《Testament of the Last Warden - 世界が歩み始めた日》   作:ケン3ヴァルデン

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エピローグ

 

 

【再編ヴァルデン手記】

 

 

門番はついに、その扉を開いた。

誰が為に。何の為に。

語られざる使命を胸に、ただ、扉を開いた。

 

それは人知の届かぬ禁忌の機構。

あらゆる種が知らずして拒んできた、

最初の扉。

だが、鍵はずっとそこにあった。

 

集合体精製機、精霊を生み出す装置。

かつて病を癒すものでも、力を与えるものでもなかった。

しかし彼らはそれに未来を見出した。

 

彼女は遙か昔、誰にも祈られぬままにその座を捨てた。

祈られぬ神は、守護者にすらなれない。

だから彼女は選んだのだ。

後に続く者へ、その雷を託すことを。

 

 

終わりが来る、世界に。

だが、始まりもまた、そこから生まれる。

 

古き禁忌は未来への架け橋となり、

赤黒き炎に焼かれた蒼い英雄は、人々の願いと共に立ち続けた。

誰もが“救世主”を欲した。

だがそれは、もはや誰か一人の名ではない。

 

人類そのものが、試されている。

 

それが、この世界に灯った最後の希望か、あるいは新たなる絶望か。

それすらも、未だ知る者はいない。

 

人はーー覚醒へと至った。

 

 

 

 

傷は深く、癒えぬ者もいたが、それでも朝は訪れる。風は穏やかに流れ、遠くで鍛冶槌の音と、精霊の囁きが交じり合う。

 

そんなある日の中庭。

セイロスの背に、声が飛ぶ。

 

「ねえ、セイロス」

「……うん?ああ、ティリアか。どうかしたかい?」

 

振り返った彼の手には、書類の束がある。

だがティリアはそれには目もくれず、腕を組んで彼をじっと見つめた。

 

「…エルフ相手には“変質者”みたいに熱心なのに、ドワーフにはそんな態度じゃなかったよね」

「ふふ、観察眼が鋭いね」

 

セイロスは鼻で笑い、肩をすくめた。

 

「美というのはね、種族ごとに異なる。エルフは可憐で美しい。まるで精霊がそのまま姿をとったように繊細だ。それに比べてドワーフはその筋骨と鍛錬の技、手にした鉄槌に宿る誇りが美しいんだよ」

「……へぇ?」

「人には人の、ドワーフにはドワーフの、エルフにはエルフの美がある。それに好みの問題でもある。僕は君たちエルフが好きなんだ。」

 

セイロスはさらりと、詩を朗読するように言ってのけた。ティリアは少しの間、ぽかんとして彼を見つめていたが――

ふいに顔をそらし、耳まで赤くして言った。

 

「~~~っ! やっぱり変質者じゃない!」

 

そう叫んで踵を返したティリアの耳は、ずっと真っ赤なままだった。

セイロスは肩をすくめ、歩き出した。

 

 

 

――暗い。

 

その場所は、どこまでも沈んだ闇だった。

灯の一つも点らないのに、そこには無数の黒い鏡が並び黒い眼のようにこちらを睨んでいる。

金属の匂いと、焼け焦げたなにかの残り香。かすかに聞こえる、何かの稼働音。

 

そして、その中心。

 

「……足りない……まだ足りない……」

 

呻くような声が、低く、どこか歪んだリズムで漏れ続ける。

 

ひとりの男が、深い椅子に沈んでいた。

背中は丸まり、身体は痩せ、髪は抜け落ち。

その手――いや、爪はすでに赤黒く染まり、親指からは血が滴っていた。

それでも彼は、なおも爪を噛むことをやめない。

 

「種の……限界を超えるには……」

「血ではない……思考でもない……記録の外に……在る……!」

 

ぶつぶつ、ぶつぶつ、脈絡もなく呟き続ける男の胸元には、朽ちかけた名前が揺れていた。

 

「Dr. I. Mazov」




仕事忙しくて更新出来んズラ
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