俺だけ全知的な愚者な件   作:カン・ジンヒョク

9 / 10
本当に『神宮寺蓮』か?
いやいや、まさかね。
多分無いだろう。
だってアイツの後見星は、『死■の■■者』なんだから。

死の淵で笑う。だってまだ死んでないから
        ハロルド・ミストルティン卿の日記より


第七話:霧の世界

『異物』が俺に近づいてきた。

多分俺の事はまだ認識して無いな。

テーブルを見て近づいてきたんだろう。

人数は…二人か。

まぁ、何とかなるだろう。

 

「誰か!誰か居ませんか!」

 

一人は女か。

歳は15か16って所か。

魔力を感じるが、戦闘をしている奴の魔力の気じゃない。

魔力は持っているが、冒険者には成らなかった様だ。

こちらからは身体の輪郭がはっきり見える。

身体は華奢で、とても戦闘が出来る様には見えない。

そこまで警戒する必要は無さそうだ。

服装は何処かの学校の制服だろうか?

 

「誰か居るなら返事をしてくれ!」

 

もう一人は男か。

歳は30代前半って所だろうな。

しっかりとした魔力を感じる。

現役のベテラン冒険者って感じだ。

相当強いな。警戒するべき人物だ。

服装は船乗りの様に見える。

 

反応を見る限り、どうやら気付いたら此処に来ていたようだ。

俺とは違う入り方をしたのか?

まぁ良い。

歓迎してやろう。

 

『「退がりゆく壁よ(Ablehnen Die Zukunft)」』

 

周りの霧を操り、少し霧を退ける。

向こうの顔は見えるが、こちらの顔は見えないようにした。

これで安心だ。

 

「なんだ?」

「霧が、晴れた?」

 

混乱している今がチャンスだ。

こちらが上だという認識を植え付ける。

 

『「ようこそ。私の世界へ。」』

 

あからさまに二人が驚く。

まぁ急に声がしたらそりゃあ驚くか。

 

「誰ですか?」

 

女が俺に問いかける。

だがそう簡単に返してやるつもりはない。

先ず初めに、知ることから始めよう。

 

『「私に問いかける前に、先ずは貴方達から話してはくれませんか?」』

 

「先ずは私達を此処に呼んだ理由を説明して下さい!」

 

女の方は少しヒステリック…いや違うな。

此れは未知に興奮している奴の言葉だ。

少しは楽しんでる様じゃないか。

 

「何だと?…オレはクラウス、クラウス・サクサルヘインだ。」

 

男の方は冷静だな。

状況を理解してやがる。

だが、言葉の節々の好奇心を隠し切れていない。

コイツも楽しんでるみたいじゃないか。

 

『「クラウスさん、貴方はこの状況をよく理解している様ですね。」』

 

コイツに俺が上という認識を植え付けるのは成功した。

後は女だけだ。

 

「おい、アンタ。早く名前を言え!取り敢えず向こうの指示に従うんだ!」

 

クラウス、アンタ中々のお人好しだな。

言葉に善意しか含まれてない。

こんな人物は珍しい。

 

「…分かりました。私はジェシカ。ジェシカ・ブラインドットです。」

 

物分かりは良いようだな。

少し遅いが状況を理解した様だ。

 

『「ジェシカさん、私に合わせていただきありがとうございます。」』

 

しっかりと礼を言う。

変に傲慢な態度をとると底が透ける。

謙虚な姿勢こそ、相手に納得して行動を取らせる事が出来る唯一の手段だ。

 

『「それでは、私も名前を伝えましょう。」』

 

こちらの本名を言う。

 

『「私は、■宮■■です。」』

 

うん?上手く声が伝わらない…

俺から相手に名前を伝える事は出来ないようだ。

致し方無い、別の手段を使うか。

 

『「私は―『愚者』です。」』

 

今回はしっかり伝わった。

名前じゃないなら伝わる様だ。

 

「『愚者』?本名は?まさかそれが本名では無いですよね?」

 

流石に疑念を持つか。

まぁ、そりゃそうか。

次の瞬間、クラウスがジェシカに向けてヒソヒソ声で声を警告を発する。

 

「アンタ馬鹿か!向こうに対して敵意のあるような態度を取るな!何されるかわかんねぇんだぞ!」

「確かにそうですね…すみません。クラウスさん。」

 

ふぅ、良かった。

クラウスが話題を反らしてくれた。

クラウスが話しかけてくる。

 

「それで―『愚者』様、私達を此処に呼んだ理由とは何なのですか?」

 

クラウスが聞いた後にジェシカも聞いてくる。

 

「私も気になっていたのです。本名は後でも良いですから、先ずはそれを教えてくれませんか?」

 

ヤバイ、何も考えてなかった。

何か使えるモノ何か使えるモノ…

あっ、アレがあるか!

 

『「貴方達を呼んだ理由、それは…『取引』をする為です。」』

 

俺に足りないもの…それは情報だ。

コイツらと取引をして情報を得よう。

取引できるモノなら有る。

 

「『取引』?…それは何のですか?」

 

クラウスが問いかけてくる。

そこはしっかり聞いてくるか。

 

『「お二人は、ご存知無いですか?」』

 

カードを切る。

これで決めてやる。

 

『「『超越化ポーション』の事を。」』

 

さぁ食らい付け。

俺が用意した極上の餌に!

 

「『超越化ポーション』?まさかあの『超越化ポーション』と言うのではないでしょうね!?」

 

クラウスは食い付いてきたな。

見識も広い様だ。

 

『「えぇ。貴方が想像している『超越化ポーション』と同じ物です。」』

 

『超越化ポーション』

それは伝説だが、実際に存在する物とも言われている。

現在、世界最強と言われている人物―ライア・フォルネートは、実際に『超越化ポーション』を飲んだという。

それにより、世界最強の力を手に入れたと。

 

そんな物、普通は信じられない。

だが、彼女にはそれを信じさせる『環境』があった。

彼女は一年前まで、冒険者の中でも最下層に位置する存在だった。

それは何人もの冒険者による証言と協会に記された記録で証明されている。

それがどうだ?

たった一年、たった一年で世界最強と言われるまでに成ったのだ。

『超越化ポーション』は実在する。

それは今やどの学会でも定説に成りつつある。

 

『「取引に応じてくれますか?」』

 

「…先ずは取引内容を教えて下さい。」

 

流石に確認はするか。

まぁ、取引相手としては有り難いんだがな。

 

『「内容はこうです。私は貴方達に『超越化ポーション』を渡します。その代わり、貴方達は情報を教えて下さい。」』

 

悪くはない条件だろう。

俺はこの世界についての情報を得られる。

コイツらは『超越化ポーション』を手に入れられる。

 

『「これが一つ目です。」』

 

「二つ目は?」

 

『「私が主催するとある組織…『タロットクラブ』のメンバーになって欲しいのです。」』

 

『タロットクラブ』

それは『詭秘の主』に登場する組織だ。

メンバーは大アルカナの名前で互いを呼び合い、情報や物を交換したりする。

『詭秘の主』の主人公、クライン・モレッティが設立した組織で、物語の中心に位置する存在だ。

 

要はそれの真似だ。

『読者』として、少しやりたくなっただけだ。

 

『「『タロットクラブ』は秘密結社の様なものです。メンバー同士で交流し合い、アイテムや情報を交換する事が主な目的です。メンバーは互いの事をタロットカードの大アルカナの役名で呼び合う事になっています。」』

 

「…入るデメリットは?」

 

『「そうですね…特にはないでしょうが、『タロットクラブ』について公言することはやめて欲しいです。」』

 

「なら…入ります。」

 

『「ありがとうございます。それで―ジェシカさんはどうされますか?」』

 

「…私も入ります。」

 

『「ありがとうございます。それではお二人共、『名前』を決めていただけますか?」』

 

ちなみに会員はコイツらしかいないので選び放題だ。

まぁ『愚者』は使えないけど。

 

「オレは…『吊るされた男』にする。」

 

『「ジェシカさんはどうされますか?」』

 

「私は…『正義』にします。」

 

『「そうですか。では此処に、お二人の軌跡を刻みましょう。」』

 

霧を退ける。

長テーブルに石造りの椅子を二席用意した。

それぞれ『吊るされた男』と『正義』と刻まれている。

 

『「席を用意しました。さぁ、座って下さい。」』

 

クラウスとジェシカが座る。

 

「…そんな顔してたんですね。」

 

席に座った瞬間からコイツら二人には俺の顔が見えている。

まぁ、もう隠す必要も無いしな。

 

『「敬語は辞めてください、この席に座った時点で私達は対等なのですから。」』

 

二人の元に液体が入ったフラスコを滑らせる。

 

「?何でしょうかこれは?」

 

ジェシカが質問してくる。

 

『「それが何か、当ててみてください。」』

 

二人に問題を出す。

まぁ、すぐに分かるだろう。

 

「まさかコレが…」

 

クラウスが分かった様な表情をする。

クラウスが考えている事は分かる。

そして―その予想は正しい。

 

『「はい。『超越化ポーション』です。」』

 

『「お二人共、コレで私の事を信じていただけますか?」』




投稿が遅れてしまい
すみません、何でもしますから!
言い訳をするなら、バイトが忙しかったんです。
次は頑張ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。