爆豪達が攫われたショックに立ち直れずにいた俺達は、相澤先生の指示で宿舎に戻された。宿舎では既に救助隊が到着しておりそれぞれ手当てを受けた。話によると、広範囲に敵の毒ガスが撒かれていたらしく、B組生徒の半数以上が意識不明の重体。また緑谷が敵との戦闘で、両腕にヒビが入っていたそうだ。そして、ラグドール、爆豪、渡我の3人が行方不明となっている。
敵襲撃から2日が経った。大きなけがを負っていない生徒は警察によって自宅に帰された。
「…クソッ」
俺はあれから部屋から出れていない。少しでも体を休めようと目を閉じると、渡我達が攫われる光景がフラッシュバックして眠ることができないでいた。そんな精神状態もあって食事もまともに取れていない。冬ねぇが何度か部屋を訪れたが、なんて話してたか全然覚えてねぇ。心ここにあらずとはまさにこのことだろうな。
――ピコンッ
スマホの通知が鳴ったので気だるげに内容を確認すると、緑谷の見舞いに行かないかという誘いだった。このまま部屋で引きこもっていても何も進まねぇと重い腰を上げて見舞いに行くことにした。
「…絶対ぇ諦めねぇぞ」
そんな決意染みたことを呟きながら部屋を出た。
~*~*~
「…状況は芳しくないね」
「どこもかしこもこの件で大賑わいだぜ?」
「活性化の恐れという我々の認識が甘すぎた。奴らは既に戦争を始めていたんだ。ヒーロー社会を壊す戦争を」
林間合宿から生徒達を各家へ届けた後、雄英にて教職員での会議が開かれていた。世間では林間合宿における雄英の失態に対しての批判であふれかえっている。死亡者はいないものの、毒ガスによる意識不明の重体者が多数、敵との戦闘によるケガ人、そして生徒2名の誘拐とマスコミからしたら記事として取り上げなければならないことばかりである。
その中で気になったのは記事の取り上げられ方だ。生徒2名が誘拐され、その内の1名は雄英体育祭で優勝した爆豪だという記事ばかりで、もう1名に関しての情報は一切出回っていない。体育祭優勝者というインパクトもあってメディアもそれ以上深追いをしていないような形に見えてくる。
(恐らく、というか確実に圧力がかけられているね。世間の目から意識を逸らさせるための情報統制…。恐れ入るね)
それだけ国家機密というものは重いのだと、知る者からすると改めて重要度を認識させられる。
――コンコンコン
「ん、誰だ?」
『ここで職員会議が開かれていると聞いたが、入室していいだろうか?』
「ああ、構わないよ」
「校長!?」
「失礼する」
聞き慣れない声に疑問を覚える職員達に対して、二つ返事で入室を許可する校長に思わず声を上げるミッドナイト。入ってきたのはガタイのいいスーツ姿の男。雰囲気からザ・堅物といった印象を受けてしまう。
「私は防衛省の烏間だ。今回の誘拐の件に関して、防衛省からも人が派遣されることになった。今日はその挨拶とこちらから提案をしに来た」
「提案?」
「そもそもなんで防衛省が出張ってきたんだァ?」
「今回の件に”国家機密”が関わってきているからだ」
『国家機密!?』
「オイオイ…サプライズにしても質が悪いってもんだぞ…」
いきなり国家機密というとんでもないワードが飛び出し動揺を隠せない一同。しかし国家機密の内容を知っている根津、相澤、オールマイトの3人は冷静だった。
「…それで、提案というのは何かな?」
「現在誘拐された生徒の現在位置をこちらで捜索している。恐らくあと数時間で発見できるだろう」
「なんだと!?」
「一体どうやって…」
「申し訳ないが、捜索方法までを公開することはできない。あくまで、防衛省独自の技術だとご理解いただきたい」
「いや、生徒の位置が分かるだけでも充分な情報だ。感謝するよ」
「…我々としても彼ら、いや彼女が敵の手に渡ることは何としても防がねばならないことだ。協力は惜しまない」
「彼女…?それって渡我さんのことですか?」
「そうだ。我々防衛省は、最重要国家機密である渡我被身子を何としても取り戻さればならない」
「最重要…」
「国家機密…?彼女が?」
いきなり飛び込んできた爆弾発言の応酬に、混乱による静寂が会議室を支配していた。
~*~*~
「…ん」
目を覚まして最初に思ったことは、硬いでした。外部の光が入らず、天井に吊るされた豆電球の光のみが部屋の中を照らしてくれています。これじゃ時間感覚が奪われそうですね。
「…手は縛られてる。移動だけはできそうですね」
手には肘あたりまである大きな手錠が付けられており満足に動かすことはできません。しかも地味に重いですし、普段のような動きは難しいですね。こうなるとやることはほとんどありません。
「…あれから何日経ったんですかねぇ」
「起きたみてぇだな」
「え、テンコ君!?」
扉にある鉄格子から外を覗いてみると、向かいの鉄格子の先にテンコ君がいました。コンプレスさんの言う通り監禁されてたみたいです。
「大丈夫ですかテンコ君?」
「大丈夫に見えるか?」
「見える限りでは」
「ハッ、随分と目が悪いみてぇだな。ってか今更だが俺のことは弔って呼べ。呼び方が複数あって面倒だ」
「分かりましたよトムラ君。まぁこれだけ軽口叩けるくらいなんですから、最低限元気はありそうですね」
そこから何故トムラ君が監禁されているのかを聞きました。ショッピングモールでのお話の後、秘密裏に準備を進めていたそうなんですが、あと少しで準備が整うというタイミングで鷹岡先生が基地にやってきたかと思ったら、そのまま戦闘が始まってやられちゃったらしいです。なんでも、トムラ君の”先生”の指示でトムラ君を拘束するために鷹岡先生がやってきたらしく、能力もさることながら、あの触手に手を焼いている内に隙を突かれて…って感じだったそうです。
「今も個性封じられてお手上げ状態だ」
「個性を封じられてる?どうやってです?」
「先生の持っている個性で個性がロックされてる」
「え、結構凄いことされてませんそれ」
「そうでもない。太陽か月の光に30秒間当たってれば解除されるらしい」
「あ~…強いようで弱い微妙な個性ですね」
「曇りの時か光の当たらない場所だったら無類の強さだろうな。条件厳しくてRPGでも結局使われない不遇キャラだ」
結局進展という進展はなく、ただ時間だけが過ぎていきます。一定の時間が経ったら、部屋の壁の一部が開いて飲料ぜりーと水が支給されるので餓死することはなさそうです。何気に手を使わなくていいようにストローが付いてるのが地味にありがたいです。
外はどうなってるんですかねぇ…
~*~*~
「まさか、こんな形で会うことになるなんてね。皆元気してた?」
「元気元気~!」
「こんな状況じゃなきゃ同窓会としゃれこみたいけど…」
「悪いが、それはまた今度としてくれ。皆、急な連絡にも拘らず集まってくれて感謝する」
「烏間先生からの連絡ならすぐに飛んできますよ」
部屋に集まっていたのは元椚ヶ丘中学3年E組の生徒達。どの生徒も当時使用していた超体育着を着用している。
「任務内容は既に律から伝わっていると思うから省略する。各々、作戦に関しての意見が欲しい」
「しつも~ん。今回のミッションってヒーローと一緒に行動すんの?」
「今回は別行動になる。だが、場合によっては接触する可能性もあるのでその際は顔を見られないように注意してほしい」
「あ~、身バレ防止用のマスクってわけね、これ」
そう言って中村さんが見せたのは黒い金属製のマスク。着けてても息苦しくなく、軽いガスなんかは防いでくれる優れもの。製作はもちろんイトナ。そういえばトガちゃんも似たようなのつけてたっけ?
「じゃあ動きとしては俺らで独立してるわけね。じゃあ前と同じでも良い?」
「良いと思うぞ。カルマが基本的な指揮を執ってくれ」
「オッケー」
「じゃあ私は現場監督でもしますかね~」
「よろしく中村さん。他の皆もビシバシこき使うからよろしく~」
「ケッ、俺達を使うんだ。ヘマしたら承知しねぇぞ!」
「安心しなよ寺坂。その時は寺坂から死地に送ってあげるから」
「安心できるか!!」
「最後に――」
和やかなムードになりかけていた空間を烏間先生が引き締める。
「今回、鷹岡の目撃情報もある。更に奴は”個性と触手”が付与されているようだ」
『!?』
「個性は『筋力増強』、『超感覚』、『刃物』の3種類。登録されていた個性の情報を展開するので確認するように。そしてこの個性は触手にも適用されるようだ。接敵した際は特に注意してほしい」
「渡我がやられるくらいだからな…。相当手強いだろうな」
「ま、期待してるよ主席殿?」
「い、いや流石に限度があるって!?」
「けど、現状最も対抗できる存在は渚だし。バックアップは任せてよ」
「最大限努力はする。頼りにしてるよ、カルマ」
「作戦開始時間はヒトハチマルマル!それまでに情報を頭に叩き込め!」
『はい!!』
「俺達の実力、見せてやろうぜ!」
「反撃の時間だ!!」
「行こう!!」
…いかがでしたでしょうか?
今回は林間合宿からのそれぞれの動きをお話ししました。遂に元E組が動き出します…!!次回をお楽しみに!!
評価、感想ありがとうございます!長らく更新できていませんでしたが、気づかないうちに色々伸びまくっててびっくりしました…。引き続き応援よろしくお願いします!!