由と愛を愛するカロス故か探せばわりと居た。ベビーシッター、と呼ばれるポケモン専用の職業につく専門家が、ではあったけれど、居るには居たのだ。
逆に言ってしまえば、探さなければあまり見つからぬ程度の母数なのだけれど。だからこそ、人によっては強く感じるのであろう問題に遭遇したことがある。
ポケモンが両親の代わりを務める御家庭。
ベビーシッターとは違う国からの派遣制度のようなもので、家族を目指して活用する里親制度のようなもので、多くの人が雇用関係にあるポケモンを<家族>として接することでゆっくり御家庭に馴染ませる制度のことだった。
主導するのは「御家庭ポケモン生活支援課」直下の、ポケモンの里親を探す関係で立ち上げられた「ポケモン派遣会社」。そして、件の制度名は、<家庭訪問
人々の生活の営みを手助けしながら環境や相性を確かめつつも絆を結び、やがて家族として迎え入れることを前提とした公的な契約が為される。――――無論、そのような契約を締結する為に、お試し期間なるものを経て、相性やら環境やら犯罪歴やらをクリアした御家庭のみに派遣契約が行われるので、お互いに問題があった場合には人間の相談員が派遣されるという。
最終的には家族として迎え入れることとなるので、ベビーシッターを頼んだ場合、多くの子どもや保護者は本当の血縁者のようなやり取りをしちがちである。
それでも、周囲に人間の保護者は居る。故に、グライス・エトワールの環境に物申すものが出ても可笑しくはなかった。
同じ言葉で通ずることに意味があると意見が上がった。善悪などジェスチャーの感覚だけで決めてしまうにはあやふやにすべきではないことが多すぎると。
そのような意見がある為に、人間ではなくポケモンを保護者とするだなんて。と言った感じの問題は、マァマァ起きてしまう。エトワール家のサーナイトやエルレイドは、ポケモン派遣会社の社員ではなく、実の両親のポケモンであるが故に、起きてしまった問題とでも言おうか。
―――「ご両親の手持ちなら、ちゃんとご両親が側に居るべきでしょう!?」
それはそう。たったの三歳児だもの。
しかし、大人から詰め寄られる幼児とはこれ如何に。斯様な状況に陥っても保護者が出てくることがないと分かれば否や、そのようなことを訴える数多の大人はグライスを抱えて逃走を図ろうとした。立派な誘拐未遂、または現行犯である。
思わず公文書を提出したエトワール家では当たり前のことだったし、一部の事情を知る御近所さんたちが警察に通報するのもグライスにとっては当然のことだった。
指摘を受けて納得したが、確かに事情を知らぬ側からしてみれば、齢一桁の小さな子どもが放ったらかしにされているように見えたことだろう。しかし、エトワール家を代表してグライスが開示した
解決したかと思いきや、小さな子どもたちが通うプリスクールでは、「おかしなことだ」と責め立てられる御家庭は”何かある”と思われたのだろう。当時幼子であったグライスからの真摯な訴えかけも虚しく、子どもたちのコミュニティネットワークから広まって孤立した。事情すら聞き及んでもらえなかったことには、悲しみを通り越して驚愕のみよ。
けれど、<人間>はとてもか弱く、それゆえに、他と違うモノを受け入れられずに排他的な行動をとる生き物であったことを強く実感した瞬間である。そう云えばそうだったなあ、と昔を懐かしむ間もなく。
通園する先でどう言った誇張表現が為されたのか「捨てられ子」とたいへん不名誉な認識が広まった。プリスクールのスクールメイトの幼児特有の無遠慮な大声拡張ばかりか、大人たちの空気感が伝達して小学生あたりの子どもたちの間でも広まり、同情やら何やらで眼差しが慌ただしくて普通に外出しづらくなったのは想定外である。
一般人の感覚からズレた子ども、であったのは事実なのだし。と受け入れて気にせず通園しようとしたところ、グライス周辺の空気感が
『まあ、厭ですわ。先生ったら。……彼女が守れと命じたわたくしとかれ以外に、お増やしになられるおつもりでして? きっと彼女、だれも通さぬよう重ねて指示を仰せになられますわよ?』
『話にならんけん、僕らより強うなって出直して来んしゃい。』
勝てば官軍負ければ賊軍。見るからに怒号を上げるエルレイドによる「剣の舞」からの「インファイト」で事実無根をポケモンバトルにて主張をするハメになったのだった。
興味深かったのはじっくりと見たポケモンバトルで使われた「瞑想」は回避技だったし、「剣の舞」はカウンター型防御技だったことである。――――のちに、それが可能なのは他とは異なる様相をしたあのサーナイトとエルレイドだけであることをグライスは知ることになる。
そういうもの、だと認識した彼は、ゲームを主体とした世界観だとばかり思ったのだが、現実世界だと思えばリアルタイム型は当然のことかと納得した。
園長の認識を改善したからと言って、問題が解決するはずもなく、グライスからの歩み寄りも必要だった。しかし、自分を排そうとする相手ばかりの環境下で友人作りなんてもってのほかである。せっかく通った幼稚園の楽しさのカケラすらも、感じることは出来なかったし。
社会の爪弾き者になるのは慣れて―――……こんなことを云うと「そんなものに慣れるな」と、叱られたのだったと淡く清らかな記憶をぐしゃぐしゃに丸める。
おかげさまで人間社会から弾かれたも同然だったのだが、正直言ってグライス側の視点ではあらゆる意味で物足りなかったとも言えるから問題なかった。カロス語も共通語も読み書きが出来るし、あの場は不要なもの、と切り捨てて自分なりの生活を楽しませてもらった。
(簡易組織図)
国>役所>〇〇課
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全国ポケモンリーグ協会
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ジムやエトセトラ……
■御家庭ポケモン生活支援課
家庭でポケモンと過ごす人々への生活改善やお悩み相談などを請け負う課。ポケモンたちが働くための環境、ポケジョブを推進。その一環として、ポケモン保護課から要請を受けた際には里親探しも兼ねて家政婦のような派遣をする。近年では、里親探しや観察、審査等をメインとし、ジョブ育成等を企業に一任した。
■役所(ポケモン保護課)
■ポケモンリーグ協会(ポケモン保護団体)
タマゴから孵ったり、トレーナーから捨てられたり、野生で馴染めなかったり、事情を持つポケモンの保護と養育を主体とした課。ポケモンリーグ協会(ポケモン保護団体)とメンバーがほとんど被っており、ポケモン保護団体は外部捜索、ポケモン保護課は保護をしてからの養育・静養等をメインとする。
■ポケモン派遣会社(会社のジャンル)
◎またの名をポケモン保護施設。タマゴから孵ったり、トレーナーから捨てられたり、野生で馴染めなかったり、事情を持つポケモンの保護施設が進化したもの。
また、普通に保護施設は別に派生しており、現在ではポケモンブリーダーやポケモンコーチを育てたり、保護したポケモンたちのケア完了後、里親探しも兼ねて家政婦のような派遣をする企業として一躍有名になった。しかし、主な仕事はポケモンの保護である為、ポケモンレンジャーとの連携が盛んだとか。
◎派遣の判断基準
派遣を行う前に、御家庭ポケモン生活支援課がポケモン側の経過観察と受け入れ家庭の状況を審査する。相互問題なければポケモンを派遣し、何かあればポケモンはポケモン保護課在職のブリーダーのもとでまた一年過ごし、人間側は御家庭ポケモン生活支援課より支援員が派遣される。