俺は、ギルドに行くために外出をしていると「おい!お前!」と甲高い女性の声が聞こえる。
まぁ俺じゃないかと、思い無視していると「お前だ!お前!」と甲高い女性の声は近づいてくる。
…まぁ?違うでしょう?と思っていると「無視するなぁ!!!!!!」と後ろからドロップキックされ倒れる。
「くそっ!私のことを舐めてるのか!?」
「ダンボールに入ってない…!?」
「…は?」
あっやべっ、つい本音が…と思っているとボーイッシュな髪型の女性に「お前、クロさんのお側に付いている虫だな?」と聞いてくる。
「はい、その通りです。」
「えっ…?」
「助けてください…私のような下等生物の命に何故か化け物達が群がってくるんです…」
「えっあの…えっ…と…チッ違う!!惑わされないぞ!?お前がクロさんを誑かしてるんだろ!?」
「そんな!?どうして命を無量大数かけないといけないことをしなくちゃいけないんですか!?」
「さっきから失礼なことばかりしか言わないな!?」
そんなことを言いに来たんじゃない…!と女性は首を振り話を切り替えこちらを睨む。
「私の名前はフェリック!勇者パーティのフェリック!!お前がクロさんにふさわしい男か…決闘して試してやる!」
「相応しくないのであなたにお渡ししますぅ〜!!!」
「ふざけるなよ!!もっと根性見せろ!!このクソ虫!!!!!!」
「はい〜!!!!!!わたくしは糞虫でございます〜!!!!!!だからわたくしの糞虫の命をお救いください〜!!!!!!」
「なんで私がお前なんかの命を救わないといけないんだ!?おい!この手を離せ!助けを乞うようなポーズをするな!!!!!!この……!ぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
俺はフェリックと名乗る女性に命乞いを小一時間続けたのだった。
*
そして俺とフェリックさんは俺が奢りということでご飯を一緒にすることになった。
「どうしてお前なんかと…!」
「クローバー様の引き抜きに微力ながら協力させてもらいます…」
「はぁ…!?はぁ!?イカれてるのかお前は!?」
「はい、わたくしはイカれてはいません。周りがイカれてるのです。」
「クロさんを侮辱するなぁぁぁぁぁ!!」
お客様お静かにお願いします!と店員に注意されるフェリックさん。
と、なぜここに来たのかを聞いてみる。
「は?どうしてお前なんかに…」
「引き抜きに協力致しませんよ」
「…はぁ……」
と頬に手をつき渋々話し始めるフェリックさん。
「単純な理由だ…団長にクロさんを追放したという情報を聞いて飛んできただけだ。」
「よく場所わかりましたね」
「わかるさ、クロさんレーヴァテイン使っただろ?その気配を辿ってきたんだ」
…あーベヒーモスの時に出したあのクソかっちょええ赤い剣のことか。
「それで来てみれば貴様がクロさんのお側に…」
「…」
「そして…私でも拝めなかったクロさんは微笑んだ…!!しかもこの男の前でしか見せない笑顔……!!!!」
おっほw目が血走ってると思いながら俺は彼女から視線を逸らす。
つか、微笑んだ…?ずっと無表情じゃねあいつ……というかなんでドロップキックされたんだ俺…いや意図はしてないが、無視したからか…
「クソォォォォォオ!!!!!!お前なんかに!!!!!!」
「はい!!!!!!その通りだと思います!!!!!!!」
「ぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
清々しい返事をした俺に対して頭を抱えブンブンと振り回すフェリックさんに店員さんが
「お客様!」ゴォん!!
とフェリックさんは頭をお盆で叩かれる。
「…」
「…」
「お待たせいたしました。ご注文のオムライスで〜す。」
カチャッと、音を立ててスプーンを持ち上げてオムライスを頬張るフェリックさん。
なんというか生きにくそうな人だなぁ…と頼んだコーヒーを啜るのだった。
…あれこれブラックじゃなくてアメリカンじゃん…味薄…
*
「ごちそうさま」とフェリックさんは手のひらを合わせ行儀がいいなと感じていると「あれ」と聞き慣れた声が聞こえる。
「クロ」
「ん、シンカ。」
「クロ…さん…?」
目を見開き後退ると腰を抜かすフェリックさん。
「フェリックさん?」
「や…」
「や?」
「ギィィヤァァァァァァァァ!!!!!!!!♡♡♡♡♡♡♡」
おい、いい悲鳴だな。それ俺のネタだから取るなよ。と思いながら隣にくるクロに俺は振り向く。
「どうしてシンカとフェリが一緒に?」
フェリはフェリックさんのことだろうか、と思うと俺は口を開く。
「いや別に、お前のことを追いかけてきたんだと。」
「そうなんだ」
「そうなんです!!そうなんです、クロさんんんん!!!!!」
めちゃくちゃ食い気味に返事するなコイツ…
「それで!そう!クロさんとこのこのこのここののののののの!虫とはどういった関係なんですか!?!?」
「…」
クロは考え込むと俺の方を振り向く。
「私を幸せにしてくれる人」
「…」
「しっ幸せ…?」
嘘は言ってないが、そんな腕を掴んで勘違いをさせるようなことは言わないでくださいよクロさん^^。
「しっ、幸せ…シアワセ?倖せ……」
フェリックさんはバグったようにカクカクと瞬きをせずに口をパクパクとしている。
「幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸」
…壊れたか…
俺は伝票を持ち、彼女の分までのお金をきちっと払い、この店から出ていくのだった。
*
――それは、ほんの些細な始まりだった。
「ん…?なんか今日、剣軽くないか?」
訓練場。ケイはいつも通り木剣を振っていた。
すぐ疲れて、よろけて、ルナに「だっさ」と笑われる日々。
……だったのに。
「ハッ!!」
地面が裂けた。
周囲の木が、振り抜いた風圧で弾け飛ぶ。
「……………えっ?」
ケイがぽかんとする間に、訓練場の空気が凍りついた。
「ケイ様!?今の…!」
「待って、ちょっと待って…その一振り、魔族上級すら倒せるっていう“神剣の型”じゃない!?」
「い、いやいや!?俺そんな大層なつもりで――」
「やっぱりすごいですケイ様ッ!!!」
マナが瞳を輝かせて駆け寄ってくる。まるで王子様を見るような目だ。
「ちょ、マナ? 近い、近いって…!」
「だって!すごい!このままいけば伝説になりますよ、ケイ様!」
(やばい、全然実感ねぇ……!)
⸻
それからだった。
魔法の授業でも、
「ケイ様、火球魔法の基礎を試してみてください」
「えーっと、フレイム……」
――ドォン!!!
地平線の向こうが消えた。
「ケイ様、言葉が契約になってます!詠唱しただけで神獣召喚しましたよ!?」
「えっ!?今“フレイム”って言っただけだよ!?火の玉のつもりだよ!?!?」
⸻
王城から使者が来た。
「ケイ様!どうか次の魔王戦争、出陣を!」
「えっ!?俺この前まで足つって動けなかったんだが!?」
⸻
夜。マナがすり寄ってくる。
「……ケイ様。もしよろしければ、今夜は少しだけ、お側に……」
「え!?なんで!?何の流れ!?俺なんか変なフェロモン出してる!?!?」
「……いえ、ただ…おそらく、もうすぐ世界が“貴方”を中心に動き出す気がして……」
その笑顔は穏やかで、どこか怖かった。
(やばい……これ、煽てられすぎて戻れねぇ気がする……!)
⸻
こうして、いつの間にかチート成長していたケイは、
世界とハーレムに“崇拝される存在”へと変貌していくのだった――
読了していただきありがとうございます。また次回もよろしくお願いします。