こんにちは!深夜のシャーレの第4章にようこそ。アコって本当にユニークなキャラクターですよね。ずっとアコには振り回されているように思えますが、不思議なことに安らぎを与えてくれるんです。不思議ですよね?
これは動画化を想定して書かれたものですが、まだ制作は始まっていません。映像のが好きでしたら、私のYouTubeチャンネルでの動画公開を楽しみにお待ちください。
(ただし、ファンフィクションの方がやはり一番面白いですよ)
常日頃から、深夜でのシャーレのお仕事に苦しめられるたび(というか苦しんでない夜なんてのはあったのだろうか)に考えること──当番がいてくれればどんなに助かることか、だ。
もちろん、生徒にまで自分と同じように徹夜させるに対しては気が引く。けれども仕事が早く終わるのなら、そんな事から簡単に目を背けられる。
ただ一つの例外を除いては……
「日頃から取っている風紀委員長への不適切な態度がなければ、こうしてわざわざ私自らがここへ出向く事態がなかったことをご理解していただけると幸いです」
どう表現するべきだろうか?厄介?救い?その両方?ともかく、アコが関わるとなると、いつも手一杯になり、同時に手が空く。まるであの物理学者しか理解できないような現象だ。
「特になければ、手を合わせてさっさと終わらせましょう」
"うん。ありがとうアコ。"
たとえどんな面倒事がついてこようとも、彼女の手助けを邪険にしたくはない。あなたは机の上の書類の山を指さす。アコはすぐに一束を手元に引き寄せ、何の迷いもなく作業を始めた。そしてあなた自身が手を動かす前に、ふと様子を観察する。ひたすら小言を言われても、勤勉な働き手であることだけは否定のしようがない。
何かを察したかのように、アコがすかさずあなたの動きを見抜き、何ですか?とでもいいたげな顔をこちらに向ける。
「先生、私はあくまでもサポートとして来ただけです。代理として来たわけではありませんよ」
"ごめん……。"
勤勉だ。それはともかく、あなたはペンを手に取り、仕事に取り掛かる。
しばらくの間、二人の間には静寂が流れる。確かにこのやり方が最速ではあるが……あまりにも静かである。
"ねえ、アコ。"
「はい?」
"今どれくらい進んでるの?"
「えっ……一枚一枚数えているとでも?」
"いや、そういうわけじゃなくて、ただちょっと進むのが遅いなあって思っただけで。"
疲れたような目であなたを睨むアコ。「先生」
この反応は……予想外だった。
「つまらない冗談はよしてください。いいですか?」
"はい……。"
首を振りながら作業を再開するアコ。「私より早いと思うとは一体どういう風の吹き回しなんですか……」
いた。今まで鳴りを潜めていたが、ようやくアコ本人がここに現れた。
"そうかな?アコの方が何徹もしてるってことかな?それにしてはもう疲れてるみたいだけど。"
その言葉に反応したアコの手元を見れば、その手のペンが今にも真っ二つに折れそうだ。「それ本気で言ってます?意識はまだはっきりしてますし、それに先生の分よりもずっと多く終わらせたんですよ。先生は大人なんですからもう少ししっかりしてください」
"先にやらせてあげたのは忘れてないよ。"
「先に!?そんなの一分程度の誤差じゃないですか。もう……仕事は続けるんですか?続けないんですか?」
本当にアコは楽しい存在だ。仕事の面でも信頼できるけど、こうして茶化して遊べるのもまた大きな魅力。
"ごめんアコ、書類仕事が終わりそうにないからちょっとでも楽しくやろうと思ってつい……。"
ため息をつくアコ。「仕事のためにここに来てるんですから、黙ってやるのが一番ですよ。お疲れのようならコーヒーを淹れてきますね」
"最高だね。"
「そうですか」と立ち上がり、「少しお待ちください」とオフィスを後にする。さて……アコがいないと途端に退屈になってしまう。からかうのは楽しいけれど、やるべき仕事があるのも事実。結局、あなたは手を動かし続ける。今日に限ってやけに書類が多い、なんと不思議なことか……ただそれでも、アコが今日この日に訪れてくれたことに際しては救いであったのかもしれない。
ゆっくり確実に書類の山を処理していく一方で、アコが戻ってくる音がする。書類の合間から目線を上げると、二杯分のカップとポットをトレーに載せて運んできていた。「どうぞ召し上がってください。今日の分は……まだまだ終わりそうにありませんね」
カップにコーヒーを注けば、ふわりと良い香りが広がる。さすがはアコ、期待通りの腕前だ。(元からコーヒーには定評があったはず?)ほんの少しだけ元気が出て、茶化すのはやめて、再び仕事へと集中する。
だがしかし、すぐに思考が停止する。手は書類をめくってはいるものの、何にサインをしているかはさっぱり、頭の中へと入ってこない。コーヒーがあるかどうかも分からないのに、惰性で口に運ぶ。ポットを目にやれば、完全に空っぽ。一体何杯飲んだのだろうか?一杯?二杯?五杯?全てがぼんやりと、曖昧で、明瞭さのかけらもない──バケモノみたいな書類の山のように。
辛うじて、アコに視線を向けられた。彼女はいつも通り黙々と書き続けているようだ。だが、次の書類を取ろうとほんの少しだけ顔を上げたその瞬間――彼女もまた、生気を失った顔をしている。
手を振ってみる。アコは次の書類を掴むが、あなたの方を見ようとすらしない。反応すらもしてくれない。
もちろん、普段の状況ならここまで深刻になることはない。だがアコと一緒だと、お互いを限界まで疲れさせ合ってから、仲良く並んで限界まで死ぬほど働くという謎の流れができあがっている。
理解できぬ。その一言に尽きる。
机の向こうへ手を伸ばし、肩を軽く叩く。だがうんとも言わずにただ手を払われるだけ。もう一方の肩を叩いてみる。すんとも言わずにただ払われるだけだった。
"アコ。"
まったく反応しない。まるで抜け殻。とはいえ、あなたも似たようなもの──なればとっておきの……
"ヒナ?どうしてここに?"
途端にアコがぴくっと反応して、扉の方へ顔を向ける。「い、委員長!?」
あなたはため息をつく。恐らく安堵の。"誰もいないよ。"
アコはさっと振り返る。「えっ──はい?」
"ようやく気が付いたね。"
ただ重たい息を吐く。「いつもこんな量の書類を抱えているんですか?」
"いや、今日が異常なだけ。本当にアコのおかげで大助かりだよ。"
ため息をつくアコ。「今日でラッキーでしたね」そして、頭を軽く振って作業へ戻る。「そして終われば大喜びになると」
"あながち間違いではないね。でもとりあえず、まずは一休みしない?"
「そうしたいのは山々なんですが……これ以上後にしてしまうと終わりそうにありませんね……」
"なら気を紛らわせるようなことをやろう。"
「何かお考えがあるみたいですが」と手を動かし続けるアコ。だがあなたはその考えを返さない。すぐに……思いつけばいいのに。会話をするくらいしか手段はない。けれど、話題は?ヒナの話をすれば気を引けるが、手が止まってしまう。ほかの話題なら……そもそも乗ってくれるかも怪しい。どっちに転んでも分が悪い。結局、あなたは黙って仕事に戻るしかなかった。
"アコにはいっつも関心されてばかりだよ。"
「突然どうしましたか?」
"どんな時にもアコは頼りになるし、こんなに信頼できる人なんて他にそうそういないよ。"
「ええ、それくらいは風紀委員として当然のことです、先生が私を頼れないようでは、私の立場はどうなるというのですか?」
小さく息を吐くアコ。
「風紀委員長が先生をどう評価していらっしゃるのか──未だによく分かりませんが、それでも多少は役に立ってるみたいですね」
あなたはくすっと笑って、また机に視線を戻す。なんとなく、作業の手が少しだけ早く動いている気がするような……?いや、どうせすぐに全部ぼんやりしてくるから確かなことは言えない。それでも頑張ろうという気持ちがほんの少しだけ湧いている。単に眠りたいという気持ちかもしれない。さてどうだろうか?
いや、どのみち分かる。眠りたいと願っているのは……身体の一部なんかではない──身体全体、そして魂そのものだ。それでもデスクに突っ伏していないのは、ただ一人──アコという存在がいてくれているからだ。
作業中に眠ったあなたを見て怒る、あるいはそもそも眠らせてすらもらえない、そのどちらかのせいで楽園への大きな一歩を踏み出せない。
もう一度アコを見つめる。鈍く進んでいくペン先、一瞬だけ仮眠するかのような瞬き。目の下の隈は、あなたが沈み込んだ椅子よりもさらに深く奥へと染み込んでいる。この子はどうしたというのだろうか?自然な感じで眠ることすらもままならない。情け容赦のない大人の世界に適用しているではないか。(とはいえもう経験済みであってほしくはない。)
疲れ切った状態を見て見ぬふりするなら、言えることがひとつだけある。ふたりとも、ここから先の書類は確実に終わらせられる。自分の腕をつねる必要も、舌を噛む必要もないのだ。たとえキヴォトス全土を相手に二回戦う羽目になろうとも──それも時間の問題だ。
……
それにしても、まだ太陽が昇っていない。想像もつかないほど、ずっとずっと働き続けているようでないのだろうか?まだ日の出には程遠いと時計が告げる。だかそれでももう昇ってもいいはずだと何回も何回もそう思っている。それについては今さら文句を言うことではない。今宵、あなたたちを苦しめていた紙の山が、今ではすっかり消えてなくなったのと同じように。さっきまで手に負えないようなバケモノを相手していたはずなのに、それが今では……もう終わったと?
アコが次の書類を取ろうと手を伸ばす。けれど、そこには何もなかった。眉をひそめ、空っぽな手を見つめる。「あら……終わりましたね……」それから数秒かけて息を吸い込み、二人同時に、心の奥底から深い安堵のため息を久方ぶりに吐き出す。「さっき風紀委員長に話しかけられているような気がしました……」そして頭を振る。「それはさておき、やっとでしたね……」
立ち上がり、身体を伸ばして整える。同じくあなたも伸びをする。「先生?予備の布団などありますか?夜もこんなに遅いのにゲヘナに戻るとは思っていませんよね?」
もちろん、はなからそう思っていない。布団なんてないが。「はぁ……仕方ありませんね。ソファーで妥協するしかないようですね。本当は先生にお世話されたくありませんが、それでも他の選択肢はありませんし、おやすみなさい」
"おやすみ、アコ。"
心地良い寝方へなるために苦戦する様子を横目に見ながら、あなたはもう片方のソファーへと身を横たわり、心地良い寝方になる。「え?まさかベッドすらもないんですか?先生の勤務姿勢には疑問を抱いていましたけど……まさか、睡眠環境までいい加減だったとは」
"それは違うよ。ただアコを放っておきたくなかっただけだよ。"
「……そうですか……ほんっと手のかかる人ですね……」
[作者あとがき]
トリニティ生じゃない?妙だな……
先生とアコの「嫌い嫌い嫌い……でも完全に嫌いというわけではない」という関係は、しばらくぶりに経験した中でも特に面白い出来事の一つなので、アコには間違いなくLNaSの章がふさわしいでしょう。
[訳者あとがき]
次は26日に投稿します