遊びすぎました
釣りと言いながら釣り竿だけ垂らしてずっと友達と喋ったり、ゲームしたり、飲み会行ったりね
何故なら就活終わったので!!
やがて冬も終わり、暖かな春の季節がやって来た。
イースター休暇である。
とはいえ、ハイランド地方に建つホグワーツでは、春といっても風はまだ冷たかった。朝晩の冷え込みなど冬と大差なく、休みの日の生徒たちは、布団から抜け出すだけでもひと仕事だった。
談話室の片隅では、ディーン、シェーマス、デイヴの三人が、ここ最近、加速度的に増えてきた各教科の宿題に四苦八苦していた。
もっとも、デイヴは相変わらず、そのほとんどにまだ手をつけていなかったが。
それでも少なくとも今は、二人と同じ机に向かい、変身術のレポートを広げてはいた。
「『無生物から無生物への初歩的変身術における形状・材質・質量の相関について』ぇ?」
シェーマスは羊皮紙の題目を読み上げるなり、心底げんなりした顔になった。
「そんなの分かりっこないだろ」
言い終えるころには、彼の集中力はすでに羽ペンの羽を毟ることへ移っていた。
そんなシェーマスとは対照的に、ディーンは時折うなりながらも、なんとかレポートの行を文字で埋めている。
「授業で先生が言ってたことを書いたら、点数もらえるかな?」
「いけるんじゃない?」
「でも十八インチはきついね」
「書ける気がしないよ! まったく、先生は休暇をなんだと思ってるんだ。休む日だぞ? 宿題をやるための日じゃないんだよ」
シェーマスはとうとう机に頬を押しつけた。毟られた羽ペンの羽先が、力なく、さっさっさと机の上をこすっている。まるでやる気をなくした毛ばたきだった。
そのとき、シェーマスはふと疑問に思った。
珍しく、あの口の悪い男が黙っている。
デイヴが黙っているときは、たいてい寝ている。寝ていれば寝ていたで、大抵いびきをかくので、すぐに分かる。だが今は、そのいびきすら聞こえない。
シェーマスはゆっくりと、ディーンの隣へ目を向けた。
デイヴは、その無駄に高い背を存分に生かし、ディーンの真上からレポートを覗き込んでいた。
整った顔は、ひどく怪しい形に歪んでいる。鼻の下を伸ばし、目を見開き、眉をこれでもかと吊り上げて、ディーンの羊皮紙をじっと見つめる。そして次の瞬間には、何食わぬ顔で自分のレポートに同じ内容を書き写していた。
もちろん、シェーマスは即座に密告した。
「ディーン。でかいのに覗かれてるぞ」
「え?」
デイヴはびくりともせず、素早く体を引っ込めた。ついでに何も見ていないと言わんばかりにそっぽを向き、下手くそな口笛を吹きはじめる。
「~♪」
「おい」
ディーンは自分のレポートを見た。
それから、デイヴのレポートを見た。
ところどころ、いかにも彼らしく乱暴な言い回しに書き換えられている。だが内容は、ほとんど同じだった。
ディーンはもう一度、今度は低い声で言った。
「おい!」
デイヴはめんどくさそうに振り返った。
「なんだよ」
「なんだよじゃないだろ!?書き写すなよ!」
「いいだろ別に。減るもんじゃないし」
「僕の点数が減るんだよ!」
「上手いこと言ったつもりか?」
ディーンは口ではそういったものの、シェーマスの「それ僕のなんだけど!?」という抗議を無視してデイヴの手元を覗き込んでいる。
そして完成したのは、へたくそなネコの絵だった。
目だけはネコらしく瞳孔が細長くなっているが、顔も丸と言うよりは楕円だし、口も丸で書かれていて、耳はまるでトゲでも生えてるのかと言った具合だ。
体も適当で、足も二本しか描かれていないし、尻尾はまっすぐな筒のようになっている。
「なんだよそれ!二本足のバケモンじゃないか!」
シェーマスは指をさして笑っている。
ディーンは「絵の才能がないな」と鼻で笑い、隣にまた絵を描き始めた。
今度はシェーマスも興味津々で体を起こして覗き込んでいる。
「できた」
「上手いな」
「ムカつくけどな」
「これが才能ってもんだ。わかったかSnaps」
「うっせえ」
ディーンの書いた絵は、可愛くデフォルメされたネコの絵だった。
「これが今の僕とお前との実力差ってやつだ」
「うるせえよ。アストンヴィラなんか応援してるくせに」
「ウエストハムだよ!!」
「どっちでも変わんねえだろ。弱いんだから」
「なんだとぉ!?」
デイヴは自分の羽ペンを取ると、ディーンのネコの絵に触角をつけ足してしまった。
「エイリアンキャットだな」
デイヴは誇らしげに頷いた。
ディーンは一瞬、言葉を失った。
そして次の瞬間、羊皮紙ごとデイヴに掴みかかろうとした。
「お前、僕のネコに何してくれてるんだ!」
デイヴはディーンの反応がよほど面白かったのか、クツクツ喉の奥から笑っている。
三人の机の上では、変身術のレポートよりもはるかに重要そうに、二匹のネコの絵が並んでいた。
一匹はディーン作の、丸くて愛嬌のあるネコ。
もう一匹はデイヴ作の、ネコと呼ぶにはあまりに勇気のいる何かだった。
「触角を消せよ」
「なんでだよ。進化だろ」
「退化だよ」
「魔法界にエイリアンキャットがいないって証明できんのか?」
「できるよ。少なくともこれはお前が生み出した変な絵だ」
ディーンがそう言うと、デイヴは鼻を鳴らした。シェーマスはまだ笑いを噛み殺しながら、さっきまで毟っていた羽ペンを手に取った。
羽はもう、ほとんど骨だけになっている。軸の先に、申し訳程度の羽毛が数本くっついているだけだった。
「僕だって描けるさ」
「やめとけよ。そいつ、もう死にかけてるぞ」
ディーンが忠告したが、シェーマスは聞かなかった。
彼は妙に真剣な顔でインクをつけると、羊皮紙の端にぐりぐりと何かを描きはじめた。
その瞬間だった。
ぼんっ、と間の抜けた音がした。
次いで、灰色の煙が机の上に小さく咲いた。
三人は一瞬だけ固まった。
シェーマスの手の中で、羽ペンは黒焦げになっていた。先端から細い煙が上がり、彼の顔には、見事なまでにすすが飛び散っている。鼻の頭も、頬も、額も、まるで煙突掃除をしてきたみたいに真っ黒だった。
沈黙は長く続かなかった。
ディーンが先に崩れた。
「ぶっ——!」
彼は腹を抱え、椅子の背にもたれかかるようにして笑い出した。笑いすぎて声がひっくり返り、羽ペンを持つ手が震えている。
デイヴは目をこれ以上ないほど見開いて、シェーマスを指さした。
「ぎゃはははは!!!」
その笑い方は、談話室の暖炉の火まで揺らしそうなほど遠慮がなかった。
「見たか今の! 顔! 顔が爆発したぞ!」
「罰だ、罰!」
ディーンは腹を押さえながら言った。
「人のレポートを笑ってばかりいるからだよ!」
「僕は悪くないだろ!」
シェーマスは悔しそうに言い返したが、口の端がぴくぴくしていた。自分でもおかしいのをこらえきれないらしい。黒くなった顔で怒ろうとするものだから、余計に説得力がない。
「笑うなよ!」
「無理だろ、それは」
デイヴはまだ指をさしたまま、机に額をぶつけそうな勢いで笑っている。
「お前、今ならスリザリンの地下室に置いても違和感ねえぞ。煤の妖精だ」
「うるさいな!」
シェーマスは袖で顔を拭った。
しかし、拭けば拭くほどすすは広がり、黒い筋が頬を横切っただけだった。
それを見て、ディーンがさらにのけぞった。
「やめろ、もう! 悪化してる!」
「鏡見ろよ、シェーマス。最高傑作だぞ。ディーンのネコより芸術点高い」
「お前のバケモンネコよりはましだ!」
「今の顔なら勝てねえな」
デイヴがそう言った、その直後だった。
ぱきん。
乾いた音がした。
三人の笑い声の隙間に、やけにはっきりと響いた。
シェーマスがゆっくりと視線を落とす。
机の上に置いてあったインク瓶に、細い亀裂が走っていた。亀裂は蜘蛛の巣のように広がり、次の瞬間、瓶は小さく崩れた。
黒いインクが、とろりと羊皮紙の上に流れ出す。
ディーンの可愛いネコも、デイヴの二本足の怪物も、触角の生えたエイリアンキャットも、まとめて黒い沼に沈んでいった。
また、沈黙が落ちた。
今度の沈黙は、ほんの一拍だった。
「……」
デイヴの肩が震えた。
ディーンが口元を押さえた。
シェーマスは黒い顔のまま、インクまみれになっていく羊皮紙を見下ろしていた。
「……僕のせいじゃない」
その一言で、二人は完全にだめになった。
ディーンは椅子から落ちそうになるほど笑い、デイヴは机を叩きながらまた大声で笑った。
「もうだめだ! お前、今日呪われてる!」
「罰が二回も来た!」
「やめろって!」
シェーマスは抗議したが、とうとう自分でも吹き出してしまった。すすだらけの顔で、悔しそうに、それでも笑っている。
結局、その日のうちにレポートは終わらなかった。
イースター休暇が終わるころになって、ディーンとシェーマスはどうにか宿題を片づけた。羊皮紙の端にはまだ、黒いインクの染みと、かすかに残ったネコらしきものの跡があったが、少なくとも提出できる形にはなっていた。
一方、デイヴはというと、当然のように最後までほとんど手をつけていなかった。
そして最終的に、彼はハーマイオニーに泣きついた。
いや、正確には、泣きついたというより、談話室の椅子にふんぞり返ったまま、妙に自信たっぷりの顔で「グレンジャー、世界を救うと思って助けろ」と言ったのである。
ハーマイオニーは最初こそ眉を吊り上げたが、結局、参考にするだけという条件で、自分の宿題を見せてくれた。
そのときのデイヴは、心底得意げだった。
「やっぱり世の中、ハンサムが一番便利だな」
そう言い残して、彼は羽ペンを走らせた。
もちろん、丸写ししたことはすぐにばれた。
ハーマイオニーは羊皮紙を一目見るなり、すっと目を細めた。
「デイヴ」
その声は、マクゴナガル先生が宿題を忘れた生徒の名前を呼ぶときの声に、少し似ていた。
デイヴは羽ペンを止めた。
「……なんだよ」
「これは、私の文章よね?」
「参考にした」
「参考と丸写しは違うわ」
「ちょっと言い回しは変えたぞ」
「ええ。ところどころ無駄に口が悪くなっているわね」
それから彼は、ハーマイオニーにしこたま怒られ、結局、最初から全部書き直す羽目になった。
ディーンとシェーマスはその様子を、暖炉のそばからにやにやしながら眺めていた。
「罰だ、罰」
ディーンが小声で言うと、シェーマスはまた何かを爆発させたのか、黒焦げの顔でうなずいた。
デイヴは二人を睨みつけたが、ハーマイオニーの視線が横から刺さると、渋々また羊皮紙に向き直った。
結局、大量に出された宿題は、彼にとって春休み最後の敵となったのである。
事の発端は、フレッドとジョージがデイヴの山盛りの皿を見て、ロンを煽ったところから始まった。
「おい、ロン」
「ふぁふぃ?」
ロンはベーコンを口いっぱいに詰めこんでいた。
「食べるか喋るか、どっちかにしなさいよ」
ハーマイオニーは顔をしかめて注意しながら、きつね色に焼けたトーストへ、むらなく美しくバターを塗っている。隣ではハリーがベイクドビーンズのおかわりをよそいながら、ロンが不満そうに眉を寄せるのを面白そうに眺めていた。
ロンはごくりとベーコンの塊を飲み込んだ。だが、少し喉に詰まったらしい。慌てて熱々の紅茶で流し込もうとし、今度は熱さに目を白黒させてむせそうになる。
その一連の見事なまでに間の悪い動きを、フレッドとジョージは当然のように見逃さなかった。
「お見事、ロニー坊や」
「朝から大道芸とは感心だ」
「うるさいな!」
ようやく息を整えたロンは、少し涙目になりながら言った。
「なにさ」
フレッドとジョージは、そろってトリオとは反対側へ視線を向けた。
そこには、金の大皿にこれでもかというほど大量の料理を盛っているデイヴの姿があった。皿の上には、ソーセージ、ベーコン、卵、トースト、焼きトマト、マッシュルーム、チキンまで、まるで小さな宴会でも始めるつもりかという量が積み上げられている。
その頭の上には、渡す手紙もないのにやって来たジャックが止まっていた。黒い羽をふくらませ、堂々とした顔でデイヴの髪に爪を立て、時々、何かよこせと言わんばかりに髪の毛をくわえて引っ張っている。
「いて! さっきチキンあげたろうが!」
「くるる!」
「……。しかたねえな、ほら、これでおしまいだぞ」
デイヴは持っていたパンをちぎり、ジャックにやろうとした。
だがジャックは、頭の上からぱっと飛び降りると、ちぎられた小さな方ではなく、デイヴの手に残っていた大きな方のパンを奪い取った。そして満足げに目を細め、嘴で器用にそれをくわえる。
「……」
デイヴは一瞬、呆れたように眉を上げた。
けれど、その次に浮かんだ表情は、いつもの彼からは考えられないほど柔らかかった。悪態を吐き散らし、気に入らない相手にはすぐ喧嘩腰になり、授業中ですら面倒くさそうにしているあのデイヴが、そのときだけは、まるで幼いものを許すように目元を緩めていた。
青い目の奥に、春の朝の光が淡く映る。口元には、からかいも皮肉もない。ほんのわずかに、けれど確かに、あたたかな笑みが宿っていた。それは笑うというより、慈しむという方が近かった。自分に懐く生き物のわがままを、仕方がないと受け入れる、静かで美しい表情だった。
見てはいけないものを見てしまったように、ハリーは少しだけ目を見張った。ハーマイオニーも、バターナイフを持つ手を止めている。フレッドとジョージでさえ、一瞬だけからかう言葉を忘れた。
デイヴはそんな周囲の視線には気づかないまま、もう一度だけジャックの頭を撫でた。指先が黒い羽をそっと梳くと、ジャックは気持ちよさそうに喉の奥で低く鳴いた。
「早く失せろ、食い意地鳥」
次に出てきた言葉は、いつも通りの憎まれ口だった。
デイヴはしっしっと手を振り、ジャックを追い払う。ジャックはパンをくわえたまま、どこか勝ち誇ったように翼を広げ、大広間の高い天井へ向かって飛び去っていった。
ロン以外は、デイヴがジャックに見せた一瞬の優しい笑みに、少し心を奪われていた。
しかしロンだけは違った。
彼の視線は、デイヴの顔ではなく、デイヴが手をつけ始めた山盛りの皿に釘付けになっていた。
フレッドとジョージは、ほんの一瞬だけデイヴの表情に毒気を抜かれていた。
だが、それも本当に一瞬のことだった。
二人はすぐに顔を見合わせると、まるで同じ悪戯を同時に思いついたかのように、にやりと笑った。
「なあ、ロン」
「お前、あれ見ても何も思わないのか?」
ロンはデイヴの皿を見た。
デイヴは山のように積まれた朝食を前に、まるで普通の一人前でも食べるような顔をしている。フォークを片手に、もう片方の手でトーストをつまみ、ソーセージを切る合間にベイクドビーンズを口に運んでいた。
「別に」
ロンは口を尖らせた。
「よく食べるなとは思うけど」
「よく食べる、だってさ」
「ずいぶん控えめな感想だな、ジョージ」
「フレッド、きっとロンには自信がないんだ」
「なるほど。末っ子は胃袋も末っ子ってわけだ」
「なんだって?」
ロンの耳が、じわじわ赤くなった。
ハリーはその変化を見て、少しだけ嫌な予感がした。ハーマイオニーも同じらしく、バターを塗ったトーストを皿に戻して、眉をひそめている。
「やめた方がいいわよ、ロン」
「僕だってあれくらい食べられるぞ!」
ロンは勢いよく立ち上がった。
ハーマイオニーは深くため息をついた。
「言うと思った」
ロンは皿を手に取ると、ソーセージを何本も並べ、ベーコンを重ね、卵を二つ、三つと乗せ、焼きトマトとマッシュルームを押し込むように盛りつけた。さらにトーストを何枚も立てかけ、ベイクドビーンズをたっぷりかける。
皿の上は、もはや朝食というより、塔だった。
「いいぞ、ロン!」
「その調子だ!」
フレッドとジョージは大げさに拍手した。
「やめなさいってば。絶対に後悔するわ」
「平気だよ」
ロンは椅子に戻り、妙に真剣な顔でフォークを握った。
その頃、当のデイヴは、ロンの奮闘などまったく気にしていなかった。隣に来ていたディーンと、朝食を食べながらぼやいている。
「ホグワーツって本当に終わってるよな」
「何が?」
「フットボールの試合が見られねえ。結果も分からねえ。新聞にも載ってねえ。ここは城じゃなくて情報の墓場だろ」
ディーンは大きくうなずいた。
「わかるよ。せめて結果だけでも知りたいんだけどな」
「ラジオもねえし、テレビもねえし、新聞は魔法使いの変なニュースばっかりだしな。誰が鍋を噛むティーポットに襲われたとか、どうでもいいんだよ」
「でも魔法界じゃ大事件なんじゃない?」
「俺の中では一ミリも事件じゃねえ」
デイヴはそう言いながら、話の合間にものすごい勢いで皿を空にしていく。ソーセージを食べ、ベーコンを食べ、卵を崩し、トーストで豆をすくい、何か文句を言うたびに、皿の上から食べ物が消えていった。
ロンはそれを見て、さらに目の色を変えた。
「あいつ、喋りながら食べてる……」
「ロン、張り合わなくていいから」
ハリーが小声で言ったが、ロンはもう聞いていなかった。
「僕だって……」
ロンはフォークでベーコンをまとめて突き刺し、口へ押し込んだ。次にソーセージを二本、豆を山ほど、トーストを半分。ほとんど噛まずに飲み込もうとしている。
ハーマイオニーは顔をしかめた。
「ロン、本当にやめなさい。そんな食べ方をしたら——」
「平気だって」
そう言ったロンの声は、すでに少し怪しかった。
フレッドとジョージは楽しそうに身を乗り出している。
「さあ、ロン、いいぞ」
「ウィーズリー家の誇りを見せろ」
「二人とも、最低だよ」
ハリーが呆れると、ジョージは胸に手を当てた。
「最低だなんて」
「最高の間違いじゃないか?」
その間にも、デイヴの皿はみるみる空になっていった。
「だからさ、ディーン。せめてマグル生まれのやつだけで情報網作れねえのかよ」
「ふくろう便で?」
「いや、週一で誰かの親に試合結果まとめてもらうとか」
「それ、頼む相手によっては怒られそうだな」
「うちの母さんなら送ってくれる。たぶん手紙の最後に、帰ってきたら部屋の掃除やれって書かれるけど」
デイヴはそう言って、最後のトーストを口に放り込んだ。
ロンはその瞬間を見てしまった。
デイヴの金の大皿は、綺麗に空になっていた。
「……」
ロンは自分の皿を見た。
まだ半分以上残っている。
彼は意地になって、さらに料理をかきこんだ。ベーコン、卵、豆、ソーセージ。口いっぱいに詰めこんだまま、無理やり飲み込もうとする。
そして、突然止まった。
「……ウッ」
ハリーが顔を上げた。
「ロン?」
ロンの顔から、さっと血の気が引いていった。さっきまで赤かった耳まで、今度は青白くなっている。口を押さえ、目を見開き、まるで今にも魂だけが先に出ていきそうな顔をしていた。
ハーマイオニーは椅子を引いた。
「だから言ったじゃない!」
「ロン、大丈夫?」
ハリーが手を伸ばした、その横で、デイヴはいつの間にか立ち上がっていた。
皿は完全に空。紅茶も飲み終わっている。彼は実に満足そうな顔でナプキンを置くと、何事もなかったように言った。
「ちょっとウンコ」
「食事中だぞ!」
ディーンが即座に頭をはたいた。
「汚いよ!」
シェーマスも横から肩を叩く。
「いてっ。なんだよ、出るもんは出るだろ」
「言い方があるだろ!」
「じゃあ優雅に脱糞してくる」
「もっと悪い!」
ディーンとシェーマスにしばかれながら、デイヴは悪びれもせず大広間を出ていった。
その数秒後だった。
ロンが、とうとう限界を迎えた。
「うぷっ」
「ロン!」
ハリーが叫んだ。
次の瞬間、ロンは盛大に吐いた。
しかも運の悪いことに、ちょうど隣を通りかかったネビルのローブに、べったりとかかってしまった。
ネビルは立ち尽くした。
目を丸くし、両手を中途半端に浮かせたまま、自分のローブを見下ろしている。
「……僕の……ローブ……」
大広間は一瞬静まり返り、それからあちこちで悲鳴と笑い声が上がった。
フレッドとジョージは机に突っ伏して笑っている。
「ロン、芸術点は高いぞ!」
「ただし方向性が最悪だ!」
「黙ってよ!」
ロンは涙目で叫んだが、顔色はまだ真っ青だった。
ハーマイオニーは慌ててナプキンを取り、ハリーはネビルに謝り、ネビルは泣きそうな顔で「だ、大丈夫」と言っていた。まったく大丈夫そうではなかった。
そこへ、鋭い足音が近づいてきた。
マクゴナガル先生だった。
彼女は惨状を一目見るなり、唇をきつく結んだ。ネビルのローブ、ロンの青い顔、笑いをこらえきれていない双子、そしてまだ山のように残ったロンの皿を順番に見て、静かに言った。
「ミスター・ロン・ウィーズリー」
ロンはびくりと肩を跳ねさせた。
「はい……」
「大広間は競技場ではありません。ましてや、無謀な大食いを披露する場所でもありません」
「すみません……」
「グリフィンドール、十五点減点です」
グリフィンドールの席から、ああ、という声が漏れた。
フレッドとジョージはそれでも笑っていたが、ハーマイオニーにものすごい目で睨まれて、ようやく口を閉じた。
ロンはぐったりと椅子に沈み込んだ。
「もう二度とやらない……」
ハリーは同情しながらも、少しだけ笑いをこらえていた。
そしてその頃、デイヴは何も知らずに廊下を歩きながら、ディーンとシェーマスに叩かれた肩をさすり、ぼそりと文句を言っていた。
「なんで俺が怒られんだよ。自然現象だろ」
気づけば初投稿から一年過ぎてて驚いた自分がいたんだよなぁ!!!
これからもよろしく。
次はなるべく早く投稿するでお。