とりあえず何故か俺はダフテルさんを連れて依頼を受けた。
何故かって?セイナに押し付けられたんだよ…
折角、ダブテルさんと出会えたんですし、仲良く依頼をこなしてきてください!(裏声)
って、ははっ!このメンヘラ怪力と依頼をこなすのはいいとして、何故にC級の依頼を受けた!?
俺、E級ぞ!?なんでだよ!!??
そう思いながら、服の裾を掴むダフテルさんを横に、集合場所の、噴水に着くとC級のパーティのエンドレスホームズの3名がいた。
「あ、お集まり頂きありがとうございます!シンカさんでよろしいでしょうか!?」
そう言うと大きなポニーテールと、陽に照らされる青色のアホ毛が輝く小柄で軽装備を纏う少女。
「はい、そうでございます。いやはや、こんな万年E級の私を拾ってくださりありがとうございます…」
「いえいえ、荷物持ちとして良い評価をもらっているのでちょうどい…げほっごほっ!」
気を使わなくてもええんやで…と俺は^ - ^とこんな顔をしながらパーティリーダーのミナミさんを見つめる。
C級パーティ、3人組で構成されているエンドレスホームズ、リーダーのミナミさんはとんでもない速度で評価を上げているお方だ。
「ちょっと大丈夫なの…?」と心配そうに呟く紫色の彼女は、武闘家ヒダシさん。
「まぁ、今日はモンスターと接触するわけではないので荷物持ちの1人や2人いても大丈夫でしょう…」ととんがり帽子をかぶる彼女は、魔法使いのミジさん。
確かに前は、俺はこういうルーキーに、教育係を任されて、羽虫のようにくっ付いてこんな感じでコネを作って食い繋いでいたな…とふと思い出す。
意外に役に立つんやで…ワイ…
「えぇっと…シンカさんのお後ろにいるお方は…」
「……」
あの、ダフテルさん…?緊張を紛らわすためなのか知らないけど、俺の服を虫食いの穴のようにちぎらないで?
「…えぇっと、新人冒険者なんですよこの子…だから今回、ミナミさんの見学をさせようかなと…」
「あぁ!なるほどです!」
…おい、元とは言えS級パーティのリーダーなんだろ、そんな縮こまって情け無く俺の後ろに隠れるなよ。
「…ダフテルさん?」と俺はなるべく優しく問いかける。
「…アッ!!あっ!ゴヒュー!ヒュー!ダッ!」
そして一気に息を吸い上げるダフテルさん。
「ダフテルですっっ!!!!!!」ビリビリビリィィ!!
…なんで俺の服を破くの?
「シッ、シンカさん…大丈夫ですか…?」とミナミさんに心配そうに見つめられる。
上半身裸となった俺は天を仰ぎ一言。
「…大丈夫じゃないです…」
*
とりあえず、予備の服を着て、ミナミさんの後をついていく俺とダフテルさん。
相変わらず服の裾を持ち歩く彼女に俺は耐えろよ服…頑張れ…と内心応援しているとD級モンスターのワーウルフ3体に遭遇する。
ミナミさんが後方にいる魔法使いのミジさんと、武闘家のヒダシさんに指示を出し臨戦態勢に入る。
「…連携で戦うのってあー言うふうに戦うんですね…」
と後ろにいるダフテルさんが吐露する。
「…元パーティは連携しなかったんですか?」と耳打ちすると「はい、する必要なかったですし」と答える。
…まぁ元S級パーティだしな。と考えを辞めた俺はミナミさんたちの戦いぶりを見つめている。
すると数分くらいで片がついたようで、ワーウルフの死体が転がっていた。
「お怪我は?」とミナミさんが聞くと俺は大丈夫っす。と短く答える。
「それじゃあ、先急ぎましょうか!」と元気よくミナミさんは先行する。
…あんな小柄な体でなんと頼もしいことか…と人間の温かみのある頼もしさを感じたのだった。
*
そして依頼の森の奥に眠る木の実…まぁ、リンゴが銀色に輝いているのでシルバーアップルとか呼ばれてるそれを探していた。
シルバーアップルはまぁお貴族様で人気商品でたまにこうして取りに行く依頼が課されることが度々ある。
しかも報酬も上手いしな確か。
まぁ、その分割と奥深い森の中にあって下手したら道に迷うくらいだ。
だから割と高難易度で設定されており、本来俺みたいなE級は絶対許されない依頼だが、特別処置で許されている。
…万年E級だからある意味特別になったから行けるって?あははは、うるさいぶちのめすぞ。
いやまあ実際その通りなんだけど…万年E級だからか、知らんが力はともかく経験はあるからその分便利屋としてコキ使われていたことがしばしば…
とまぁ関係ない話はここまでにして、とりあえず、目的地に着いた俺たちは目的のシルバーアップルを探す。
するとくいっと、また俺の服をちぎるダブテルさんはこそこそと耳打ちをしてくる。
俺の服を千切るな。
「誰かにつけられてます」
「…マジですかか、モンスターですか?数は?」
「……恐らく…ひ、人です、一名です…」
…人ぉ…?
…なんかやらかしたかなぁ…もしくはミナミさん絡みかなぁ、と思った俺はここで殺されたらひとたまりもないと思いどう切り出すかを考えていたのも束の間。
「シンカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」と聞いたことのある声と共にズシン!!と地響きが鳴り響く。
…えっ私です?と思った俺は右腕が醜く紫色に膨れ上がった男?を見つめる。
「オマエノセイダ…オマエのォォォォォオォォォォォオ!!!!!!」
…マジで何?俺何もしてないんだけど…
…いや、ここ最近なんか覚えが…
「アノ…白髪のガキぃぃぃぃいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!」
白髪のガキぃぃぃぃ…?
…いや心当たりがあるとしたら白髪のガキと言えばクロしかいねえけど…てことは…
「ギーツ…なの?」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
…当たりみたいです……
なんだろう…多分、クロに敗北して恥をかかされたとかなんとかかな…?
…うーん…どうしよ…ミナミさんたちに迷惑かけたくないなぁ…と思っていると
「シンカさん!下がってください!」
ミナミさんはすぐさまギーツに接近して攻撃を仕掛ける。
空中に飛び上がり刃をギーツに振り落とすものの、硬すぎて剣が通っていなかった。
そして俺の方へ後退りながら、「大丈夫ですか!?」と俺を守る姿勢をとる。
「…カッケぇ……!」
「えっあっありがとうございます…」
やべ、そうじゃなかった。
とりあえず俺はミナミさんに「逃げましょう、俺が囮になります!あいつの狙いは俺で…」と言うもののミナミさんは「いえ!囮にはさせません!」と叫ぶ。
「私たちは、一時的にとはいえパーティ仲間、一蓮托生です。更に言えば、弱者を守るのは強者の務め、ここは私たちを置いてギルドに連絡してください」と伝える。
「えっいや…」
「時間はありません!早く!」
「…」
…懸命な判断だ、若くしてC級パーティに上がった理由やカリスマ性もなんとなくわかった気がする。
ただ、俺はこの子らより年上で、男としてのプライドも…あの化け物たちに殺されそうになってピーピー喚いているが一応ある。
だから俺はミナミさんの肩に手を置くと短くこう返す。
「君たちが逃げるべきだ。」
「えっどうし」
「君たちは未来がある、そして若い。なら君たちが逃げるべきだ。まぁ、これでも万年E級冒険者だし、逃げ足は得意なんだ。」
「っ…!だめです!それでもあなたの命の保証は…」
「ないさ。でも、冒険者は命賭けてなんぼだろう?なら、ここは一つカッコつけさせてくれよ。」
…まぁいざとなったらこの服の裾についているこの化け物使えば倒せるやろ、と言う中々脳死ではある作戦がある。
俺は、彼女達にそのアホみたいな考えを勘付かせないように真剣に見つめる。
「逃げてください…いや逃げろ!新生ルーキーC級パーティ、エンドレスホームズのリーダーのミナミ…!」
「……っ、ごめんなさい!行くよ!ミジ!ヒダシ!!」
そうして3人は森の奥へ消えていく。
…よし、これで邪魔者は消えたな。
俺はニコニコとしながらダフテルさんを見つめる。
「よし、ダフテルさん出番ですよ」
「えっ無理ですごめんなさい」
…
「よし、ダフテルさん出番ですよ」
「ごめんなさい無理です。」
…
「えっ」
「えっ?」
ずしんずしんとどでかい音と共に近づくギーツは大きな右拳を振り上げ「シネ!!!シンカぁぁぁぁぁ!!!!!!」と俺に対する憎しみの拳を振り上げる。
…スゥー…この短い時間でできることは一つ、俺はダフテルさんを遠くへ投げようとする。
「シンカさん!?」
「ほれ、お前も早く…逃げろ!」と振り上げようとした瞬間、ダブテルさんをミナミさんの方へ投げようとする。
…まぁこれで死んでも冒険者だし、死に様としては文句出ないだろ…そう思った俺は目を瞑り己の死を受け入れる。
とは言え、まだ童貞だから、卒業してから死にてぇなぁ…!!神様お願いします!来世ではモテモテのハーレム王になりたいです!
そう思いながら俺は目を瞑り涙目でダフテルさんを攻撃範囲から逃そうと投げる。
「シン…!!」ブチっ…!!
そして投げようとした逆の方向にぐいっと引っ張られると、どがん!!というどでかい音が鳴り響く。
…音が聞こえない…ここがあの世か…
「…くはっ、アタシが出ちまったってことはそういうことかい、ダフテル…?とりあえず、無事か…シンカとやらの兄ちゃん」
「…死んだか…あー、ここは天国、俺はいいことしたんだから天国だろうなぁ…」
「あん?なに言ってるんだお前」
「…地獄か、地獄の番人がいるのかなぁ…地獄は嫌だなぁ…」
「目ぇ覚ませ!!」
ゴツん!と頭をゲンコツで殴られるとそこにはダフテルさんが…ダフテルさん…?
なんかタレ目というか自信なさそうな顔つきから吊り目になって…というか生きて…?
「よぉし、生きてるな。生きてるよなぁぁぁぁぁ!」
「ごはぁぁぁぁぁ!!??」
ギーツの巨大な右腕を支えている左手でねじ切りながら飛ばすダフテルさん。
…いやほんとにダフテル"さん"になってるんだけど…どういうこと?
「よぉし…!よくもまぁウチのもんを泣かせたなぁ…!?これからアタシのターンだ…覚悟しろよ?」
「なっなんなんだお前!?」
「なんだぁお前ぇだとぉ?てめえから名乗りも上げないでレディの名前を聞くのは失礼千万というものじゃぁねえのかぁん?」
…レディなのかな…?と思った俺は恐らく口にした瞬間死ぬので絶対に口にしないようにした。
「はぁ…そんなみにっくい豚みてえにぶくぶく太るだけでセンスも栄光や幸せな未来も投げ捨てやがってヨォ…!」
「っ…!」
「たかが復讐、されど復讐、アタシにしてみればちっぽけでただの火起こしのちっさな炎でしかねえんだよなぁ」
「はぁ…はぁ…!?」
ギーツだったものは錯乱していた、恐らく全力のパンチを軽くいなされたからだろう。
「くっ…ォォォォォオ!!!!!!」
そして魔力を放出し森全体を震わせる。
「ほー」と感嘆しているダフテルさんに俺は「お、おい…」と心配そうに声をかける。
「大丈夫だ、そんなひよこみてえにピーピー鳴くように言わんくても」
「ひよこみてえにって…」
「離れてな、少し全力を出す。」
ダフテルさんはそういうと、前髪をかき揚げ上着を脱ぎ半袖をまくる。
そして彼女が右拳を力一杯握り締めた。
その瞬間、辺り一面を震わせていたギーツの魔力を静かに鎮めていきやがては木々の音しか聞こえなくなる。
そして溢れ出る魔力は、ダフテルさん?に集まり、圧縮していきやがては拳の中に収縮していき、
やがて、木々のさえずる音すら消えてなくなっていた。
「瞬風…」
「ひっ!」
「一」
そう静かに、そして高速に右拳を前に突き出し極限まで圧縮された魔力は一つの細い線のような風圧を繰り出す。
「ギャッ!!」ビチュンッ!!
と言う断末魔すら許されない音が鳴り響き、ギーツはまともに喰らってしまい上半身が吹き飛んでしまうほどの威力だった。
ただ木に風穴は開かずただ小さなクレーターが出来ていた。
「鈍ったか…?力加減ミスったわ…」
何処が?
「…とりあえずシンカとやら、アタシのことはダフテルに内緒にしとけよ。」
「…いや何が何やらさっぱりなのであーもこーも言えないと言うか…」
「…アタシは……」
とダフテルさん?が何かを言いかけた瞬間「シンカさん!」と後ろからミナミさんの声が聞こえる。
「よかった…生きてて…!ごめんなさいシンカさん!やっぱり私、貴方達を見捨てられません!だから私もここにいます!残りのミジとヒダシの2人に応援を呼んでもらう…は?」
「…」
「えと…何が起きて…」
うん、俺もよくわかってないからその気持ち分かるよ。
とりあえずその場のテキトーな言い訳を頭の中の言葉を必死に探していると後ろから倒れる音がする。
「ダフテルさん!?」と俺はとりあえず駆け寄り、抱えると眠っていた。
いや、俺ももう何が何やら、あーもこーも言えないっていうか…
…とりあえずあれだ、ミナミさんにはこう説明しとこう。
「超大型モンスターが現れて、あの化け物食べられちゃったんだよね〜」
「えっ大型モンスター!?」
「ウンウンウンウン!!あっあー!でっけぇ鳥だったかもなぁー!」
…ちなみに、これが嘘だったら割と処罰がかなり重いが…まぁその時はセイナ様になんとかしてもらおう。
「…」
なんかミナミさんが黙ってるんだけど…めちゃくちゃ怪訝な目をしてらっしゃる…
…俺はその気まずい雰囲気の中、ダフテルさんを抱えてミナミさんと一緒に森を出るのだった…
*
ーミナミ視点ー
…あり得ない…
私は、ダフテルさんをおんぶしている彼、シンカさんを後ろから見ていた。
あの、化け物を倒せる巨大モンスターが現れたとしてももう少し、現場が荒れてたはずだ…なのに、辺りは対して荒れてなかった…どういうこと…?
抱えている彼女がしたとは考えられない。
てことは彼が…?
いや、彼からは魔力も愚か身体能力も私たちに比べてかなり低いはず…なのに…
『逃げろっ!エンドレスホームズのリーダー!ミナミ!』
あの勇敢さ…やっぱり倒せるだけの何か特別な能力がある…?いや、それを差し引いたとしても私を庇ってくれて…
トクン…
…うん、考えられるとしたら、あの醜い化け物を倒せるたしたら彼しかいない…!
「あー今日は串カツ定食食いてえなぁ…」
きっと何か特別な事情があって、いつも力を制御していて!
そして私たちに実力がバレないようにあえて逃げさせたんだ!
ただ、それだけじゃなくてシンカさんの力は強大すぎる!
だから、巻き込まないようにシンカさんはいつも魔力抑制をしていて、そして"私"を守るために強大な力を使って倒したに違いない!
「ふぁぁ…ぁ…」
あぁ…私だけのししょー…♡
ちょうど一年前もそのような無防備な表情を浮かべて助けてくれましたよね…♡
ミナミは、“存在しない三年前の師匠と弟子との関係”を心の中に作り上げ、彼を『ししょー』として崇めるようになったのだった。
読了していただきありがとうございます。また次回もよろしくお願いします。