深夜のシャーレ   作:粋刺@翻訳

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[作者まえがき]
こんにちは!深夜のシャーレの第3章にようこそ。この心地よいシリーズのセイアの分をお楽しみいただければ幸いです。本当にプレイアブルになって欲しいです。参考資料もあまりなかったので、深夜のシャーレでのセイアの性格設定には多少独自解釈を加えました。ぜひ楽しんでください。

これは動画として使用するために書かれたもので、現在作成中です! 細部はカットされていますが、動画の方で見るのが好きな方はこちらをクリックしてください。

[訳者まえがき]
Breaking Silenceを流しながら読むことを推奨します。ちなみにグローバル版のセイアは7月7日に実装されました。


【セイア】一滴の紅茶で永遠の関係を

 シャーレでの深夜仕事、食費百円の夕食と同じくらいにまで板についてきた。だがそれでも、この徹夜によってキヴォトスの繁栄が保たれているという事実のためなら、まだまだ耐えられるものだった。あなたの努力は誰にも知られていないわけではないからこそ、たとえ何度か……いや、ほぼ毎晩睡眠不足になっても、それが皆のためになるのなら少しは気が楽になる。

 

 この苦労を和らげてくれるもの、それはあなたの素晴らしき生徒たちによる助けと激励だ。昼間のシャーレの業務は常に誰かが担当しているため問題はない。ただいつか、遠い未来のどこかで、深夜の当番を配置するのも悪くないと思える日が来るかもしれない。

 

 ただし、今日はその日でなくともよい。あなたはデスクを離れ、軽く体を伸ばしながらソファへと向かい、軽い休憩を取る。ふと、そこに目を向ければ静かに眠るセイアの姿が。だが様子を確認した瞬間、顔が不安げに揺らぐ。まるであなたの気配を感じ取ったかのように。あるいは、眠る中でも不吉な存在を偶然にも予感しただけなのかもしれない。

 

 予知していたかのように、セイアはゆっくりと目を覚ます。素早く何度も瞬きをして、薄暗いオフィスの光に順応しようとしている。数秒もしないうちに、彼女は少し首を傾け、あなたを見つめる。「先生……?」

 

"こんばんは、セイア。"

 

「一体……何が……?」

 

 ティーパーティーの代表のような高貴な人物でさえ、深夜まであなたのオフィスで寝過ごして突如として目覚めるとただの一生徒になる魔法にかけられていた。

 

"また予知夢でも見た?"

 

 セイアは苦笑しながら、わずかに困ったような表情を見せる。「予知夢を見る才は既に手放してあると周知してあるはずだ」

 

 あなたは一歩下がり、セイアはすぐに身を起こして姿勢を整える。「時刻を訊いても?」

 

 時計を確認する。 "まだ寝ていた方がいいぐらいに遅い時間だね。"

 

 セイアは首を軽く振り、ゆっくりと伸びをする。長く眠っていたせいか、まだ疲れが抜けていないようだ。「ティーパーティーの一員として、ましてや当番としても、先の行為は不適格であった」

 

 当番、と。いつ終わったかは……定かではなかった。そもそも、なぜセイアがトリニティに戻らずあなたのソファで寝ていたのかも思い出せない。あなたがデスクへ戻る間、セイアはオフィスを歩き回り、薄暗い中でも棚や机を見回している。「先生、私への下命は?」

 彼女の言葉から察するに、どうやらじっとしているつもりはないらしい。 "コーヒーが飲みたいな。"

 

「承知した。早急に戻る。」セイアはオフィスを出ていく。彼女は単刀直入に答えた。だが予知夢を見れなくなったのならもっとカジュアルに話してもいいのではないだろうか……

 

 落ち着いたまま仕事を続けていると、手に小さなティーカップと皿を載せたセイアが早急に戻ってきた。「申し訳ない、先生。コーヒーの淹れ方の理解に膨大な時間が要するため、その代わりとして紅茶を用意した」デスクにティーカップをデスクに置くセイア。「コーヒーが希望なら、コーヒーマシンの用法を……」

 

"紅茶で大丈夫だよ。セイアが淹れてくれたのなら、きっと美味しい紅茶だしね。"

 

 セイアは微笑む「他に助力出来ることは?」

 

 真夜中だというのに……元気が有り余っている様子だ。あなたなんて、仮眠のあとにはまともに言葉すら出ないのに、セイアはまるで昼過ぎかのように軽やかに立ち上がっている。

"とりあえず、今はそばにいてくれればいいかな。"

 

「承知した」ソファに戻って腰を下ろす。ほんの数分前まであんなに疲れていたのに……不気味なくらいまでに切り替えが早い。

 

 作業に戻り、あなたはときどきセイアを横目に見るが、微動だにしない。その様子に変化はない。一口頂こうとするが、中身はもう空だ。

"あっ……セイア?"

 

 セイアは即座にこちらを振り向く。「どうしたのかね?」

 

"もう一杯淹れてきてくれないかな?"

 

「ただいま」とデスクに歩み寄り、空のティーカップを手に取り、「ふむ」とあなたを見る。「この時間帯での食は控えるべき行為であると重々承知ではあるが……ペストリーをいくつか用意しようかね?」

 

"是非、用意してほしいよ。"

 

 セイアは頷く。「了解。すぐに戻る」再びオフィスを後にする。その過剰なまでの高貴さの中にも、不思議と心地よさを感じてしまう。恐らく、かつての預言者としての雰囲気を残しているからだろう。もし、セイアがカジュアルに振る舞うとするならば、どんな感じになるのか……?

 

 想像してみるが、うまくいかない。そう、カジュアルなリンやヒナ、ミネやリオ、ユキノを想像したときのように……セイアがミカのように振る舞う姿はどうしても頭に浮かばない。またしても想像できず、あなたが目を開けたそのとき、セイアが戻ってきた。彼女の手にはトレイ、その上にはティーカップ、ポット、そして色とりどりのペストリー。それらすべてが美しく整えられている。

「どうぞ、ご賞味あれ」そう言って彼女はトレイを机の上に置き、またソファへと戻っていく。あなたはそのトレイを見つめる。これは……フルコースのような布陣じゃないか?栄養バランスという意味では遠く及ばないだろうが、それでもこの閉ざされたオフィスの中で、これほどの贅沢は夢のようだ。

 

 正直、あなた一人だけではもったいないものであった。

 

"セイア。"

 

「何かな?」

 

"ちょっとこっちに来てくれる?"

 

「承知した」彼女は席を立ち、あなたのもとへと歩いてくる。「何か用件が?」

 

"そこに椅子を持ってきて座ってほしいんだ。"

 

 セイアは近くの椅子を手に取り、あなたが示した場所に置いてから腰を下ろす。「何か議論を交わすべき事柄でも?」

 

"そうじゃなくて、ただ一緒にお茶でもどうかなと思って。"

 

「ほう?」そしてセイアは頷く。「成程。用意し過ぎてしまったと」

 

"確かにちょっと多いけど、でも一緒にいてくれると嬉しいんだ。"

 

「そうか。ならばティーカップを用意しないとだね」

 

 あなたは頬を掻く。

"私がこっちを飲むから、逆の方から飲めば大丈夫だよ。"

 

 セイアは一瞬瞬きをし、言葉の意味を理解した瞬間、顔にぱっと赤みがさす。「せ、先生!いくらなんでもそれは不作法極まりないものだ……」

 

 からかっても、その礼節は崩れない。

"冗談だよ。ここで待ってるからね。"

 

「こほん……それでは失礼するよ」とセイアは足早にオフィスを出ていく。その反応に、あなたの口元には自然と笑みが浮かぶ。言葉使いはまだ堅苦しいものではあった。

やがてセイアが空のティーカップを手に戻れば、一言。「先生、ティータイムと行こうか」。

 

 言葉少なに向き合う二人。背景には夜の静かな街の喧騒。あなたはセイアの反応を窺おうと視線を向けるが、何も起きない。

小さく、小さく、紅茶とペストリーを味わうセイア。恐らく、ほとんどのペストリーはあなたのために用意されたものであったのだろう。(だがきっとそれが彼女のスタイルなのだろう。)だが、それでも彼女の表情は一切変わらない。

 今夜の自分は、セイアをからかうことに心を捧げているらしい──そう気付いたあなた。真面目に働いたご褒美、ということにしておこう。

 

 だがその機会が訪れてこない。一切のパンくずを残さず、奇怪な音も立てず、油断すらも見せないセイア。黙っていても鉄壁だ。あなたはずっとその様子を見守るが、見れば見るほどその機会は遠のいていく。(0だけのものから1を見出すようなことではあるが)

 

 諦めかけたその時――セイアの顔がうつむき、頬に赤みが差す。「せん……せい……」とカップを置けば、視線は逸らされている。「ずっと私を凝視していたが、どこかおかしなところでも?」

 

 機会を伺っていたら、気付けば自分で創り出していたようだ。

 

"ごめん、セイア。ちょっと困らせてみたかっただけで……"

 

「そして困らせたと……」咳払いをして、またティーカップを手に取る。「これといった異常はないということだね」

 

"だね。ほっぺたにパンくずが付いてる以外は。"

 

「えっ?」セイアは顔を真っ赤にしながら、近くのクロスを掴んで慌てて拭き取る。「どうして君はそれを……あれ?」

 

"冗談だよ。"

 

 セイアは静かにクロスを置き、真っ直ぐこちらを見据えってこう言い放つ。「先生」

 

 おや?この不穏な雰囲気は?あなたが目を合わせようと慎重に顔を上げると、セイアはスッと立ち上がり、冷たく微笑みながら歩み寄ってくる。「楽しい時間を共に過ごせたが、君には仕事が残っているのだろう?」

 

"そう……だね。"

 

 その威圧感は確かに恐ろしいが、誠意が詰まった言葉であった。セイアはティータイムの片づけを手伝い、そのあとは静かにあなたの作業が終わるのを待っていてくれた。なぜか作業もいつもよりスムーズに進む。(おそらく彼女の存在が、知らず知らずのうちに背中を押してくれていたのだろう。)

 少しの辛抱の後、今夜はストレスなく仕事を片付けられた。就寝する準備をしていると、あなたの動きに気付けたのかセイアが振り返る。「仕事が片付いたようだね。お疲れ様」

 

"ありがとう。今夜はセイアのおかげでずいぶん助かったよ。"

 

 セイアは頷く。「当然の務めなのでね。他に出来ることは?」

 

"あるよ。いい夜を過ごしてね。"

 

「おやすみなさい、先生」そしてセイアはそのままソファに身を投げた。

 

 ……

 

 退室するタイミングだったのでは?と思ったのだろう。だが……まあいい。夜ももう遅い、きっとセイアも限界だったのだ。あなただって、まともに休んでいない。だからそうする時だ。

 

 おやすみなさい。




[作者あとがき]
i love seia i love seia i love seia i love seia i love seia i love seia i love seia i love seia i love seia i love seia i love seia

[訳者あとがき]
一方、ミレニアムは紅茶に海水ではなく塩を入れてレンチンしていた。セイアのエミュ分かんないよ……

おまけ(グローバル版限定のミレニアムエキスポに関連したイベント):https://x.com/hgqKlfb4z6XhDm6/status/1943955300459114934
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