万博聖杯戦争 2025 大阪・関西   作:ナニトゾ

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万博聖杯戦争マテリアル

 

大阪万博のバーサーカー

 

クラス:バーサーカー

真名:太陽の塔/日本万国博覧会

性別:太陽の塔

出展:日本万国博覧会

地域:大阪府吹田市

属性:混沌・中庸

身長:200cm

体重:(計測不能)

触媒:大阪・関西万博

 

実は太陽の塔であるのと同時に、1970年大阪万博そのもののサーヴァントでもある。

 

 

【挿絵表示】

 

 

筋力:A

耐久:A

敏捷:B

魔力:D+

幸運:A+

宝具:EX

知名度補正:A

 

クラススキル

 

狂化:EX(E-相当)

……バーサーカーのクラススキル。理性と引き換えに各種能力を引き上げるスキルだが、太陽の塔に対してはほぼ機能していない。これは太陽の塔にバーサーカークラスの適性がないということではなく、太陽の塔は真っ当に狂化しても尚完全に理性的な存在だ、という意味である。

『狂気』とは、ある視点から見て理解できない存在を指して呼ぶ言葉。しかして狂気と呼ばれた側にも視点があり、そこからはまた別の狂気が見える。万国博覧会から生まれ、万国の視点を併せ持つ太陽の塔にとって、狂気とは普遍的なものであり、理性的なもの。太陽の塔の目に映る全ては、それがどれだけ理解されず、罵られたものであったとしても、純粋な感動の対象である。

 

保有スキル

 

いのちのうた:EX

……1970年の大阪万博において、太陽の塔に存在した地下展示。『カオスの道』『雷光の空間』『いのちの空間』で構成される。無から有が生まれ、生命を形作るに至る、その奇跡。太陽の塔はこのスキルによって、自らを経由したものに限り、電気や熱をコントロールすることが可能になる。

 

自然:EX

……1970年の大阪万博において、太陽の塔に存在した地下展示。『手の洞窟』『未開の痕跡』『自然のうた』で構成される。生まれ出た人間が生き残るために手を尽くし、戦い抜いたドラマ。太陽の塔はこのスキルによって、格闘戦の技量及び膂力が向上し、また原始的な武器であれば直感的に習熟が可能となる。

 

心の森:EX

……1970年の大阪万博において、太陽の塔に存在した地下展示。『道具の森』『神々の森』『人間の森』で構成される。人と人が交流し、喜びまた悲しみ、それでも生きる生命の系譜。太陽の塔はこのスキルによって強固な精神力を持ち、決して他者に惑わされることはない。

 

宝具

 

太陽の塔・太陽の顔(たいようのとう たいようのかお)

ランク:EX

種別:対衆宝具

レンジ:1〜10

最大捕捉:???

「──太陽は、人間生命の根源だ。惜しみなく光と熱を降り注ぐ、神聖な核。この太陽の、燃え盛るエネルギーを、今こそこの地にもたらそう。何故ならば、私こそが祭りの神格、大阪万博の神格!! 猛烈な祭りに応えし者として、永遠にそびえ立ってみせるとも!! 君も見上げろ、『太陽の塔・太陽の顔(たいようのとう たいようのかお)』!!」

……太陽の塔の顔の1つ、太陽の顔の存在を引き出して発動する宝具。大阪万博のシンボルとしての毅然とした立ち姿は、それだけで人々から『倒されるべきではない』と祈りを集める。

自らの防御力を強化し、正面からの攻撃を受け止める。両腕を広げて『太陽の塔』らしいポーズを取るだけでも、太陽の塔という建造物の特性を引き出し踏ん張りが強まるが、真名解放時には概念的なバリアを展開し太陽の塔本来のポテンシャル以上の防衛が可能に。

またこの際太陽の塔は、万博の祭神としての力を強め、神性を宿す。

 

太陽の塔・黄金の顔(たいようのとう おうごんのかお)

ランク:EX

種別:対衆宝具

レンジ:99

最大捕捉:10人

「より豊かな生命の充実を、よりみのり多い自然の利用を、より好ましい生活の設計を、より深い相互の理解を。人は見上げる、思い描く。人はいずれ空の上に住み、そこは技術により実現されたユートピアであるのだと。だがその程度の理想、その程度のユートピア──私は、既に貫いた!! 人を苛む障壁を、人が抱いた理想すらも、貫くものが私である!! 証明しよう、『太陽の塔・黄金の顔(たいようのとう おうごんのかお)』!!」

……太陽の塔の顔の1つ、黄金の顔の存在を引き出して発動する宝具。未来の人類の生活を予想した存在『大屋根』を貫き、光を放ちながら世界を見据えた黄金の顔は、『光が及ぶところへは必ず届き、中心を必ず貫く』概念的な攻撃へと昇華された。

端的に言えば目からビーム。そのレンジは投光の及ぶ範囲全て。放たれた光線は、標的の芯を捉えればたちまち貫通する。

なお、中心軸を捉えた際には概念的な貫通力を発揮するが、この中心軸を見極める作業は自力で行う必要がある。

 

太陽の塔・黒い太陽(たいようのとう くろいたいよう)

ランク:EX

種別:対衆宝具

レンジ:1〜30

最大捕捉:50人

「──何が進歩だ、白々しい。何が調和だ、言い訳がましい。何が発展だ、忌まわしい。──何が未来だ、悍ましい。人類に進歩なし。過去より生まれ、過去より流れ。全ては原点たる黒き過去より出づるものなれば。決して忘れるべからず。『太陽の塔・黒い太陽(たいようのとう くろいたいよう)』」

……太陽の塔の顔の1つ、黒い太陽の存在を引き出して発動する宝具。過去を象徴する黒い太陽はそれを仰ぎ見るもの達へ、進歩への疑問、過去との相対を訴え掛ける。

黒い太陽からエネルギーを流出させ、それに相対した対象へ過去の瞬間を強制的に想起させる宝具。fateシリーズで類例を挙げるならば、シェイクスピアの宝具『開演の刻は来たれり、此処に万雷の喝采を(ファースト・フォリオ)』が近い。

だがこの宝具の特徴は『個人単位』ではなく『民族単位』である点。国単位地域単位共同体単位で、存在していた出来事を投影する宝具。

 

地底の太陽・生命の樹(ちていのたいよう いのちのき)

ランク:EX

種別:対万博宝具

レンジ:1〜90

最大捕捉:800人

「──40億年。生命の誕生から、数多の生物が生まれ出た。あらゆる生命は、皆尊厳に満ちていた。変貌しながらも脈々と受け継がれた、その不可思議、その美しさ。それを知り、身に刻み、それ故に!! 私こそは太陽の塔!! 未来へ向けて吹き上げる、生命の奔流の体現者!! 開き切る──『地底の太陽・生命の樹(ちていのたいよう いのちのき)』!!」

……太陽の塔の失われし第4の顔、地底の太陽の存在を引き出して発動する宝具。地底に存在した太陽と、地底から生え伸びた生命の樹。失われ、毀れてもなお、その価値は潰えない。

この宝具を使用する際には、太陽の塔は失われた地底の太陽の存在に同期することになるため、結果として太陽の塔自身も崩壊することになる。要は自爆宝具である。

本来は自らの身体を四散させて大地に打ち込み、その場を大阪府吹田市と再定義することによって即座に大地から太陽の塔を生やし、それでもって対象を破砕する宝具。ただし今作においてアトラスに対してこの宝具を使用した際には、『生命の樹は芸術作品の内部に存在する』ルールが影響し、芸術作品的側面を持つアトラスの内部に直接生命の樹が発生した。

 

人物

一人称:私

二人称:君

三人称:彼/彼女

 

◯性格

……冷静沈着、泰然自若。穏やかで物事に動じず、しかし必要と踏めば即行動に移るバイタリティもある。同時に他者への関心も深く、一歩引いた視点から周囲を見つめ、適宜人に対して助言する世話焼きな面もある。

ただし行動派な内面に対して外見が明らかに太陽の塔なので、神秘隠匿のために表立って歩くことが出来ず、若干フラストレーションを溜めている。

 

◯動機・マスターへの態度

……太陽の塔は聖杯に対しての願いを持たない。それは太陽の塔自身がかつての1970年の万博聖杯戦争で聖杯の役割を持っていたこともあり、聖杯の効力を過大視していないことの影響が大きい。しかし太陽の塔に望みが無いというわけではなく、かつて岡本太郎が訴えかけたあるべき人間の姿、それを1人でも多くの人間へ伝えたいと願っている。もちろん、マスターが最初の1人目だ。

 

◯台詞例

狂戦士(バーサーカー)、太陽の塔。君を、私のマスターにする」

「マスター、どうする? 君の指示に従おう」 

「殺生な。勘弁してほしい。私とて、万博会場を出るのは初めてだ。歩きたい。頼む」

「対立せずに馴れ合う調和に価値はあるのか?」

「私は岡本太郎という人間が思い描いた、人間のあるべき姿を、1人でも多くの人間に伝えたい」

「怖かったら怖いほど、逆にそこに飛び込むんだ──そう、岡本太郎も言っていた」

「それぞれの人間は真正面からぶつかり合って、その上で理解をし合うべきだと思うが」

「ハンパクとは!! 万博に拠らずに世界を良くしようと試みた者たちによる、創造的な行動だった!!」

「マスター。たまにはフードコートのホットスナックというのも風情があるとは思わないか。たこ焼きとイカ焼きを買ってきた。……どうしたマスター? 不思議そうな反応をして。何って、これはイカ焼きだが。イカ焼きは粉ものだろう。……まさかマスター、それはイカの姿焼きの話をしていないか? そう、大阪のイカ焼きといえば、これだ。いいから食べてみるといい、ほら」

 

◯史実の実像・人物像

……1970年において、大阪府吹田市で開催された日本万国博覧会。そこには77か国・4国際機関・1政庁・9州市・日本国内1040団体・外国2企業が出展し、6421万人が訪れた。テーマとして『人類の進歩と調和』を掲げたその会場のエントランスには人類の未来の生活を表現した大屋根が広がり──その大屋根の中央を、太陽の塔は貫いていた。

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……劇中において明言はされなかったが、サーヴァント・太陽の塔は、モニュメント『太陽の塔』を中心に据えて成立した『1970年日本万国博覧会』そのものがサーヴァント化したものである。岡本太郎による作品、太陽の塔を自認しているが、実際はより広い、大阪万博という猛烈な祭りそのもののサーヴァント。fateシリーズで類例を挙げるのであれば古代都市が英霊と化したもの、サーヴァント・テノチティトランが近い。

万国博覧会がサーヴァントと化したものであるため、1970年万博に出展した77ヶ国を初め、全団体の情報、思考、思想を全て内包している。万国の視点を併せ持つ存在であるため偏った思考に陥らない、理性的な存在の究極。タローマンというよりはウルトラマン。同時に太陽の塔を生み出した人間である岡本太郎の存在は霊基に深く刻まれており、彼が訴えた万博のテーマ『人類の進歩と調和』への疑問、万博でありながら万博を疑うハンパクの精神も持ち合わせる。バンパクとして未来を肯定し、しかしハンパクとして未来を妄信しない。それがサーヴァント・太陽の塔/1970年万国博覧会のスタンスである。

『大阪万博』に召喚された太陽の塔は、今作において最上級の知名度補正を獲得している。宝具を4つ持ち込めたこと、他にもパワーやスピードの増強など、多数の恩恵を受けている。理論上最強の状態。

また、万博聖杯戦争が開催されている今作の世界観においては、太陽の塔は1970年当時聖杯の役割を果たしていたとする。聖杯経験者のため、あまり聖杯を獲得することには興味はない。

なお、太陽の塔の地下、心の森には全世界、特にアフリカ圏、アジア圏から集められた仮面、及び民芸品が配置されていた。この影響もあり、太陽の塔は嗜好としてはアフリカ圏、アジア圏の民芸を強く好む。作中において狼我がアフリカ圏のライダー、及びアジア圏のセイバーと同盟を結んだことに関して太陽の塔の意思は介入していないが、それはそれとしてほくほくしている。

 

◯適正クラス

 

ルーラー

……元聖杯経験者であり、聖杯に願うような我欲を持たない点、また万国博覧会そのものであるために全世界の視点を持ち併せ、結果偏った立場を取らない点から、最も適性のあるクラスはルーラーである。ただし太陽の塔であり岡本太郎をリスペクトしていることから、上から聖杯戦争を抑えつけるルーラーという役割は断固拒否。決してルーラークラスで召喚されることはない。

 

バーサーカー

……万博という猛烈な祭りから生まれたサーヴァントである太陽の塔は、その腹の内に万博の狂騒、熱狂、狂喜といった要素を抱えている。万博に集った人々の交歓が、太陽の塔をバーサーカー足らしめる。

それはそれとして岡本太郎作品に由来するサーヴァントは、岡本太郎のパブリックイメージによる影響で全員バーサーカークラスの資格を持っている。太陽の塔も例外ではない。でたらめでべらぼうなことをやるのだから、まあ、バーサーカークラスか、と納得はしている。

 

ランサー

……ランサークラスの適性もある。槍を扱うと言うよりは、太陽の塔自身が槍として扱われての資格認定である。

 

◯因縁キャラ

 

ニール・アームストロング

……1970年万博聖杯戦争の優勝者。太陽の塔は自らの『生前の記憶』として1970年万博聖杯戦争を記憶しているため、アームストロングの戦いも当然覚えている。その実力は高く評価し、またかつての無念も察してはいるが、今回は交流の機会がなかった。

 

アトラス

……万博聖杯戦争に現れた『元祖芸術の巨人』。今作においては敵対したものの、芸術に由来を持つ太陽の塔は当然ファルネーゼのアトラスにも尊敬の意を示す。昼の万博の間、霊体化して暇をしていた折にはこっそりイタリア館にアトラス像を拝みに行っていた。岡本太郎は彫刻も実践した人間。太陽の塔に彫刻の何たるかを語らせれば、長くなる。

 

岡本太郎

……太陽の塔を生み出した人間。太陽の塔の存在を形作り、また思想の軸ともなった彼に対する、太陽の塔の感情は筆舌に尽くしがたい。しかし太陽の塔は、岡本太郎との直接の対話などは望まない。聖杯の力で岡本太郎の思想を広めようとも考えない。岡本太郎そのものに短絡的に答えを求めるのではなく、彼が残した数々のことば、それに向き合って自らの答えを探す。それが、人間のあるべき姿だと信じているからである。

 

Comment from Author

……大阪・関西万博というテーマで、主人公のサーヴァントを誰にするか。そう考えた時点で、やはり太陽の塔は第一候補でした。万博でありながら万博を疑う、太陽の塔の持つハンパクのメッセージ性を受けて、今作の骨子は作られています。

当然のことですが、大阪・関西万博、および太陽の塔の作品利用はそもそもNGです。この作品は関係者皆様方のお目溢しによって完結に至ることができました。この場で感謝申し上げます。

 

 

コモンズAのセイバー

 

クラス:セイバー

真名:スンダラムルティ・スワミ

性別:男性

出展:『テヴァラム』及び『ペリヤ・プラーナム』

地域:南インド

属性:秩序・中庸

身長:177cm

体重:70kg

触媒:スンダラムルティ・スワミ像

 

シヴァ神の永遠の花婿。それはそれとして嫁も2人いる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

筋力:C+

耐久:C+

敏捷:C+

魔力:A+

幸運:A+

宝具:A

知名度補正:C

 

クラススキル

 

対魔力:C++

……セイバーのクラススキル。魔術への耐性を得る能力。シヴァ神の恩寵を用いれば、一時的にだが格段に対魔力を引き上げることが可能。

 

騎乗:B

……セイバーのクラススキル。乗り物を乗りこなす能力。Bランクであれば魔獣・聖獣未満のランクの獣、また大抵の乗り物は乗りこなせる。スンダラムルティはその巡礼を終えシヴァの元へと昇天する際、空飛ぶ白象に騎乗している。この白象は聖獣ランクに分類されるが、シヴァによって適切に調教された聖獣であるため、スンダラムルティはBランクの騎乗で乗りこなすことが可能。

 

保有スキル

 

黄金律:C+

……人生においてどれだけの金がついて回るかの宿命。スンダラムルティの場合はシヴァ神への要求が叶った場合、レンガをも黄金に変換することが可能。ただしシヴァ神の恩寵に依存するためスンダラムルティ本人の黄金律ではない。

 

語り手(伴奏付き):A+

……語り手とは、物語を如何に上手く口で語るかを示すスキル。スンダラムルティは聖詩人と称され38000篇の詩を詠い、101篇が残存している。またこの詩は特に音楽的なものであることが知られ、南インド地域の音楽にも影響を残している。

スンダラムルティが本気で詩作を行い、その詩でもって人々へ教えを広めようと試みる場合、自動的に適した伴奏が流れ始め、語りの雰囲気を醸成する。

 

六十三聖人:EX

……シヴァ教とはヒンドゥー教の一派、シヴァ神を最高神として扱う宗教体系である。このシヴァ教において、6世紀から9世紀にかけて南インドのタミル地域にて活動した63人の聖人達を括って『ナヤヤール』と呼称するのだが、この内の1人であり、かつナヤヤールの名簿自体を編纂したのがスンダラムルティである。63人の聖人達の中でも特に格の高い1人であるスンダラムルティは、シヴァ神の力を借り受ける際に必要な詠唱は最低限で済み、また借り受けられる力は絶大である。

 

宝具

 

歌いしは月冠の花婿(スンダラル・テヴァラム)

ランク:B+

種別:詩歌宝具

レンジ:1〜20

最大捕捉:50

「おお、慈悲深き方よ!! 貴方は私の婚礼を阻み、巡礼の旅へと駆り立てた!! 貴方は私の持ち物を取り上げ、また恩寵を与え給うた!! 貴方は私の光を奪い、また光をもたらした!! 旅にて語りし我が讃歌!! 散逸すれど威光は潰えず、今もなお高らかに貴方へ歌う!! 故に、シヴァ神最良の友(タンピラン・トラン)の請願がために、我が神よ力を貸し給え!! 即ち是三万八千が内の百!! 『歌いしは月冠の花婿(スンダラル・テヴァラム)』!!」

……聖詩人スンダラムルティ・スワミが残し、記録された詩歌──即ちテヴァラム第7巻、スンダラル・テヴァラムから自らの成した功績を引き出し、用いる宝具。

スンダラル・テヴァラムに記述された存在、例えば上下に裂かれたワニ、あるいは空飛ぶ白象などを現世に呼び出し、それを使役、利用することができる。シヴァ神の力を多大に借り受けたスンダラムルティは真名解放なしにこの宝具の一端を行使することが可能であり、その際は『オム・ナマ・シヴァヤ』の一声で十分である。

真名解放を行うことで、テヴァラムの中身を一帯へ氾濫させ、空間を一時的にスンダラムルティの活躍した時代と場所、具体的には8世紀のタミル地域に上書きすることが可能である。世界を塗り潰すほどではないにせよ、世界の上から別の世界を吹き付ける、固有結界に似て非なる大魔術。これによってその地域での知名度補正及び各種ステータスに一時的に変動が生じ、スンダラムルティに有利な空間を形作ることができる。

今作においては小泉八雲の展開した別種の固有結界に似て非なる大魔術に便乗して発動したことにより、スンダラムルティ自体を空間の語り部として再定義することが可能になり、結果小泉八雲の宝具への介入を実現した。

 

人物

一人称:我

二人称:貴殿/◯◯殿

三人称:彼/彼女/◯◯殿

 

◯性格

……明朗快活、なれど理知的。シヴァ神への信仰は常にあり、それはそれとして今目の前にあるものに対しても真っ直ぐに向き合う。目の前にパビリオンがあれば意気揚々と飛び込み、目の前に悩める人間がいれば導こうと試みる。そこに迷いはなく、彼は何時でも前向きに、世界を自分なりに良くしようと挑んでいる。

 

◯動機・マスターへの態度

……国によって予め触媒が用意される万博聖杯戦争において、召喚されるサーヴァントは、必ずしも聖杯への強い欲望を抱えているわけではない(もちろんゼロではないのだが)。

かつて38000篇もの詩を残し、しかし101しか残存しなかったスンダラムルティは、改めて現界してシヴァ教布教をもう一度行いたいと望んではいる。だが、本来それは聖杯戦争に積極的に参加してまで望むようなことではなかった。スンダラムルティの聖杯戦争参戦は、触媒を用いて招聘が掛かった今回が特例である。

召喚されたスンダラムルティは人を導くことにモチベーションがあるため、当然まずは自らのマスター、キャンディについて分析を行った。結果──考えがしっかりとしており、特に教えを説く優先度は高くなさそうと判断。他に対話が必要そうな人々を探し始めた。

 

◯台詞例

「無論。我が神の恩寵あればこそ、刃なぞ恐るるに足らず。オム・ナマ・シヴァヤ!!」

「聖杯を賭けた者同士、祝宴の場で語らおうとは実に良い!! 互いの覚悟と資質を問う場、これを聖杯問答と呼ぼう!!」

「別に問題はないだろう? 今の我々は観光客だ、そうじゃないか? そうだろうバーサーカー」

「我が纏うはシヴァ神の炎!! 苛烈なれど慈悲深き神の恩寵!! 北国の冷気何するものぞ、この炎に敵うものなし!!」

「ヌン茶をしばく、と言うのだろう? この時代では」

「夜が来れば、我々はまた敵になる。しかし我々は、憎いから戦い合うわけではない」

「──おお、我が神よ!! 以前お貸ししたあれやこれやを今こそ返し給え!! オム・ナマ・シヴァヤ!!」

「──聖杯戦争の幕引きに、これ以上相応しい戦いもない」

「マスター。あのパビリオンは何だろう? ……タイ館。なるほど、是非行こう。表に立派な象がいる時点で、既に我は気に入っている。建物の作りも鏡を駆使していて面白い。これは期待大だ。……マスター。共に行こう。待ってくれ、マスター!!」

 

◯史実の実像・人物像

……スンダラムルティ・スワミ。別称スンダラル、スンダラムルティ・ナヤヤール、タンピラン・トランなど。ヒンドゥー教の中のシヴァ神を最高神と崇める一派、シヴァ教における聖詩人である。

スンダラムルティはシヴァ教の布教のために聖地を巡礼し、行く先々で詩を残した。詠った数は38000に及ぶとされ、残存している101篇はシヴァ教の聖典の1つ『テヴァラム』に編纂された。スンダラムルティが詠んだ詩が収録されたテヴァラム第7巻は『スンダラル・テヴァラム』と呼ばれる。

スンダラムルティの布教の旅は、常にシヴァによる恩寵、また干渉によって突き動かされてきた。そもそもの旅の始まりの時点で、彼は結婚式の最中に割り込んできた老翁──正体はシヴァ神であるが、その干渉によって、決まったはずの縁談を壊されている。以来シヴァ神の教えを広めるべく巡礼の旅を開始し、シヴァ神からの助けを借りることもあったスンダラムルティだが、常にシヴァ神に忠実だったかというとそこまででもない。神との約束を破って視力を奪われ、なお巡礼を続けることで片目ずつ視力を修復して貰ったりもしている。彼の人生は神によって変えられ、苦難も体験した。しかしスンダラムルティは常にシヴァ神への崇敬を持ち続け、シヴァ神最良の友(タンピラン・トラン)と呼ばれるに至った。

スンダラル・テヴァラムの描写中にて、スンダラムルティは数々の奇跡を起こし、またシヴァの導きにより奇跡の恩恵を受けている。例えば、子供を丸呑みしたワニに相対して、祈りによってそのワニを顎から真っ二つに裂いて子供を無傷で取り出した。あるいは、シヴァ神の遣わした空飛ぶ白い象に騎乗して天へ昇ったなど。

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……今作において、スンダラムルティ・スワミは最も現状を満喫している存在である。つまりは万博聖杯戦争エンジョイ勢。昼の万博は遊び回るし、夜の万博でも好き勝手やる。マスターの存在は一定程度は尊重するが、言うことはあまり聞かず、自らの意思を優先する。シヴァ神の恩寵が乗れば対魔力が跳ね上がるため、令呪による強制もあまり意味を成さない。

セイバークラスで現界したスンダラムルティは、特に現世を満喫する傾向にある。信心深くありながら風物へ興味を持ち、学び、交流し、また導く。全てがライフワークであり、趣味でやっている。そう、彼にとっては、迷える者を導くこともまた趣味である。

スンダラムルティは信念として、『神の教えは民の恐れを払うためにある』との考えを抱いている。これは彼自身が、巡礼の旅にてシヴァ神の恩寵に救われた経験より来るものであり、万民の恐れを払う救世の意欲が彼にはある。それを実現するための願いが現界の延長であり、またサーヴァントとしての戦いの傍らにも、彼は人との対話を止めはしない。

どんな時にも腐らない、不朽の伝道者である。

 

◯適正クラス

 

キャスター

……作家のサーヴァントの1騎であるため、キャスターが最適性クラス。キャスターで召喚された場合はシヴァ神の教えの伝道師、敬虔な聖詩人としての側面が強く出る。

 

セイバー

……シヴァ神から与えられた光の剣、及びその他の宝物によってセイバークラスの適性を獲得している。こちらで召喚された場合は、シヴァ神に対しても遠慮なく振る舞い、物品の請求や貸し借りも行うシヴァ神最良の友(タンピラン・トラン)としての側面が強く出る。

 

ルーラー

……聖杯への望みが利他的で薄い点、またシヴァ神への帰依が厚く他の基準で行動指針が揺らぎづらい点から、ルーラークラスの資格は一応持っている。しかし聖杯に関わらない部分ではしっかりと我欲塗れなところがあるため、あまり向かない、というか本人が乗り気ではない。

 

◯因縁キャラ

 

太陽の塔

……ウマが合う。信じる対象こそ異なるものの、共に人を導くモチベーションがあり、なおかつ好奇心旺盛なため、話して楽しい関係性。

 

パールヴァティー/ドゥルガー/ガネーシャなど

……信仰の対象。スンダラムルティはテヴァラムにおいて、度々パールヴァティーやガネーシャについても言及している。シヴァと共にある存在は、やはりスンダラムルティにとって偉大な存在である。

 

シヴァ

……信仰の対象。伝承によればスンダラムルティの前世はシヴァ神の従者アララ・スンダランであるそうで、シヴァ神とは前世からの付き合い。シヴァ神はスンダラムルティの婚姻を破談にし、代わりに己の花婿として各地を巡れと使命を与えた。スンダラムルティにとってシヴァ神は絶対の神であり、友であり、他の何よりも親密な存在──即ち結婚相手である。

補足的に述べるが、スンダラムルティが生きた時代、南インドのヒンドゥー教関連界隈においては、バクティ運動というムーブメントがあった。これはヒンドゥー教から他宗教の影響を排除し神そのものを愛そうとする運動であり、スンダラムルティの巡礼もこの運動の一環に数えられる。このバクティの思想において、神と信者の関係は花婿と花嫁に例えられることがある。テヴァラムにおいてスンダラムルティが神と婚姻関係にあったと記されたこともこの背景が影響しており、全く突飛な話というほどではない。

だが。バクティの思想において、基本的に花婿は神であり、信者は花嫁である。信者スンダラムルティが花婿であり、かつそれを直々にシヴァ神から申し付けられたのは非常に稀な事例。シヴァ神にとっても、スンダラムルティは特別な存在であったのだ。

 

Comment from Author

……恐らく今作のMVP。シヴァ神パワー、あまりにも便利。

今作のシナリオとして、アトラスとガンダムが終盤に戦った後にライダーと残り1騎のラストバトルで締めるところは早々に決まっていました。その最後の相手に誰を据えるかを考えて、スンダラムルティを抜擢。

他者を導く聖人にして我欲もきっちりもった私人。理性的に共闘し、それでも最後には信念がために敵対できる存在。万博聖杯戦争という物語を纏め上げる上で、彼は適任でした。今作のカラーを決定づけた、偉大なキャラクターです。

 

 

ペルー館のランサー

 

クラス:ランサー

真名:シパン王

性別:男性

出展:史実

地域:ペルー北部

属性:秩序・善

身長:163cm

体重:49kg

触媒:シパン王復元像

 

別名セニョール・デ・シパン(シパンの男)。本名の発掘が待たれる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

筋力:C

耐久:C

敏捷:C

魔力:B+

幸運:C

宝具:C+

知名度補正:B

 

クラススキル

 

対魔力:B+

……ランサーのクラススキル。魔術への耐性を得る能力。神へ生贄を捧げる神官としての側面のあったシパン王はある種の魔術との親和性が高く、その対魔力も高ランク。

 

保有スキル

 

高速王命:B+

……魔術の影響を高速化するスキル『高速詠唱』が変化したもの。シパン王の場合は魔術に限らず、王として指示する全ての文言を簡略化可能。特に自らの宝具『捧げられし八人(ワカ・ラハーダ・ナカリイー)』に対しては、無言での意思伝達すら可能とする。

 

生贄作成:A

……生贄を捧げることに関連する技量。ランクAのこのスキルを保持している場合は、生贄に関連する事柄であれば、捧げる生贄の効率的な活用も、あるいは他者が用いる生贄の効果の打ち消しも可能となる。また、儀式としての手順を踏まない、単純な『生命を賭した攻撃』自体も、『自らを生贄とした攻撃』とカウントして成功率を向上させることができる。

 

黄金墓所:EX

……シパン王の墓所は、ほぼ無傷の状態で発掘されたことから、20世紀最大の考古学的発見の1つとも語られている。その墓所は黄金の副葬品で溢れており、それらは皆王のための捧げ物であった。黄金と共に埋葬されたシパン王はサーヴァント化するにあたり、『黄金の所有者』としての側面を持つ。己の近くに存在するものであれば、純度が一定以上の金で構成された物体の所有権を概念的に徴収することが可能であり、自らの武器として扱うことができる。

 

宝具

 

捧げられし八人(ワカ・ラハーダ・ナカリイー)

ランク:C+

種別:対人宝具

レンジ:1-20

最大捕捉:10人

「我が生贄、黄金の墳墓に捧げられし輩よ。その身に王の輝きを受け、今こそ価値を示すが良い。汝らが王と共にあるように、王もまた汝と共にある。奮戦せよ!! 『捧げられし八人(ワカ・ラハーダ・ナカリイー)』!!」

……シパン王の埋葬の際、生贄として同じ墓所に捧げられた8人の人間たち。具体的な内訳としては、指揮官、旗手、見張り、護衛、女性の側室3人、少年であるが、シパン王はサーヴァント化するにあたり、この捧げられた民達を自らの宝具とした。

この宝具においてそれぞれの生贄はモチェ文化特産の黄茶色の象形土器で形作られ、シパン王に付き従う配下として活動する。

シパン王は召喚されるのと同時にこの宝具を発現させ、8人の生贄を指揮し戦うが、この生贄達は破壊することが可能であり、破壊されればそれきりの使い切りである。真名解放を行えばある程度の自動修繕機能が発生するが、しかし一撃で全身を破壊すればこの自動修繕は貫通可能。

なお、使い切りの宝具ではあるが、シパン王はその消費を惜しまない。使い切るべきときを見極めて、迅速に使い切る。それが彼の信念である。

 

黄金錫杖(キュリ・ヴァラ)

ランク:EX

種別:対生贄宝具

レンジ:1

最大捕捉:1

「これこそは!! 贄の腹裂きし神聖錫杖!! 『黄金錫杖(キュリ・ヴァラ)』!!」

……シパン王墓より発掘された黄金製の笏杖。権力の象徴にして儀礼の祭具。先端には儀礼用のナイフが据え付けられており、シパン王は短槍としてこれを扱う。

この短槍は本来、儀式において生贄の腹を裂き、内臓を抜き出すために用いられた物。宝具と化した後にはその実績が昇華され、この短槍は腹を裂き中身を取り出す、その行為の概念そのものとなった。

シパン王は通常時からこの短槍を武装として用いているが、真名解放をすることによって短槍の纏う概念を強化、切り裂いた対象の中身を無条件に抜き出すことが可能になる。

 

人物

一人称:王

二人称:貴様

三人称:彼奴

 

◯性格

……冷静にして苛烈、尊大な振る舞いはするが、意見に耳は傾けるある種の賢王。どちらかというと神経質な質。王らしい王の振る舞いを見せるが、同時に他者を守ることも忘れない視野の広さを持つ。

 

◯動機・マスターへの態度

……『子供ではないか!!』召喚され、己のマスターを視認したシパン王の第一声はそれであった。シパン王は良識ある王である。もちろんここで言う良識とは彼の生きたモチェ文化基準での良識であり、シパン王は別に生贄を捧げることも、戦争を行うことも厭いはしない。しかし、まだ幼い子供を戦場に出すのを憚るくらいには良識があった。

そして、幼いマスターに召喚された現状を認識した瞬間に、シパン王の優先順位は変動した。シパン王は、物事の優先順位をハッキリと、かつ即座につける王である。そうでなければ、生贄を捧げる国の王は務まらないからだ。同時にサーヴァントとして召喚された彼は己が蘇った死人の類いであることを自覚している。彼にももちろん、自らの王国の復活という望みはあるのだが──彼は、その望みとマスターの保護を天秤にかけて、マスターを選んだ。

シパン王は決して己を特別視しない。自らの望みを叶えることと、今を生きる自国民の、それも幼い少女を守ること。天秤にかけて、後者を優先すると決めた。彼は王として振る舞い、誰に対しても敬意ある振る舞いを求めるが、しかし今回の万博聖杯戦争においては、かつて自国であった土地の民の末裔、アマウタ・キスペ第一の保護者であった。

 

◯台詞例

「王の目を欺けると思ったか、墓荒らし(ワッケーロ)!! 許可も取らずに王の身辺を荒そうなどと二千年早いッ!!」 

「カハハハハハハッ!! 良い!! 良い度胸だ、貴様!!」

「王への奏上であれば端的に語れ。あまりに長いと寝てしまう」

「…………よかろう。貴様は昨晩、既に王へ意見する資格を示した。バーサーカーのマスター、名は?」

「今回は、王が捧げる側だ」

「生命の価値を踏み違えるな。巨万の富があろうとも、家族1人を帰せなければ、王の面子が潰れるではないか」

「マスターよ。何やら演目をやっているようだな。どこの国のそれとも知れぬ音楽だが、何とも盛況だ。観てみよう。……観えない? 仕方あるまい、この黒山の人だかりではな……特別だ、王の肩に乗っかることを許す。肩車だ。疾く乗れ」

 

◯史実の実像・人物像

……シパン王は、紀元250年のペルー北部にて、モチェ王国を支配した王である。彼は政治・宗教の両面で国のトップに立ち、同時に神官として主神アイ・アパエックに仕えたとされる。

モチェ王国において王は神の末裔にして神に仕えるもの、半神半神官として扱われていた。シパン王は軍事遠征、灌漑設備の建設、交易路の整備といった施策を行い、現地の伝説においては『豊穣と正義の王』として語られている。なお、史料がいずれも断片的であるために、どこからどこまでが黄金墓所に埋葬されていたシパン王の実績であるかは判然としない。

シパン王が歴史に名を知らしめた契機は、やはり黄金墓所の発掘である。この偉大な発見によってモチェ王国は再び注目を集め、現在でも現地の観光資源として重要視されている。

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……シパン王は、捧げる王である。

もちろん王として、多くを捧げられてもきた。食物、崇敬、そして生命。シパン王は多くを受け取り、そして神官としてそれらを神々へ捧げた。彼の生きたモチェ王国において、王は搾取する者ではない。誰もが皆等しく、神へと己を捧げたのである。生贄を許容し、他者の犠牲を許容し、自らの犠牲も許容する。生命の使い時を見極めて、それを最も適切に消費する。それが、モチェ王国の在り方であった。

そんなシパン王。王らしく振る舞い、王らしく他者を見下し、王らしく試練を課す。呵々大笑し、怒りを隠さず、見下されることを許さない──実のところ、意識してオーバーリアクションを取っている。王らしく威厳を示すこともまた、生贄のある国の王には必須のスキルであったからだ。民が納得して身を委ねられる、強い王。そうでなければ、玉座は揺らぐ。彼の本質は、内心で取捨選択を行い続ける冷静さにあるのである。何を選び、何を捨てるか。それを考え続けている。

選択し、それを後悔はしない。それは彼の散り際にあっても変わらない在り方だった。誰に請われるまでもなく、自ら必要だと断じたがために。彼は己を、幼きマスターのために捧げたのである。

 

◯適正クラス

 

ランサー

……ランサーが最適性クラス。短槍を所持していることももちろんその一要因ではあるが、ランサー適性の主要因はシパン王がモチェ王国の王である点にある。ランサークラスは槍使いのクラスであるが、同時に世界を定義する『国造りの槍』のクラス。モチェ王国の頂点に立ち、その在り方を定義づけ、また死後もなおその墓所でもって王国の存在を知らしめたシパン王は、その実績がためにランサークラスが相応しい。

 

キャスター

……シパン王の統治したモチェ王国においては、日常の中に生贄を捧げる文化が存在し、そして王はその生贄を捧げる神官の役割を持っていた。王はただ民を支配する存在ではなく、あくまでその上にいる神へ奉仕する存在だったのである。シパン王は神官王として、キャスタークラスの資格を持っている。キャスターとして召喚された場合は、宝具『捧げられし八人』の性質が変化。八人分の生贄を適宜捧げることで、都度に神の御業を再現する宝具となる。

 

◯因縁キャラ

 

スンダラムルティ・スワミ

……不遜な語り部。

シパン王は、己の意図しないところで賞賛を盛られることを好まない。それは彼が計算し、構築している王の姿を狂わせることに繋がるからだ。彼は神経質であり、スンダラムルティとは反りが合わない。

 

服部半蔵正成

……無礼な墓荒らし(ワッケーロ)

古代遺跡というものは、大抵は盗掘犯が荒らしているもの。だからこそ、ほぼ無傷で見つかったシパン王の墓所が価値を持つわけだが、あくまで『ほぼ』無傷。シパン王の黄金墓所は盗掘の初期段階で警察が盗掘犯を発見したことから公に認知されたものであり、もしこの盗掘犯が逃げ果せていればシパン王墓もまた無残に荒らされていたことだろう。

この発掘経緯が影響したかはわからないが、シパン王は盗掘犯、および姿を隠して暗躍するものを嫌悪する。今作においてはアサシンクラスで召喚され、他のサーヴァントを調査していた服部半蔵正成もその対象だ。彼は断りなく己の身辺を嗅ぎ回られることを許さない。それこそは、王に対する最悪の無礼である。

 

ケツァル・コアトル/テスカトリポカ/ククルカン

……実のところシパン王の生きた南米、ペルーにおいて、神話に彼女らは存在していない。もし仮に、彼女らと共に生活する場面があれば。シパン王は次第に、お前達はあくまで中米の神であって中南米で括るべきではないだろ、あまつさえ中南米代表を名乗るなど何事か、とじわじわフラストレーションを募らせ始める。

 

Comment from Author

……当初、今作のテーマとして、『実際に万博会場に赴いて真名当てを体験できる作品』を掲げていました。作中に登場する万博描写は、いずれも私が実際に万博会場で観覧、取材、喫食したものとなっています。

サーヴァントの設定、およびデザインなども、基本的には万博会場にて見つけたものを参考にしています。そしてシパン王に関しては、なんとペルー館の中に生前を再現したマネキンが立っていました。このためシパン王に関して言えば、人によっては一目で真名が解る──はずでした。

大阪・関西万博最終日に、今作でお世話になった各パビリオンへ最後のご挨拶回りをしていたのですが。ペルー館に伺ったところ、まさかの展示替えをされていらっしゃいました。あれだけ凝ってたのに、容赦がない……!!

というわけで、若干企画倒れでした。無念。

 

 

アメリカ館のアーチャー

 

クラス:アーチャー

真名:ニール・アームストロング

性別:男性

出展:史実

地域:アメリカ合衆国/月面

属性:秩序・中庸

身長:180cm

体重:75kg

触媒:月の石

 

月面着陸の功績が有名すぎて、どんな月の石でも触媒になる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

筋力:D

耐久:C

敏捷:C++

魔力:EX

幸運:A+

宝具:C

知名度補正:A

 

クラススキル

 

対魔力:D

……アーチャーのクラススキル。魔術への耐性を得る能力。アーチャークラスの恩恵として対魔力を獲得しているが、彼の生前の魔術との関わりは1970年万博聖杯戦争程度であり、縁の薄さ故にランクも低い。

 

単独行動:C

……アーチャーのクラススキル。マスターとの繋がりなしでも長時間現界する能力。アームストロングは過去の経験から、己にマスターという存在がいることを好まない。しかし生前に成し遂げた功績はむしろ集団で挑んだものであるため、単独行動に結びつく逸話を持たず、彼の単独行動スキルは低い状態に留まっている。

 

騎乗:C++

……アームストロングが保有するスキル。本来アーチャーのクラススキルではないのだが、アポロ11号を初め戦闘機などを乗りこなした経験を持つアームストロングは、どのクラスで召喚されてもこのスキルを保持している。

 

保有スキル

 

カリスマ:D

……軍団の指揮能力を示すスキル。アームストロングの場合は軍団というよりは、課題解決にあたるチームを纏める能力と呼べるだろう。彼は少数の人間のチームを強固に纏め上げ、目的達成に導くことができる。

 

宇宙服:B

……ニール・アームストロングが宇宙にて着用した宇宙服がスキルとなったもの。宇宙線障害、及び炎熱や冷気を阻む装甲。今作において、マスター機能を持ったドローンと融合していたアームストロングはこの宇宙服を脱ぐことが出来なかったが、マスターが別に存在する状態で普通のサーヴァントとして召喚されれば、この宇宙服は普通に脱げる。

 

星の開拓者:-

……星の開拓者とは、人類史におけるターニングポイントとなった英雄に与えられるスキルである。それはあらゆる難航・難行を『不可能なまま』成し遂げるスキル。人類史上初めて月に降り立った人間、字義通りの星の開拓者であるニール・アームストロングは、このスキルを保有する資格を持つ。

だが、アームストロングはこのスキルを返上している。彼にしてみれば月への着陸は、そのために尽力した全ての人類の努力によって引き起こされた必然であるからだ。彼は『可能なこと』を成し遂げた、大勢の内の1人である。

 

宝具

 

アポロ11号(シュート・フォア・ザ・ムーン)

ランク:B

種別:対軍/対星宝具

レンジ:999

最大捕捉:300人

「──手を伸ばして、僕らは空を掴んだ。出来なかったことを、ありえなかったことを、成し遂げた。だから、高望みをしよう。これまでも、これからも。それが、僕らの在り方だ。『アポロ11号(シュート・フォア・ザ・ムーン)』」

……アームストロングが船長として搭乗したアポロ11号、およびそれを格納したサターンV型ロケットを呼び出し、対象へ向かって投射する宝具。聖杯戦争においては高火力を発揮する質量武器であるが、宇宙船としての機能も健在であるため、もし十分な量の魔力があればロケットを月まで飛ばすことも可能である。

 

偉大な(ワン・ジャイアント・リープ)る一歩(・フォア・マンカインド)

ランク:C++

種別:対軍宝具

レンジ:1〜50

最大捕捉:100人

……ライダークラスの際に使用する宝具。超巨大な足を出現させ、一帯を踏み潰す。アポロ11号からの月面への着陸、その瞬間を再現した宝具なわけだが、足が大きくなってしまった。これは月面への憧憬を抱いた地球人類の無意識によって引き起こされた変質、ある種の『無辜の怪物』と言えるが、アームストロングがそれだけ多大な期待を背負っていた証左である。

 

人物

一人称:僕

二人称:君

三人称:彼/彼女

 

◯性格

……怜悧、聡明、効率重視。適切なタイミングを見計らい、効率的な位置取りで仕留めに来る。あまり他サーヴァントとの対話は行わない。

本来アームストロングは一匹狼の類ではなく、むしろ仲間との協調は積極的に取る。そうでなければ宇宙飛行士にはなれない。が、今回のアームストロングは後述の願いにより、アメリカ館陣営が仲間であるとは考えておらず、故に単独行動派である。

 

◯動機・マスターへの態度

……今作において、ニール・アームストロングは聖杯戦争の優勝経験者である。彼は1970年の万博聖杯戦争にマスターとして参加し、自らの身体に未来で英霊化したアームストロングを憑依させ、優勝した。アームストロングはサーヴァントとなった後にも、生前の記憶として万博聖杯戦争を覚えている。(なお、1970年万博聖杯戦争の際には、タイムパラドックスを避けるためサーヴァントのアームストロングは沈黙を貫いたようだ)

だがこの1970年万博聖杯戦争にて、アームストロングは1つ失敗をした。最終決戦、ソ連館のライダー、ユーリ・ガガーリンとの戦いにて、誤ってガガーリンのマスターへ攻撃を飛ばしてしまったのである。ガガーリンは咄嗟にマスターを庇って致命傷を負い、消滅。アームストロングは、不本意な形で優勝してしまった。

以来、アームストロングはマスターという存在の虚弱さを厭う。ドローンのマスターという、生身の人間に頼らない形での現界を果たした彼は、日中は万博会場裏ドローンポートに霊体化して身を潜め、夜になって(かつドローンの飛行が可能な天候の時のみ)万博聖杯戦争に参戦する形を取った。

そして、同時に。サーヴァントとなったアームストロングは、ある1つの願いを抱いている。即ち懐古。『あの頃をもう一度』という願い。アメリカとソ連による技術対立、あの冷たい戦いの中には、確かに高め合う喜びがあった。その喜びが冷めきった現代にあって、彼はもう一度あの熱を願う。アメリカの理解も、世界の理解も、得られないものと知りながら。

 

◯台詞例

「僕は悪いけど遠慮するよ。この服、脱げないんだ」

「うん、今日のところは一旦引こう」

「令呪3画をもって我が躯体に命ずる。浮遊せよ、アーチャー」

「僕の望みを決めつけないでほしい」

「もし、また僕を召喚しようと思うなら。その時は、人間のマスターは使わないでほしい」

「…………次こそは勝つ」

「……アメリカ館へ定時連絡。こちら万博会場裏ドローンポート、現在異常なし。待機を続ける、オーバー」

 

◯史実の実像・人物像

……人類史上始めて月面に降り立った宇宙飛行士。

幼い頃から空を飛ぶことに情熱を注いでおり、アルバイトに励みながら弱冠16歳でパイロット免許を取得。海軍将校、航空工学学士を経て、NASAのテストパイロットに就任。マッハ5の超音速飛行が可能な機体を含む、200以上の航空機を操縦した。そして1962年、NASAはアームストロングを宇宙飛行士として採用する。以降彼はジェミニ8号、及びアポロ11号の船長として宇宙へ挑み──結果として、始めての月面着陸者となった。

アームストロングは自らを「永遠に白いソックスとポケットプロテクターを身に着けたオタクエンジニアだ」と称している。彼は世界から賞賛を浴びながらも有名人として扱われることを好まず、政界進出も、世間への積極的な露出も行わなかった。彼は2012年に死去するまで、宇宙を愛する1人の探求者であった。

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……ニール・アームストロング。2025年万博聖杯戦争における強大な壁。己だけの勝利のために、孤独を選んだサーヴァント。

今作におけるアームストロングは1970年万博聖杯戦争の優勝者であり、その経験から思考にとあるバイアスが掛かっている。即ち懐古。あの頃をもう一度、という願い。アメリカもロシアも誰も彼も、恐らく肯定はしてくれないであろう、『ソ連の復活及び米ソ冷戦構造の再開』を、彼は望んでいる。その結果として得られる、対立構造からの技術の高め合い。そこに、アームストロングは価値を見出した。

アームストロングは、かつて望んだように勝つことが出来ず、また望んだように聖杯を使うことも出来なかった経験、及び今回の願いに対する周囲の反応を予測して、極力他人と距離を取ることにしている。アメリカ館との通信も最低限。聖杯問答の誘いにも乗らず、戦闘は基本的に上空からの掃射で行う。実のところ、これはアームストロング自身にとっても挑戦であった。本来宇宙開発は1人では成し得ぬ偉業。多くの人々と連携して挑んだからこそ、彼は月に届き得た。それをアームストロングは誰よりも自覚している。しかし今回ばかりは、徹底して孤独を貫いた。──そして、サーヴァント達の連携に倒された。

また、今作においてアームストロングは、米国製自律ドローンにマスターとしての機能を持たせ、かつそれに融合する形で召喚されている。このドローンはアームストロングの挙動に合わせて空中を機敏に移動可能な優れもの。アームストロングはこのドローンによって空中という地の利と機動性を確保し、圧倒的な制圧力を手に入れたが。ドローンであるからには、それを見抜かれれば、撃ち落とされるは道理であった。

 

◯適正クラス

 

アーチャー

……最適性クラスは実はアーチャー。アポロ11号の船長であり、星の海へ漕ぎ出たアームストロングは当然ライダークラスの適性を持つが、しかし彼は乗騎から降りる、即ち月面着陸によって人類史に名を刻んだサーヴァント。その点において、彼の本質は『乗りこなすこと』よりも『投げ放つこと』にある。即ち、己を月に投げ込んだが故に、彼はアーチャーなのだ。

 

ライダー

……そうは言ってもライダークラスで召喚されることの方が多い。一般に抱かれるイメージも相まって、ライダークラスであればより高い知名度補正が得られる。

 

◯因縁キャラ

 

ユーリ・ガガーリン

……1970年万博聖杯戦争にて最後に戦ったサーヴァント。1970年時点でガガーリンは死亡していたが、実のところアームストロングの方がガガーリンよりも早く生まれている。歳の上下はあるにせよ、宇宙開発の一線にいたアームストロングにとって、ガガーリンの活躍は常に聞き及ぶところであり、また目指すところであった。

またアポロ11号が達成したミッションの1つは、宇宙開発に従事し、そして死亡した先人たちの記念品を月面に据えることであった。その中にはガガーリンも含まれている。所属する国は違えど、彼らは同じ場所を目指した同輩であった。

だからこそ、アームストロングは。あの決着を忘れることはない。

 

太陽の塔

……1970年万博聖杯戦争における聖杯。1970年の決着に関して引け目のあるアームストロングは、実のところサーヴァントとして現界した太陽の塔には興味があった。あの聖杯戦争を記憶しているか、どう思っているのか。──もし、太陽の塔を打倒し、その消滅までに暇があれば、問いかけてみよう。そのくらいには、考えていた。

 

トーマス・エジソン(及び歴代アメリカ大統領)

……宇宙飛行士アームストロングは、アメリカ合衆国にとっても記念碑的な偉人である。アメリカは宇宙開発をプロパガンダの一種として用い、見事月面着陸を成し遂げたアームストロングに対して政界への招待を行った。が、アームストロングはこれを拒否している。アームストロングは自らが政治利用されることを理解し、受け入れたが、しかし自ら政界に出る気にはなれなかった。アメリカという国の影も、彼は知っていた。

fateシリーズにおいては、『歴代アメリカ合衆国大統領』はサーヴァント・トーマス・エジソンに複合されている。もしアームストロングがエジソンに遭遇し、その中に大統領達を見いだした場合──静かに距離を置くだろう。

 

Comment from Author

……今作においては数少ない、fateシリーズで存在が明示されているサーヴァント。今作は思想として、あくまで『万博聖杯戦争』という作品であり、fateシリーズの世界観に間借りはするけれどもキャラクターなどは完全オリジナル、fateを知らなくても読めるいわば1.5次創作を目指していました。そのためfateシリーズに出ているサーヴァントは、意図的に今作から外しています(そもそも万博中で過去の偉人に関する展示は少なかったのですが)

ただやはり、作中の壁として説得力のある存在を考えたときに、ニール・アームストロングという存在は外せなかった。3時間並びましたもんね、アメリカ館の月の石。実はあの月の石は別のアポロ計画で持ち帰られたものであって、アームストロングとは関係がないのですが、ちょっとこじつけてでも参加して貰いました。サンキューアメリカ。フォーエバーアメリカ。

 

 

コモンズDのライダー

 

クラス:ライダー

真名:プリンセス・イェネンガ

性別:女性

出展:ブルキナファソ建国伝説

地域:ブルキナファソ

属性:中立・中庸

身長:171cm

体重:59kg

触媒:プリンセス・イェネンガ像

 

現地では『ブルキナファソのジャンヌ・ダルク』と呼ばれているらしい。

 

 

【挿絵表示】

 

 

筋力:B+

耐久:B

敏捷:A+

魔力:D

幸運:C++

宝具:B

知名度補正:C

 

クラススキル

 

対魔力:C+

……ライダーのクラススキル。魔術への耐性を得る能力。宝具ヒョウの皮(ゴアグリーム)を用いれば、魔術に対する耐性が上昇する。

 

騎乗:A-

……ライダーのクラススキル。乗り物を乗りこなす能力。Aランクの騎乗スキルがあれば、幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、全ての乗り物を乗りこなすことが可能。イェネンガは基本的に馬術に長け、長時間の騎乗にも難なく堪える技量を持つが、乗騎が運命の夫リアレの元へ駆け出した種馬疾走の際には、その走行をコントロールすることが出来なかった。ただしこれはイェネンガが乗騎をコントロール出来なかったというよりは、イェネンガの抱えた衝動に乗騎が応えたと言うべきだろう。

 

保有スキル

 

黄金律(体):B

……身体の完全性、及び美しさを維持するスキル。イェネンガという名前は、モシ族の用いるモアレ語で『細身』『すらりとした』という意味。彼女は伝説においても美貌を持った存在として描写され、民族工芸のモチーフとしても度々用いられてきた。

 

軍略:C

……多人数を動員した戦闘における戦術的直感能力。イェネンガは王の騎馬隊を指揮する将であり、対立するマリンケ族との交戦においても優秀な才能を発揮したと伝えられている。

 

恋に恋したイェネンガ:EX

……ブルキナファソ建国伝説において、イェネンガは母親になることを望むも認められず、しかしそれを認めさせるために手を尽くし、遂には祖国を出奔するに至ったとされる。彼女はその身の内に抱えた衝動を決して手放さず、実現まで漕ぎ着けた。

その伝説が昇華されたのがこのスキル。一意専心、イェネンガは自らに向けられた幻惑の類をシャットアウトし、自らの目的へ邁進することが出来る。

 

宝具

 

種馬疾走恋路(ウェドラオゴ)

ランク:B

種別:疾走宝具

レンジ:-

最大捕捉:-

「走れ、走れ、走れ、走れ、どこまでも!! 運命まで、走り続けて!! 『種馬疾走恋路(ウェドラオゴ)』!!」

……イェネンガの乗騎である種馬(ウェドラオゴ)の疾走。種馬は目的を達成するまで走り続け、また加速し続ける。イェネンガを運命の夫リアレの元まで導いた種馬疾走の伝説が、宝具へと昇華したもの。

本来は疾走するのみの宝具であり、他者への攻撃性は持たない。しかしセイバーとの最終戦においては、無限の距離を無限に加速しながら走破したことによって疾走速度が亜光速に到達し、無限大の威力でセイバーを穿通した。

余談だが、ブルキナファソ建国伝説において、イェネンガはこの種馬疾走にあやかり息子にウェドラオゴと命名している。そしてこのウェドラオゴという名前は後に部下に対して褒賞として与えられる苗字に変化し、結果的にウェドラオゴはブルキナファソで最も多い苗字となった。見ようによっては、種馬(ウェドラオゴ)の疾走はまだ終わっていないとも言えるだろう。

 

王統示すは三つの威光(ソンドレヤンガ・キブガ・ゴアグリーム)

ランク:B+

種別:対人(自身)宝具

レンジ:0〜40

最大捕捉:1人

「我が父、ネデガ王より賜りし、我らが王威。即ち、金の鞍。鉄の槍。ヒョウの皮。ここに揃い、故に!! 故に我こそ正統王(モロ・ナーバ)!! 三位一体の王権に、今もなお陰りなし!! 我が敵、尽く沈め──『王統示すは三つの威光(ソンドレヤンガ・キブガ・ゴアグリーム)』!!」

……ブルキナファソ建国伝説において、イェネンガの父、カンバガ王国のネデガ王よりイェネンガの息子ウェドラオゴへ贈られた3つの物品、金の鞍(ソンドレヤンガ)鉄の槍(キブガ)ヒョウの皮(ゴアグリーム)。これら3つを同時に活用することで王権の証明を行い、自らの身体を王として相応しい状態まで強化する宝具。

これら3つの物品は、いわばブルキナファソ版三種の神器。イェネンガに限らず、ブルキナファソ王家に連なる人間であれば宝具として活用することが可能。

3つの物品を同時に使用すれば身体の全スペックが向上するが、1つ1つも宝具として成立している。真名解放の際に鉄の槍(キブガ)にエネルギーを集中させれば、強力な投槍の一撃を撃ち込むことも可能。なお、1つ1つを宝具として使用する場合の効果は下記の通り。

金の鞍(ソンドレヤンガ)……乗騎を呼び出しての高速走行。イェネンガの場合は種馬疾走恋路(ウェドラオゴ)と効果が重複しており、今作では使用する機会がなかった。他者への貸与も可能。

鉄の槍(キブガ)……鉄の槍。投擲によって強烈な貫通力を伴う一撃を撃ち込める。

ヒョウの皮(ゴアグリーム)……ヒョウの皮。弾除けとしての物理的、及び概念的な防御が可能。

 

人物

一人称:アタシ

二人称:アナタ/◯◯クン

三人称:あの人

 

◯性格

……元気溌剌、夏の陽射しが如き明るさ。若干ギャルみもアリ。恋を抱えた若い姿で召喚されたイェネンガは、目にする全てが面白いお年頃。目の前にある物事をキャイキャイと楽しむ様は、サーヴァントらしさを感じさせないほどである。

が、それはそれとしてきっちり戦士である。戦闘となればきっぱり割り切り、敵対したサーヴァントは全力で倒す。オンオフが激しいと言うよりは、全てに対して一生懸命に向き合っている、そんな人物である。

 

◯動機・マスターへの態度

……イェネンガの願いは、作中でも述べた通りにブルキナファソの発展である。彼女がある種始祖となったブルキナファソ、その栄光を願うのは当然のことだ。

ライダークラスで召喚された彼女は恋を求め恋に焦がれる少女の側面が強いのだが、サーヴァントは基本的に元となった存在の始まりから終わりまでを記憶として持っている存在。『望み通り母親となりその末に国となった終わり』を知る彼女は、別段恋だけに執着はしない。一本気な少女戦士として、国のため、人のためにするべきことへひた走る。

 

◯台詞例

「アタシ? 騎兵(ライダー)だよ、見ての通り。そっちは……何それ?」 

「アタシ達には夢がある」 

「美味っしー!! え、これホントにマフェ? これが?」

「ん、任せてマスター。行ってくる!!」 

「ま、アタシは別に、嘘をつきあったままでも良いと思うんだけど。なんだろうな、政治ってそうじゃない?」

「悪いことじゃないんだよ、どんな衝動も。それってきっと、本当の本当の、根っこにある願いだと思うから」

「万博のことが好きなんだよ、ローガくんは」

「アタシは、アタシ達は!! きっと、どこまででも、走っていける!!」 

「マスター、何それ? へー、ガンビア弁当。ガンビアってどこだっけ……あっ、これベナチンじゃん!! ヒリ辛でおいしーよね!! 食べよ食べよ。──え、アタシの分ないの? なんで? サーヴァントはご飯が要らない? ひーどーいー、アタシも食べたーい!! ちょっと食べさせてー」

 

◯史実の実像・人物像

……イェネンガはブルキナファソ建国伝説に語られる王女/建国者である。

彼女の生まれは11世紀ガーナ北部に存在したカンバガ王国。父ネデガ王の元で騎士として戦い、14歳の時点で軍最優の騎士と称された。また容姿も美しかったようで、口伝においては『イェネンガは槍のように若く強く、美しい』と記録されている。

彼女に転機が訪れたのは成人を迎えた頃。戦士として戦い続けた彼女だが、結婚、及び母親になることに対して、強い願望を抱くようになったのだ。彼女はネデガ王へ結婚の希望を訴えるも、軍事的キーパーソンであったイェネンガを失えないとしてネデガ王はこれを拒絶。ここから父娘の対立が発生する。イェネンガは訴えの手段として、見事に小麦畑を育成したうえで手つかずで腐らせ、『私の心もこの小麦畑と同じ。結婚出来ないがために腐ってゆくのです』と嘆願している。が、ネデガ王はやはり聞き入れず、イェネンガを幽閉した。

この幽閉から抜け出したイェネンガは種馬(ウェドラオゴ)を駆り、道中で敵であるマリンケ族と交戦したりしながら国を逃亡する。その最中に種馬が暴走し、イェネンガの制御も受け付けずに走り続け──その疾走の果てに、狩人リアレの元に辿り着いた。

イェネンガとリアレは恋に落ち、イェネンガは13ヶ月の妊娠の末に彼との息子ウェドラオゴを設ける。ブルキナファソ建国神話においては『戦士』イェネンガと『狩人』リアレの間に子供が出来たということを重要視するようで、ウェドラオゴは『戦士の血と狩人の知恵の融合』として称えられている。このウェドラオゴは成長の後にネデガ王の元へ赴き、彼から金の鞍、鉄の槍、ヒョウの皮を受領する。ウェドラオゴが建てたテンコドゴ王国を源流に持つのが現在のブルキナファソであり、イェネンガはブルキナファソを構成する民族の1つモシ族の創設者、建国女王として称えられるようになったのである。

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……狼我及び太陽の塔の、心強い同盟相手。戦闘側面のサポートはもちろんのこと、心理的なサポートも見落としなく行き届く。

イェネンガは召喚された時点で、自らがあまり知名度補正を受けられていないことを悟っていた。同時にイェネンガという存在の人生の概観もサーヴァントとして一通り理解し、結果非常に冷静な状態になっていた。そこから勝利のためには同盟が必要であると結論付けて、たまたま昼に遭遇できたバーサーカー陣営に声を掛けた──同盟成立の顛末は上記のとおりである。

かつて衝動に身を焦がした経験のある彼女にとっては狼我もまたある程度理解に及ぶ存在であり、コミュニケーションは割と取りやすかった。狼我を説得できたのもその証左である。逆に本来のマスターであるウェドラオゴは、ウェドラオゴ自身が口数の少ない人間であったこともあり、あまり理解できていなかった部分も大きい。それでもそれぞれのマスターに信頼を寄せ、彼女に出しうる全スペックを発揮して、聖杯戦争を勝ち抜いた。

なお今作はそもそもの舞台が日本であり、イェネンガという存在の知名度が極度に低いことから、イェネンガのサーヴァントとしての性能は高くない。ただし当然のことながら、知名度補正は環境によって変動するもの。もしブルキナファソで聖杯戦争が開催され、建国者であるイェネンガが召喚された場合は──アイルランドで召喚されたクー・フーリン、あるいはブリテンで召喚されたアーサー王が如く、弩級建国女王パーフェクト・イェネンガとして大暴れが可能である。

ちなみに、『ブルキナファソのジャンヌ・ダルク』という通り名の影響であるかは不明であるが、何故かフランスの救国聖女ジャンヌ・ダルクと顔つきが似通っているという意見がある。何故か『アルトリア顔特性』を持っている。何それ?

 

◯適正クラス

 

ライダー

……最適性クラス。ライダークラスでは『恋への衝動を抱えた若い少女戦士』としての側面が強く出たサーヴァントとして召喚される。後に結婚する夫リアレの存在は認識しているが、未来の話なのであまり気にしていない。

 

ランサー

……ランサークラスでは『ブルキナファソ建国女王』としての側面が強いサーヴァントとなる。このクラスは恋を求めての種馬疾走を経た後の側面が強いため、宝具『種馬疾走恋路(ウェドラオゴ)』は封印状態。代わりに建国女王として『王統示すは三つの威光(ソンドレヤンガ・キブガ・ゴアグリーム)』が強化される。

 

◯因縁キャラ

 

太陽の塔

……盟友。万博聖杯戦争開始初期から同盟を結び、服部半蔵正成やシパン王、ニール・アームストロングといったサーヴァント達と共に戦った。太陽の塔は真っ直ぐにイェネンガ及びブルキナファソの文化、民芸へ敬意を示すため、イェネンガとしても悪い気はしない。

ただイェネンガはどちらかというと状況に応じて清濁併せ呑む判断が出来るのに対し、太陽の塔は己の中にある理想を決して曲げない質であるため、全くの好相性というわけでもない。太陽の塔とイェネンガの関係性としては、今作で辿った形が最良である。

 

ジャンヌ・ダルク

……「あ、本家のジャンヌ・ダルクさんだ。アタシ別にジャンヌ・ダルクさんみたいなことはしてないと思うけどな──あれ、なんかアタシと顔似てない?」

 

■■■■■■■

……「こんにちはー。……あれ、どうしたの、アタシの顔見て。なーに? ……いや本当に何、え、セイバー顔? また増えた? いやえ、何、何その剣!? うわ光ってる!! うわーっ、怖っ、うわーっ!? 誰なのーっ!?」

 

Comment from Author

……『現地では『ブルキナファソのジャンヌ・ダルク』と呼ばれているらしい』←この情報をもっと早くから知れていれば!! ジャンヌ顔を意識して最初から描けていたのに!! 取材と並行して執筆をしているとこういうことが起こります。

それはそれとして、プリンセス・イェネンガは個人的に非常に思い入れがあるというか、今作を執筆する切っ掛けとなった人物です。コモンズDをふらついているときに彼女の像と紹介文を見て、その瞬間から今作のプロットを考え始めました。だって伝説の設定がめちゃくちゃヒロインしてたし。

今作は恋愛に関する要素はゼロになるまで削ぎ落としていますが、強いてヒロインを挙げるのであればやはりライダー。ゲームで表現すれば、この作品はライダールートを辿った作品と言えます。今作においての清涼剤、書いてて楽しく頼もしい、そんなキャラクターです。

 

 

アイルランド館のキャスター

 

クラス:キャスター

真名:小泉八雲

性別:男性

出展:史実

地域:日本/アメリカ

属性:中立・中庸

身長:157cm

体重:52kg

触媒:ハードカバー本『知られぬ日本の面影』

 

本名はパトリック・ラフカディオ・ハーン。しかしあまり名乗りたがらない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

筋力:E

耐久:E

敏捷:D

魔力:C++

幸運:D

宝具:C++

知名度補正:B

 

クラススキル

 

陣地作成:D+

……キャスターのクラススキル。魔術師として自らに有利な陣地を作成する能力だが、生前魔術の素養を持たず、またあらゆる境界を越えながら活動した小泉八雲にとっては不得手な技術。低ランクに留まる。ただし宝具使用の際には、高度な『民話』の再現は可能である。

キャスターのクラススキルにはこの他に『道具作成』というものもあるが、こちらは所有すらしていない。

 

保有スキル

 

高速詠唱:D

……魔術の影響を高速化するスキル。作家および記者である小泉八雲の場合、魔術ではなく原稿執筆が高速化する。ただし彼は非常に文章への拘りが強く、複数回の推敲を日課としていたため、スキルを以てしても速筆とは呼べない。

 

対人取材:A

……人々へ取材し、理解する技術。小泉八雲はその生涯において越境しながら人々と語らい、その経験を記述してきた。彼は万民に通底するものがあることを信じ、彼の時代にしては珍しく、あらゆる先入観なしに取材を行うことができた。

 

知られぬ日本の面影:A

……『知られぬ日本の面影』は、小泉八雲が来日後始めて著した作品集である。彼が日本を訪れてから体験したエピソードを著した書籍であり、この本を初めとして彼の日本での生活は始まった。

そんな日本での小泉八雲の執筆遍歴が昇華されたのがこのスキルである。彼の集中力、観察力、言語化能力は、このスキルによって保証される。なお日本以外で召喚された場合、このスキルのランクは低下する。

 

宝具

 

怪談(かいだん)

ランク:C

種別:対民宝具

レンジ:1〜10

最大捕捉:10人

……小泉八雲の代表作『怪談』が昇華された宝具。本質的には世界に対して民話及び世界観を送り出す、情報発信に特化した対民宝具。しかし小泉八雲はこれを裏返すことで彼の蒐集した民話を舞台とした閉鎖空間を創り出し、そこに対象を取り込む宝具とした。

作る閉鎖空間は1つには限られず、魔力量によっては複数の作成も可能。取り込む先は小泉八雲の心象風景ではなく民話をベースにした異空間であるため固有結界には該当しないが、それに似て非なる大魔術の一種である。またこの空間において、小泉八雲は語り部として概念的に存在する。

空間のベースとなる民話は、小泉八雲が蒐集した『雪女』『轆轤首』『耳無芳一の話』『食人鬼』など。語り部である小泉八雲の干渉により、他の民話などから追加の戦力を空間に追加することも可能。またこの空間内に小泉八雲自身が実体化することも可能であり、自らの蒐集した民話の要素で武装することもできる。

またこの宝具が扱う民話は小泉八雲が蒐集したものであるが、サーヴァントとしての現界後に蒐集したものも扱うことが可能。都市伝説、フィクション、噂、ジョーク。小泉八雲は吟味の上で、これらを蒐集、使用ができる。ただし、蒐集可能な民話は小泉八雲の手に拠らず自然発生したものに限られる。マッチポンプは出来ない仕様だ。

 

民話再演・ミャクミャクさま

ランク:EX

種別:対界民話

レンジ:-

最大捕捉:1人

「──怪談というものは。色も変え、形も変え、なおも息づく民のもの。書物においては語られずとも、人の心にあるならば、物語には果てはなし。故に、この不思議な信仰も。必ずやこの日本の地に、存在したものなのである。疑似宝具装丁──民話再演・ミャクミャクさま」

……宝具『怪談』を応用した疑似宝具。自らの霊基内に民話をベースとした異空間を発生させ、再び宝具を裏返すことで、サーヴァント・小泉八雲を上書きする形で民話の存在を顕現させることができる。世界に対して己の形をした民話を捩じ込み、強引に成立させる対界民話。ただし小泉八雲自身の霊基の主導権を民話の存在に明け渡すことになるため、彼にとっては自滅に近しい。

今作においては、最新の民話『ミャクミャクさま』を顕現させた。小泉八雲自身を初めとして複数人のマスターを取り込んだミャクミャクさまは、小泉八雲を裏返して顕現している関係か、はたまた万博聖杯戦争において最強の知名度補正を受けられるミャクミャクがベースとなっている関係なのか、とかく霊基的には安定しており、外からの干渉なしには倒せない。

今作では腹を裂き中身を取り出すことに特化した宝具を持つシパン王が居合わせたがために、小泉八雲はミャクミャクごと敗北したが。それさえなければ最強になりえた、切り札の疑似宝具である。

 

人物

一人称:私

二人称:貴方/貴女

三人称:彼/彼女

 

◯性格

……穏やかながら諦念に満ちている。そもそも強気ではない質なのだが、今作では後述の理由により聖杯の獲得を諦めているため、殊更に儚げ。

 

◯動機・マスターへの態度

……小泉八雲の現界時の願いは『妻子へ会うこと』である。家庭への郷愁はサーヴァントとなっても絶えることはない。小泉八雲は日本において妻セツとの間に三男一女を設けている。彼の願いは家族との再会である。

しかし今作においては、大真面目に根源を目指している魔術師クラルサッハに召喚されてしまったため、自らの願いは諦めている。小泉八雲はキャスタークラスではあるが元来の魔術師ではない。仮に自害を命じられたとして、命令への抵抗はできても解除は叶わない。そして小泉八雲は、強権的な監視者へ抵抗する、その恐ろしさを知っていた。

故に諦めている。諦めて、労働者に徹している。それでもサーヴァントとして見る現世は興味深く、新しい民話に出会うこともできた。願いは叶わないが、不満ばかりでもない。これはこれで、といった気分である。

 

◯台詞例

『ある大変寒い夕方、男はひどい吹雪に襲われた。男の名前は狼我という。まだ24の若者だった。』

「そう、私はキャスター。/そしてここにいるのもまた私。』

「だから、真面目に仕事をこなすのみです。儚いほどの勤勉さは、日本人の美徳でしょう?」 

「……ああ、お許しください、皆々様。私の望みは叶いませんが、こうして新しい物語を見つけることに、私は喜びを覚えずにいられない」

「マスター。これは? いいえ、これがミャクミャクのモニュメントであることは解ります。……聖杯を? ここから? ……承知しました、やってみましょう。どれだけ上手くやれるかはわかりませんが……わかっています。すぐやりますよ。人遣いの荒いお方だ」

 

◯史実の実像・人物像

……著作家小泉八雲、本名をパトリック・ラフカディオ・ハーン。

幼少期より、世界を転々としながら生活した人間である。生まれはギリシャのレフカダ島。2歳でアイルランドに移り住み、11歳頃にフランスへの留学を経験。17歳までイギリスで暮らし、その後移民としてアメリカへ渡る。以降40歳まで、アメリカの幾つかの州、幾つかの出版社を渡り歩き──そして、日本を訪れた。

彼が日本を志した切っ掛けは幾つかあるが、1つは1885年に開催されたニューオーリンズ万国産業綿花百年記念博覧会と言えるだろう。彼は記者としてこのイベントに張り付き取材を行ったが、その中で日本館の展示に興味を惹かれ、日本の官僚服部一三と交流を持っている。ニューオーリンズ万国産業綿花百年記念博覧会は正式な万博として承認されてはいないが、それでも彼もまた、いわゆる『万博』に人生を変えられた1人なのである。

日本に渡って以降は取材、著作を続けながらも英語教師として働いた。同時にプライベートでは自らの世話人として雇われた女性セツと深い仲になり、婚姻。三男一女を設ける。生活の傍らで日本各地へ旅行し見聞を深め、そこで見聞きした話を元に日本に関する著作を数多く制作。54歳で死去するまで、日本を愛した著作家であった。

なお、彼の本名はパトリック・ラフカディオ・ハーンであるわけだが、彼はこの『パトリック』という名前を好まず、専らラフカディオ・ハーンとして生きた。というのもこの『パトリック』はキリスト教におけるアイルランドの聖人パトリキウスに由来する名前なのだが、彼は幼少期に受けた厳格なカトリック宗教教育の影響で、キリスト教への疑念を抱いているのである。この他にも16歳の頃に怪我で左目を失明し隻眼になっている、身を寄せていた親戚が投機に失敗し煽りを受けて大学を中退するなど、幸運な人生だったとは言い難い。だからこそ偏見も持つことなく、境界を渡り歩く人間性を培えたのかもしれない。

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……境界を越えて世界を渡り歩き、その各地で出会った人々との対話を好んだ作家・記者。サーヴァントと化した後も学びの喜び、記録の喜びは潰えておらず、新しい民話を知ることには無上の喜びを覚える。

だが外向きの興味はあっても己自身に対してはあまり頓着がないというか、嫌っている部分もある。生前の頃から自らの顔面を見せることを好まず、それどころか今作においては聖杯への願いすら諦めた。今作においては描写が及ばなかったところではあるが、民話『むじな』を引用することで自らの顔をのっぺらぼうにすることが可能であり、平常時にはその状態でいることを好んでいる。

逆に言えば、それだけの心痛を奥底に抱えながらでも、平気で生きられてしまう存在が小泉八雲である。願いは叶わずともそれはそれ。己を投げ出すにせよそれはそれ。境界を渡り続けた小泉八雲にとって、それら苦難は『その程度』のものでしかないのである。

 

◯適正クラス

 

キャスター

……例外は数あれど、基本的に作家のサーヴァントはキャスタークラスに割り振られるものである。特に小泉八雲に関して言えば、流石にキャスター以外のクラスだと身が持たないと自己申告している。

 

◯因縁キャラ

 

スンダラムルティ・スワミ

……万博聖杯戦争にて相対した異文化の語り部。小泉八雲は宗教、信仰に対して造詣が深い記者である。訪日以前にはブードゥー教、中国の民間信仰、植民地特有の文化などに関する著作を残し、また世界各地の伝説を蒐集、再構築した小説も認めている。当然インドの信仰も小泉八雲の興味の対象。今作においては叶わなかったが、もし数日でも猶予があれば、取材の席を設けていたことであろう。

 

ミャクミャクさま

……万博聖杯戦争にて蒐集した最新の民話。大阪・関西万博公式キャラクター『ミャクミャク』の公開当初に発生した、ミャクミャクに関連するジョーク、風評、二次創作のうち、『因習村の怪物/神性』にミャクミャクを紐付けた作品群を小泉八雲は『民話・ミャクミャクさま』と定義。蒐集を行った。彼は後日ミャクミャクハウスへ訪問し、少し反省したとか、していないとか。

 

果心居士

……小泉八雲は著作『果心居士のはなし』にて、果心居士の伝説について記している。織田信長や明智光秀をもあしらうトリックスターとして描写したものの、作中では(当然ながら)男性の老人として描かれている。もし某所に召喚されたサーヴァント果心居士と遭遇した場合、頭を抱えながら取材を開始することになる。

 

Comment from Author

……今作は万博をテーマとする以上、可能な限り世界各地からサーヴァントを採用したいと考えていました。アフリカからイェネンガ、南米からシパン王、ヨーロッパからアトラス、北米からアームストロング、アジアからスンダラムルティ、日本から服部半蔵。ここまで決まって、残り1騎。オセアニア枠を探したわけですが、これが見つからなかった。オーストラリア館は個人名が出ないので使いづらく、コモンズもしっくり来る人がいない。じゃあオセアニアから外れるとして、他にどこを?

そう考えて行き着いたのが、小泉八雲でした。何しろ小泉八雲であれば、ミャクミャクさまを引っ張り出せる!! こじつけられた時にはテンションが上がりましたね。今作においては執筆時間が足らず、小泉八雲に良い描写をあまり作れなかったことが惜しい。戦闘描写も含めて、かなり拘ったサーヴァントです。

 

 

関西パビリオンのアサシン

 

クラス:アサシン

真名:服部半蔵正成

性別:男性

出展:史実

地域:三河/江戸

属性:中立・中庸

身長:176cm

体重:74kg

触媒:伊賀忍具

 

本来は武将/大名であり、忍者をやれているのは後世のイメージによる補助が大きい。

 

 

【挿絵表示】

 

 

筋力:B

耐久:B

敏捷:A

魔力:B

幸運:B+

宝具:C

知名度補正:B

 

クラススキル

 

気配遮断:A

……アサシンのクラススキル。サーヴァントとしての気配を断つ能力。暗殺向きの能力であり、本来の聖杯戦争であればマスターの殺害に向く。伊賀忍者の頭領である服部半蔵正成は高ランクの気配遮断が可能だが、マスター殺しの封印された万博聖杯戦争においては宝の持ち腐れであった。

 

保有スキル

 

忍術:A++

……忍者の扱う諜報技術、戦闘術の総称。伊賀忍軍の頭領である服部半蔵正成は、アサシンとして召喚された場合はこのスキルを非常に高いランクで持つ。

ただし、本来忍者ではない服部半蔵正成がこのスキルを保有しているのは、後世に確立された『伊賀忍者服部半蔵』というイメージの影響が大きい。アサシンではないクラスで召喚された場合は、忍者服部半蔵のイメージの影響が減衰するため、このスキルのランクも低下する。

 

偽装工作(忍):B

……服部半蔵は徳川家康の指示の元、数多くの偽装工作を実行、成功させている。その実績が昇華されたのがこのスキルであり、服部半蔵正成の諜報活動、隠密行動の成功率を高める。ただし他の偽装工作スキルが持つような、自らのクラスを偽る能力などは持ち合わせていない。

 

鬼半蔵:C-

……かつて徳川家康は、服部半蔵正成の槍の技術を褒め称え、『鬼槍』と評した。この逸話に代表される、服部半蔵正成の高い槍術が昇華されたものがこのスキル。槍術の技量を向上させ、敵へ対しては威圧感を与える。

ランサーではないクラスで召喚された場合、このスキルのランクは大幅に低下する。鬼半蔵の真髄を発揮させたければ、何らかの方法でランサークラスに近づける必要がある。

 

宝具

 

伊賀衆(いがしゅう)

ランク:C

種別:対軍・対城宝具

レンジ:90

最大捕捉:不明

……かつて指揮した忍者集団『伊賀衆』を呼び出し、諜報活動を行う。対軍・対城宝具ではあるが、これは攻撃の威力ではなく諜報対象の意。呼び出された伊賀衆は、服部半蔵正成を起点にして数kmの距離であれば単独行動を行うことが可能であり、諜報した情報は逐次服部半蔵正成へフィードバックされる。一応、戦闘力も微弱ながら持ち合わせている。

今作においては召喚された当初からこの宝具を使用しており、マスターである住持へサーヴァントやマスターの情報を伝えていた。

 

半蔵門(はんぞうもん)

ランク:D

種別:対軍宝具

レンジ:1〜5

最大捕捉:50人

……江戸城(現皇居)の門の1つ、半蔵門。この門は生前の服部半蔵正成が管理した江戸城のいわば非常口であり、彼の部下が住み込みで警護に当たっていたとされる。

服部半蔵正成は宝具として、この半蔵門と共に伊賀同心数十名分の影を呼び出し、防衛を行うことが可能である。ただし、この宝具はアサシンクラスでは使用ができない。

21世紀の関東地区であれば『東京メトロ半蔵門線』が存在するために、宝具のランクが若干上昇する。

 

人物

一人称:私

二人称:貴方/貴様/主殿

三人称:彼/彼女/彼奴

 

◯性格

……冷徹、寡黙、仕事人。多くは語らず、課されたオーダーに対して静かに向き合う。なお、アサシンクラスで召喚された服部半蔵正成は、本来の彼の素よりも格段に寡黙である。これは忍者という存在に向けられたパブリックイメージも影響しており──同時に、思うように槍を振るえない現状に対してシンプルにちょっとばかりテンションが下がっているということでもある。

 

◯動機・マスターへの態度

……服部半蔵正成の聖杯への願いは、伊賀忍者達との完全和解を果たしたifである。生前に指揮し、宝具としても持ち込んでいる伊賀衆だが、実際にはあくまで共に徳川家に仕えていたのみであり、服部半蔵正成と伊賀衆は直接の上司部下の関係にはない。伊賀勢力側がこの立場の差を不服に感じていたこともあり、服部半蔵正成の死後、息子服部半蔵正就は伊賀同心との軋轢が影響して職を追われている。服部半蔵正成はこの歴史を変えることを願っている。早くに伊賀衆との話し合いの場を設けられれば、それだけでこの歴史は変えられるかもしれない、と。

だがアサシンクラスで召喚された時点で、服部半蔵正成は聖杯戦争の勝利を半ば諦めている。彼はランサークラスでなければ槍の本調子が出せず、アサシンの本領であるマスター殺しもまた禁じられている。万博聖杯戦争というアサシンクラスに厳しい環境は、服部半蔵正成を落胆させるに十分だった。

が、しかし。彼は同時に、己を召喚した佐藤住持という男に、何か底しれない期待を抱いてもいた。住持もアサシンクラスで服部半蔵正成を呼び出したことには落胆していたのだが、即座に彼へ全サーヴァントの調査を命じたのである。

まだマスターは、何か大きな事を起こす気でいる。そうであれば、手伝ってやるのは吝かではない。忍ならば忍らしく、暗躍するのも一興。やれるところまでやってみよう。そう、思わせられたのである。

 

◯台詞例

「──喧しいな、槍兵(ランサー)

「お命頂戴する」

「我が身既に鉄なり、我が心既に空なり──天魔覆滅」 

「…………これにて、御免」

「主殿。イタリア館のマスター、レニー・ロッシの連絡先、ここに。……しかし、何故これを? 彼は召喚に失敗したはず。調べる意味は──はあ、呑みに誘う? 親睦を深める? ……なるほど。であれば、レニー・ロッシは当世では未成年。ここは1つ、海遊館にでも連れ出すのがよろしいかと……」

 

◯史実の実像・人物像

……服部半蔵正成は、いわゆる戦国時代に活躍した三河の武将。徳川氏の家臣であり、徳川十六神将に数えられる人物である。

正成の父、服部半蔵保長は伊賀にルーツを持つものの、伊賀を出て上洛、その後松平氏との縁あって三河へ渡った。三河で生まれた正成は家康に仕え、16歳での初陣以来数々の武功を挙げている。

姉川の戦い、三方ヶ原の戦いでは一番槍の功名を挙げ、またこの三方ヶ原の戦いにおいては敗走する家康の護衛を務める。この他にも高天神城攻めや天神ヶ尾砦攻めに参加、小牧・長久手の戦いや小田原征伐においては鉄砲隊を指揮するなど、多方面から戦に参加した歴戦の武将である。

また、1582年に本能寺の変が起こった際、家康が堺から伊賀を通って三河へ帰還した『伊賀越え』にて。服部半蔵正成は自らのルーツが伊賀にあることもあって、通り道にいた伊賀衆との交渉を実施。彼らを家康の護衛として採用した。家康は将軍となった後に、彼を三河まで送り届けた伊賀衆を伊賀同心として正式に徳川幕府へ登用。その指揮権を服部半蔵正成に与える。『伊賀忍者の頭領服部半蔵』というイメージは、これらの出来事から作られたものである。

服部半蔵正成は有能な武将であったが、しかし決して冷酷な人間ではない。彼は家康の嫡男信康が自刃することになった際、信康の介錯を命じられた。しかし正成は信康の姿に首を打ちかね、落涙し刀を放棄したとの逸話がある。「さすがの鬼も主君の子は斬れぬか」とは家康の談。

強く、勢いがあり、しかし人情味もある武将。それが歴史の中に垣間見える、服部半蔵正成の姿である。

なお、fateシリーズにおいても彼の存在は言及されている。『隠密大名』として誉れ高いらしい。

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……本来は槍使いの武将として勇名を馳せた服部半蔵正成。しかし今作においてはアサシンクラスで召喚され、人物像もダウナー気味になっている。そうなっている理由は諸々あるが、単純にテンションが落ちている、という側面も大きい。

そんな彼だが、マスターである佐藤住持に対してはかなり協力的である。何やら大きなプロジェクトを考えているらしい住持の内心を察して、そのサポートに乗り出したのだ。宝具『伊賀衆(いがしゅう)』をフル活用、万博聖杯戦争の初日から各地を嗅ぎ回り、マスターが誰か、サーヴァントは誰かの特定に走る。結果としてランサーやセイバーと交戦もしたが、それ以上の隠密行動を成し遂げた。

マスターとサーヴァントは魔力的に繋がっている部分があるため、住持のサーヴァントである服部半蔵正成は、彼の中にある形のない悪意の存在は察している。何かをするとして、それはきっと大きな破壊であろうことも。──まあ、そこは彼の気にするところではない。服部半蔵正成にとって、個人的な善悪の判断よりも、仕える主の判断の方が優先度の高い事柄である。忍である現在は特にそうだ。何かをやろうとしているのなら、支えよう。その考えは本能であり、また親切心でもあった。

 

◯適正クラス

 

ランサー

……最適性クラス。服部半蔵正成は鬼槍、鬼半蔵と評されるほどに槍術に優れ、度々一番槍の功名を上げたことで知られる武将である。卓越した戦闘技術を活かすためにはランサークラスが最適であり、逆にそれ以外のクラスでは槍の冴えは陰る。

ランサークラスで召喚された服部半蔵正成は血気盛んな武者としての側面が強く、また聖杯獲得への意欲が高くなる。

今作においてはアサシンクラスで召喚され情報収集に徹した服部半蔵正成だが、もしランサークラスで召喚されていた場合は本気で聖杯確保に乗り出し、それならそれで聖杯確保をしてやろうと思い立った住持諸共に戦略的な攻勢に出た可能性がある。

 

アサシン

……伊賀忍者を指揮した実績、また忍者服部半蔵のイメージから、アサシンクラスの適性を獲得している。こちらのクラスで召喚されることの方が多いが、元来忍者ではなく武将である服部半蔵正成にとってはアサシンクラスは槍を鈍らせる枷でもある。

アサシンクラスで召喚された場合、性格が若干ダウナー気味になる。これは忍者のパブリックイメージにつられて寡黙になっている側面もあるが、シンプルに萎えてもいる。仕事はきっちりこなす。

 

◯因縁キャラ

 

アトラス

……万博聖杯戦争において、実は召喚されていた神霊サーヴァント。佐藤住持は服部半蔵正成が集めた情報から、アトラスが召喚されている可能性を見出した。住持は服部半蔵正成が現界しているタイミングではアトラスの存在を確信するには至らなかったものの、彼の退去後も調査を続ける。神戸沖埋立処分場にアトラスを見つけた直後に、住持が即座にマスター権を奪えたのも、服部半蔵正成による諜報の成果であった。

 

太陽の塔

……服部半蔵正成を倒したサーヴァントの1騎。宝具を用いて襲撃した際には、宝具『太陽の塔・黒い太陽(たいようのとう くろいたいよう)』で反撃を食らい悶え苦しんだ。服部半蔵正成はこの宝具によって戦国時代以前に起こった戦乱、飢饉、疫病などの民族の記憶を流し込まれ──かつ、同時行動していた十数人の伊賀衆全員分の苦痛をフィードバックされている。翌朝は非常にグロッキーであった。

 

徳川家康

……「殿。まさかその苦無(クナイ)、私のものですか? 殿まで私のことを忍者だと?」

 

Comment from Author

……日本が召喚するサーヴァントをどうするか、かなり悩みました。というのも、候補が全然ない。日本館も関西パビリオンも、江戸時代以前の偉人について、ビックリするほど扱っていない。でも読者の皆さんにとってもある程度の知名度が見込める日本鯖ですから、作品のフックとして有名どころを使いたい……しかも作中では聖杯戦争参戦が確約されているホスト国という立場上、ある程度勝つ気がありそうなサーヴァント選定をする必要もある……本当に候補がなかった中、伊賀忍者の手裏剣から服部半蔵を引っ張ってきたのはかなり無茶をしました。でも序盤の壁として説得力のあるサーヴァントに出来たと思います。

あと作中の天魔覆滅のセリフは東映時代劇の引用。カッコいいんだあれ。

 

 

サーヴァント・ガンダム

 

クラス:ガンダム

真名:RX-78F00/E

性別:ガンダム

出展:GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION

地域:大阪府大阪市

属性:中立・善

身長:18m

体重:25t

触媒:(ガンダム像)

 

機動聖杯ガンダム。錬はサーヴァントと言い張っているが、内実はゴーレムが近い。

 

 

【挿絵表示】

 

 

筋力:A

耐久:B

敏捷:A

魔力:C

幸運:B

宝具:EX

知名度補正:A

 

クラススキル

 

騎乗:EX

……霊基獲得にあたり生じたクラススキル。騎乗スキルは本来乗り物を乗りこなす能力に関するスキルだが、サーヴァント・ガンダムは騎乗される側のモビルスーツであるため騎乗ランクは測定不能、EXとなる。

 

領域外の駆体:EX

……霊基獲得にあたり生じたクラススキル。本来は外宇宙より地球へ来るもの、あるいは地球より宇宙へ歩み出るものの持つスキルである。GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONにおいては、宇宙で生まれて宇宙で壊れ、宇宙で目覚めたRX-78F00/E。その力を聖杯の力で導入したガンダム像もまた、宇宙由来の者であると認定され、例外的にこのスキルを獲得した。

 

保有スキル

 

太陽光発電:EX

……GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION内の設定において、RX-78F00/Eの背負うグラスフェザーはソーラーパネルの機能を持つ。サーヴァント・ガンダムは聖杯炉心によってこの機能を再現しており、太陽光線をエネルギーに変換可能。ただし今作においては夜戦しか行われず、このスキルの使用機会はなかった。

 

サイコフレーム(偽):EX

……GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION内の設定において、RX-78F00/Eには脳波増幅装置サイコミュを無数に鋳込んだ構造材サイコフレームが一部搭載されている。詳細な説明は省くが、サイコフレームはパイロットの意思をモビルスーツに反映する機能を持っており、作品『機動戦士ガンダム』中においては奇跡に近しい現象まで引き起こしている。

だが今作におけるサーヴァント・ガンダムのサイコフレームは『パイロットの意思を行動に反映する機能』を聖杯炉心によって再現したものに過ぎないため、このスキルによって奇跡を起こすことは不可能である。

もちろんこのスキルに拠らずに、パイロットとガンダムの意地によって奇跡を起こすことは、可能である。

 

宇宙の武練(AI):-

……ひとつの時代において無双を誇るまでに到達した武芸の手練。GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION内の設定において、RX-78F00/Eには、宇宙にて無双を誇ったガンダムのパイロット、アムロ・レイのデータを学習したAIが搭載されている。ただし今作においてガンダム像から作られたサーヴァント・ガンダムには、このAIを再現することは叶わなかった。

 

宝具

 

ガンダム跳躍再帰性輝煌群(未来へ繋ぐグラスフェザー)

ランク:EX

種別:対衆光輝

レンジ:99

最大捕捉:22機

「令呪装填ッ!! 真名建造、疑似宝具展開ッ!! 『ガンダム跳躍再帰性輝煌群(未来へ繋ぐグラスフェザー)』!! コイツを食らって、堕ちろアトラス!!」

……グラスフェザーの各ユニットによる超火力のビーム照射。全方位から対象を焼き切るべく光線を浴びせる。正式なサーヴァントではないため、この技もあくまで疑似宝具、宝具らしく象った攻撃に過ぎない。しかしその光は間違いなく、万博を救うために不可欠であった。

 

人物

一人称:-

二人称:-

三人称:-

 

◯性格・動機

……あくまで聖杯を組み込んだガンダム像であるため、人格は持ち合わせていない──筈だった。しかし錬を載せて交戦を行うことで彼越しにGUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONのガンダムの姿を学習し、万博を守る意思を宿す。ガンダムはアトラスとの交戦によって崩壊するその瞬間まで、己の光を絶やさなかった。

 

◯史実の実像・人物像

……人類の生活圏が宇宙へ拡大した時代。宇宙を生活拠点とする『スペースノイド』と地球に生活する『アースノイド』との間で戦争が勃発し、その戦争には巨大人型機動兵器『モビルスーツ』が導入された。そして戦争が終結した後の復興の時代にて、モビルスーツを平和利用するための組織『ガンダム・オープン・イノベーション・コンソーシアム(GOIC)』が発足する。

紆余曲折の末、GOICを通じてモビルスーツを二度と大量破壊兵器にしないと宣言する『スペースノイド・アースノイド共同宣言』が発表される。モビルスーツは兵器ではなく、社会に貢献するツールとして用いられるべきだ。その信念を元に、モビルスーツによる宇宙開発が進められる世界。それが、GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONの舞台である。

この世界におけるガンダムは、アースノイドとスペースノイド間の戦争にて猛威を振るった後、『ガンダムファクトリーヨコハマ(GFY)』にて調査復元が行われていた機体と同一の物体である。現在では大阪・夢洲ターミナルから軌道エレベーターにて巨大宇宙ステーション・スタージャブローに移設。社会貢献の象徴として、密かに研究が進められていた。

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……サーヴァント・ガンダムという名称は、GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONの監督役である錬がガンダム像を機動聖杯ガンダムとして運用する際に命名したものであり、ガンダム像が実際にサーヴァントになったというわけではない。基本的にはパイロットとして乗り込んだ錬の操縦の通りに動き、聖杯によって再現したRX-78F00/Eの機能を用いて戦闘を行う。

用いることが可能な武装は、疑似宝具としても利用したグラスフェザーに始まり、頭部バルカン、ビームライフル、ビームサーベル。また作中では利用シーンが描写されなかったものの、ビーム溶接ガン、ビームジャベリン、シールドなども用いることが可能である。

根本的な部分はガンダム像から変わりないために、破壊されれば再生はしないし、聖杯炉心からの供給が途絶えればそれまでの存在。しかしパイロットである錬を取りこぼしてなお、万博を守る存在としての自我を宿し、崩壊の瞬間まで戦い続けた。

ちなみに万博聖杯戦争閉幕から数日間、バンダイナムコはガンダム像(のあった場所を)をメンテナンスと称して隠蔽。昼夜問わず大急ぎで予備パーツを用いた再建作業を行い、翌週にはガンダム像は再びパビリオン前に建ったとか。ただしこちらはコックピットなどが存在しない、本当にただのガンダム像である。

 

◯適正クラス

 

プリテンダー

……今作におけるガンダムは、あくまでガンダム像に改造を施した結果駆動するようになったものであり、英霊の座からサーヴァントとして召喚されたものではない。当然ながら、ガンダムというクラスもない。実際のところ『サーヴァントとして座に登録されたガンダム』が存在する可能性はあるが、それはこのガンダム像とは別の存在である。だが、もし仮に、仮にこのガンダム像がそのまま世界を救う魔術組織などに所属した場合は、『ガンダムパビリオンにおけるガンダムを羽織ったガンダム像』として、プリテンダークラスで登録されることになるだろう。

 

◯因縁キャラ

 

アトラス

……万博防衛のために交戦した神霊サーヴァント。聖杯炉心を搭載したサーヴァント・ガンダムを以てして、打倒するには至らなかった。今作のサーヴァント・ガンダムには万博防衛のうっすらとした意思しかないが、それでもアトラスのことは認識している。次こそは勝つ。

 

スンダラムルティ・スワミ

……ビームサーベルを貸した相手。セイバークラスのスンダラムルティ自身が『もたらされた光の剣を振るう』存在であったために、光の剣といえば光の剣といえるビームサーベルもスンダラムルティとは好相性だった。

 

MSN-X17 ジオング タイプMA

……GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONでの劇中において交戦したモビルアーマー。ガンダム像のような実体を持っていない存在であるため、サーヴァント・ガンダムと交戦する事態は起こり得ない。

だがしかし、もし仮に、交戦することがあるとすれば。その日がサーヴァント・ガンダムにとって、『決戦の日』であることは言うまでもない。

 

Comment from Author

……個人の意見ですが、大阪・関西万博を象徴するモニュメントはガンダム像だと思っています。もちろん大屋根リングも好きです。大きくて綺麗でシンボリックです。東と西と西の果てのミャクミャク像も可愛いです。しかし太陽の塔の後継が何か、と考えた時には、それはガンダム像なんじゃないかと思っています。

だから動かしました。

ガンダム像は動くべきです。

次に登録博をやる時には、ガシガシ動くガンダムが開発されていて欲しい。純粋な願いです。

 

 

イタリア館 逸れのバーサーカー

 

クラス:バーサーカー

真名:アトラス

性別:男性

出展:ギリシャ神話

地域:ギリシャ

属性:混沌・中庸

身長:25m

体重:(測定不能)

触媒:ファルネーゼのアトラス

 

神霊アトラスの内、『芸術のモチーフとしてのアトラス』のみを薄く切り出してようやく顕現できたサーヴァント。

 

 

【挿絵表示】

 

 

筋力:A+

耐久:A++

敏捷:E-

魔力:B

幸運:E-

宝具:A++

知名度補正:A

 

クラススキル

 

狂化:EX

……バーサーカーのクラススキル。理性と引き換えにステータスを向上させる。今作におけるアトラスは、芸術の対象としての側面を切り出されたサーヴァントであり、そのためかなり自我が薄い。狂化はしっかりとしているが、それは意識を混濁させる方向に向いており、結果としてアトラスの状態は命令の入力を待つロボットが近い。

 

保有スキル

 

巨神外殻:A

……巨神の肉体を構成する強靭な外殻。他者からの攻撃のエネルギーを吸収し、己の魔力へ変換する。吸収限界を上回る攻撃に関しては魔力への変換が追い付かず、ダメージを受けることとなる。また、あくまでこのスキルは外部からの攻撃に対するものであり、内部からの破壊には無力である。

 

芸術審美(抗):E+++

……芸術、美術に関する理解、また執着を示すスキル『芸術審美』が反転したもの。芸術の対象とされることに抗い、その怒りでもって自らの力を増すスキル。

今作において芸術作品のモチーフとされた側面を切り出されたアトラスは、元来より芸術のモチーフにされたこと自体に不満を抱いている。自我自体が薄いので、外から何の入力もされなければ破壊行動に移ることもないのだが、今作では住持によって万博破壊の指示が入力されたため、割と乗り気になって万博破壊を試みた。

 

西の果てのアトラス:EX

……ティタノマキアにて敗北した後に、大神ゼウスによって課された天空を背負う役目。それがサーヴァント化にあたりスキルとなってしまったものがこれである。このスキルの影響により、アトラスは本来想定された場所よりも西側にズレて召喚されることになる。即ち今作においては夢洲の西の果て、神戸沖埋立処分場である。

 

宝具

 

汝、天空を(アクシオシ・アポジミオシス)背負うべし(・カタ・トゥ・ヘラクレス)

ランク:EX

種別:対神宝具

レンジ:99

最大捕捉:空の下

……ギリシャ神話の英雄ヘラクレスが生前に成したとされる12の偉業の1つ、『ヘスペリデスの黄金の林檎』のエピソードにて。アトラスの娘、ヘスペリデスが黄金の林檎のなる木を管理しており、ミュケーナイの王エウリュステウスから依頼を受けたヘラクレスは、その林檎を求めてアトラスの元を訪れた。アトラスはそれを聞き、ヘラクレスにこう持ち掛けた。『林檎を代わりに果樹園から持ってくるから、その間私が背負っている天空を代わりに背負ってほしい』と。ヘラクレスはその持ち掛けに乗り、代わりに天空を背負う。そしてアトラスも約束の通りに、黄金の林檎を持ってヘラクレスの元まで帰還した。が、ここでアトラスは、このままヘラクレスに天空を背負わせておけないかと思いつく。そして提案した。『この林檎をそのままミュケーナイに持っていくからもう少し待っていてくれないか』と。ヘラクレスも、ここでアトラスの企みに気付く。そしてこう返す。『それは構わないが、もっと楽に天空を背負う姿勢を教えてほしい』と。──ヘラクレスの方が上手であった。アトラスはヘラクレスに言われるがままにもう一度天空を背負ってしまい、ヘラクレスは動けなくなったアトラスをそのままに黄金の林檎を持ち去ってしまった。

この逸話から導出されるルール。即ち『天空は重い』『天空は他者に背負わせることが可能である』それらが昇華されたのがこの宝具。つまり、仮想の大質量『天空』を相手の頭上から落とす宝具である。地球上、どこであろうとそこは『空の下』。アトラスは視認した対象の頭上に、天空を落とすことが可能となった。

ただし、アトラス自身ももう二度と空を背負いたくはないので、自らの頭上に天空を落とすことはできない。そこがこの宝具の死角である。

 

人物

一人称:-

二人称:-

三人称:-

 

◯性格・動機

……様々な要因により、アトラスは非常に自我が薄い状態で召喚された。よって性格と呼ぶべきものも成立しておらず、今作においても神戸沖埋立処分場に召喚されてから暫くは、自ら動かずに待機していた。

だが、これは決してアトラスが虚無であるということを意味しない。アトラスにはアトラスなりに、己を極限まで切り詰めてでも召喚に応じた理由があった。はずだ。……その理由まで切り詰めてしまったので、彼のモチベーションが怒りだったのか、喜びだったのかは、最早判別がつかないのだが。

 

◯史実の実像・人物像

……ギリシャ神話に登場する神の一柱。ティターン神族という巨大な神の一族に属する。ティターン神族がゼウス率いるオリュンポスの神々と争った戦い、ティタノマキアにて敗北した後には、ゼウスにより西の果てにて天空を背負わされる苦役を課される。以来、ヘラクレスとの一悶着も含めて、長い年月をかけて天空を背負い続けてきた。

またある神話に曰く、アトラスは怪物メドゥーサの魔眼によって石化しているとされる。メドゥーサを討伐した英雄ペルセウスがアトラスの元を通りがかった際、天空を背負う役目に疲れ果てたアトラスがペルセウスに頼み込み、自らメドゥーサの首を見て石化することを選んだのだ。そうしてアトラスが石化した結果が、アフリカ大陸北西部に位置するアトラス山脈なのだ──そう神話では語られる。

fateシリーズにおいて、神霊として召喚されうるのは死を経験した神である、とする言説があるが。今作は天空を背負う役目から逃れるために石化したこのタイミングで、アトラスは死亡し神霊と化したとする。

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……今作におけるアトラスは、イタリア館のサーヴァントとして召喚が可能なギリギリのサイズまで、神霊の巨大な霊基を切り詰めて召喚されている。具体的には、『芸術作品のモチーフとされたアトラス』の側面を切り取られている。fateシリーズで近い状況を例示するのであれば、過去の凶行を犯した元帥ジル・ド・レェ──彼のその凶行をモチーフとした童話から生み出された別人格(アルターエゴ)、サーヴァント『青髭』が近しいか。

召喚されたアトラスは、元々の所属であるイタリア館の影響を受け、ファルネーゼのアトラスに近しい形態となっている。肌の色、髭の生え具合、凡そ全てがイタリア館に展示されているものに近しい。ある意味では『元祖芸術の巨人』とも言える。また、巨神アトラスの存在が東方地域へ伝わった折には、翼ある姿で彫刻が制作されている。今作のアトラスは芸術作品のモチーフという側面の存在であるため、この縁から実際に翼を生やすことが可能であった。

そんなアトラスだが、霊基を切り詰めての召喚となった影響により、極めて自我が薄い状態である。スキル『西の果てのアトラス』の影響により神戸沖埋立処分場に召喚された際も、自ら目立った行動はせず、しばらくそこに留まっていた(この際念話も試みていたのだが、バーサーカークラスであったためにまともな意思疎通ができず、マスターのレニーは謎の耳鳴りとしか思っていなかった)。行動を起こしたのは、ガンダムによるグラスフェザーの光線をスンダラムルティが空へと反らしたのを見たタイミング。空へ打ち上げられた光線は閃光弾のような役割を果たし、ここでようやくアトラスは、万博会場で聖杯戦争が起こっていることを認識したのである。

その後、レニーの令呪を盗んでアトラスに会いに来た住持と再契約。万博破壊のために会場へと進撃を開始する。薄い自我にも残っていた神への怒り、住持に囁かれたイタリア館の惨状(自らの苦役の様子が晒されているのは、実際アトラスにとっては複雑な気分であった)への怒り、そして住持自体の中にある怒り。それらを抱えて、向かってきたガンダムに相対した。

 

◯適正クラス

 

アヴェンジャー

……最も適性があるのはアヴェンジャー、復讐者のクラスである。これはアトラスがゼウスとの戦いに敗れて苦役を負わされ、苦しみの末に死を選んだ、その生涯を経てのクラス認定である。実際彼は、今でもゼウスのことは嫌いである。

 

バーサーカー

……バーサーカークラスの適性を持っているが、これは神話の時代から狂っていたというよりは、天を背負うのに耐えかねてペルセウスに介錯を依頼した晩年が狂気の内にあったと評価されての判定である。あるいは史上最古の過労自殺と呼べるかもしれない。

 

アルターエゴ

……今作において『芸術のモチーフ』として切り取られたアトラスはアルターエゴ、別人格のクラスの適性がある。通常の万博聖杯戦争において召喚されることのないクラスではあるが、仮に聖杯戦争以外の場面で今作のアトラスが召喚された場合は、アルターエゴクラスの可能性がある。

もちろん、元来の神霊アトラスの霊基で顕現した場合はこのクラスの適性は持たない──不要である。

 

◯因縁キャラ

 

RX-78F00/E

……2025年の芸術の巨人。サーヴァント・ガンダムとして動き出したそれとアトラスは対峙した。撃ち込まれるビームライフルやビームサーベルの攻撃は、神霊アトラスの誇る外殻でもってほぼ受け付けず。疑似宝具の輝きすらも、神霊の防護は貫けなかった。しかしその勢いに対して抵抗することもまた出来なかったので、結果的にはしてやられた形。

 

太陽の塔

……1970年の芸術の巨人。太陽の塔の宝具『地底の太陽・生命の樹(ちていのたいよう いのちのき)』によって、芸術作品の側面を切り出されたアトラスは体内に直接生命の樹を捩じ込まれた。直接体内に捩じ込まれるものに対しては、巨神の誇る外殻も無力であった。

 

ヘラクレス

……ゼウスの息子。彼の成した12の偉業のエピソードの1つ、『ヘスペリデスの黄金の林檎』がアトラスの宝具となっている。ゼウスの息子ではあるが、アトラスのヘラクレスに対する感情は割とニュートラル。嫌っていないから黄金の林檎は約束通り取ってきたし、好いてもいないので天空背負わせたままでいっか、と思い立ってしまった。

 

ゼウス

……絶許。

 

Comment from Author

……ラスボス枠。大阪・関西万博をテーマにするにあたり、やはりクライマックスにはアトラスに出張ってもらうべきだろう、それはごく初期段階で決めていました。

今作は構成として『アサシン編』『キャスター編』『アーチャー編』『ガンダムvsアトラス編』の4分割でストーリーを区切っています。西の果てから迫りくるアトラス、そこに挑むガンダムとサーヴァント達──執筆時間の都合上、このシーンに時間を割ききれなかったことが惜しい。

また神霊アトラスは、fateシリーズで存在が明言されているサーヴァントでもあります。まだほぼfateシリーズ内では描写がされていなかったので(2025年10月現在)、今作では強引に設定を弄り回して大阪湾まで来てもらいました。ボロが出ていないかが怖いところですが、そこまでしてでも来ていただきたかった。

それだけ素晴らしい展示だったのです、イタリア館は。天空のアトラス展、私はファルネーゼのアトラスへ御礼を申し上げるため、きっちりと予約しています。既に展覧会のチケットは完売と聞いていますが、もし手に入れられた人がいましたら、是非楽しんでください。

 

 

バーサーカーのマスター

 

名前:基田狼我(もとだろうが)

性別:男性

出身:愛知県日進市

属性:混沌・中庸

身長:169cm

体重:63kg

命名由来:

おかもとたろう→もとたろうおか→基田狼我

令呪:太陽の塔 太陽の顔

 

結局大阪・関西万博の閉幕まで国連館で働いていた。終盤には見るも鮮やかな来場客捌きを見せたと職員間で評判に。

 

人物

一人称:俺

二人称:アンタ、テメェ

三人称:あいつ

 

◯性格

……世界を批判的に見つめ、他者の判断に靡かない。怒り、抗い、対話し、決断する、独立して生きる野良犬のような男。

もっぱらやさぐれている。特に今作開始の時点では余裕がなく、苛立ちを抑えきれていない。だが人間『怒っているどころではない事態』に直面すれば冷静になるもので、聖杯戦争に巻き込まれてからはやさぐれはそのままでありつつも冷静さを取り戻している。

ぶっきらぼうな態度ではあるが、人を気遣う能力は欠落していない。彼はそもそも気取らない正義感の持ち主であり、リベラルな立場、グローバリゼーションの肯定を良しとする思想を持っている。だが25年間の人生の中で外国人恐怖症(ゼノフォビア)が楔のように打ち込まれており、狼我はこれを覆い隠して生きてきた。そのため常に後ろめたさも内心に存在しており、それもまたやさぐれに拍車をかけていた。

自らを見つめ直した後にはこれら心理的障壁が解決したため、態度はそのままでありながらも善性、及び万博防衛の使命感が前面に出る。

 

◯動機・サーヴァントへの態度

……基田狼我の根底には、『万博』が存在する。かつて訪れた愛・地球博にて万博という空間を知り、それを信じ──そうではない世界を知り、この世全てへ怒りを向けた。万博のようではない世界に対する、形のない不快感。それが、彼を突き動かす動機である。

ただし彼は無意識に、『万博ではないこの世界全て』へ怒っていては社会生活を送りようがないことを理解していた。そのために怒りの矛先を『万博以外』から『万博』へ転換。故に、今作の起点において、基田狼我のモチベーションは大阪・関西万博への怒りである。かねてより募らせ、しかし抑え込んでいた万博への憎しみが、ふと万博の情報に触れてしまった些細な瞬間に起爆した。その瞬間には彼は万博侵入の計画を立て、たまたま上手く行ってしまった。その結果聖杯戦争に巻き込まれたわけだが、それでも万博への怒りもあって、自ら聖杯戦争へ臨むことを決断した。

だが狼我自身、万博へ怒りを向けながらも、内心ではこの怒り方が正しくないことを理解していた。万博はやはり狼我の無意識にとっては尊重すべきものであり、そのために彼は万博を守ってしまう。そこからサーヴァントとの対話、己の過去との対峙を経て、彼は自らの衝動の正体、形のない不快感の正体を知る。

基田狼我の目的は、『この世界を万博にすること』である。その希望を持ち直したがために、彼の目的は万博の破壊から、万博の守護に反転した。万博を生き、万博を終え、その後でも。彼の衝動は、万博の実現へ走り続ける。

サーヴァント・太陽の塔との関係は、教師と生徒のそれに近い。ボケとツッコミで考えれば太陽の塔がボケ側にあたるが、それもまた『全力で世界を楽しむ様を見せる側』と『世界の楽しみ方を思い出す側』でやはり教師生徒の関係である。マスターを庇護し、教え導く対象として捉えた太陽の塔と、聖杯戦争どころか魔術に関して初心者であった狼我の関係性は丁度良くハマり、また太陽の塔が狼我の過去に躊躇いなく踏み込み衝動の正体を特定できたのも彼らの関係性故であった。

サーヴァント・イェネンガとの関係は上下のない同志そのもの。主従関係を結んだ時間は長くはないが、それ以前からの付き合いがあったこともあり、同じ目的のために迷いなく戦うことができた。

 

◯台詞例

「俺は、万博を壊したい」 

「今も、日本には苦しみがあるはずだ」

「文句言われる筋合いはねえ」 

「……運が良かっただけだ、俺は」

「それは差別だ、偏見だ、過ちだ!! 抱いていいはずがない感情だ!! 俺にそんなものはない!!」

「この地球(ほし)は、万博じゃなかった」

「宝物だったんだよ、黄色のキッコロのキーホルダー」

「俺は、万博を──壊さない」

「終わっちまったな、万博。……あー、まあそうだよな、別にこのまま国連で雇ってくれとは言わねぇよ。……へえ、そんな制度があんのか。外務省のサポート付きで働けるなら──いや、でもこれ大学院卒が必須じゃねえか。俺大学中退してるぞ。……そうだな、まだ間に合うか。俺はまだ26歳だしな。考えとく。……ありがとな」

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……基田狼我、25歳。万博聖杯戦争に巻き込まれたイレギュラー。

彼は万博によって人生を変えられた人間である。やさぐれた態度は取っているが、そもそもは日本語、英語、フランス語に長けるインテリの類い。それがドロップアウトし、フラストレーションを募らせ、爆発したのが今作の起点である。

そもそもは愛知県日進市の生まれ、ごく近くで愛・地球博が開催されていたこともあり、万博に親しむ幼少期を過ごした。教育熱心な母親に連れられて足繁く万博会場へ通い、全パビリオンを制覇している。この経験もあり、彼の価値観の根底には万博の存在が打ち込まれた。

が、彼は成長すると共に、万博の語った理想が叶っていないことを理解してしまった。様々な国際トラブルの情報に過敏に反応し、いつしか外国人恐怖症(ゼノフォビア)も抱え込む。恐怖症発症の具体的な切っ掛けというほどではないが、特に彼の疵となった出来事は、中高生の時分に留学を計画していたところ母親に留学を止めるよう泣きつかれたことであった。

彼は結果として、世界へ出ることを良しとする価値観で育ち、世界へ出るための学びは修めておきながら、しかし世界へ出ることが出来なかった。即ち、『間違いを犯した』人間となった。彼は自らの基準に背いた己への罪悪感すらも抱え込み、蓋をして、己と世界への怒りを全て万博への怒りへ転化する。大学はウィルス蔓延による自粛期間のうちに退学。実家に留まることすら嫌になり、最終的には日本国内を宛もなく放浪し、日雇いの仕事をして糊口を凌ぐ野良犬と化す。

狼我の25年はそうであった。己の根底にある衝動を抑え込み、捻くれ続けて、狼我自身が狼我を罰することを望んでいた。

──万博聖杯戦争の物語は。基田狼我が大阪・関西万博にて、彼が自らの衝動、自らの原点と向き合い、立ち直る物語である。

 

Comment from Author

……今作の主人公。やさぐれインテリ野良犬男。今作のキーワードとして『形のない感情=衝動』を1つのテーマとしています。形のない不快感を当初から抱いていて、物語を通して形ないものの正体を暴く。それが狼我の物語の流れになります。

やはり聖杯戦争ですから、『fateらしさ』のある作品というのも1つの目標でありました。それが何かと考えると、多分『自らの過去/原点への相対、肯定』ではないのかな、と。狼我は主人公として己の原点、即ち万博に向き合い、見据え、考える。万博をテーマにした物語の、主人公らしい存在に出来たと思っています。

 

 

セイバーのマスター

 

名前:サバラガムワ・ウダプッセワラ・キャンディ・ルフナ・ペレイラ

性別:女性

出身:スリランカ

属性:秩序・中庸

身長:162cm

体重:55kg

命名由来:

サバラガムワ、ウダプッセワラ、キャンディ、ルフナ←いずれもコモンズAスリランカブースに展示されていた紅茶の産地

ペレイラ←スリランカ最頻出苗字

令呪:紅茶入りの瓶

 

セイバーには伝えていなかったが、実のところ紅茶よりコーヒー派。

 

人物

一人称:私

二人称:貴方

三人称:彼/彼女

 

◯性格

……クール、シニカル、アイロニカル。一歩引いた視点から物事を認識し、場の雰囲気には呑まれない。積極的に発言をすることは避けているものの、話が自らの領分を害する展開になった際には臆することなく食ってかかる。控えめながらも、魔術使いらしい魔術使い。

しかし他者の不幸を喜ぶ質でもなく、積極的に防衛の魔術などは展開し、共有する。必要な範囲での知識の伝授も行い、共闘を厭わない。合理的な判断のできる人間である。

 

◯動機・サーヴァントへの態度

……雇われの魔術使いであり、公務員的。自らが所属するスリランカ政府の目的達成のため何が最適かを考え、やれるだけはやる。キャンディ自身を害するレベルでなければ非情な判断を取ることもできる。

サーヴァント・スンダラムルティとの関係もビジネスライクであり、スンダラムルティが己の指示に従うつもりがあまりないと看破してからはあくまで波風を立てないことに専念。スンダラムルティが良心溢れる存在だと理解し、彼に適切な指示を出しながらも、それ以上の干渉はしなかった。

 

◯台詞例

「真名に繋がることを言っては、いけないと、何度も、私は」

「私も少し見ただけですが、恐らくは固有結界……いえ、似て非なる大魔術、といったところですか」

「──セイバー!! 令呪を使います、貴方のその暑苦しさで、この氷を溶かしてみせて!!」

「弾除けの魔術を展開します。アーチャーの攻撃まで対処できるかは未知数ですが、無防備よりマシでしょう」

「もれなく私の奢りになります。感謝するように」

「この万博を起点にして、世界が変わっていくからですよ」

「以上が今回の万博聖杯戦争の報告になります。聖杯確保のため最善の努力は致しましたが、力及びませんでした。……とはいえ。ひとまずこちら、聖杯戦争参加にあたって使用した経費の領収書になります。それから有給の申請も。はい。ええ。セイバーにも指摘されたことですし、私も、たまには余暇を楽しもうかと。……労働者の権利というのは、良い言葉ですね。ご理解のほど、何卒よろしくお願いします」

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……サバラガムワ・ウダプッセワラ・キャンディ・ルフナ・ペレイラ。29歳。コモンズA、スリランカブースのマスター。

スリランカ政府に雇われた魔術使いであり、元々は要人の魔術的警護などを行っていた。万博聖杯戦争出場が決まったために来日し、毎日スリランカ政府へレポートを提出しながら聖杯戦争に参戦する。

彼女の願いは南インド地域の紛争解決。これは彼女自身の願いではなく、スリランカ政府からの依頼である。スリランカ政府は願いの成就に積極的であり──実のところキャンディには、聖杯戦争においてスンダラムルティが勝利した場合、スンダラムルティを令呪で自害させて魔力の足しにし、指令をこなすように指示が下っていた。イェネンガとの最終決戦の際に、最後の令呪を使えなかったのもこのため。ただ10日間の聖杯戦争で彼女にもスンダラムルティに対する愛着はそれなりに芽生えており、自害させるのも乗り気ではなかったため、最終決戦のタイミングでは内心でイェネンガが勝たないかなー、とか考えていた。イェネンガが優勝してホッとしている。

スンダラムルティはキャンディのこの心理を見抜いた上で、仕事なら仕方ないと見逃していた模様。

 

Comment from Author

……熱くカラッとしたスンダラムルティのマスターはどういう人物が適任か、と考えた時、それはシニカルなビジネスマンであるべきだろう、とふと思いました。相性は決して良くなく、しかし互いの立場を理解し、適度に上手くやる。それが出来る主従関係です。

万博という国家間のイベントを舞台にするからには、圧倒的にマトモな人が多くなります。万博はある種の外交の場でもありますから、マトモでなければ務まりません。別ベクトルでマトモな人たちが噛み合って、どう動くのか。そこの描写は今作でも力を入れたところです。

 

 

ランサーのマスター

 

名前:アマウタ・キスペ

性別:女性

出身:ペルー

属性:中立・中庸

身長:125cm

体重:24kg

命名由来:

アマウタ←ペルー館にて紹介されていた職人達

キスペ←ペルー最頻出苗字

令呪:キープの結び目

 

なんだかんだで錬の奢り(経費・オフショット撮影付き)で購入した大量の日本土産をペルーまで持ち帰った。

 

人物

一人称:わたし

二人称:あなた

三人称:あのひと

 

◯性格

……純真、幼気、健気。幼いながらも愚かではなく、自他の分別をつけ、自ら聖杯戦争に臨む。戦いに挑むリスクについては彼女なりに承知しており、彼女なりに生命を懸ける心づもりを持っている。決めたことから逃げはしない。

もちろん覚悟とはいえ幼い人間のそれなので、実際のところ痛いのは怖いし多分死ぬのも怖い。だがその上で、自らを犠牲にしてでも誰かを助けられてしまう。幼いが故の躊躇いのなさ、危うさを抱えている。

 

◯動機・サーヴァントへの態度

……聖杯戦争へのモチベーションは、シンプルに家族の救命である。というのも彼女の祖母は難病に伏せっており、救命には大量の費用が必要になるからだ。ペルー政府はアマウタに対して聖杯戦争による可能な限りの純金の獲得を提案、換金した額の半額を無課税で譲渡することを約束した。家族のため、という純粋な願い。シンプルが故に迷いなく、彼女は現金獲得のために戦う。

サーヴァント・シパン王との関係は父娘のそれが近い。アマウタはシパン王を慕い、信頼する。しかし同時にマスターとしてもシパン王を見ており、人形をどう使うか、シパン王をどう使うか、幼いながらに考えてもいた。そして、己をどう使うかも。

 

◯台詞例

「おーさま、こっち」

「ぜんぶこわして、おーさまがかつよ」

「でも、ほしいものがあるの。だからここにいるの」

「おとうさんと、おかあさんと、おばあちゃんと、みんなで、ずっとくらす」

「まけちゃったから、かえるよ」 

「ちゃんと、いきなきゃね」

「ただいま。おとうさん、おかあさん、おばあちゃん。ごめんなさい……わたし、まけちゃった。ごめんなさい、その、わたし、おかね────うん。ただいま、おばあちゃん」

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……アマウタ・キスペ。10歳。ペルー館のマスター。

ペルーに古くから居住した民族の血を濃く引く少女。一応魔術使いの家系でもあったために、この度シパン王のマスターとして招集された。

家族を救うために参戦した彼女は、目的が明確であるが故に手段を選ばない、否、選ぶことができた。錬によるアーチャー討伐の依頼があった際に、彼女は聖杯戦争のルールに反してでも現金を確保するチャートについて思いつき、シパン王と相談。全て合意の上で、アメリカ館攻略に動き出したのである。

そして、幼い彼女に可能な全てを出し尽くして、彼女は敗北した。聡明なアマウタは、負けを認めることが出来た。家に帰ることが出来た。聖杯戦争の経験を持ち帰った。

王命はまだ胸の中。自らの生命の使いどきを、彼女は探す。

 

Comment from Author

……聖杯戦争お馴染みの子供枠。とはいえ子供であることを前提に作ったキャラクターではなく、錬の提案に乗り、シパン王が助けるに値し、無事に家に帰るべき人間であるといった条件から彫り出して作った存在。

とはいえコブクロだって、子供たちが変えていくこの星の続きを、と歌っているわけですから。やはり子供枠、入れられてよかった。

 

 

ライダーのマスター

 

名前:ベンドレ・ウェドラオゴ

性別:男性

出身:ブルキナファソ

属性:中立・中庸

身長:188cm

体重:95kg

命名由来:

ベンドレ←コモンズDブルキナファソブースに展示されていた打楽器

ウェドラオゴ←ブルキナファソ最頻出苗字

令呪:国民的英雄の記念碑

 

かなりガタイが良い人物。狼我は(絶対にそんなことを思ってはいけないと自己暗示しながら)時折反射的にビビっていた。

 

人物

一人称:オレ(俺)

二人称:オマエ(お前/貴方)/◯◯

三人称:アイツ(彼/彼女)

 

◯性格

……寡黙、無骨、慎重派。準備はしっかりするタイプ。今作においてもまず行ったことは同盟の構築であり、基本的に自ら戦闘に赴こうとはしない。イェネンガが戦闘を行う際でも可能な限り安全な場所に陣取り、隠れて様子を伺っている。

だが、彼には1つ『地雷』がある。子供を危険に晒すことである。これに直面した時のみ、彼は子供の救命を最優先に動き始める。

 

◯動機・サーヴァントへの態度

……ベンドレ・ウェドラオゴは1児の親であった。妻がいて、1人娘がいた。過去形なのは、どちらも既に喪っているからである。

ベンドレは万博聖杯戦争参加にあたって、ブルキナファソの平和と発展を聖杯に願うよう、ブルキナファソ政府から指令を受けている。彼自身それは承知していて、召喚したイェネンガにも目的はそうだと共有していた。だが、ブルキナファソのための聖杯戦争を続けながらも、常に脳裏には娘の存在があった。

聖杯を使えば、喪った娘を取り戻せるかもしれない。常にその考えは頭にあった。娘を取り戻して、日本のどこかに逃げ込んで、ひっそりと暮らす。それももしかしたら可能かもしれない。彼はそうしたいと思っていて、その思いはイェネンガを見る度に強くなった。そしてスンダラムルティに願いを見抜かれて、ベンドレは己の願いが既にこちらにシフトしていると理解する。彼の願いはブルキナファソではなく、たった1人の娘に向いていた。

サーヴァント・イェネンガとの関係性も父娘のそれが近い。ベンドレは召喚当初からイェネンガの姿に、あり得たかもしれない娘の未来を投影していた。戦力として優秀であることは理解し、サーヴァントという非人間であることも理解し、その上で父親の気分になってしまった。サーヴァントを送り出してマスターが死へ臨む主客反転も、こののめり込みが故に辿り着いてしまった必然である。

 

◯台詞例

「……ここで戦うのは、本意じゃない。そうだな……穏便に、だ」

「……同盟だろう、オレ達は。オマエに同行する」

「危ないことは……してはいけない……!!」

「いいや、もしオマエでは、ないとしてもだ。国も、王も、軍も、親も。……子どもを、使うな」

「危険な望みの排除が、目的のはずだろう。それ以上は……過干渉だ」

「すぐに……イギリス館に、来てくれ」

「考察は、後でだ……接敵するぞ!!」 

「オレは……いい。そこに、4人は乗らないだろ。馬がかわいそうだ」

「ここも、久し振りだな。…………今日は謝りに来たんだ。父さん、勝てなかった。悪かったな。勝てれば…………違うな。俺はもう少し、こっちで頑張ることにしたよ。お前が生きたかったこの世界を、もっと良いものに出来るように、もう少しだけ、努力する。…………それだけだ。じゃあ、また、いつかな」

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……ベンドレ・ウェドラオゴ。49歳。コモンズD、ブルキナファソブースのマスター。

元はブルキナファソ政府の職員の1人である。たまたま魔術を扱う素養があったことが解り、かつ日々の働きが優秀であったために、ブルキナファソ政府から万博聖杯戦争への参加を命じられた。そのため狼我程ではないが、魔術に関しては素人である。また、作中においては専らカタコト交じりの喋りをしているが、これも彼が急ごしらえの日本語を使用しているためである。母国語のフランス語、及びモアレ語であればすらすらと話せる。実のところフランス語も学習している狼我とはフランス語での会話も出来るのだが、それに気付くのは聖杯戦争後のお話。

数年前、とある銃撃事件によって妻と娘を亡くしている。2人は偶然事件に巻き込まれて、運悪く死亡した。ベンドレはそれを理解し、飲み込み、生活を続けていたが、しかし立ち直れてはいなかった。常に喪ったものの存在が頭の中にあり、己が父親であったこと、子供がいたことを忘れたことはなかった。そして実のところ、『いつ死んでもいい』という考え、うっすらとした希死念慮が常に胸の底にあった。

聖杯戦争の中にあっても尚、その希死念慮は晴れなかった。基本的には慎重な立ち回りを行い、ブルキナファソのため、万博のために戦っていながらも、ふと大阪湾の上で、自分が死ぬ理由を見つけてしまう。見つけてしまって、それを選べてしまった。

だが。実際に海に沈み、イェネンガとのパスが途絶するほどに死に近づき──その状態を経ながら、ベンドレは奇跡的に生還した。狼我は聖杯による奇跡でベンドレの引き上げまでは実現したが、そこから先は関与していない。(もしベンドレが完全に死亡していた場合、蘇生することは狼我には出来なかった。死者の蘇生は、完全な聖杯を以てしてどうにか叶うかどうかの奇跡である)ベンドレは己自身の回復力によって、自らの一命を取り留めたのである。

死に憧れ、死を受け入れたはずのベンドレが、何故そこまで命に執着できたのか。それは最早ベンドレ自身も覚えていない。単に死に際に死ぬことを恐れたのか、あるいは走馬灯か何かで、大切な誰かと会話でもしたのか。大阪湾の底で何かがあったはずなのだが、記憶は海底に忘れてきてしまった。

それでも、ベンドレ・ウェドラオゴは生きている。まだ生きようと、そう思えた。

 

Comment from Author

……今作を書く切っ掛けになったサーヴァントはイェネンガでしたが、イェネンガの次に設定が固まったのはベンドレでした。父親を捨てた娘であるイェネンガに対応するマスターとして、娘を喪った父親のキャラクターを据える。そして娘を見送る父親として、最終的に海に沈む。この関係性がパッと頭に浮かんで、そこを起点にプロットを作り始めました。理性的で、頼りがいがあって、しかしどこかに儚さを抱えた大人。そういうイメージで描写しています。

しかし同時に、この作品は万博聖杯戦争。『万博』を扱う以上、戦死者は決して出せません。生命は脈々と、繋がるべくして繋がるもの。誰もが生きて、未来へ繋ぐ。そういう作品を目指しています。

 

 

キャスターのマスター

 

名前:クラルサッハ・マーフィー

性別:男性

出身:イギリス

属性:秩序・善

身長:183cm

体重:80kg

命名由来:

クラルサッハ←アイルランド館に展示されていたハープの別称

マーフィー←アイルランド最頻出苗字

令呪:弦の張られたハープ

 

キャスターのトラップを仕掛ける店は食べ歩きをしながら自力で探した。

 

人物

一人称:私

二人称:お前

三人称:あいつ

 

◯性格

……横暴、傲慢、直情家。自らの目的達成のために全てを犠牲にする心づもりがあり、そのためには自らのサーヴァントすら捨て石にする。しかし同時に彼自身も己の家系の悲願のための捨て石であり、悲願根源到達のためには己すらもやはり擲つ勢いのある魔術師。

 

◯動機・サーヴァントへの態度

……クラルサッハの──否、マーフィー一族の目的は、根源へ至ることである。根源とは魔術世界における用語であり、全てのはじまりにして全ての終わり、並行世界まで含んだこの世全ての情報が存在する宇宙の真理。クラルサッハの一族はこの根源を目指す魔術師の家系であり、代々根源を目指しては及ばず、次世代へ目標を引き継いできた。クラルサッハ・マーフィーの人生の目的も根源を目指すことであり、それ以外ではありはしない。万博聖杯戦争も、その目的達成のための手段に過ぎなかった。

聖杯戦争を用いて根源への到達を目指す場合、7騎全てのサーヴァントを聖杯に蓄積し、それを一気に解放することで根源への穴を制作、固定し、それを通って根源へと至るルートを辿ることになる。7騎全て、であるため、自ら召喚したサーヴァントも当然聖杯へ焚べることになる。よってクラルサッハはサーヴァント・小泉八雲との交流は行わなかった。燃料との対話は不要である。ただ使い、使い、使い潰すのみ。

 

◯台詞例

「我慢ならない、アホ面並べて何をぐだぐだ話してる!! 聖杯戦争はっ!! こんなものじゃあない!!」

「キャスター!! 令呪をくれてやる!!」

「ミャクミャクは聖杯だった、それを使って、使いこなして、完璧に不意打ちだってした!! 何故勝てない!!」

「ヒトのフリをやめろ。分別を捨てろ。目に付く魂、全部食え」

「次の万博は? ……サウジアラビアのリヤドか。どこの国に潜り込むか、また考えないとな」

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……クラルサッハ・マーフィー。33歳。アイルランド館に雇われた魔術使い──というのは仮の姿。魔術協会における3大部門が一角、世界の神秘を解き明かす巨大学府、時計塔。クラルサッハはその時計塔の中の12の学部の内の第3学部、降霊科(ユリフィス)に所属する魔術師である。とはいえ彼は立場も末席、魔術の腕も時計塔基準では2流のそれと、全くはかばかしくない状況。だからこそ、一発逆転を掛けて万博聖杯戦争へ乗り出した。

実のところ万博聖杯戦争によって製造される聖杯は、本来の聖杯戦争で製造されるそれよりも起こせる奇跡の格が低いと魔術師間では目されており、時計塔のおよその魔術師は然程興味を示していない。だが召喚術に関する研究を行なっている降霊科では『サーヴァントを召喚できる事象』自体が研究対象であり、また万博聖杯戦争では根源に至れないと確定したわけでもない。そのため比較的注目度が高く、万博聖杯戦争攻略のための非公式のチームが組織されている。

もちろん、根源到達を目的とする魔術師を雇い入れて勝利したところで、参加国政府はそのメリットを享受することはない。そのため参加国が万博聖杯戦争用に外部から魔術使いを招聘する場合、時計塔の魔術師はふるい落とすよう審査している。が、降霊科側もチームを組んで立場を偽装。2015年のミラノ万博や2021年のドバイ万博にも降霊科の人間が魔術使いとして潜入し──今のところ全戦全敗である。負けの原因はおおよそ勝ちの急ぎすぎ。そもそも万博聖杯戦争に乗り出す性急な連中なので、ワンチャン見えたら全ツッパする悪癖は如何ともしがたい。かくして時計塔は今回も聖杯を取り逃し──次の標的は2030年、リヤド万博である。

また、まんまとクラルサッハにしてやられたアイルランド館だが、召喚用に2種類の触媒を用意していた。1つは小泉八雲のハードカバー本。もう1つはアイルランド古来の神々、ダーナ神族をテーマとした映像作品である。今作においてはキャスター・小泉八雲が召喚されたが、もし服部半蔵正成がランサーで召喚されていた場合、玉突き的にシパン王がキャスタークラスでの召喚となり、キャスタークラスが空席でないために小泉八雲は召喚失敗。代わりに何らかの形を取って、ダーナ神族のうちアサシンクラスの適性を持つ神霊、例えば豊穣神ダグザ、銀の腕(アガートラム)持つ戦神ヌアザ、英雄クー・フーリンの父でもある太陽神ルーなどが降臨していた可能性もゼロではない。

 

Comment from Author

……仮にもfateの世界観に間借りした作品なので、やっぱり1枠は欲しいと思ったんですよね、時計塔の人。設定説明を真面目にやりだすとドツボに嵌るのは目に見えていたので、最低限に留めましたが。細かく設定だけは練っていました。……型月用語を掘り下げるのは、うっかり間違った解釈とかしてしまっていそうで恐ろしい。とはいえ間違ったままで放置するのも問題ですから、もし間違いとかあればこっそり教えてください。修正可能であれば直します……

 

 

アサシンのマスター/バーサーカーのマスター

 

名前:佐藤住持(さとうじゅうじ)

性別:男性

出身:三重県

属性:混沌・悪

身長:172cm

体重:63kg

命名由来:

佐藤←日本最頻出苗字

住持←関西パビリオン三重県ブースに展示されていた十字手裏剣より

令呪:十字手裏剣/コロッセオ

 

三重県庁にはきっちりと辞表を提出済み。ただし引き継ぎ諸々を1日で済ませて消えていったために評判は最悪。

 

人物

一人称:僕

二人称:君/あんた

三人称:あいつ

 

◯性格

……狡猾、陰気、冷笑的。人の成功を腐したくなるタイプ。その癖己の悪質さに無自覚である。(あるいは気づいた上で気づかなかったことにしている)今作はそもそも内面の悪意が原動力であること、また相手を萎縮させることが戦術・戦略的に有利であると判断したために、悪辣さは2割増し。

だが取り繕う能力は備わっており、軽く付き合っている分には特に印象に残らない普通の人間のように見える。伊達に社会人はやっていない。

 

◯動機・サーヴァントへの態度

……佐藤住持の直近の目的は、万博を破壊することである。服部半蔵正成をアサシンクラスで召喚するまでは真面目に聖杯戦争に勝利して、得た聖杯で万博を壊す方向性も検討していたが、アサシンクラスでは勝ち目がないと見て方針を転換。勝ちうるサーヴァントの引き入れを試み、最終的にはアトラスを用いての直接の万博破壊に乗り出した。万博を壊すことが目的であるため、最早聖杯は必要としていない。

サーヴァント・服部半蔵正成との関係は簡潔なもの。使う側と使われる側、シンプルな主従。しかし住持の課すタスクを服部半蔵正成はきっちりとこなし、ある種円満に契約を終了した。

サーヴァント・アトラスとの関係は操縦者と重機のそれ。指示を出す出されるの関係程度。

 

◯台詞例

「ええにええに、取って食おうって訳とちゃうんや」

「怖いやろう、伝わるに……そう、聖杯戦争は怖いんや」

「答えが見つかったで、ここに来たんやろう?」

「決まっとるやろう、県庁に報告や」 

「別に惜しゅうはあらへん、あんなとこ!!」

「別に僕は、最初から日本の発展はどうでもよかった。というか気に食わんよな、万博なんて勝手に決めて」

「うるさいな。あんたに話しても判らんやろうよ」

「ああ、うざこい!! バーサーカー、こいつを潰せ!!」

「あーあーあ。バーサーカー、死んでしもたなあ。まあ僕のアトラスも死んだんやけど。惜しいなあ、あんたの指示がもっと良かったら死なんで済んだかもしれんのに…………うわ、無視か。いや、聞こえとらんの? おーい? …………つまらんな。ああ、ほんまにつまらんだ!!」

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……佐藤住持、28歳。関西パビリオンのマスター。そしてイタリア館のマスター、レニー・ロッシのマスター権を強奪し、後にバーサーカー・アトラスのマスターとなる。

生まれも育ちも三重県、コテコテの三重弁の使い手。

元は三重県庁に勤務する魔術使い。契約の破棄を専門とする魔術師の末裔であり、表向きは三重県庁の法務関連部署のデスクワーク、裏では古い呪術的契約が見つかる度にそれを解除する仕事を行っていた。

が、佐藤住持はその役割に飽いていた。パッとしない己の人生、面白くない己の人生。ままならない人生へのフラストレーションを、彼は周囲へと転換する。上手く行かないのは職場のせい、県のせい、国のせい──実際、世界は全て何かしらの形で接続しているので、あげつらおうと思うのであれば、貶す理由は見つけられる。世界を嫌う理由を見つけて、嫌いになりたくて嫌いになる。即ち、形のない悪意。そういう嗜好に陥っていた。

そんな中で、たまたま住持に転がってきたマスターの打診。彼は己の中の衝動、形のない悪意を満たすため万博聖杯戦争へ参戦し、サーヴァントを召喚する。

 

Comment from Author

……万博をテーマにした作品を書くにあたり、私は幾つかの縛りを設けました。『特定の国/組織に悪印象を持たせない』『特定の個人/集団へ悪印象を持たせない』『万博へ悪印象を持たせない』しかし物語を締めるには、作品を総括する相手役が不可欠。それを担うのは誰かと考えると、『日本人の悪感情』になるのかな、と。

現代は、何をするにもケチがつく時代になりました。万博に関しても、開幕前から閉幕後の今の今まで、ずっとどこかでケチがついています。勿論、法的トラブルは解決すべきです。しかし、報道されるトラブルの規模に対して、埒外からのケチがあまりに多すぎる。害意が先立ち、理由は後から見つけ出す。形のない悪意です。それを象徴する存在として、住持をデザインしました。彼は決して、完全に的外れな存在ではありません。しかしやりすぎであり、悪意が先立ち、ナンセンスです。

彼はどこにでもいます。万博の前にいましたし、横浜花博にも現れます。これから行われるあらゆる試みの前に現れます。それを承知の上で、我々は我々の目で、何を楽しむのか決めるべきです。大阪・関西万博で日本人が得た教訓があるとすれば、きっとそういうことだと、私は思います。

 

 

国連館の監督役

 

名前:照野美琴(てるのみこと)

性別:女性

出身:大阪府

属性:秩序・善

身長:166cm

体重:57kg

命名由来:

いのちのかがやき→(みこと)(てる)き→照野美琴

令呪:国連館のガチャガチャのシルエット=円

 

コテコテの関西弁。クン付けする相手のことは若干ナメている。

 

人物

一人称:ウチ

二人称:ジブン/◯◯クン

三人称:アイツ

 

◯性格

……自立、律儀、意気軒昂。世界のために何が必要になるかを考えて動き、同時に目の前の仁義も重んじる正義ある人間。ただ多少早とちりする欠点もあり、大事なところで確認が不足していて後で痛い目を見ることもしばしば。

また、自分の中に何をすることが正義か、と基準がはっきりと存在しているため、そこから漏れた存在、即ち(美琴視点で)不正義の存在に対しては配慮が抜け落ちる悪癖もある。狼我に対しても、出会いの起点が不法侵入だったこともあり割とナメている。

とはいえ根本的には正義の人。真面目で芯が強い精神が根っこにあると気付けた人は、彼女のファンになる。

 

◯動機・サーヴァントへの態度

……彼女の願いは、より良い世界。そこへ向けて世界が進むこと。

もちろん、個人的な欲望が無いわけではない。彼女は粉ものと甘い物とコーヒーが好きで、本来休日は昼まで寝たい。街中をふらつくのが好きで、人と話すことが好き。そういう明るい小市民らしさも、彼女は当然持っている。だがそれと並立して、ごく自然に世界平和を願っている。そのために己が出来ることを探し、世界をより良くする試みに取り組んでいる。素朴にして理想的な善性があり、それが行動の動機である。

だが実現の手段はちょっとばかり乱暴で、配慮が抜けることもある。それがために周囲との軋轢も発生したりと、隙は多い。

 

◯台詞例

「聞ぃたんは、なんでここに来たんか、ちゅうことや。なんでや?」

『事務局より連絡。全来場客の退去、及び一般スタッフの退去が完了しました。本日の夜明け予定は4時45分、聖杯戦争を開始してください』 

「この聖杯戦争は、世界のために使うべきやねん」

「当たり前やん、ウチはこれを待ってたんや!! ほんまおおきに、狼我クンはデキる子や」

「ここが天下の台所!! 大阪なんばの道頓堀や!!」

「ジブンの身元を抑えているのはウチらや。忘れた訳やないやろ?」

「ジブンらの望みよりも、世界のためになる!!」

「まあそないに言うたら止めはせぇへんが……」

「あーあ、狼我クンも帰ってもたか。ウチはこれからどないしょうなあ。まあ既に辞令は出とるんやけど……次の出張先は……ナウル共和国やっ!?!?」  

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……照野美琴、27歳。国連機関職員にして国連館の監督役。元々は方々の機関を渡り歩いていたのだが、この度地元の大阪で万博が開催されるために監督役に抜擢された。

生まれも育ちも大阪である。(地元のイベントなので意識して喋っている側面もあるが)コテコテの関西弁を使い、飲み会とあらば道頓堀に連れ出し、自分のことをツッコミ役だと自認している。また根本的に世話焼き/お節介な気質がある。他人に対してお姉ちゃんぶりたいし、何か悪いところがあれば教えてあげたい。その延長線上で、国連という道を志したとも言える。万博聖杯戦争における国連館の最終目的、『最も世界に有益な願いを選別、採用する』行為も、美琴自身正しいと思っていた。

そして今作においては、残念ながらこのお節介気質が空回りした。聖杯問答では諭しすぎ/文句の付けすぎで周囲の不興を買い、アーチャー戦では狼我らともアーチャーとも対立した。最終的には聖杯自体がほぼ失効同然の状態になってしまったため、割と散々な実績だ。

しかし決して彼女は悪人ではない。『どう善意を伝えるか』は課題であるが、そこさえ直れば、より上手く生きられる善人である。

 

Comment from Author

……今作のヒロインになり損ねた人物。それぞれのキャラクターのポジションやスタンスを検討した際に、どうしても狼我らと対立しちゃうなと気づいたので、アーチャー編で辻褄を合わせた形。万博があと1年やってれば、もっとゆっくり納得いく形に整形できた。もう1年万博やりませんか?

ところで私は東京都民です。大阪弁わかんない。彼女の発言は毎回大阪弁変換ツールを通していましたが(三重弁も同様)……果たしてこれで合ぉとったんでっか? ウチにはネイティブの視点はわかれへん、大阪弁ネイティブの方、間違いがあればこっそり教えたってや……

 

 

GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONの監督役

 

名前:井室錬(いむろれん)

性別:男性

出身:神奈川県

属性:中立・善

身長:180cm

体重:65kg

命名由来:

アムロ・レイ→井室錬

令呪:GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONのモチーフとなっている八角形。

 

実はガンダムにはそこまで詳しくない。初代と逆シャア、あとジークアクスは見た。

 

人物

一人称:俺

二人称:君/◯◯くん/◯◯さん

三人称:彼/彼女

 

◯性格

……豪胆、夢想家、大胆不敵。策謀を巡らせ人を焚き付け、己の目標へ局面を動かす。人を騙すというよりは、取引の結果として他者を操る人間。周囲の人間もあからさまに錬のことを訝しんでいるのだが、しかし提示されるメリットも確たるものであるために突っぱねるわけにもいかない。疑われながらも信用される話術士。

そして同時に極度の夢想家。己の中に一度定めた目標は、それがどれだけ馬鹿馬鹿しくとも決して曲げない。むしろ馬鹿馬鹿しいものほど実現に向けて燃える質。その熱意がために、利用された他者も不思議と彼を許してしまう。

 

◯動機・サーヴァントへの態度

……錬の目的はシンプルである。『動くガンダムを作って世界を救おう』それだけだ。それがガンダムであるから、というよりは、巨大ロボットであるから、の方がモチベーションの比率は大きい。とにかく巨大ロボットで世界の争いを仲裁する、その目標が錬の根底にはあり、そのための聖杯戦争だった。作中でアーチャー討伐へ執心していたのも、(実際アーチャーの順当な勝利では番組が面白くないのも事実なのだが)ニール・アームストロングのエッセンスがガンダム起動のための鍵となるからであった。

かくして覚醒した機動聖杯ガンダム。錬にとっては大事な大事なサーヴァント・ガンダムであることは言うまでもない。が、しかし。世界を守る存在として生み出した以上、万博を破壊する脅威は必ずや打倒せねばならなかった。そうでなければ、ガンダム像を動かす意味がない。

そして錬はガンダムと共に神霊アトラスへ挑み、敗れる。やっとの思いで起動したガンダムは、たった2度の戦いで崩壊する。しかし、錬はそれだけの操縦で、確かにガンダムとの心の交流を感じていた。ガンダムの中に芽生えた、万博を守る意思。その存在が誇らしかった。

GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONの監督役、井室錬。彼は間違いなく、サーヴァント・ガンダムのマスターであった。

 

◯台詞例

「そう言うな、俺は君の敵じゃない」

「公平性なんか、元より俺の管轄外だ。それよりもっと、面白くしなくちゃあ。そうでなければ、エンタメじゃない」

「健闘を称えるよ、君のおかげで良い映像が撮れた」

「改めて。GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION へようこそ。凄いものを見せてやる」

「さあ……君は生き延びることができるか?」

「世界を救うのはエンタメだ。ガンダムでもって人類を救い、人の心に火を付ける」

「万博は、俺達の仕事(努力)で出来ている!! 貴様の身勝手な諦念に、立ち入る余地はどこにもない!!」

「頑張れーッ!! ガンダァームッ!!」

「ああ、狼我くんの処遇か。……無罪放免で良いと思うけどな、俺は。何しろ生命を救われている。ああ……そうだ、彼のおかげで、今回の万博聖杯戦争は死者ゼロで収まったんだろう? 俺もこうして、ベッドに吊られるだけで済んでいる。最大の功労者だ、なるべく要望を聞くよう、照野さんにも言っておいてくれ」

 

◯『万博聖杯戦争 2025 大阪・関西』における人物像

……井室錬、30歳。バンダイナムコグループ直属の魔術使い。GUNDAM NEXT FUTURE PAVILIONの監督であり、サーヴァント・ガンダムのマスターとなった男。

錬の計画は、大阪・関西万博の開催直後から始まっていた。まずは万博聖杯戦争の番組化、配信に向けたコンペに、バンダイナムコの魔術ユニットとしてチームを組織し参加。カプコンやパナソニックなどを下し、監督役の席を確保。万博聖杯戦争参加国の選定にも口を出し、アメリカ館を参戦させるよう促したのも実は錬である。(アメリカ館は確実にニール・アームストロングを召喚すると読んでの提案である)

その後上層部へ聖杯戦争膠着時の対応プランとしてガンダムの機動聖杯化を秘密裏に提案、受理される。(なおこの提案はあくまで緊急時の一時的手段としてのものであり、今作のような長期的、積極的な運用は上層部も想定外。後に「ここまでするとは思わなかった」とコメントしている)

そして万博聖杯戦争の最中にあっては興業面での監督役を担いつつ、サーヴァント・ガンダム起動の鍵であるアームストロング打倒のため働きかけを行う。打倒の後にはサーヴァント・ガンダムのマスターとして名乗りを上げ、参加者達の前に立ちはだかった。

彼の目標はサーヴァント・ガンダムの存在の確立、およびガンダムによる世界の争いの仲裁。手段がガンダムであることは結果論であり、巨大ロボットであれば形は気にしていない。巨大ロボットである理由は、『カッコよく』『バカバカしく』『夢がある』ためである。あからさまにフィクションの存在である巨大ロボットが戦場に出張ってきてしまえば、人と人との戦いからは生々しさが奪われ、神聖さは貶められ、価値は損なわれる。そして同時に、平和のために戦う巨大ロボットがいれば、間違いなく人類の心は昂る。夢のような考えだが、ずっと錬の中にはその考えがあり。それが実現できると気付いたからには、やってみずにはいられなかった。夢追い人、少年心のサガである。

なお、ガンダム起動までの承認は取り付けていたが、それ以降のプランについては錬の独断の計画である。ことが終わったあとに事後承認を得る心づもりで動いていた。結果的にガンダムでの戦争仲裁は失敗に終わり、彼の病室には始末書が山積みである。

 

Comment from Author

……ガンダム像を動かしたい、作品に真名当ての要素を盛り込みたい、インパクトのあるサブタイを付けたい、そういう諸々の事情から生まれたバンダイナムコ所属のもう1人の監督役。今作の裏主人公──にしたかった。尺を割ききれなかったので、不敵なヤツから頼もしいヤツにひっくり返す部分が唐突だったかもしれない。

ガンダム像のパイロットになる奴なので、アムロ・レイとシャア・アズナブルの間の子みたいな初期イメージがありました。今思うとそれってマフティー・ナビーユ・エリンじゃない?

巨大ロボットで世界救っちゃおうぜー!! の悪ノリの究極系。馬鹿馬鹿しいことを本気になってやっちゃった頭のいいお馬鹿さん。でも万博ってそういうのが認められるところだよね、という感慨まで含めて、万博らしいキャラクターだと思っています。

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