厄災の黙示録 -滅びの記録-   作:ヴェロフ

1 / 3
――これは、語られなかったハイラルの歴史である。

書き記す者はいなかった。残された書物もなく、語り継ぐ者もいない。

それでも、誰かが覚えている。
それでも、誰かが泣いた。

この物語は、世界が滅びる“少し前”から始まる。

◇ハイラル王国 正史年表(抜粋)
歴史書「ハイラル年代記」巻第三、禁章

紀元前 時の神殿時代
三女神が世界を創造し、残したトライフォースを巡る戦いが幾度となく繰り返される。
伝説の勇者、幾星霜にわたり現れ、闇を祓う。

紀元623年 ゾナウ文明全盛
地下の知恵、空の神殿、消えた王たちの民。
ハイラルの礎を築いた彼らは、やがて記録から姿を消す。

紀元1021年 厄災ガノン、封印から覚醒の兆し
封印の谷より禍々しき瘴気が吹き上がる。
王国は動乱を恐れ、かつての神獣とその操縦者となる“英傑”たちを選出。

紀元1022年 ゼルダ王女、封印の力未覚醒
王家の悲願は届かず。
王と娘の確執深まり、時の剣《マスターソード》は未だ眠る。

紀元1023年 厄災、予兆を越えて顕現す
王都陥落。神獣制御失敗。
英傑、次々に戦死。リンク、命を落としかけるも、王女の力により守られ回生の祠へ。

紀元1123年 勇者、目覚める

これは、ハイラルの歴史をたどる物語


第1話:記録されなかった未来

誰かが伝えた本当の物語

 

◇ハイラル王国 正史年表(抜粋)

 

歴史書「ハイラル年代記」巻第三、禁章

 

紀元1021年 厄災ガノン、封印から覚醒の兆し

封印の谷より禍々しき瘴気が吹き上がる。

王国は動乱を恐れ、かつての神獣とその操縦者となる“英傑”たちを選出。

 

紀元1022年 ゼルダ王女、封印の力未覚醒

王家の悲願は届かず。

王と娘の確執深まり、時の剣《マスターソード》は未だ眠る。

 

紀元1023年 厄災、予兆を越えて顕現す

王都陥落。神獣制御失敗。

英傑、次々に戦死。リンク、命を落としかけるも、王女の力により守られ回生の祠

 

これは、ハイラルの歴史をたどる物語

 

小さなガーディアンが空を裂いた。

世界の滅びを見届けたその目に、希望の光は残っていた。

 

――もし、過去に戻れたなら。

――もし、あの時、ほんの少しだけ時間がズレていたなら。

 

だが、運命はそう甘くはなかった。

 

テラコの祈りは届かず、歴史は残酷に、静かに狂い始める。

 

英傑たちは、それでも戦った。

滅びゆく王国を前に、剣を取り、槍を振るい、雷を呼び、風を操り――

 

これは、選ばれた者たちの「最期の物語」。

そして、勇者と姫が始まりを迎えるまでの、“黙示録”である。

 

風が鳴いていた。

 それは、まるで大地そのものが泣いているかのようだった。

 

 かつて栄華を誇ったハイラル王国は、いまや沈黙の時代を迎えようとしていた。

 空には不気味な雷雲が渦巻き、地には黒き瘴気が走る。

 民は祈った。王は剣を取った。だが、誰も止められなかった。

 

 彼の名はリンク。

 選ばれし騎士にして、王女ゼルダの守護者。

 言葉は少ないが、剣に想いを宿す男だった。

 

 彼女の名はゼルダ。

 封印の力を受け継ぐ王女にして、神に見放された少女。

 祈りは届かず、父に責められ、仲間に支えられ、それでも立ち上がる光だった。

 

 そして――四人の英傑たちがいた。

そして――四人の英傑たちがいた。

 ゾーラの姫・ミファー。

 ゴロンの戦士・ダルケル。

 リト族の天才・リーバル。

 ゲルドの女王・ウルボザ。

 

 彼らは、神獣の力を託され、各地を護る柱となるはずだった。

 だがその力は、皮肉にも厄災に取り込まれ、彼らの命を奪った。

 

 そして、王都ハイラルが沈んだ日――

テラコは叫んだ。

 「歴史が、変わらない……!」

 

それでも、ゼルダは立っていた。

 

「私は……あなたを、守る」

 

少女が光を纏い、瘴気の海へと叫ぶ。

その瞬間、全てが白く染まった――

 

やがて、世界は静寂に包まれた。

 

それは、始まりではなかった。

 

終わりの、ほんの少し手前の物語だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。