1話
英雄譚、ヒーロー。
きっと誰もが夢見る物語で、俺たちの世界には世界を救った英雄がいる。
昔、顔も覚えていない母親に聞かされた英雄譚の絵本が好きだった。
だから、俺もなりたいと思った、なれると思っていた。
*
「ごめん……シンカ……俺とお前とのレベルの差が大きすぎる……」
俺は、なんとも言えない顔をしながらその言葉を聞いていた。
最年少でB級まで上がったらしいパーティリーダー・ヒュル。
彼の言葉は、やけに重々しく、そして言い終えたあとの沈黙が、なによりこたえた。
周囲の仲間たちも、申し訳なさそうに目を逸らしてる。いや、一人めっちゃ笑ってるやつもいるな。おいどんな気持ちで聞いてるんだお前。
「いやそんな、俺なりに……」
「シンカ。無理だよ。君が悪いわけじゃない。実力が、ちょっと……その、な?」
ちょっと、じゃねえよ。ド直球に言えや。っていうかその目、最初からもう外す気満々だったろお前。
「荷物、門の前に置いといたから」
はっや。何そのフットワークの軽さ。俺たちの絆ってそんな軽かったの?
結局、俺は誰にも引き止められず、そのままパーティから追い出された。
──追放。それは、冒険者として一番惨めな瞬間。夢を背負っていた背中ごと、地面に叩きつけられた音がした
*
ああ、どうも。
ついこの前、パーティから叩き出さましたシンカです。
レベルが低すぎるってさ──はいはい、ありがちなやつですとも
……って、おい誰だ弱すぎるから追放されたんだなと言ったやつ。その通りだよ○ねや。
そうしてギルドの酒屋で飲んだくれてる俺は「待って!!」と叫ぶ女性の声が聞こえる。
「どうして!? 私がコイツらよりも強いのに!!」と指を指して仲間?の人達に指を指す。
「悪いな。そう言うお前のことを受け入れられないと……コイツらが言っていてな……」
「信じられない!! 私が居ればすぐにS級パーティに行けるのよ!!」
S級パーティ、今存命している6つほどのパーティがある。ただ、象徴的なのは2つ。
1つはバランス重視の勇者パーティ。
2つは火力重視の賢者パーティ。
皇族直属となり一生暮らせる額を稼げるけど、魔王とか討伐しないといけないらしい。めんどくさそうだなぁと酒をぐいっと飲む。
「ふん! 信じられないわ! 私から願い下げよ!!」
「あっ退職金……」
「要らないわ!!」
どうやら話がついたらしく、キーキーと喚いていた大剣を携える女性が机を叩き、地団駄を踏みながら出ていく。
「おーこわっ」と呟いた後、叩いた机が真っ二つところが粉々に砕かれていた。
……性格はガキくさくても実力は本物だったのか……と俺は自分に無いものを何処か羨ましく思ったのか酒をぐいっと飲んで忘れようとした。
(あーあ……何か一つでも特技があれば俺もなぁ……)
今頃S級パーティやら、A級パーティやらで活躍して〜……ってアホか。そんな、馬鹿な話ねえわな。
酒をぐいっと飲むが、最早一滴も残っておらず、オレンジ色に輝く光と天井の木目を見ている。
あー、なんで冒険者してんだろ〜……
「退店時間がもう直ぐとなりまーす」
いつものスタッフの掛け声と退店を促す音楽が流れた。
*
「世界が……揺れて……」
(あー飲み過ぎた……!)と思いながらフラフラとして歩くとゴツん!と頭を大きな音でぶつける。
「いってぇ……!」と呟きながら、ふと路地裏を見つめる。
「……んあっ?」
ダンボールの中に、銀髪がキラキラと輝いている少女がうずくまっていた。
思わず足が止まる。赤い瞳は、まるで自分という存在を見失ったかのように何も映していなかった。
(……なんだこれ。捨てられた犬じゃあるまいし……)
見なかったことにしよう──でも、ポケットから不思議と手を出してその少女に伸びていた。
何故かわからない、けど自分を納得できる理由をつけるなら。
そう……最近は奴隷の売買があるとかなんとか物騒な世の中だからだと、考える。
……いや、嘘だな。
俺が関わったところで、どうにもならないけど、あの目を見たら……そうも言ってられなかっただけなのかもしれない。
「おい」
「……なに?」
応答はできるのか、と思った俺は懐からお金を取り出す。
「これ、お金だ。これで宿で泊まって警備官に保護してもらえよ。」
「……」
「じゃな。」
夜風を浴びながら俺は偽善だとはわかっていても最低限の偽善はするようにしている、後腐れないようにするために。
とりあえずやるべきことはやった、お金と地図も渡したしあとは大丈夫だろ……と我ながら無責任な対応をしたなと思う。
ただ、あまり関わりも持ちたくないと考えすぐにその場を後にしたのだった。
*
翌日、なんか布団重えなと思いながら俺は身を起こそうとする。
……スゥー動けん、動けねえ……金縛りか……!? と思い俺はガバッと布団を開ける。
「んむぅ……」
「……」
日に照らされた銀髪の髪は、まるで天使が顕現したかのよ……って……!
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!???????」
俺は、恐怖から叫ぶしか出来なかった。
読了していただきありがとうございます。また、次回もよろしくお願いします。
(※2026/5/12 一部文章を改稿)