合理ポッターと問答の宇宙   作:ZAT23

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『ハリーポッターと合理主義の方法』の2話を読んでからお読みください。



合理主義の方法 第2章 読書会

先の読書会から数日後。再び集まれることになった。

あのあとすぐに二話を読んでしまっていたから少し後悔。読書会の直前に読めばよかった。

 

10分前にはティラノと待ち合わせ、そして部屋に入って待っている。

今日は二人とも少しお酒を嗜みながらということで事前にエンジンをかけておこうと約束していたのだ。

 

 

星空の中での対話というのはいつもと違う感じがする。VRって割といいかもしれない。

 

5分前にはフクロウがまた部屋の名前を告げる。

 

『2章 ぼくが信じてきたことはすべてうそ』

 

そうして主催のフクロウさんへと意識が変わったようだった。

 

「どうも。ちょっと早く着きすぎましたかね?」

 

「ほっほ。いいえ全く!今回は私も余裕を持って来れました。ただ、少しだけ待っていただけますか?」

 

おや。どうしたのだろうと疑問を持つが。その答えはそこに現れた。

 

 

小さな、ひよこがそこにいた。

柔らかな白い光によって発光するひよこは、元から丸いフォルムに輪をかけて丸くなり、輪郭が曖昧になっている。可愛い。

 

何をいわずにぴよぴよと可愛らしいひよこがそこにいる。

 

 

『おや、来ていただけましたね。今日はもう一人、ひよこさんが参加いただきますよ。よろしくお願いしますね』

 

 

「え、っとその。よろしくお願いします!あ、ほんとにティラノサウルスだ…!」

 

ティラノに視線が集まる。まるで有名人の扱いだ。

 

というか、女性だ。それにびっくりしている自分に気づいた。

いやでもハリポタって女性人気高いし、二次創作は女性の方が人口が多いなんて聞くし普通なのか。

 

「いえいえ、先日の対話を文字起こししましてね。もちろんAIで。簡単にまとめて文章にして公開してみたんです。事前に許可いただいていたと思いますが、忘れてました?」

 

ほほほと笑うフクロウさんの視線に、ティラノもカモノハシも目を逸らす。普通に忘れてたけど何かしらをOKした覚えがある。

 

「我々の対話を文章にして投稿してみたところ、ひよこさんが読んでくれましてね。ぜひ参加したいということで、こうなりました。嬉しいですよね〜」

 

「あの、その。よろしくお願いします。お邪魔にならないようにはしますので!」

 

「お気になさらず、みなさんそんなことは思いませんよ。そしてみなさん、今日からはリアルタイムで文字起こしした文章が、ほらそこに流れるようになってます。良い時代になってますね」

 

宇宙の端っこに言葉が流れだす。おお、これは面白いな。たまに誤字もあるがかなり正しいように見える。

すごく静かなニコニコ動画っぽい。

 

「ええ、すごっ!会社でも使おうかな。AIとか触りたいと思っても、結局使えてないんだよね」

 

「ああ、ちなみにですが文字起こしをした後にみなさんの口調や語尾などは少しだけ特徴をつけて脚色をしようかと思っています。我々はラノベのキャラじゃないですし、特徴的な語尾をしているわけもないですしね。ほっほ」

 

いやあなただけはキャラ付けできてそうですけど。

 

ひよこさんは落ち着いた若めの声の女性だった。

フクロウさんは優しいゆったりとした喋りかた。改めて聴き比べると、ティラノはちょっと乱暴で早口だけどまぁフレンドリーさはあるので怖くはないと思う。

 

自分のは知らない。録音とか聞くのは恥ずかしいので文字起こしでよかった。

 

「じゃあみなさん早速話しましょうか。ちなみにひよこさんは一話についてはどう思われました?」

 

「なんか、私からですみません。私結構、ティラノさんと近いかもって思いました。ハリーくん可愛かったですね」

 

あわあわとした体の動きを一応表現できている。さては、VR系に触るの初めてじゃないな?

 

「ですよね!ほらな!」

 

「ほっほ。近い、ということは完全一致ではなかったとも取れますね、逆にどんなところが違いました?」

 

「ええ、とそうですね。なんていうか、大人になったハリーの姿とかそういうのを知ってしまってるんで、小さなハリーって時点で結構可愛さを感じちゃいますね。どれだけ生意気に賢そうにしてても、ほら二話でもずっこけますよね。年上からの目線になっちゃうとやっぱ可愛さがあるなって」

 

ひよことティラノが少年の可愛さについて語り合う。自分にはない感覚でちょっと面白い。

でも一応ツッコんでおかないと。

 

「ほらなじゃないよ。お前はショタ好き目線だろ。ひよこさんは庇護欲的な大人目線じゃないの?」

 

「私のは…共感の可愛さかもしれないですね。今はもう幽霊信じないタイプで、でも昔は空飛びたいし魔法使いたい子供だったことを思い出して共感しました」

 

ひよこさんは、なかなか喋れるタイプらしい。すごいな、前回は自分はもっと話せるようになるまで時間かかったのに。

 

「ほっほ。やはりみなさんの意見を聞くと、見え方が変わったりと面白いですね。では二話の内容も出てきていますし、始めましょうか」

 

 

>「どうみる?」とハリーはささやく。「そろそろ精神科医をよぶ?」パパは鼻をならしてハリーの肩をたたいた。 「いくぞ。こんな冗談はさっさとおしまいにしよう。」 二人は女性二人を追ってリヴィングルームへはいった。

 

「ここ、どうなんだろうね。結託してる感あるけどどう思った?」

 

「どうだろ。ハリーは心の中では、魔法をあるもんだと思い込んでいるけど。でもお父さんの味方になるのは、なんていうかこの場を上手く進行させるための方便として同調しているように見える。マジで気持ち悪いくらい狡猾な子供?に見えるかも」

 

「自分は単純に直感と理性が別のことを叫んで困惑してるのと思ったけど、そっちの解釈の方が怖くていいかもしれない」

 

「え〜そんな風に見えてたんですね」

 

 

>ハリーはお父さんを見あげた。「あ。」お父さんはハリーを見おろした。「あ。」

 

「カオナシみたいでかわいい。カオナシ二丁上がりなんだよね」

 

「あはは。カオナシっ。でもこの話が好きそうな二人から語彙が奪われるくらいの、それくらいの衝撃の瞬間ですよね」

 

「世界が変わった瞬間だもんなぁ。そりゃあ呆然もするか」

 

「魔法が確かなものになるのはこの後もありますが、この時のハリーは冷静でしたね」

 

「あ、ここ!ここ嫌すぎてめっちゃ好き!」

 

>「ちょっと拍子ぬけ(アンチクライマックス)だったな。 無限小の確率だった観測を受けて確率を更新する場合にはもっとドラマティックな心的事象があってもおかしくないのに。」

 

「浮かせる魔法なんかよりありえないリアクションすぎる。いちいち詩的で演出がかってて、なんかの主人公を自負してると思う。ここ一番好き」

 

「主人公ではあるけどね?」

 

「言われてみれば、確かに。あんまり気にしてなかったけど割とすごいセリフですよね」

 

「9歳の時にクラスでこんなことしてる奴いたら、向こう三ヶ月は真似し続ける自信あるわ。ガキの世界だったらいじり倒されてる」

 

「学校の流行語待ったなしですね。確かに」

 

「ほほほ。しかしそんな彼も、マクゴナガル先生の変身には平静を保てませんでした。ここが見どころでしょうかね」

 

「でもやっぱりアンチクライマックスのクソガキが、メガネずり落ちて「はわわ」って言ってるのすごくいい。可愛い」

 

「なんか、このハリーくんはライブで盛り上がってる人を冷めた目で見ているタイプなのかも。でも自分でも避けられないくらいツボを押されたりしたら、流石にノーリアクションじゃないっていうか…」

 

「ああ、わかりますね。後から理解が不意に追いついてくるっていうか向こうから来た感じかも」

 

「けど、パパいい人すぎない?あれだけ否定した後によく認められるよね」

 

他にも様々な意見が出てはその都度盛り上がり、たまに大きく脱線しながら話は続く。

 

「対数知らなかったら噛みついてくるの狂犬すぎるだろ」

 

「確かに凶暴…このハリーくんってそれこそ群れに必要な外れ値なのでは?大きな流れに逆らうタイプなのかも。一人は別のことをするっていう多様性としての特性に見えますね」

 

「すごい。難しいこと言ってる…」

 

「あれですよね。全部性格とか体質だと同じ災害とか疫病で死んじゃうからそういうのが群れに発生するって。逆張りとか天邪鬼とか言われるけど、ちょっとわかるかもなぁ。あと一式の魔法セット渡したら翌日に原子力関連の実験してそう」

 

「さっきも言ったけど、ここでずっこけてくれてよかった。逆に言うとこれないとキツい。見てられない。アンチクラマックスだったなで終わるとやばすぎた。転んでくれて本当に良かった」

 

「まぁ確かに。合理的なキャラってどうしても鼻につくと思う。説教臭さ。上から目線を感じちゃう瞬間があるんだよなぁ」

 

「合理キャラクターって難しいんですよね。でも私はめっちゃ参考になるなと思って。生き方として上手い合理キャラがいるとすごいありがたい。人生の歩み方的にシーンごとの振る舞い方を参考にしているので。先生になってくれるかもしれないです」

 

「すっご。人間の大半はそうやれないし、そういう風にはできてないから難しいよなぁ。だから魅力的な合理キャラってすごい。ひよこさんもすごい」

 

「合理的に生きるって、動物的には不自然じゃないですか。理性って後付けというか頑張ってやってますよね。だから頑張ってる分偉いなって思います」

 

「不自然なことに挑戦してる方がすごいって感じるのはそうかも。そこには人の意思とか感じて好きだわ」

 

「楽な方に流れるんじゃなくて、抗うところには美しさを感じるというか。攻撃的な人も生きるために頑張ってるなって思っちゃいますね。だからハリーも可愛い」

 

ほっほ!とフクロウが声をやけに弾ませる。今の感想の何かが嬉しかったらしい。

 

「ああ!すみません!なんだか自分語りが多くなっちゃいますね。ハリーの話に戻りましょうか」

 

ひよこさんがあわあわすれば、フクロウさんが優しく諭す。

 

「いえいえ。それには及びませんよ。この時間が合理ポッターの話だけで終わるのはあまりに勿体無い。ぜひ話しましょう。寄り道こそ最高の贅沢ですよみなさん」

 

そこからしばらく盛り上がりハリーポッターから脱線して、美しさをなぜ感じるのかとか。なんで昔からそういう人類が生き残ってきたのかだとか。

ちいさな疑問や、ちいさな気づきを捕まえて話す。そういう普段はしない深い話で盛り上がった。

 

初めて会う人とこんな話するなんて変な感じだけどなんかこの話を読むと、そういう『語りたいスイッチ』が押されるような感覚があるのだ。

 

語ることで、自分が何を考えているのか初めて知る。学生の頃からの友達の知らない一面を知っていく。

初めましての人と死生観について語れてしまう。

 

ちょっと良い感じの、立派な人間になったかのような錯覚は。お酒のおかげじゃない気がした。

 




次は三話分の読書会を行います。
こちらから3章〜5章を読んでから本作の次話へとお進みください。

https://syosetu.org/novel/160391/3.html
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