万博聖杯戦争 2025 大阪・関西   作:ナニトゾ

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真名建造

サーヴァント・ガンダム
真名
RX-78F00/E

GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION に展示されていたガンダム像に錬が聖杯を炉心として癒合させ、擬似的にサーヴァントとして成立させた機動聖杯。
背部ユニットグラスフェザーの存在が特徴。これを装備することで自在に空を駆り、オールレンジからビームを浴びせる飽和攻撃が可能となる。



24話 西の果てのイレギュラー

 

万博聖杯戦争 10日目 昼

 

 

大阪・関西万博、フューチャーライフゾーン。

西ゲートから更に西に進んだそのエリアは、空飛ぶクルマの発着所や、各企業の最新技術を展示する未来の都市など、世の中の未来について考えるエリアである。

狼我は今まで、あまりここに来る機会が無かったのだが。今は団体休憩所、並んだベンチの片隅に腰を下ろしている。

 

 

「全く、どいつもこいつも陰謀ばかりだ。嫌になるな」

 

 

そんなことを呟いた。昨晩の戦いを思い返す……美琴も、錬も、無茶苦茶だ。

 

 

「陰謀とは言うが。人はそれぞれの意図があるものだろう」

 

「お前までそんなこと言うのかよ、バーサーカー」

 

 

すぐ横から、バーサーカーの声。……また頭からカゴを被って、狼我の隣に座っていた。その虚無僧姿にもいい加減慣れはしたが。毎回姿を隠す手間があるのは、なんだか気の毒だ。

 

 

「私は岡本太郎という人間が生み出した存在だが、同時に数多の人間によって構築された発注芸術、また建築物でもある。私に関わった人間には、それぞれの意図があったとも」

 

 

まあ、それはそうだろうが。

 

 

「だからこそ、それぞれの人間は真正面からぶつかり合って、その上で理解をし合うべきだと思うが」

 

「……にしても、あれはやり過ぎだろ」

 

 

まさか、ガンダムを動かしてくるなんて。狼我がボソリと呟けば、バーサーカーも苦笑するように肩を揺らし。

そして彼らの背後に、誰かが歩み寄る足音。

 

 

「いかがかな、狼我殿。バーラト館特性マンゴーラッシー、なんだか温いのが玉に瑕だが、とにかく濃厚で満足感がある」

 

「なんだいきなり」

 

 

振り向けばセイバーがいる。何やら袋を片手に提げていて、そこからオレンジ色の液体で満たされた小さなプラカップを取り出して、狼我へ差し出していた。きっとマンゴーラッシーだろう。

 

 

「ひとまず同盟は継続、と我は認識しているが。それで構わないだろう?」

 

 

そう聞かれれば、頷く他ない。アーチャー並みの、いや、それ以上かもしれない脅威が現れた以上、潰し合いは不可能だ。

狼我はセイバーからマンゴーラッシーを受け取り、ストローに口をつける。

 

 

「……美味いな。うん、濃い。凄いな、マンゴーの果肉みたいな、こう、ねっとり感」

 

「なるほど。マンゴーらしさが強くて、このサイズでも飲みごたえがあるな。これが本場というものなのだろうか」

 

 

また一口。果実の味が強い。こうも濃いと、若干の温さすらも濃い味を引き立てるエッセンスに感じられてくる。

狼我が舌の上でマンゴーラッシーを転がしていると、また後方から誰か駆け寄ってくる音が聞こえてきた。

 

 

「アタシも飲むー。あ、マスターの分も!!」

 

「うむ、全員分買っている」

 

 

振り向けばライダーと、それからベンドレ。やはりセイバーからマンゴーラッシーを受け取って、早速ストローを咥えている。

 

……少し遠くの方のベンチに、キャンディが座っているのと目が合った。

そういえば、セイバーが買ったこれの購入費用は誰が出したのだろうか。

 

 

「もれなく私の奢りになります。感謝するように」

 

「……ごちそうさまです」

 

 

軽く頭を下げた。また一口。

 

 

「……しかし、昨日の慌てぶりの割には、今日も万博はやるんだな」

 

「やすやすと休みにはできひんよ」

 

 

狼我の呟きに、美琴の声が応えた。どうやらすぐ近くにあった未来の都市から出てきたようで、狼我の前まで歩み出てくる。

そう、美琴だ。狼我らを招集したのは彼女であった。

 

彼女とは、アーチャーを巡って対立こそしたが。しかしアーチャーを倒してしまった今、もう対立する理由もない。実際、狼我は昨晩はまた国連館で夜を越していた。

そして今日も、彼女に招集されたわけで。呼ばれた理由はシンプルだった。

 

ガンダム以上の脅威が、現れた可能性がある。

 

 

 

美琴に連れられて、狼我らは未来の都市の建物内、関係者用の会議室に入室した。促されて席に座る。前を向けば、いかにもそれらしくホワイトボードが置かれていて、プロジェクターの映像が投影されていた。

美琴がそのホワイトボードの脇に立って、口を開く。

 

 

「一通り調べたけど、あの海域に異常はあれへんかった──科学的にはな」

 

「科学的には、か。……なら」

 

「うん、巨大な魔力反応があった。場所は……神戸沖埋立処分場」

 

 

ぱちり、投影される画像が切り替わった。映し出されるのは万博会場周辺の空撮地図。美琴はホワイトボードマーカーを手に取り、海に浮かぶ島の1つをぐるぐると囲む。

 

そここそは神戸沖埋立処分場。人工島、六甲アイランドの南に造られている新たな人工島であり──大阪・関西万博とは、何の関係もなかったはずだ。

 

 

「本当に、そこに?」

 

「せや」

 

 

頷く美琴。

巨大な魔力反応、と言われても、狼我は要領を得ない。

 

 

「つまり、具体的に何だ?」

 

「それが解ったら苦労せぇへん」

 

 

苦い顔の美琴。弄ぶようにホワイトボードマーカーの蓋を閉めたり、また開けたり。

 

──カツカツと、廊下を歩く足音が、耳に届いた。

そして、直後。

 

 

「あれはサーヴァントだ」

 

 

直後会議室の扉が開き、そこに錬が立っている。

 

 

「テメェ、昨日はよくも──

 

「落ち着け狼我くん、話の途中だ」

 

 

立ち上がりかける狼我を制止して入室、美琴の横に立つ錬。

その手の甲には、令呪が刻まれている。

シンプルな八角形の、無地の令呪。そういえば、監督役は1画ずつ予備令呪を持つのだったか。きっとそれを、転用しているのだろう。

 

 

「……サーヴァントったって、誰なんだよ。俺達が倒した誰かが生きてるって?」

 

「そうじゃないな。……証人を呼ぼう。入っていいぞ」

 

 

錬はそう言って、まだ空いたままの会議室の扉へ呼びかける。

 

……数秒遅れて、白人の青年が1人、ひょこりと顔を出した。逡巡しながらも、会議室に入室し。

 

 

「ボクはレニー。レニー・ロッシ」

 

 

そう名乗る。

 

名乗った、その声色を聞いて。

狼我の中の、何かがざわついた。

 

青年らしい、甲高い声。これを知っている気がする。でもどこで? 記憶の中を掘り起こす。絶対に、どこかで聞いたことがある。

 

 

──素に銀と鉄。礎に石と契約の大公── 

 

 

「アンタ、その声、まさか」

 

 

そして、気付いた。

 

バーサーカーを召喚した、あの夜に。脳裏に響いていたのは、この声だ。召喚の文言を唱えていたのは、この声だ。

今、目の前にいる、この青年の声だ。

 

 

「何者だ、アンタ」

 

「ボクはイタリア館のスタッフだ。それと……本来は、万博聖杯戦争に参加するはずだった」

 

 

レニーは床を見ながら、ぶっきらぼうにそんなことを言う。続けて、

 

 

「ボクはバーサーカーを召喚しようとしたんだ。でも失敗した」

 

「……バーサーカーの、本来のマスター?」

 

「補足すれば、イタリア館は反則行為も犯している」

 

 

レニーの言葉に割り込んで、錬がそう言葉を差し挟む。

 

 

「反則?」

 

「彼は2回召喚を行おうとしたんだ」

 

「それは、1回目は失敗したからだ!! 誰も召喚できなかった、だからやり直した」

 

「監督役の判断を仰がずにな。それは反則なんだよ、レニーくん」

 

 

レニーはまた下を向いて、舌打ちを1つ。随分機嫌が悪そうだ。……マスターとして参戦し損ねたのだ、この10日間、如何に居心地が悪かったかは狼我にも察せられる。錬は更に続けて。

 

 

「そして、イタリア館は2回目の召喚も失敗した──代わりに、狼我くん。君の元に、バーサーカーが召喚された」

 

 

そう言いながら、狼我の座る椅子の隣、カゴだけ外したバーサーカーの姿を指差した。バーサーカーは無反応。

 

狼我は頭の中で、ここまでの情報を整理する。

万博聖杯戦争に参加するはずだったイタリア館のマスター、レニー・ロッシ。彼はバーサーカーを召喚しようと2回召喚行為を試みたが、1回目は誰も現れず、2回目では狼我の元にバーサーカー、太陽の塔が召喚された。

 

 

「しかし、今になって。1回目の召喚が失敗した理由が解ったな、レニーくん。君は召喚に成功していたんだ」

 

 

錬は更に語る。語りながら、美琴の描いた神戸沖埋立処分場の丸を爪先で小突いた。

 

 

「君や俺に感知できない場所、恐らくは万博会場の外に、君のバーサーカーは召喚された。それに気づかず2回目の召喚を行ったから、万博聖杯戦争のセキュリティが狼我くんを選んだ」

 

 

実際、サーヴァントと魔力のパスは繋がっていたんだろう? と、錬はレニーに問いを投げる。

 

 

「それは……よくわからなかった。ボクはサーヴァントを召喚するのは初めてだったし、それに、ずっと体調が悪くって。耳鳴りがしてたんだ」

 

「もう1人の、バーサーカーか……真名は?」

 

 

話を聞いていたベンドレの問いにも、レニーは首を振るばかり。

 

 

「解らない。イタリア館は、召喚するサーヴァントの候補を幾つか用意してたんだ。誰が来ても1級のサーヴァントになるはずだった」

 

 

レニーはそう言って、指折り触媒の候補を数え上げる。万能人レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿。巨匠カラヴァッジオによる絵画キリストの埋葬。ティターン神族の一柱をモチーフとしたファルネーゼのアトラス。空界勇士フェラリン中尉の飛行機模型。

 

 

「待った、整理させてくれ」

 

 

キリがない。狼我はレニーの言葉に割り込む。サーヴァントの正体も気になるが、それ以前の話。前提を整理する。

 

 

「アンタが元々のバーサーカーのマスターで、でもバーサーカーの召喚に失敗したと思っていた。実は召喚されていたバーサーカーは、昨日まで待ちぼうけを食っていた。それで昨日になって、あの……なんだ、デカい騒ぎを起こした。そういうことなのか?」

 

 

確認すれば、錬は頷き、レニーは気まずげに目を逸らす。

 

 

「流石だな狼我くん。今朝までの状況は、その認識で正しかった」

 

「……今朝まで?」

 

 

意味深な口振りだ。狼我が錬に目を向ければ、彼は肩を竦め、続ける。

 

 

「今朝までだ。今はまた、状況が変わった。……今朝、誰かが、バーサーカーのマスター権を奪った」

 

「……ああ?」

 

「そう、そうなんだよ。ボクの令呪が、盗まれたんだ!!」

 

 

言われて、初めて、狼我はレニーの手の甲を見た。

 

令呪は無かった。

 

──違う。目を凝らせば、痕跡はある。まるで乱雑に削ぎ落とされたかのように、令呪の欠片だけが、痕跡を残している。

彼の令呪は、奪われた。

 

 

「……そんなことが、出来るやつが?」

 

───

 

それから、また数時間後。

来場者が西ゲートを通って帰っていくのを見送ってから、狼我はGUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONへと足を運んだ。

そこには既に錬がいて、ちょうど、ガンダム像へはしごを掛けている最中だった。

 

 

「面倒なものだ。昨日ガンダムを使ってから、元の位置に戻すのにも苦労したんだが」

 

 

そう言いながら、錬が何やらガンダムを弄れば。ギチリと音が立ち、ガンダムの胸元が稼働する──コックピットが現れる。

 

神戸沖埋立処分場に現れた巨大な魔力反応、そして何者かによるイタリア館の令呪の強奪。何かが起きるとすれば今晩だろう、と。それだけは、昼のうちから解っていた。

そして、その対策に関しては──俺がガンダムで出る、と。錬が既に手を挙げている。

 

 

「なあ、わざわざアンタが搭乗するのか?」

 

 

コックピットに脚を掛ける錬を見ながら、狼我は疑問を口にした。

 

 

「アムロのAIが積んであるんだろ、そのガンダムは」

 

「設定上はそうだがな。俺が生み出したのは、ガンダムという力に過ぎない。アムロ・レイはこの世界には存在せず、学習元なしにAIは作れない」

 

 

錬はそう言いながら操縦席に座り、またパチリパチリとスイッチを弄る。

 

 

「だから俺が乗る。俺が出る」

 

 

カメラを積んだから中継でも見てくれ、と。錬がそう言い、軽くガンダムの機体を叩けば、コックピットの扉が閉まった。

ガンダムの目に、光が灯る。

 

 

『事務局より連絡。全来場客の退去、及び一般スタッフの退去が完了。夢洲から神戸沖埋立処分場まで、一般人退避、魔術偽装、全て完了。対サーヴァント戦、準備完了しました』

 

 

万博聖杯戦争 10日目 夜

 

 

アナウンスから程なくして、美琴もまたガンダムの前に現れた。手にしたスマートフォンを眺めながら、目を細めている。

 

 

「あいつも律儀やな。巨大な魔力反応、たった今動き始めたで」

 

「マジかよ。放送聞いてたのか?」

 

「かもな」

 

 

美琴はそう言いながら、フューチャーライフゾーン、海の見えるエリアに向けて歩き始める。狼我はそれに追従し、そしてガンダムも。どしどしと背後で足音がするので、狼我は何とも恐ろしいが、口にはしない。

時折振り返って、歩くガンダムを仰ぎ見る。既にグラスフェザーまで装備して、戦闘準備は万端のようだった。

 

 

「ジブンは全く……これも放送するんか?」

 

『当然だ。既に撮影用の使い魔は飛ばしてある。今回は視聴率が見込めるな』

 

「万博全部が掛かっとるんやで」

 

『俺は真剣だ。全てに対して』

 

 

ガンダムの中から、錬の声。美琴は錬にも聞こえるように、大きく大きくため息をついた。

 

 

「面白半分で、まさかこの世界を滅ぼしてやろうなんて、そんな考えとちゃうやんな?」

 

『世界を滅ぼす? 馬鹿を言うな』

 

 

そのため息を蹴飛ばすように、錬がガンダムの中から反駁して。

 

 

『世界を救うのはエンタメだ。ガンダムでもって人類を救い、人の心に火を付ける。……だから、これは前哨戦に過ぎない。まずは万博を救ってみせる』

 

 

そうしながら、彼らは団体休憩所前まで到着した。

既にそこにはバーサーカー、ベンドレとライダー、キャンディとセイバーが居て、誰もがガンダムを見つめている。

 

団体休憩所の向こう側には、海がある。そしてその10km先、海を越えれば、神戸沖埋立処分場。

 

 

「魔力反応は、こちらへ向けて──万博会場へ向けて、少しずつ近づいてきとる。ジブンの役目はこの魔力反応の正体、及び目的を特定し、必要に応じて打倒すること」

 

『言われずとも』

 

 

直後、グラスフェザーが、青白く極光を放ち。

 

 

『──サーヴァント・ガンダム!! 出撃する!!』

 

 

 

ガンダムが飛び立つのを確認してから、美琴は団体休憩所にモニターを持ち出してきた。

 

 

「それは?」

 

「悪いことせぇへんか、確認せんとな」

 

 

電源を入れれば、画面には海上の映像が映し出される。

どうやら、ガンダムに積まれたカメラからの映像らしい。海上に青白くグラスフェザーの光が反射し、水平線の向こうには港町の明かりが見える。

 

そして、唐突にモニターからアラートが聞こえた。

 

 

『サーヴァントが近いか』

 

 

これもやはり中継されているのだろう、モニターからは錬の声。

その画面から視線を外して、狼我が海を見てみれば。ガンダムであろう光る機械が、空中で飛行の軌道を変え。

 

 

『姿を現せ!! ビームライフル!!』

 

 

閃光。

 

ピンク、あるいは紫にも見えるビームが、ライフルから放たれた。光は瞬間的に海の向こう、何もなさそうな一帯へと突き進み──途中で掻き消える。

さらに数発。いずれも消える。

何かが、ビームを遮っている。

 

 

「あれは──」

 

 

何もなかったはずの、海上の大気が揺らぐ。

 

巨大な人間の姿──サーヴァントが、姿を現す。

 

 

「出た!! サーヴァントや」

 

「これは……巨人、か?」

 

 

巨大な姿のサーヴァント。衣服は纏っているようには見えず、巨大な肢体はいずれも白い。

──そして。その巨人の肩の上に、1人、誰かの人影があった。

 

ガンダムのカメラが、肩の上の人型にズームする。

その顔を、画面に映し出す。

 

 

「──佐藤住持ッ!!」

 

 

驚きと共に、狼我はその声を漏らしていた。

 

佐藤住持。その名前は、既にレニーから第一容疑者として聞いていた。数日前に打倒した、アサシンのマスターだった男。昨日彼と会っていた、とレニーは言っていたが。

しかし、本当に彼だとは。

 

 

「何考えてやがる!!」

 

「落ち着け、ローガ。サーヴァントも、確認するぞ」

 

 

ベンドレの言葉とタイミングを同じくして、ガンダムのカメラがズームアウト。再びサーヴァントの全体像を映し出した。

観察する。巨大なその身体は、恐らくガンダムよりも2回りほど大きいだろう。その肢体はいずれも白く……まるで大理石か何かのような光沢すら放つ。顔は男性のそれをしていて、髭が特徴的だった。

彫刻のような容姿。というより、動く彫刻のようですらある。

 

 

「あの姿──やっぱり、そうか」

 

 

それを見れば。真名自体は容易に解った。

 

 

「バーサーカーの真名はアトラスだ。……イタリア館にはいるんだろ、アトラスが」

 

「そうか、ファルネーゼのアトラス!!」

 

 

もう1騎のバーサーカー──真名アトラス。ギリシャ神話に語られる、ティターン神族の一柱。

巨神族最強の腕力を持っていたアトラスは、ゼウス率いるオリュンポス神族との抗争ティタノマキアにおいて、最後までゼウスに抵抗したとされる。要は巨大な神である。

 

そしてイタリア館には、彫刻ファルネーゼのアトラスが展示されている。

 

 

「あれは確かに素晴らしかった」

 

「でもアトラスは神霊カテゴリの存在のはず。召喚が出来るようなものじゃない」

 

「神霊?」

 

「本来サーヴァントになる英霊よりも、格の高い存在です。聖杯戦争に出てくるなんてありえない」

 

 

モニターに釘付けになりながら、キャンディがぼそぼそと推察する。

 

 

「……いえ、全くあり得ないわけではないですね。イタリア館は今回の万博において最強の知名度補正を誇ります。何らかの形で霊基スケールのダウンサイジングを行えば、限定的な側面であれば、サーヴァントとしての召喚も敵うのかも」

 

「悪い、俺にも解るように言ってくれ」

 

「考察は、後でだ……接敵するぞ!!」

 

 

モニターに映る景色が、急旋回した。

 

 

『ビームサーベル!!』

 

 

ガンダムはグラスフェザーで舞い上がり、その右腕にビームサーベルを呼び出す。手にしたそれからはビームが迸り、刀身を形成。ガンダムは上空でその身を翻し、上空から得物を振り下ろす。

 

アトラスはそれを見て──無造作に、左腕を天に掲げて。振り下ろされるビームサーベルの刀身を、握って止めた。

散る火花を挟んで、錬と住持が相対する。

 

 

『狙いはなんだ、佐藤!!』

 

『こうまでしてるんやで、決まっとるやろう。……万博を破壊する。で、聖杯も貰う』

 

『三重県庁の指示じゃないな、懲戒は覚悟の上なのか!?』

 

『別に惜しゅうはあらへん、あんなとこ!!』

 

 

アトラスは握ったビームサーベルを力任せに振り回し、ガンダムを引き剥がす。吹き飛ばされたガンダムは海上に波を立てながら姿勢を修正し、空中に静止した。グラスフェザーに青白い光が蓄積する。ビームを放つ構え。

しかしそれを見咎めて、アトラスの肩の上、住持も即座に指示を出す。

 

 

『宝具や、バーサーカー』

 

『■■■■■■■■』

 

 

唸るような声が、モニターから聞こえてくる。きっとアトラスの声だろう。モニターのスピーカー越しであっても、空気を震わすような唸り。

そういえば、バーサーカーは狂戦士のサーヴァント。本来は会話することが出来ないのだったか。

 

 

『あんたは自分では喋れやんにったね、なら僕が代わりに言うたろう』

 

 

追って、住持の声。

同時にアトラスが、その右腕を振り上げて。

 

大気が、歪む。

 

みしり、と、どこかから音が響いた。狼我は反射的に空を見る。ガンダムの上、何もないはずの空。

そこに、何か、歪みを見る。浮かぶ雲に断裂が走り、空気分子が裂け、夜空が悲鳴を上げるような。何もないはずのその空間に、恐怖を幻視する。

 

 

『──『汝、天空を(アクシオシ・アポジミオシス)背負うべし(・カタ・トゥ・ヘラクレス)』』

 

 

刹那。

 

轟音。

 

衝撃を肌に感じ。視線の先に、巨大な水柱が立った。

 

先程まで、ガンダムがいたはずの海上だ。そこに水柱が立って……それが止めば、もうそこには何もない。

 

 

「なっ──

 

 

言葉が出ない。

今の、たった一瞬で。

 

 

ガンダムが、轟沈した。

 




「ガンダムが墜ちた」

「ヘラクレス、アトラス……まさか?」

「飛翔せよ、バーサーカー」

「アイツを拾いに行ってやる」

「ビームサーベルだ!!」

「令呪をもって、ライダーに命ずる」


25話 2300万人、あるいは1人のための願い


「ああ、ずっと知りたかったんだ」



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