遅れてしまいました申し訳ございません。イロハみたいにサボっていて投稿を忘れてしまいました。
また深夜のシャーレ、また──
そう、まただ。一つ楽しいチャレンジ──深夜の残業になってしまうまでどのくらい逃げ切れるか計ってみよう。準備が出来たら早速開始だ!どうして始めないの?こうして机に向いたままクソみたいな深夜をまた過ごそうっていうのに!ただ単に……何かニヤついた?こんな量の書類だとどこを向いても、あなたに歯を見せつけてはニタニタと笑ってきてるようだ。もちろん……何のためにそんなことをやるかという理由なんてのはないが、ただ今回はどうだ?どういう意味がある?『他に誰がやる』や『キヴォトスのため』のような馬鹿げた肯定だけで人を動かすのは限りがある。今は……六徹?そう、まともな人
ヴーッ
ちょっと待った。モモトークを確認する前に、ちょっと送信者が誰かを当ててみよう。もしかしたらリンが『先生、今夜の仕事にあまり気を落とされていなかったのでしょうか?ですがご心配なく、すぐに私が三倍の量にさせていただきます。』と送ってくるか、もしくはまたイチカが『またひまああああああああ……』と送ってきたのかもしれない。どうやら、どちらとも外れのようだ……
チラ見するあなた。
ひまああああああああ
イチカ?いや……違う。
イロハ?どうしてまだ起きてるの?
暇だってさっき言ったじゃないですか。まだ起きてるようなので、ちょっとお邪魔しますね
普通ならもっとこう……特に五日前のあの夜ような、翼をもった陽気な少女があなたのオフィスに転がり込んでくると分かっていたのなら、わざわざシャーレに来ないように口を酸っぱくして言っていたはずだ。だが今夜のあなたは……一体何が出来る?
コンコン
思考が重なり合い、考えが浮かぶ前に扉は開かれ、舞台のスター──生意気な戦車長の姿が現れる。「どうも。ちょっとここでサボりますね」
"……なんで?"
「いつものことですよ。もうどうでもいいことです。イブキはもう自室で寝ているので、もうあそこにいる理由なんてないんです」とあなたに歩み寄れば、そこに積まれた書類の山を真っ直ぐ見つめる。「……せいぜい楽しんでください」とデスクのデスクの反対側に座り、読書を始める。妙だな……ソファに座ると思っていたはずなのに……でも距離感が微妙に近いように感じるのが、まあいい。
……
しばらくして、距離感の近さが何かしらの影響を与えたと認めたら……大変なことになるだろう──たとえ銃を突きつけられたとしても。人生の尊厳のためにあまりにもあからさまな嘘を……あなたは吐けられない。本当だ。だとしたら自分の人生の価値はどのくらい評価しているのだろうか?誰かが側にいてくれることは良いものの、その姿は書類の後ろからしか垣間見れない。
「お~……着実に進んでますね」と向こうからページをめくる音が聞こえる。「がんばれ、がんばれ」と……その、つまらない。こんな中身のない応援だと心にぴくりとも響かない。それでもあなたは書類の山をさばき続けて、ほどなくしてイロハの帽子のてっぺんが見えるようになった。
パラ、パラ、パラ、パラ……
ぼんやりと、赤い地平線が覗き始める。やっとのこさ帽子のてっぺん以外のイロハの姿が見えるようになった。「おや、その顔、相変わらず精が出ていますね」ぴくりとも……うんともすんとも心に響かない。まるで歩いていたらいきなり声をかけてくるゲームのNPCのセリフのようだ。だんだんと、書類の山から彼女の前髪へとあなたは置き換えていく。そしてあんな前髪をした生徒が他にいようとも、ついに彼女の小さな顔が見え始める。奇跡だ。それ関連でいうならば、目の前で座ってくれるのならソラが一番かもしれない……だけど違う意味で、顔を見るのには時間が更に掛かってしまう。おっと、言わなきゃよかったか……
眉毛が山の上からひょいと上がる。イロハが顔を上に向ければ、書類越しからかすかに目が見える。眉が目を押す様が
見え、未だに口は見えないがどんな顔をしているのかは非常に容易く想像がつく。「いないいないばあ~」と顔を下げれば彼女は読書に戻る。
そうだ、あともう少しだ。気付けばすっかりと仕事について嘆くのをやめて、今やお宝を掘り出すかのようにイロハの姿を書類からさらけ出すのに夢中だ。もう一押しだ……!
視線を本に落としているイロハ。片付けた箇所から目がちょっぴり見える。彼女の姿をこの目で見るためにどこまで躍起になっていたのだろうか?最初は帽子すらも見えていなかった。信じられない……ほんの少しの馬鹿馬鹿しいモチベーションが、原動力になったのか?
「先生」あなたは瞬きをして現実へと戻る。目元はほぼ見えないにしろ、視線をほんの少しだけ下げていた。だが眉毛は上へと動き、あなたが見えるように舞台に登っていた。「さっきからずーっとジロジロ見ているんですか……何か顔についてますか?」
首を横に振って仕事に戻る。無自覚でやっているのかもしれないが、もしかしてわざと書類で顔を隠している?──そんな気がするあなた。まるで……自分の全容をほんの一部分だけ明かし、残りをあなたに全て引ん剝かせようと仕向けているみたいだ。もしくは……
どかーん。一チャンク消えました。これでイロハの目が半分見えるようになりました。どかーん。また一チャンク消えました。これでぷくっと頬を膨らませてあなたに微笑むイロハが見れました。ですがまだ口は見えません。どかーん。今度は一気に二チャンクです。
そうしてイロハは残った書類を眺める。「一時間ぐらい前の時には見上げるほどの量だったんです。凄いですよね」とあなたを見上げ、別に彼女は何かしたというわけでもないのに満面の笑みを浮かべる。「えらいですね」
次のシートに手を伸ばそうとした瞬間、残りの書類の隣に本を置くイロハの姿が。腕をデスクにのせて、あなたを見上げてじーっと見つめる。
"何してるの?"
「やっと、私の姿が見えましたね?つまりはこちらも見れるということです。まあ気にしないでください」そんな言葉にあなたは眉をひそめ、最後に残った残骸という名の書類を裁断し続ける。シートを一枚一枚掴むたびに、シートに下がってはあなたの方へと上がるイロハの視線も捉えていた。
そしてようやく……
"終わった……。"
パンと手を叩き本を手に取るイロハ。「やりましたね」と背伸びしながら立てば、そそくさとソファへ向かう。「いやぁ~もうしんどいです。寝ます」と靴を脱ぎ捨てて、ぽすっとソファに寝っ転がる。あなたは立ち上がり、イロハの方に靴のかかとを揃える。「何ですか?」
"お疲れ様、イロハ。"
眉毛を上げて、ため息をつくイロハ。「いつか手伝わされるかもしれないと前々から思っていたんですが……いやぁ……びっくりしました……」
"別に無理してシャーレに来なくてもいいよ。"
「その──」肩を落とすイロハ。「よく分かりませんね。仕事があると勘付いていましたが別にしたくは……なんだか罪悪感を感じますね」
"罪悪感?イロハらしくない言葉だね。"
身体を起こせば、横にトントンと叩くイロハ。何を企んでいるのか分からないままあなたは腰を下ろせば、突如右肩にはどっしりとした重みがかかる。振り返れば、イロハが寄りかかっており、目を閉じて膝の上には本を広げられている。
"大丈夫?"
「今日はラベンダーで髪を洗ってきました。分かりますか?」
"うっ……。"
「ほら、どうぞ。しますか?」困り顔になったあなたはほんの少しだけ顔を近づけて、息を吸い込む。ラベンダーと……ほんのちょっとではあるがシトラス?
「ほんのちょっとだけシトラスが混ざっていますが、多分イブキから移ったんでしょう」と肩から滑り落ちて姿勢を変えれば、あなたの膝の上に倒れ込む。「まあそうですね、これで満足してくれたのならいいのですが」
"うっ……。"
「夜ももう遅いですね。おやすみなさい」とイロハは目を閉れば、すぐに身体が脱力していく様子があなたにも伝わってくる。まさか……もう眠りについたと?
軽かったおかげで、特に苦労もせずにそっとソファの肘掛けの上に彼女の頭を寝かせてあげるあなた。そうして静かにもう一つのソファへ歩み寄り、自分も眠るべく腰を下ろす。
正直なところ、これほどまで協力してくれるイロハを見るのは稀だ。何が彼女をそうさせた?
イチカに出会って交流したせいなのか……?さあ、どうだろう。でもありがたいことに、今夜は穏やかな夜だった。
次もまたこんな穏やかな夜でありますように。
[作者あとがき]
すみません、この今回は他より少し短めです。イロハみたいにちょっと飽きてしまいました。それにネタ切れ気味かもしれません……
いえ、次はきっと良いものにします。約束します。
最初の構想では、イロハが先生の仕事中に常にちょっかいを出し、仕事が終わった後に仕返しをさせるという展開を考えていましたが、突然現れて先生が書類の山に埋もれているのに気づきながら、それでも平然とちょっかいを出すというのは無理があると思いました。イロハはもっと素直な性格のはずですから。
それでも話は何とかまとまりました。私としてはこれで十分です。
皆さん、お元気で。おやすみなさい。
[訳者あとがき]
次こそは22時に投稿します