八崩賢 極致のシーア   作:蟲の月

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あけましておめでとうございます!


14/機械仕掛けの神

 

 

 

 

 

 この世の全ての事象は、今を必死に生きている存在の様々な選択の果てに生まれた、いわゆる軌跡の結果だ。

 俺は魔法を通じて自らの歩む軌跡を見る事で、限定的だが未来を観測する事が出来る。

 未来視という括りの中で言うのなら、シミュレーション式の観測方法だと言えるだろう。

 様々な可能性の海を漂い、魔族の繁栄に繋がる分岐をひたすら求め、そして導く為に俺はこの魔法を使ってきた。

 これまでもそうだったし、これからもそうだろう。

 しかし……。

 

 

「こんな、馬鹿な事が」

 

 

 全てを見てしまった。

 全てを識ってしまった。

 こんな事、本当に信じられない。

 それでも、これは真実だと世界は告げる。

 あまねく全てが消えゆく運命と知った。

 この世の何もかもが、定められた事象だと理解した。

 

 

「…………認められない」

 

 

 今まで、様々な果てしない分岐を観測し生きてきた。

 自らが歩む軌跡の世界に何千回も潜り続け、よりよい未来を手繰り寄せようと抗ってきたつもりだった。

 千年後の魔族の為に、同胞を切り捨ててでも。

 しかし、これはその全てを根幹から否定する物だ。

 

 

『なあシュラハト、信じられるか? ここは『葬送のフリーレン』っていう作品の世界なんだぜ。俺達が生きているのは作られた世界なのさ』

 

 

 認めない。

 認められない。

 こんなもの、断じて認める訳にはいかない

 未来を観測する俺にとって、ソレが容易く変化する物だと言うのは何よりも深く理解していた。

 だからこそ、破滅の未来に抗う為に、今までか細い救いの糸を探し続けてきたのだ。

 それだけに、この事を認める訳にはいかない。

 未来は様々な選択の積み重ねによって掴み取る物ではなく、俺の葛藤や決断も含めて最初から定められていた物だったなどと。

 

 

「…………っ」

 

 

 ならば始めから全てそうだったとでも言うのか。

 俺達は今まで、超常の手のひらの上で、何も知らずに無様に踊っていたとでも言うのか。

 俺達魔族が辿る結末も。

 この世界の幻想の終着点も。

 俺のたった一つの願いでさえも。

 全て、最初から決まっていた事だったのか。

 

 

『お前は最後に、南の勇者に敗れて死ぬのさ』

 

 

 ああ。

 聞き覚えのある声だった。

 もう何度も見聞きし、言葉を紡いだ友の声だ。

 最初は、何を馬鹿な事を言っているんだと思った。

 コイツは絶望的なまでに冗談が下手だとも。

 でも、それが定められた世界の理だった。

 嘘ではなく、残酷なまでに理不尽な世界の真実なのだ。

 本当に、質の悪い冗談みたいだ。

 

 

「南の勇者に殺され、魔王様が討ち取られ、それすら良しとしていた俺の考えも、その全てが決められていた事だった」

 

 

 胸の内に巣食うドス黒い感情を吐き出すように、一つ一つの言葉に憤怒と絶望の念を込めながら、俺はそう呟いた。

 

 

『この世界の終着点は恐らく決まってんだよ。

 お前が死ぬ事は既定事項で……いや、そもそもお前が未来を視る魔法を使う事も、全知のシュラハトとして名を上げる事も、そうして最後に殺される事も。全部机の上で考えられた事象なんだ』

 

 

 友の声が残響する。

 この世の外からやってきた、定められた理に縛られない友の声が。

 

 

『お前が為そうとしてる事の全てが、一人の人間によって考え出されたアイデアでしかない』

 

 

 やめろ。

 何もかもを信じられなくなる。

 この思考ですら、俺の物ではない錯覚に陥ってしまう。

 

 

『お前はひと山いくらのお人形さんでしかないのさ。役目を終えたら片付けられて、埃に塗れて眠るだけ。そりゃそうだよな、出番が無いのに舞台に残られ続けても邪魔なだけなんだから』

 

 

 虚無感が全身を支配する。

 諦観と絶望も胸の内に次々と生まれてくる。

 

 

『「葬送のフリーレン」って舞台の主役は俺達じゃなくてフリーレンで、そしてお前はただの敵役幹部Aさ』

 

 

 次第に身体から力が抜け落ちた。

 何をする気力も、何かを為す気概も無くなってしまった。

 

 

『でもさシュラハト。この世界には俺が居るんだよ。本来の舞台には登場しないイレギュラーである俺が』

 

 

 そう言って、ソイツは俺に手を差し伸べてきた。

 意図がわからず、俺はソイツの顔を呆然と見上げる。

 

 

『全部が決まってる展開だなんて、俺たちが作られた存在だなんてクソ喰らえだよな、シュラハト』

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、心臓が高く飛び跳ねた。

 身体の奥深くから熱い何かが込み上げてくる。

 今まで一度も感じた事のない強烈な衝動が、諦観に包まれ項垂れている俺の身体を突き動かそうと湧き上がってきた。

 ソイツの手を取って力強く立ち上がる。

 友の歓喜と期待に応えるべく、真っ直ぐにソイツの瞳を見つめ返した。

 

 

『俺と一緒に、こんな世界ぶっ壊しちまおうぜ……!!』

 

 

 ああ、そうだ。

 そうだよな、シーア。

 定められた未来などクソ喰らえだ。

 俺達は手のひらの上で踊る人形でもなければ、物言わぬ舞台装置なんかでも決してない。

 未来を担っていいのは、今を生きる命だけだ。

 自分達の作った箱庭を上から眺めているだけの存在に、その事を分からせてやる。

 だから。コイツと一緒に、世界をめちゃくちゃにぶち壊してやろうと思った。

 

 

 

 

「ハッッ!!」

 

 

 火山の噴火の如き爆発力を秘めたシーアの拳が、リヴァーレの胴を守らんとする両腕ごとその防御を貫いた。

 バキバキバキッ! と何かの折れる鈍い音が、衝撃と共にリヴァーレの身体の中に響き渡った。

 

 

「ぐっ……!」

「逃すかよ!」

 

 

 身体を貫く衝撃に身を任せ、そのまま距離を取ろうとするリヴァーレの意図を一瞬で看破したシーア。

 逃さないし、一息つく時間なんて与えない。

 思考は一瞬。シーアは即座に追撃を仕掛けた。

 拳を振り上げ、ひたすらに振り下ろす。

 何度も何度も繰り返し、殴る。

 リヴァーレの攻撃の出を感知した瞬間から拳を叩き込み、無理矢理相手の攻撃を抑える超脳筋戦法。

 シーアのやっている事は、簡単に言えばただの殴打だ。

 ただの殴打とは言っても、間隔が脅威的なまでに短く、相手に反撃する暇を与えない超スピードの殴打である。

 

 

 ーー無呼吸連打。

 

 

 とある死刑囚が得意とする、呼吸を挟まない事で絶え間ない打撃を相手にぶち込む、超人的心肺機能に物を言わせた戦法である。

 しかもその使い手はただの人間ではなく、魔法によって己の身体能力を極限まで高めた幻想の種族だ。

 打撃の質も、無呼吸の時間も元のソレを遥かに凌駕する。

 

 

「うおぉッああッ!!!」

「くっ……動けんな……!」

 

 

 絶え間ない連撃の嵐。

 拳の一振りに大地を割る程の威力が内包されていて、蹴り足には大気を切り裂く程の鋭利な魔力が付属されている。

 そんな圧倒的な暴力に無抵抗で晒されているにも関わらず、リヴァーレは未だに倒れる気配は無かった。

 驚くべき程の耐久力だ。

 

 

「クソが! お前どんだけしぶといんだよ!」

 

 

 間違いなくコイツの身体にダメージは与えている筈だ。

 だが奴の瞳には、まだ熱い戦意が灯り続けていた。

 何なんだよ、コイツマジで頑丈過ぎやしないか。

 リヴァーレが、アイゼンやシュタルクをも超える優れた戦士である事など分かり切っていた。

 俺が真に懸念すべきだったのは、リヴァーレの力や武ではなく、コイツの異常なまでの耐久力だったのかもしれない。

 

 

「ハアッ、ハアッ……!」

 

 

 まずい、もう息が持たない。

 まだ息が続く今の内に仕留めなければ、リヴァーレに反撃の隙を与えてしまう事になる。

 奴の鉄壁の防御を崩すにはもっと殴打の速度を上げなければならないが、しかし無呼吸で動くにも限界がある。

 両腕で顔面を守っているリヴァーレをひたすらに殴り続けるが、殴る側も案外疲れるのだ。

 疲労と酸欠で、少しだけ殴打のペースが落ちてしまう。

 顔面を庇っている両腕の隙間から、リヴァーレの口が三日月のように歪んでいくのを見てしまった。

 

 

「手が止まっているぞシーア、もう限界か?」

「う……る、せえ!」

「今のは良い連撃だった。反撃する隙を与えない超高速の殴打。俺以外の魔族であれば死んでいただろうな」

「ハアッ……ぐっ!」

「だがこれくらいの攻撃で倒れてしまう程度なら、俺は魔族最強の戦士などとは名乗っていない。お前には、反撃する事すら叶わぬ本物の連撃とやらを見せてやろう」

 

 

 そう言ってリヴァーレは、血に塗れた己の顔面を腕で乱暴に拭い去ると、俺に向かって拳を真っ直ぐに叩き込んできた。

 

 

「ぐっ……ううっッ……!」

 

 

 あまりに重く、あまりに鋭いリヴァーレの突き。

 俺の昇華された身体ですら、叩き込まれる拳の一振り一振りに耐え難い苦痛を感じてしまっている。

 反撃する為に拳を振り上げようとしても、それを目敏く察知したリヴァーレが先回りして殴打を繰り出してくる。

 まるで先程の展開の焼き直しだ。

 違うのは立場が入れ替わった事程度で、そして状況は時間が経つごとに悪化する一方だ。

 幾ら魔法による強化が掛けられているとは言え、こんな脳筋ゴリラの攻撃をいつまでも受けていられる筈もない。

 だからこそ反撃してこの暴虐の嵐から抜け出さなければならないが、この無呼吸連打はそういった反撃を封殺する物なのだ。

 ああ、何て性格の悪い技だ。この技を生み出した死刑囚のニヤケ面が脳裏を過ぎった。

 

 

「どうしたシーア、手の打ちようがないか」

「…………ッ!」

「俺と並び立つ程の戦士ならこの程度でくたばってくれるなよ。力に秀でているのならそれに合った打開策を見出してみせろ。出来なければ死ぬだけだ」

 

 

 リヴァーレは乱雑に拳を叩き付けながらも、悠長に口を開いて俺に語りかけてきた。

 何かを愉しむように笑いながら。

 無様な物を見るように見下しながら。

 そんな奴の表情を視界に入れた瞬間、耐え難い程の怒りが身体の奥底から湧いてきた。

 上から目線で嘲りやがって……!

 その憤怒を拳に乗せて発散しようにも、リヴァーレの猛攻によって繰り出す事を阻止されてしまう。

 

 

「愉快な顔をしているなシーア。力一辺倒だけで俺を倒せると思っていたなら、それは見通しが甘いと言わざるを得んな。力だけが戦の勝敗を決める要因ではないと知れ」

「…………!」

 

 

 身体に蓄積されていく打撃の鈍痛を確かに感じながら、シーアはリヴァーレの言葉を脳内で反芻させていた。

 この状況を打破するには力以外の"何か"が要る。

 シーアは己の身を痛ぶる殴打の感触と、心を焼き焦がす憤怒と屈辱の念に責められながら、意識を自らの内側へと堕としていった。

 

 

 

 

 根本から抉れた倒木に腰をかけながら、二人の魔族は肉が肉を穿つ鈍い音を聞いていた。

 ここから少しだけ離れた場所で行われている激闘。

 それをぼんやりと眺めながら、二人の魔族の内の片割れが口を開く。

 

 

「あの様子だとリヴァーレが勝ちそうね。適当な所で止めた方が良いと思うけど。じゃないとシーアが死んじゃうわよ」

「この二人の戦いは必要な事だ。止めるのはもっと後でも構わない」

「シーアを見殺しにする気? 私は別にどうだっていいけど、人手が少なくなって忙しくなるのはゴメンよ」

 

 

 事もなげにソリテールはそう言い捨てると、頬杖をつきながら再び目の前の戦闘に視線を戻した。

 シュラハトに何を言っても無駄だという事は、ソリテール自身何よりも理解しているつもりだ。

 シュラハトが構わないと言っているのだから、ここはその言葉通りに手を出さない方が良いのかもしれない。

 しかし。

 

 

 ーー何かを企んでいるわね。

 

 

 二人の激闘を食い入るように見つめているシュラハトの横顔を盗み見ながら、ソリテールは思考に耽る。

 シュラハトの行動理念など、たかが一魔族に過ぎないソリテールに理解出来る筈もない。

 彼は未来を観測し、シュラハト自身が思い描く在るべき未来へと物事を誘導し、実際にその通りに事を進める。

 そして現時点で分かっているのは、シュラハトは魔族にとってより良い未来を探し求めているという事だ。

 ならば、現在進行形で繰り広げられているこの戦いは、未来の魔族にとって吉となる出来事なのだろうか。

 

 

 ーー血と汗を撒き散らしながら、周囲の被害も気にせずに暴れ回っているこの状況が?

 ーー私にはとてもそうは思えないけど。

 

 

 こんな野蛮な光景が、未来の魔族に一体どんな影響を齎すというのだろうか。

 血生臭い雰囲気に当てられて、魔族全体が好戦的となり、敵対する人類を一気に滅ぼし尽くす……とか?

 魔族全体がシーアのような考え無しのイカれた狂犬になるのなら、それは魔族という種の滅亡を意味するのではないか。

 ソリテールはそんな事を考えるが、魔族全体の繁栄を願うシュラハトがそんな愚行をする筈がないと考えを取り消した。

 

 

 ーー結局の所、シュラハトが何を考えているかなんて私には分からないわね。

 

 

 ソリテールが最後にそんな結論に辿り着くのは、ある種当然とも言える事だった。

 先を視る者と、今しか視られない者の視点は違う。

 シュラハトがどんな思考を抱き、どんな未来を思い描いていようとも、結局今を生きるしかない私はシュラハトの手のひらの上で踊るしかないのだから。

 

 

「私達はいつだって君に従うしかないのね。前を歩く親の背中を、ただ考えもせずに着いて行くだけの鳥の雛みたいだ」

「未来は常に今を生きる者達の手で築き上げていくものだ。俺もお前も……誰であろうとそれは変わらない。変わってはいけない」

 

 

 未来を視る存在が、未来は自分達で作り上げる物だと言う。

 未来に起こる全ての事象を把握しているのなら、未来など容易く変化させられるだろうに。

 内心に浮かんだ言葉を口から出す事はなく、ソリテールはただ無言でシュラハトの言葉を聞き入れた。

 何をしようとも、何を為そうとも。

 それら全てはシュラハトの意思の下にあるのだ。

 ソリテールは考える事をやめて、ひたすらに痛ぶられ続けているシーアを眺める事にした。

 

 

 

 

「あの様子だとリヴァーレが勝ちそうね。適当な所で止めた方が良いと思うけど。じゃないとシーアが死んじゃうわよ」

 

 

 今まで静かに戦闘を眺めていたソリテールが口を開く。

 同胞が死に行く可能性があるにも関わらず、ソリテールの言葉に含まれる感情は心配や不安などでは決してなかった。

 ただ自らに面倒事が降りかかってくる事を懸念しているだけの、個人主義の魔族らしい思考回路だった。

 

 

「この二人の戦いは必要な事だ。止めるのはもっと後でも構わない」

「シーアを見殺しにする気? 私は別にどうだっていいけど、人手が少なくなって忙しくなるのはゴメンよ」

 

 

 ソリテールが何かを言っているが、もはや俺の耳には彼女の言葉など届いてはいなかった。

 必要な事。

 その短い言葉の中に含まれている本当の意味を、当然ソリテールは理解出来ないだろう。

 俺も、理解して貰おうと思って口に出した訳ではない。

 力だけが取り柄の魔族を、数多の死線を潜り抜けてきた魔族最強の将軍にぶつけ殺し合わせる事で、さらに上の段階へと押し上げる。

 その為には今までのような生温い戦場ではなく、強烈な危機感を抱いてしまうような地獄に突き落とすしかない。

 理不尽が作り上げた箱庭をめちゃくちゃにぶち壊すには、並の魔族程度の力では到底足りないからだ。

 今のシーアは想像以上に脆い。

 確かにアイツの『力』には目を見張る物があるが、それ一本で世界を相手取れる程現実は甘くない。

 

 

 ーーだから、もっと強く在れ。シーア。

 ーーこの世界をめちゃくちゃにぶち壊すという大きな夢を、今一度俺に見せてくれ。

 

 

 だからこそ、シュラハトは希う。

 遠い未来で己に手を差し伸べてくれた友の幻影に導かれ、シュラハトはここまでやってきたのだ。

 絶望から救い上げてくれた未来の友を、世界の極致へと導く為に俺は地獄の死線を用意したのだ。

 こちらの様子を伺っているソリテールを視界の端へと追いやりながら、シュラハトは暴れ回っているシーアを見据えた。

 リヴァーレという暴虐に喰らいつく暴力。

 シーアがまだ生まれて数年しか経っていない事を考えれば、リヴァーレとまともに殴り合えるだけ上出来なのだろうが、それでも俺達が挑むのは全てを生み出した理不尽の極致そのものなのだ。

 この程度の逆境を乗り越えられなくて何が最強だ。何が力の極致だ。

 

 

「シーア、お前は俺の最後の希望なんだ」

 

 

 形勢が逆転し、リヴァーレによる殴打をその身に浴びているシーアを見ながら、シュラハトは静かに呟いた。

 その無機質な瞳には、理不尽な現実に打ちひしがれた己に手を差し伸べてくれた、在りし日の友の姿が浮かんでいる。

 

 

『俺と一緒に、こんな世界ぶっ壊しちまおうぜ……!!』

 

 

 意識を浮上させて、再び二人の死闘に目を配る。

 リヴァーレにただ一方的に殴られているだけだったシーアが、その嵐のような殴打の中に拳を滑り込ませ、打撃の猛攻を防ぎ切ろうと足掻いていた。

 隙間のない拳の雨霰の中に、水鉄砲のようなシーアの正拳突きが一つ放たれる。

 そうして出来上がった僅かな隙に、何度も何度も拳や蹴りを滑り込ませて、そして徐々に攻勢へと転じていった。

 遠目で見るリヴァーレの顔に、少しだけ驚愕と感心と畏敬の念が表れている事を、シュラハトは見逃さなかった。

 

 

「おおぉッッああぁッッ身躯を昇華する魔法(ルシフェラーゼ)!!」

 

 

 二人が戦闘を繰り広げている所から、俺達二人が居る所までだいぶ距離が開いているというのに、シーアのその雄叫びは何よりも力強く届いてきた。

 大気が揺れ動いているのが分かる。

 心なしか、大地も隆起していた。

 シーアの小柄な身体に内包されている『力』の大きさに、傍にいるソリテールも思わず身を震わせている。

 ヒシヒシと感じる強大で異質な力。

 シーアの身体に眠っていた才能の一部だ。

 それがリヴァーレとの戦闘によって大きく開花し、今解放されようとしている。

 

 

「お前だったら、本当に……」

 

 

 シーアが遠い未来で語り聞かせてくれた、架空の物語の登場人物の領域にアイツは片足を突っ込んでいた。

 昂る魔力は戦闘民族の『気』のようで。

 その佇まいは地上最強の生物を幻視し。

 悠然とリヴァーレに相対するその勇ましさからは、怪人を一撃で吹き飛ばすヒーローを垣間見た。

 森羅万象を殴り飛ばせるだけの『力』が、理不尽を理不尽に葬り去るだけの『力』が、シーアの身体の中に着々と蓄積されているのが理解出来た。

 

 

「心しろよ、ソリテール。いつだって世界を変えるのは、夢を本気で追い求めてる奴だ」

 

 

 内心の興奮を押し殺し、俺は隣に座っていたソリテールへと語り掛ける。

 当のソリテールは、全く理解出来ない物を見るかのような眼差しでシーアを眺めていた。

 魔力量によって彼我の戦力差を把握する魔族であるが故に、今のシーアの異質さを直感的に理解したのだろう。

 純粋な魔力とは違う重苦しいエネルギーが、シーアの身体の中に渦巻いている事を理解したのだ。

 そんな桁違いのパワーに身震いするソリテールを尻目に、シュラハトは再びシーアへと目をやった。

 

 

 ーーああ、美しいな。

 

 

 猛々しく魔力を荒ぶらせるシーアを見て、シュラハトは心の底からそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        の時最高のリアルが

       向こうからいにきたのは

 

          僕らの在は

     こんなにも純だと笑いにきたんだ

 

          耳を塞いでも

      両手をすり抜ける実に惑うよ

 

           い体の

       どこにを入れて立てばいい?

 

 

         アンインストール

         ンインストール

 

 

       この星の数の塵の一つだと

        今の僕には解出来ない

 

        

         アンインストール

         ンインストール

 

       れを知らない戦士のように

         振るうしかない

 

         アンインストール

 

 

 

 

 

 

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