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まどマギの二次創作と平行してやってます。
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第二十五話 ワルプルギスの夜が来ない
https://syosetu.org/novel/429133/25.html
「うむ……」
チェンが顎を撫でた。
髭は蓄えていない。
イェたちの師匠なのだが、年齢は不詳だ。
若くはないのだが、老人とも言えない。
全員の注目を集めてから、ゆっくりと言った。
「蒸しケーキと熱い茶をもらおうか。」
イェが勢いよく手を挙げた。
「お茶をふたつと、蒸しケーキをふたつ!!」
じろりと、ニャアンがふたりを睨んだ。
「……タピオカココナッツミルク。」
「おまえさんたちは、一瞬たりとも真面目になることはできないのか?」
モトコの額に青筋が浮いた。
「まあ、真面目に仕事してるのはおまえらだけだ。」
シゥ・クイシェが言った。
彼は、ロースターの上の肉をすべてスープにぶち込み、さらにそれをご飯の上にかけ回して特製のおじやを作り、ぱくついていた。
「……俺たちは晩飯を食ってるだけだ。」
「その飢えた虎みたいな食欲は、なんとかならんのか?」
モトコが苛立ったように言った。
「そうだな。たとえば……あんたはずいぶん強そうだ。」
食べ方も豪快だ。
丼に口をつけ、雑炊を流し込みながら、シゥ・クイシェは言った。
「もし、このあと手合わせをしてくれるなら、腹八分目で止めておく。あまり満腹になって動きが悪くなったら、申し訳ないからな!」
「話を戻す。」
マクレーンが言った。
「どうだ? あの夜、現場の近くにおまえさんたちもいたはずだ。」
「夜更けに未成年だけで、倉庫街をうろうろしてるとまずいのかな?」
セルマがからかうように言った。
「セルマたちを補導でもしたかったわけ?」
「いや。おまえたちがゼロ・ムラサメに連れられていたことはわかってる。時間的にも、空港から直接あそこに来たんだってことも、な。」
マクレーンは指を一本立てる。
「で、おまえさんたちがニュータイプだってこともわかってる。」
もう一本、指を立てる。
「なんか否定したいことはあるか?」
「……その言い方でしたら、わたくしたちがそのときどこにいたか、すでにゼロから聞いているわけですわね?」
ヨルが肩をすくめた。
「もうひとつ、わたしたちがニュータイプであることは、否定のしようもありません。ニュータイプと強化人間だらけのジュニアクランバトルスクールに通っているのですから。」
「そうか。
それなら次の質問だ。
あのとき、おまえさんたちは何か特殊な力の発現を感じなかったか?
サイコミュを通じてモビルスーツの動作系に干渉し、動けなくするような、特別な力だ。」
「はっきりおっしゃっていいんですよ?」
ライラックがメガネの奥の目を光らせた。
「その力の持ち主がわたしたちだと、疑っているのでしょう。」
「――別に、それが犯罪になるわけではない。おまえさんたちを逮捕するつもりも、拘束するつもりもないよ。」
「というか、できないよねえ!?」
煽るようにセルマが言った。
「セルマたちはさ、ジオン公国の国民なんだ。ニューヤーク市警には逮捕なんてできないよね!」
「正確には、裁くための法律がありませんよ。」
ヤンが紅茶のおかわりを頼みながら言った。
「まず、モビルスーツのサイコミュに外部から働きかけて、その操縦系を乗っ取ることができるのか、理論立てて説明しないと。そもそも、そうした行為があったのかどうかも判別不可能です。」
「ヤン――先生でしたっけ?」
ライラックが微笑んだ。
「いやあ。まだ学生でね。戦争で進学し損ねたんだ。シミュレーションバトルの手伝いはアルバイト。」
「戦争?」
「うん、そうだよ。ジオン独立戦争。ほぼ一年で終結したけど、空前の犠牲者を出した。ぼくは戦死し損ねたけどね。
もっとも悲惨だったのは、軍人や軍属ではない一般市民の死者の多さだよ。」
「そうですか……あなたが先生をしてるなら、習ってみたかったな。」
ライラックはそう言ってから、マクレーンとモトコに笑いかけた。
「ということです。
わたしたちがどう返答しても、意味はありません。」
「意味がないかどうかは、こちらが判断するよ。」
「でも、わたしがどう答えても、あなたにはそれが嘘か本当か判断する材料がない。
たとえば、わたしがモビルスーツを遠隔操縦できる超能力を持っていて、今この瞬間にネオ香港中のモビルスーツを一斉に暴れさせることができると言っても。」
「それは嘘だろう? いくらなんでも。」
「でも、嘘だと決めつける証拠がないでしょう?」
「しかしだな。モビルスーツを一斉蜂起させられると言っても、だな。」
「刑事さんたちは、遠隔でモビルスーツの行動に干渉できるかどうかで、わたしたちを訪ねてきたのでしょう?
程度は違っても、同じことです。」
「そんなことできるの!?」
マチュはずいと身を乗り出した。
「さっすがは異世界人だよねえ!」
「な、」
さすがのマクレーンも面食らった。
「異世界じ……」
「そうなんだ。この子たち、こことは違う並行世界から来たんだよ!
なんかすごい任務を持ってね……」
周りの視線に気がついたのか、マチュはおとなしく座り直した。
「……ってガンダムが言ってる。」
「言うかっ!!」
もう尋問どころではなかった。
そろそろデザートも食べ尽くし、レストランを出なければならない時間だった。
アムロはご馳走すると言ったが、マクレーンは律儀に、割り勘にしてくれと言った。捜査中に捜査対象と一緒に食事をして、しかも奢ってもらっていては、捜査にならない。
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店を出ると、日はすっかり暮れていた。
学生街とはいっても、街が眠る時間にはまだまだ早そうだった。
マクレーンはモトコと一杯引っかけるつもりで、アムロたちに礼を言った。
ミドルティーンのヨルたちは、そろそろ帰るべき時間である。
ジュニアクランバトルスクールの用意した宿舎までは、アムロたちが送るという。
マクレーンたちはバーを探して、裏路地に入った。
ここも人通りは多い。
だが。
「極東まで来て、恨みを買う心当たりは?」
モトコが嬉しそうにささやいた。
「刑事なんて、恨まれるのが仕事だよ。」
「タオ商会の偉いさんは、ずいぶん感謝してたようだけど?」
「あれは刑事としてじゃない。軍にいたとき、それもたまたまそうなっただけのことを、義理堅く感謝してくれてただけだ。
それに、ああいった特別な好意は、むしろ捜査には邪魔になることが多くてな。」
「そうなの!?」
ふたりが歩くその後ろで、路上に寝転んでいた酔っ払いがゆっくりと起き上がり、そのあとをつけ始める。
「そうだ。悪気はなくても、ニューヨークから刑事が来て、いろいろ嗅ぎ回ってることが評判になっちまう。そうすると、身に覚えのあるやつらは向こうから動き出すのさ。」
「暴力を好むタイプじゃないと思ってたけど、ずいぶん嬉しそうじゃないの? カウボーイ。」
コンビニの前にたむろしていた若者の一団が、マクレーンたちのあとを追い始める。
「捜査が順調なんで、機嫌がいいんだ。」
マクレーンは頷いた。
「順調!? あれが!」
「そうだ。ヨルたちは、はっきりイエスとは言わなかった。それは、イエスと言ってもそいつを証明することが俺たちにはできないからであって、一切、否定はしなかった。
賭けてもいい。
パトレイブを動作不能にして、パイロットを病院送りにしたのは、あの子たちだ。」
「わたしもそうは思うけど……」
モトコは言った。
その視線は、自分たちを取り囲みつつある集団を捉えている。
「刑事が勘だけを頼りにして逮捕なんてしたら、冤罪の嵐よ?」
「そうだ。だから俺たちは、彼女たちを逮捕なんかしない。そもそもできないしな。
だが、これで少なくとも二回、あいつらと飯を食ったんだ。もう堂々と『知り合い』だと言い切れるだろう。
そして、タオ商会の商品リストは今、市警本部で解析中だ。怪しいルートが見つかるまで、俺たちは堂々とネオ香港に滞在できる。」
「あの子たちのストーキングでもするつもり?
あまりいい趣味だとは思えないわね。」
「刑事は嫌われてナンボだと言ったろう?
少なくとも、ゼロ・ムラサメがあのモビルスーツパイロットの治療を終えて、ネオ香港に戻るまでは、俺たちがついててやる必要がある。」
ふたりの目の前を塞ぐように、屈強な男たちの一団が立っていた。
後ろは、さっきからぞろぞろとつけてきた連中に押さえられている。
ひとりが歩み出た。
ゆったりとした拳法着を身につけている。
「ニューヨークのマクレーンとクサヤギだな?」
「警察に手を出すのは、感心しないぞ。」
マクレーンは言い返した。
「ニューヨークのギャングどもの知り合いか?」
「いいや。単なる意趣返しだよ。」
男は笑った。ひどく冷酷な笑いだった。
「紅サソリの用心棒は、俺の弟だ。」
「ああ……そっちか。」
マクレーンは、がっかりしたように言った。
「だが、それは相手を間違えてる。
やつをボロ雑巾にしたのはゼロ・ムラサメで、やつの逮捕容疑は傷害と恐喝だ。ああ……一応、公務執行妨害もあるがな。」
「だから、意趣返しだと言ったろう?」
男の手に、魔法のように多節棍が現れた。
「こういったものは、しばしば不合理で、意味不明なものだ。
さて、ここらは決して治安の悪い地域ではない。警官が駆けつけるまで二十分というところだろう。
それまでに、おまえらにどれだけの暴力が降り注ぐか、考えた方がいい。」
「なんだか、刑事ものというより、東洋の武侠ものを観てる感じだな。」
マクレーンは顎をかいた。
「……チェンさん! あんたの出番のような気がするが?」
マクレーンが夜空に向かって叫んだ。
夜空は答えなかった。
だが。
「呼んだかね?」
ひょいと声がした。
すぐ横の土産物屋で、安物のストラップを物色していた男が振り向いた。
「チェン! 三個買うと一個、おまけしてくれるそうネ。」
まったく緊張感のないチャイナドレスの少女が、店の奥から出てきた。
「おまえらの分の饅頭も買ったぞ!」
屋台にかがみ込んで肉まんを物色していた男が顔を上げる。
シゥ・クイシェだった。
「尾行されてるのに気づいて、わざと裏路地に入ったネ?」
イェが、呆れたようにモトコに言った。
「いや、サイコミュの横流し関連かと思ったんだけど。」
モトコは仏頂面である。
「意外と小物が引っかかった!」
まずい……敵が小物すぎる……と作者も顔をしかめる