仮面ライダーヴァレン・オーブエトワールショコラ   作:Ryo-ka

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半透明に広がる世界(挿絵有り)

「あーあ、ベロルス君も倒されちゃった。」

 

 どこかのビルの屋上から少し離れた場所で青空に向かって立ち昇る黒煙を見つめ、ニエルブはそう呟いた。フェンスに背中を預けてため息を一つ。眼鏡を外してレンズをハンカチで拭き始めた。

 

「でも、ベロルス君が実験体になってくれたおかげでマーゲンさんの手術も上手くいった。まぁ、そのマーゲンさんも?赤ガヴに倒されちゃったわけだけど。ふふっ......」

 

 苦笑して目を細める。ニエルブは綺麗になった眼鏡のレンズを通して黒煙を再び眺めると少し口角を上げて、屋上の出入り口用の扉に向かって歩き始めた。眼鏡を掛け直し、ドアノブに手をかける。重い金属の扉にストマック社のマークが浮かび上がった。

 

「次は君の番だよ......ジープ。」

 

 重い扉をゆっくりと閉め、軋むような音だけが誰もいない屋上に響いていった。

 

 

 

 

 

 

 ベロルスを倒した俺はあそこから少し離れた場所にある大きめの公園にいた。遠くから消防車のサイレンのような音が聞こえてくる。たぶん俺がベロルスと戦った場所だ。結構、爆発してたし騒ぎになる前に退散したのは正解だったな。公園に設置された自販機に小銭を入れてボタンを押す。ガコンという音を立てて缶の飲み物が二本出てきた。それを持って歩き出す。

 

「わりぃ、遅くなった。」

 

 ベンチに座ってぼーーっと空を眺める広の前まで来ると手に持っていた缶を手渡した。細い両手で受け取るとプルタブに手をかける。

 

「ありがとう。」

 

「これで、今日あったことは秘密にしてくれるか?」

 

「うーんどうしよう、かな。」

 

「やっぱ......これだけじゃ足りないか?」

 

「ふふ......冗談。いいよ、おもしろかったし。貴重な体験をした。」

 

「面白かったって......」

 

 やっぱり変なやつだ。普通、化け物と出会ってそういう感想が出てくるか?広は自分の横に空いたベンチのスペースをポンポンと叩くと俺を見上げた。なんだ?座れって言ってるのか?まぁ、俺も戦ったばっかで疲れてるし休ませてもらうか。広の横に座って自分のために買った缶コーヒーのプルタブを開けた。

 

「絆斗はコーヒーのブラック?わたしのは、チョコラテ。」

 

「あぁ、好みが分からねぇから無難なやつにした。」

 

「チョコ...好きなの?」

 

「別に好きってわけじゃねぇよ。......甘いもの苦手だし。でも、なんか俺=チョコレートってイメージになってる。」

 

 仮面ライダーヴァレンって名前が元々チョコレートくんって呼ばれるのが嫌でチョコ繋がりでバレンタインデーから名付けたからな。あそこから俺とチョコレートは切っても切れない関係になったような気がする。これからもずっと俺=チョコレートなんだろうな。

 

「そうなんだ。絆斗は、いつから戦ってるの?」

 

「去年の秋になるか、そんくらいの時から。でも、モンスター...グラニュートに出会ったのはもっと前だ。」

 

「もっと?」

 

「ガキの頃、母ちゃんを目の前で攫ったんだ。それからずっと母ちゃん攫ったグラニュートを探してる。なぁ......広。俺はそのグラニュートと会った時、どうすればいいと思う?」

 

「どうすればいい、って?」

 

「もし、そいつがもう人を襲わなくなってて。改心してた時だ。俺はずっとそいつに復讐するってことだけを考えて生きてきた。もちろん今でも人を襲っているなら、すぐにでも......」

 

 俺は拳を強く握りしめる。今でもあの日のことを鮮明に思い出せる。母ちゃんと最後にした会話もはっきりと。ずっと憎くて仕方なかった。十八年間、一人で探し続けてようやくここまで辿り着いたのに。最近になって、もし改心してたらって考えちまうようになっちまった。100%ありえねぇのに。

 グラニュートは絶対に許さない。この手で全員ぶっ潰す。それなのに......ショウマやラキアと出会って、グラニュートにもいろんな奴がいるってことを知って、分かんなくなっちまった。

 

「変な話して悪かったな......忘れてくれ。」

 

「許さなくていいと思う。」

 

「え?」

 

「わたしは今の話を聞いて、許せないって思った。大事なのは絆斗にとって最善の選択をすること。」

 

「最善の選択......」

 

「過去は、変えられない。変えられるのは、未来だけ。後悔が残る選択だけはしてほしくない。一瞬の感情に身を任せないことが大切。......絆斗、できる?」

 

「なんだよ......それ。」

 

 広は一心に俺のことを見つめた。俺のことを心配しているようなそんな目。広が言ってることは正しい。一瞬の感情に身を任せる。俺がよくやっちまうことだ。数え切れないほどの後悔をしてきた。俺もこれ以上、後悔はしたくねぇ。

 

「じーーーーーー」

 

「分かったよ。一瞬の感情に身を任せねぇ、これでいいか?」

 

「うん。それでいい。」

 

「......ありがとな、広。おかげで少し気が楽になった。」

 

 俺は息を肺いっぱいに吸い込んで立ち上がる。頭の中にかかってたモヤが少し晴れたようなそんな気がした。そして、あることを思い出した。

 

「そういや、俺に聞きたいことがあるって言ってたな。」

 

「うん。それはね......」

 

 広はそう言うと俺の前に立って顔を見上げた。いつになく真剣な眼差しだ。緊張感がある。先ほどまでそよ風で揺れていた歯が揺れる音や環境音が消えて、静まり返っていく。第一声なんていうのか、思わず息を飲む。

 

「ちょうど一週間後、わたしのライブがあるから見に来てほしい。」

 

「へ?」

 

「予定、空いてる?」

 

「たぶん、空いてると思うけど。」

 

「よかった、これで安心。」

 

 少し拍子抜けしてしまう。肩の力が風船から空気が抜けていくような感覚だ。

 

「そのあと、わたしのインタビュー記事を書いてほしい。」

 

「って仕事の依頼かよ!!」

 

「うん、プロデューサーが良いライターはいませんか?ってボヤいてたから。絆斗を推薦した。ユニットの時に記事を書いてくれた人って説明したらOKだって。」

 

「勝手に話が進んでる......」

 

「だめ?」

 

「俺はフリーライターだぜ。仕事は選ばない。あぁ、任せとけ!」

 

「ふふっ...ありがとう、絆斗。」

 

 広はそう言って微笑むと広の服のポケットから着信音が鳴った。ポケットからスマートフォンを取り出し、画面を見つめる。少し微笑むと

 

「プロデューサーから。そろそろ、初星学園に戻らない、と。」

 

「そうか、悪かったな付き合わせて。俺もそろそろいくわ。じゃあ...」

 

「絆斗。」

 

 俺が別れを告げようとした瞬間、広が割って入る。広が割って入るなんて珍しいと感じた。

 

「また、ね。」

 

 広はそう言うと優しく微笑んで小さく手を振った。風が吹き、広の長い髪の毛を静かに揺らす。俺は広と出会ったあの時のことを思い出した。最初はこんな奴がアイドルなんてやれるのかと思った。でも、違った。ライブの姿や普段の広と会話をするうちにコイツは代わりを用意できない唯一無二のアイドルとそう感じたんだ。あの時、偶然あそこに行かなければ広には出会えなかったんだろうな。

 

「あぁ、そうだな。これが最後の別れなわけねぇもんな。......おう、またな!」

 

 

 

 

 

 

 初星学園の門の前、スーツを着た一人のプロデューサーがきょろきょろと周囲を見渡していた。眼鏡の位置を直してソワソワしている。そこに広は駆け寄った。プロデューサーは広を見つけた瞬間、険しい表情を浮かべながらもすぐに安堵のため息を吐いた。

 

「プロデューサー、待った?」

 

「広さん。ええ、待ちましたよ。」

 

「ふふっ、なんだかデートの待ち合わせみたい、だね。」

 

「悠長なこと言ってないで行きますよ。今日はライブの打ち合わせですから。」

 

「はーい。」

 

 広は幸せそうにプロデューサーの横にぴったりとくっついて同じ歩幅で歩き始めた。広の歩くスピードに合わせてプロデューサーがスピードを合わせている。ゆっくりだが、このスピードが一番いい。広は隣に立つプロデューサーを見上げた。彼が着るスーツのネクタイには広が彼にプレゼントしたフクロウの羽の形をしたネクタイピンがついていたからだ。それを見て、少し頬を赤らめながらくすっと笑う。プロデューサーも広の方へ目線を向けるとあることに気がついた。

 

「それ、どうしたんですか?」

 

「それ?」

 

「服が少し擦れてます。そう、そこです。」

 

 プロデューサーが目線を向ける先、確かにいつも羽織っている服に擦れた跡ができている。たぶん、これはヴァレンとベロルスの戦闘を見ていた時についた跡だ。広はどう返答するかどうか少し考えた後、こう言った。

 

「さっき、転んだ。」

 

「嘘が下手ですね。本当はどうしたんですか?」

 

「友達との秘密......プロデューサーには、ナイショ。」

 

 無邪気にそう言うと口元に人差し指を立てた。それを聞いてプロデューサーはくすっと笑う。

 

「なら、仕方ないですね。」

 

 

 

 

 

 

 広と別れたあと、俺は駅に向かって歩いていた。だが、一向に駅まで辿り着かない。広と別れた時にカッコつけずに広とは逆方向に向かって歩くんじゃなかった。でも、あんなこと言ったあとに同じ方向に歩いて帰るのってどうなんだ?スマートフォンの地図アプリを開いてルートを確認する。歩いていくのに結構かかるな。そんなことを考えていると俺の前を一台のバイクが過ぎて行った。

 

「こーいう時にバイクがあると便利だよな。」

 

 そう呟くと俺が肩から掛けているバッグの中がゴソゴソと揺れ始めた。ゴチゾウが暴れてる?バッグを開くと一匹のゴチゾウが飛び出してきた。そのゴチゾウを慌ててキャッチするとピンク色のキャンディーのゴチゾウだった。

 

「イート!キャンディー!」

 

「お前、ショウマのゴチゾウだよな。間違って俺のバッグに入っちまったのか?」

 

「イート!イート!キャンディー!」

 

 何かを訴えかけている。そういえばこのゴチゾウって確か。俺が持ってるヴラスタムギアってチョコドンを入れたら銃が出てきて、ケーキのゴチゾウを入れたら武器が出てきたよな。なら、もしかして!!俺は慌ててバッグからヴラスタムギアを取り出すとレバーを下げて、準備をした。

 

 

『ヴラスタムギア』

 

 

「いけるか?」

 

「キャンディー!」

 

 

『プルイン!』

 

 

 ピンク色のキャンディーのゴチゾウをヴラスタムギアの天面に押し当てる。ゴチゾウが中へと吸収されて、ヴラスタムギアから勢いよく道路に向かって一台のバイクが出現した。ご丁寧に座席部分にヘルメットまで置かれている。

 

「ナイスだぜ!コレコレ、ショウマがいつも乗ってるバイク!!」

 

 俺はバイクに駆け寄ると前を見つめた。無限に広がる青空の下に大きな街が広がっている。爽やかな春風が「すすめ!」って言ってるみたいに吹き抜けていくのを感じる。普段は電車の移動ばっかりで知らない場所、行ったことがない景色がたくさんあるかもな。そう思うと自然と胸が高鳴ってきた。よし、このままどこまでも走ってやるか!

 

 

「目指せ!俺の新天地!!へへっ......なんてな。」

 

 

 バイクにまたがるとヘルメットを被ってバイクのハンドルに手をかけた。エンジンをかけて一気に走り出す。全身に受ける風が心地いい。前方に見えて過ぎ去っていく景色がどれも新鮮でワクワクするもので溢れている。

 俺達が生きるこの世界はうまくいかないことばかりだ。透き通っているほど綺麗でもねぇ。かと言って、汚れ切ってもいねぇ。だからこそ、俺達は走り続ける。この先の未来がどうなるか見るために走り切ってやるんだ。

 

目指す先に『夢』っていうキラキラ光る景色が広がり続ける限り、ね。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ここまで読んでいただきありがとうございました。最初はただ自分の好きな作品同士で小説を書きたいというただの思いつきでした。それでも、皆さまが応援してくださったおかげで無事に最後まで書き切ることができました。
 感謝してもしきれません。仮面ライダーガヴから入ったという方も、学園アイドルマスターから入ったという方も楽しんで読んでいただけたなら幸いです。私の人生を彩ってくれた仮面ライダーガヴと学園アイドルマスター、どちらの素敵な作品ですので本編に興味を持ってくださると嬉しいです。

これからも二次創作の小説やオリジナルの小説も執筆していきたいと思いますので、応援してくださると励みになります。

また、どこかの物語でお会いしましょう。
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