つい昨日受け取ったバクバッジ。ヘラクロスとカイロスが混ざったようなその煌びやかなバッジを見つめると、となりでロゼリアが小さく微笑んだ気がした。
ハクダンシティは旅立ったばかりのポケモンたちとそのトレーナーで賑わっている。少年少女の旅は、最初にポケモンを貰って、バッジをひとつゲットすることから始まる。トレーナーとして最低限の資格であり、自身が手持ちのポケモンの危険性を理解している証。
バッジをしまって、ポケモンセンターに向かう。お金にはまだまだ余裕があるけれど、旅を続けるなら町に着く度働いて、というのが普通だ。というか、そうでもしないとお金がもたない。ポケモンセンターに行けばトレーナー資格で出来る仕事はあるだろうし。
スボミーとアシマリにはジム戦で頑張ってもらったし、ここは私が頑張ろう。
「ボール、開けとくから。好きにしてていいよ」
そう言ってアシマリを出すと、水辺に向かって小さな丸い体がぴょんと弾む。
川に続く浅い段差を嬉しそうに跳ね降りて、何かを見つけたらしく鼻を鳴らした。
水面に顔を近づけ、泡をひとつ作っては、指で弾くようにして遊んでいる。
ロゼリアはどこかへと走り去っていった。日当たりのいい場所を探しに行ったのだ。人の家のプランターひっくり返すとかしなきゃいいけど。
私はそれを見送っただけで、ポケモンセンターへと歩き出す。
回復はキズぐすりで済ませてあった。
小さな頃、防犯として持っていたスマホは今はない。ロトムが入ってなくとも値段は高い。旅の中、情報は足で集める必要がある。
橋の上では旅立ったばかりらしい男の子が、誰かとポケモン勝負をしていた。
「やったー!」と叫ぶ声が水面に跳ね返って、さらに大きく聞こえる。
私は少しだけ視線を逸らして、そのまま通り過ぎた。
一週間くらい滞在していくかな。
◆◆
ミアレシティに着いたのは、ちょうど昼を過ぎた頃だった。
道路は一直線で、距離をあまり感じはしない。途中バトルの景品で貰ったローラースケートもいい感じに慣れてきた。
ミアレシティに向かう道中では、ラルトスなんかを見つけた。とはいえ、あの幼い(ように見える)体にボールやわざを当てる気にはならず。虫ポケモンたちも基本的にこっちを攻撃してくる訳でもない。あまりバトルはしなかった。
ミアレシティは昼間なのに、空が狭い。
高いビルがそこら中に生えている。
「……ひとが、すごい」
これまでに立ち寄った街――メイスイタウン、ハクダンシティは、どちらも“歴史”の匂いが強い町だった。歩くと石畳が鳴り、誰もが穏やかに話し、ちょっと町外れに出れば森と草原。
だけどここは、花の代わりに電光掲示板が瞬いて、石畳の代わりに自動車のタイヤが音を立てていた。メェークルを乗りまわす輩も多い。この分だと、街中でサイホーンレースでも始まりそうである。多分道路が陥没する。
まずはポケモンセンターと、その後にポケモン研究所か。
バトルがなかった訳ではない。それに、一直線とはいえ2日程歩いた。少し座りたい。
ポーチの中を覗き見ると、モンスターボールが二つ、いつも通りに転がっている。今までの街ではポケモンたちは基本的に自由に過ごさせていたが、ミアレシティではそうもいかなくなる。バイク代わりのメェークルは街が世話しているポケモンなので例外だが、このように大きな街で、ポケモンから目を離すのはアウトだ。余計なトラブルを呼び込むことになる。ポケモンが迷子になって、それを探しに行く私も迷子になっては困る。もちろんその逆も当然有り得る、というかそっちの方があるのではないか? こんな都会、歩ける気がしないぞ。
といっても、歩きどおしだったから、スボミーもアシマリも疲れてしまっている。道を覚えてもらうのもいいかと思ったが、それもまたの機会かな。
「ここまで来て、ビビってどうするの」
自分に言い聞かせるように呟いて、私は息を吐いた。もともと、親は自分が田舎の風は肌に合わないといってこっちに引っ越してきたんだ。そしてそれはその通りだった。あんな島を冒険するより、ミアレで遭難した方が何倍もマシだ。
……。
まずはポケモンセンター。研究所はその後。
のつもりだったが。
「……あれ?」
どこを見ても、看板の文字がごちゃごちゃしていて、方向感覚が失われていく。道路は円を描いていて、どこが始まりで終わりなのかもわからない。道を分かりやすく作っているのだろう。しかしそのせいで、逆に分からなくなる。どこに行っても同じような景色なのだ。これで街の大部分が通行止めなんて言うのだから、この街の本当の姿を見た日にはどうなるんだろうか。
「完全に迷った……」
とにかく、ポケモンセンターだ。赤い屋根。街の詳細な地図を貰って……。
立ち止まって、辺りを見渡した瞬間。
視界の端を、緑色の羽根がかすめた。
振り返ると、信号のない交差点の中央に、なんだか古い壁画みたいな鳥ポケモンが一匹――まるで道を塞ぐように立っていた。
くちばしの鋭いネイティオは、まっすぐ私を見ている。
「……案内、してくれるの?」
冗談のつもりで聞いたのに、ネイティオは大きく翼を広げ、閉じ、すすす、と向きを変えた。
そして、角を曲がった。
「……待って」
私はネイティオの後を追う。 というか、行先伝えてない。
ポケモンセンターに行きたいんだけどー。そう言ってみるが返事は無いまま、ネイティオは低空飛行で街を飛んでゆく。羽が全然動いていないことを考えるとサイコパワーなのだろうか。
左、右、また左。
ネイティは何度もこちらを振り返りながら、一定の距離を保ち、見失わないように案内を続けた。速すぎるのだ、案内人のくせに。
目的地にはものの3分ほどで着いた。
ようやく見覚えのある赤い看板が、雑踏の中に浮かび上がる。
ポケモンセンター。疲れてしまって、もう私を回復して欲しいくらいだが、ネイティオのおかげで何とかたどり着いた。
「ありがとう」
ネイティオは私の言葉に、首を傾げたような仕草を見せると、ひとつだけ鳴いて、羽を広げる。彼(彼女)なりのコミュニケーション手段なのだろう。
「あのさ、ポケモン研究所にも行きたいから、ちょっと待っててくんない。というか、あんたも疲れてるなら回復してもらう? 中でポケモンフーズくらい奢るよ」
そこまで言って気付いたが、このネイティオが誰かのポケモンだった場合に私はどうなるんだろう。バトル用の調整とかあるらしいし、勝手に食べさせるのはまずいかもしれない。しかし近くにトレーナーらしき影もなかったしな。
良ければだけど、とだけ残してポケモンセンターに入ってゆくと、ネイティオも後ろから着いてきた。まあ、タクシーを乗りまわすよりは安いだろう。
◆◆
ポケモン研究所の中は思った以上ににぎやかだった。
研究員たちがポケモンを連れて走り回り、電子パネルにグラフが映し出されている。ホワイトボードには天気と気温、湿度が端っこに1時間ごとに記載されており、机の上には乱雑に本がちらばっている。
「ああ、君が“アローラの子”か!」
「1ヶ月。ちょうど1ヶ月前に先行組のこどもたちが来たばかりでねー。君が旅立ったのも同時くらいだから、いいペースだよね」
声のした方を見ると、白衣を羽織った男が手を振っていた。プラターヌ博士。家にあるパソコンの通信で分かってたけど、なんか、若い。というより若作りか? “ハネムーン”の人みたいな、ちょっと軽薄そうな印象を受ける。でもしっかりおじさんだ。
「捕まえたポケモンとか、選んだポケモンを聞いてもいいかい? ……そうか、アシマリか。ククイくんも喜ぶよ」
「それにスボミー、ネイティオ……ああ、ネイティオは案内役かな? ちょっと前から、この街の案内を始めた野生のポケモンさ。あんまりにも街のことに詳しいんで、メェークルみたいに街のポケモンにしないかって話が出ててね。連れてくなら連れてっちゃってもいいよー」
ポケモンをボールから出してみると、頼まれてもいないのに勝手に喋り始める。ネイティオは野生だったのか。しかも勝手に案内してるだけのボランティアらしい。未来を見るらしいし、ご飯を貰える未来が見えたのだろうか。
「……カロスでは報告のないポケモンでね。未来と過去を見るポケモンだって言われてる。もしかして、キミを待ってたのかもねー」
ふん。それはちょっと、嬉しいかもしれない。
ポケモンセンターで一緒に食事して、私はネイティオと仲良くなった気でいた。や、表情もないし、鳴きもしないし、動きといえば翼を広げるくらいだから何考えてるかほんとにわかんないけど。
「じゃあ五匹のポケモンは預かるよ。旅立つ子達はまだまだいるからね」
「さて、ルナ! 改めて、アローラ地方からはるばるようこそ! カロス地方は広大で、多様だ。まだまだ謎は多い! 存分に旅を楽しんでくれ!」
もう既にバッジは一つあるけれど。
まあ、ここからが旅の始まりだろう。私は気を引き締めた。アシマリは感動したのか前足をパタパタと動かして拍手し、泡をいくつか飛ばす。スボミーも花粉を飛ばした。やめろ。
◆◆
『あ、そうだ。良かったら旅の途中にでもメガシンカについて、何かあれば知らせて欲しい』
『各地のトレーナーから、フレア団なんていう悪い奴らの報告が入ってる。赤いダサスーツの連中さ。バトルはそこまで強くないらしいけど、注意するようにね』
研究所を出る前、博士にそう声をかけられた。フレア団。ほのおポケモンが好きなのか? ならばアシマリの出番だろうか。
なんて考えながら、ネイティオの後を追いかける。研究所を出てから、まだまだ案内すべき場所があるらしい。うーん、ホテルで休みたいんだけど、時間もあるし、少しくらい寄り道しようか。
といっても、ミアレシティは通行止めばかりで思うように動けない。
ネイティオは小道を通らないようにわざと大通りを通ってくれている。
「トゥートゥー」
最終的にネイティオが導いたのは、ミアレの雑踏を少し外れた、寂れた並木道の奥だった。
通りの喧騒が嘘のように消えたその先に、石造りの建物が静かに佇んでいた。教会のようでも、旧い博物館のようでもある。そこに貼られたプレートには小さく《Lumina》とだけ記されていた。
入口の前に、門番だろうか?、メタグロスが佇んでいる。
まるで微動だにしないメタグロスは彫刻のように無言で門を守っていたが、ネイティオの鳴き声を聞いて、わずかに道をあけた。
なんの会話をしたんだ?
「……入っていいの?」
もちろん答えは返ってこない。ネイティは、また一歩先に進み、私に背を向けたまま待っている。翼を広げ、早く入れと催促した。入るよ、とメタグロスに一言言ってから扉に手をかける。メタグロスは微動だにしない。どうやら許されているらしい。
静かに扉を開けると、中には広く清潔なロビーが広がっていた。全体的に、オフホワイトな内装に纏まっている。
「こんにちは。始めてみる顔ね?」
白衣を着た若い女性が、ロビー奥から歩いてきた。整った身なりに、整った口調。けれどその目元にはどこか疲れのような、あるいは探るような光があった。
「ネイティオに連れてこられて……」「――ああ、ネイティオ」
「ええと……ここは、何をする場所なんですか?」
ネイティオはこの街では結構有名らしかった。博士も街に詳しいとか言ってたなそういえば。
「“ルミナ”は、心の研究をしている施設。人とポケモンのあいだにある境界――それを飛び越えてやり取りするためにはどうするか研究している」
そう言って隣の部屋を指さす。
私たちが廊下側を歩いており、職員が指さしたのは、壁の中に透明の窓をはめ込んだような部屋だった。部屋の中にはカーペットと木製の机にノートパソコン、人間とポケモン用のおやつや木の実が置かれている。奇妙なのは複数の研究員たちが何かの実験を行っている姿だ。ガラス越しに見えるのは、机を挟んで向かい合う一人の少女と、その向かいに座るバリヤード。そのあいだにはカードが一枚ずつ置かれており、バリヤードがそれを指差した瞬間、少女の方が別ののカードを指差す――その動作を複数のモニターが即座に記録し、周囲の研究者たちが何かを記録している。
「……共有言語に関する実験ね。人間とポケモン双方がどこまで歩み寄れるかを計測しているわ」
女性は言った。
「ポケモンたちは言葉を喋らない。例えば、入口にいたメタグロスなんかは世界一と言っていいほど頭がいい種だと言われているし、実際にこの研究施設・組織の運営は彼が行っている。例えでもなんでもなく、私の上司。だけれども人間の言葉を喋らない。理解はしていると思うけど」
「言葉というのはそれほどに難解で、扱うのに特別な才能が必要なんだと推測しているわ。少なくとも、“テレパシー”は“とくせい”として扱われる立派な才能。そして特性が“テレパシー”だからといって、言語を理解するとは限らない。」
「だからこそ、言葉を用いない、私たちの言う原始的なコミュニケーションをとる必要がある。それにはポケモン側、人間側双方がある程度の歩み寄れる幅を計測して、体系化する必要がある。人間は個体差が大きすぎ、ポケモンは多様すぎるからね」
思い出すことがいくつかあった。
私が問いかけ、その問いかけにネイティオは“翼を広げる”か“何も反応しない”かの二択だった。だと言うのに、私はネイティオとともにここに来た。一種のダンジョンじみたミアレシティを一緒に歩いている。時には買い食いしたりしながら。
アシマリは遊ぶのが好きで、水の中に入るとずっとクルクルと回っていたり、暇な時は泡をぷかぷかと浮かべる。それを指摘するとびっくりするので、どうやら無意識の癖のようだ。
ロゼリアはかなり付き合いの長いポケモンで、それだけ私の言葉をよく理解する。といっても、だいたい無視されるし、日向でぼけっとしていることが多い。私の話を聞いていて、わざと無視するのだ。特になんの反応をする訳でもないが、そういう時はなんとなく分かる。両手の花――スボミーの時は蕾だったが――の揺れ動く度合いだろうか。他には、私が独り言を言う時、“うるさい”という意味で針を刺すこともあるし、無視されていると感じて話しかけるのをやめると“聞いているよ”と針を刺してくることもある。いつか毒状態になりそうで怖いが、つまりそう言う“非言語的なコミュニケーション”のことだろう。
この研究所に入る時もそうだ。
ポケモン同士のことだが、ネイティオは門番兼お偉いさんらしいメタグロスの前に降り立ち、翼を広げるでもなくただ短く鳴いただけだ。それだけでメタグロスは入口を譲ってくれ、ネイティオは私に『早く入れ』と促した。
「でも、ポケモンの言葉が人間の言葉より多くの情報量を含んでいるという可能性は?」
研究員に質問してみる。研究機関なんて普段入れないような所を無料で見学しているのだ。聞きたいことは聞いた方が得だろう。
「いい質問ね。最近の子って頭がいいのかしら。……質問と同じ疑問は研究員の中にもあった。今行っている実験の前段階にあったのが、その質問の中身を確かめる“無言実験”。結果は、人間はダメ、ポケモンは良好、人間とポケモンのペアは、訓練次第でその中間ってとこね」
「私たちは、ポケモンが鳴き声に頼らずコミュニケーションをとることを確信した。実験としては回数が足りないし、最低限の再現性の確認しかしてない。研究を発表できるレベルでは全然なかったけど、私達はスピード感を重視しているの。まあ、再現実験なんて教育機関あたりがてきとうにやるだろうしね」
こども相手にベラベラと小難しいことを喋るなあと思った。
ハクダンのポケモンスクールよりも何歩も進んだ研究だ。再現性の確認、とは、私のちゃらんぽらんな理解で言うと“同じことが起こるかどうか”、“偶然かどうか”だ。
要は根拠を保証しかねるということだろう。それは研究者として子どもに語って大丈夫なのか? それとも、何か焦っている理由があるのか。
「今やっている実験はこの部屋だけね。ポケモンたちは夜行性の子たちも多いけど、この研究所では主に昼活動する子たちばかり。研究員もそれに合わせているわ。つまり、ポケモンも人間もそろそろ家に帰る時間なの。ごめんなさいね、お茶のひとつも出せればよかったんだけど」
「いえ、私も旅の途中ですので。ありがとうございました」
窓から差し込む光は茜色を帯びている。地を這うように、空の向こうへと伸びていた。
ふと、帰り際、壁の一角に目を向けると、そこには一枚のポートレートが掛かっていた。黒いドレスの研究員と、その肩に手を置くように佇むゴチルゼル。ポケモンの瞳だけが妙にはっきりと描かれていた。
「あの……」
「それは昔、この施設を私が任された時の写真。ゴチルゼル、たまに施設を見に来るから運が良ければ会えるかもね」
ネイティがくるりと一度だけ振り返り、また外への道を示す。
「長く引き止めちゃったわね。じゃあ、機会があればまた」
「あなたの旅に幸多からんことを」
◆◆
その夜、ネイティオは1番安いホテルに連れていってくれた。もちろん、最低限の防犯を前提に。伝えたことがどれだけ理解できたか分からないが、まあとりあえずは案内してくれたところで満足だった。
ホテルでネイティオとともに夕食を取り、お風呂に入って、そのままベッドで寝てしまった。一日のうちに色々ありすぎた。プラターヌ博士、“ルミナ”というらしい研究施設、ネイティオのこと……。そういえば、ネイティオは結局部屋の中まで着いてきた。私と一緒に泊まるらしい。まあ、明日も案内を頼みたいのでそれはいい。隣で寝るくらい気にしないのに、部屋の端っこに立ってずっと一点を見つめている。紳士というより、そういう生態だろう。そういえばオスとメスどっちだ? 違いが分からない。最新の電子図鑑は持っていないが、紙の図鑑なら持っている。あんな分厚くて重たい、“なげつける”くらいにしか役に立たないだろうものを持ち歩くのは非常に嫌だったが、実際旅の中で結構役に立っている。後で調べてみるか。
そんなことを考えていると、いつの間にか寝ていて、またいつの間にか起きていた。
体感ではそこまで寝られてないが、どうだろう。
机の上に置いた腕時計を確認しようにも、暗闇に目が慣れず身動きが取りづらい。
うごうごしていると、アシマリにバチンと泡を当てられた。
やっと目が慣れて、ベッドから降りて腕時計を見た。深夜だ。
遮光カーテンの隙間から見える景色は、驚くほど明るかった。さすが大都会ミアレだ、眠らない街。
いつの間にかネイティオが隣まできて、私を見て小さく鳴く。
散歩のお誘いだろうか。
「いいね」
私はパジャマのまま、コートだけ羽織って部屋を出た。
◆
ネイティオが、前を歩いている。
左右に張られた白とオレンジの柵、その先にある路地裏の影。まっすぐ歩こうとすれば、必ず封鎖と警備員にぶつかるこの街で、ネイティオはすり抜ける道を知っていた。
「……ここ、通れるの?」
返事はない。若干怖くなった。ポケモンが抜け道するのと人間がするのでは大きく見られ方が変わってくる。まあ、深夜だしいいか。そう思う時には、もう狭い通路に体をねじ込んでいる。
驚くのはミアレの夜景だ。ホテルの部屋から見た時もそうだったが、こんなにも煌びやかで、夜だと言うのにどこを歩くのに一切不自由がない。ネイティオも昼間と全く同じように、不自由なく飛んでいる。や、こいつは暗くても見えるのかもしれないが。
それにしてもこいつ、どこに連れてく気だろう。
答えはすぐに分かった。
通りの向こう、建物の影から――まるで星のように澄んだ歌声が流れ込んでくる。
その方向を見ると、広場の一角。店の外装照明に浮かび上がった、青白いシルエットが一匹。
それは変わった形のオブジェにふわりと座って、歌っていた。喉を震わせ、羽毛を揺らし、光に舞うように。
――チルタリス。
囲むようにして、扇形に集まって座っているのはポケモンばかり。カラカラ、ヒトモシ、ガーディ、エルフーン……。トレーナーがいるだろうポケモンも野生のポケモンもごちゃ混ぜで、ブリガロンやマフォクシーのような大きなポケモンは後ろの方で小さくなって座っている。
気付けば、私もその一員になっていた。パジャマのままちょこんと座って前の方に陣取る。ネイティオは立ったまま、後ろの方に移動した。
歌うチルタリス。ふわふわと風に揺れる羽毛がとても綺麗で、でもその歌声はもっと綺麗で、なんというか、言葉という枠に収められるものではない。古臭い固定観念に囚われない、何者よりも自由な力を感じる歌だ。
〜♩
不思議なメロディ。聞いた事のないリズム。
人間の歌しか聞いた事のない私にはとても新鮮だ。テレビっ子というか、家にあったスマホロトムに齧り付きだった私は、人間の歌をポケモンが歌うのは聞いたことがあっても、ポケモンの生歌で、しかもそれが既存曲のものではないなんて知らぬ世界だった。
もちろん、人間の曲とは違って、完成度の高いものではないだろう。歴史の積み重ねというものは人間が優れているものと思う。
しかし今目の前にある、ゆったりとした、クリームのような歌声は間違いなく、私の聞いてきた中で一番の歌で。
全てを溶かすような穏やかな衝撃の中、私の意識も無限に拡散してゆく。
◆◆
気付いたら寝ていたらしく、起きた頃にはもう朝も遅い時間、昼になろうかという時間だった。
草のベットに転がされていたおかげで体はあまり痛くない。そのおかげで遅くまで寝ていた訳だが、旅のトレーナーとしては体が無事に越したことはない。
朝ごはんとして置いてあった木の実をいただきながら、考える。
部屋にロゼリアとアシマリ、置いてきてしまった。特にアシマリは寂しがってるだろう。まだ子供だ。
もちろん道は分からないのでネイティオに教えて貰いつつ帰る訳だが、警備のめっちゃを誤魔化すのは意外と大変だった。
「ごめんって〜」
目の前で泡がパチリと弾けた。痛。アシマリにネイティオとこっそりチルタリスのライブを見ていたと言うことを正直に告白すれば、予想通りプリプリ怒った。かなり不安だったようで、起きてから部屋中をドタドタ走り回っていたらしい。音がうるさいと苦情が来ていた。
アシマリには悪いが、しかし昨日はあの場所に行けてよかった。旅の醍醐味だ。
五番道路、空を飛びつつ先を行くネイティオ――全く羽ばたいていない――に乗ったアシマリは後ろから追いかける私の方を見ようともしない。これは相当怒っているな。まあ、時間を置いて、ご飯でも食べている時に謝るしかない。
ロゼリアも食事中針でチクチクと足を刺してきていたし、かなり心配させてしまったようだ。思えば、ゴーストポケモンなんかに攫われてもおかしくない状況だった。ネイティオがいるとはいえ、そして今もなんだかんだで次の町への案内をお願いしているものの、ネイティオも半分ミアレの街ポケモンのようなもの。私を助ける義理もない。
時刻はおやつ時を過ぎたところ。喧嘩中とはいえおやつだけはみんなで輪になって食べて――ミアレで手に入れた木の実の余りが結構あった――、曲がりくねった道をローラースケートでスイスイ泳ぐように走る。
このローラースケートが優れもので、舗装されていない道でもよく走る。旅で一番気をつけることはシューズの買い替えと足の疲れなのはこれまでの旅路でよく分かっていたので、滑るように移動できるのは本当に快適だ。足の疲れが格段に少ない。
とはいえ、バランスを取るのが意外に難しいのと、こちらも設置面積の問題でシューズ以上にローラー部分の寿命が早いことに注意しなければならない。既に1度買い換えている。
ローラースケート自体は付け替えが簡単なので地面の状態によって歩いたりすることもあるが、逆に言えば、地面の状態がよっぽど悪くなければローラースケートで強引に突破するというのが、今の私の旅のスタイルだ。ロゼリアは基本ボールの中、オシャマリも基本はボールの中で、散策しようと思った時にボールから出す。ボールの中が快適なのかどうかは分からないが、歩き続けるのが前提の旅で、ロゼリアもアシマリも小さいし足も短い。アシマリに至ってはヒレで、地上での移動には不利。移動にかなりのカロリーを使うことが予想される。少しづつ景色を見れないのは可哀想だが、彼ら(彼女らかもしれないが)の強さだけが生命線なので、あまり道中で消耗もさせられない。実際、歩き続けるのは苦手らしかった。
ポケモンと人間で比べると、長旅には人間の方がよく耐える。少ない食べ物で歩き続け、寒さや暑さもポケモンより対応できる幅が大きい。古代の人間はその特性を利用して、ポケモンから逃げ回ったらしいが本当かどうかは怪しい。少なくともポケモンと対面した人間が逃げおおせる術はあまりない。
そういった意味で言うなら、今の状況は大分よろしくない。何せタウンマップもない、ポケモンセンターで得られた情報のみ(マップの暗記なんてもちろんできない)での旅だからだ。強いポケモンとでくわした時の、逃げ道も分からない。この辺はアシマリとロゼリアで対応可能なポケモンしか出ないという情報だが、それも絶対ではない。困ったらネイティオが何とかしてくれるのかどうか……、まあ期待はしない方がいい。道案内をしてくれるだけで十分だろう。
というか、ネイティオはどうやって道を知っているんだろうか。ミアレに関しては街で1番詳しいらしいが、その外の地理にも明るいのか? こいつがいれば、とりあえず、ノズパスはゲットしなくていいらしい。
道、あってるのー? 聞いてみるが、大きく羽ばたいて高度を僅かにあげるのみ。合ってるらしい。
◆◆
「わたくし、このホテル・コボクのオーナーでありドアマンでありコンシェルジュでありベルマンでありハウスキーピングでありいまはコックであります」
「それは大丈夫なんですか?」
ホテルを1人で回すのも凄いが、できるものなのだろうか。全てのことが出来るとしても、時間的に。
「お客様もあまりいませんので……」
「そうなんですか」
それでもだと思う。一人でやるってことは受付にずっと座るってことで、書類仕事や部屋の掃除なんかもあるだろうに。そういう時はポケモンが手伝ったりするのだが。
「ポケモンはいないんですか?」
「ポケモンね。あまり得意じゃなくて。怖いじゃない」
どうやらポケモンが苦手らしい。
こういう人は割といる。ポケモンは、指先ひとつで人間を町ごと破壊するようなやつもいるし、もちろんアシマリもロゼリアも、やろうと思えば私を殺してしまうことも出来るはずだ。特にロゼリアはどくタイプだし簡単に人の命を奪える。私が人間の中でも弱い方なのもあるが。そんなポケモンを怖がるのは何も変なことでは無い。普通のことだと思う。一般家庭では、生まれた頃から居るポケモンとともに育って、そのポケモン以外はあまり触れ合うことは出来ない、というのが普通である。ポケモンを捕まえては戦わせるトレーナーがおかしい方。そういう意味で、私はどうやら才能がある側の人間らしい。ポケモンへの恐怖は勿論あるけれども、どうしても親しみや好奇心が勝つのだから。そしてそれは大抵、運良く性格の会うポケモンに会った時に発揮される。ネイティオみたいに。
「ネイティオ、貸しましょうか。良ければ」
「ネイティオというんですか、見たことないポケモンですね……。怖いですが、私には選択の余地も時間もありません」
後ろでネイティオが小さく声をあげた。やっぱ野生状態――広義でいう野生状態――のままでかってに人の手伝いをさせるのは良くないだろうか。
でも受付とかは立ってるだけだし、バイト代わりにやらせてみてもいい。防犯にもなるし。本人は驚いた顔をしているが、すまない。
ネイティオはホテルの受付になった。辛い受付業務から解放されてもオーナーさんは別の仕事があるそうで。一人でやっているだけに、ホテルの営業時間(宿泊受付時間)も短い。まあ、役に立っているようで良かった。
コボクタウンは何も無い町でもなかった。人が少ないからこそ、夕方にもなると野生ポケモンがちらほら町中までやってくる。バイト終わりのネイティオと一緒になってみんなでショボンヌ城を見学したり、ちょっと走ったところにあるパルファム宮殿を見て回った。パルファム宮殿ではロゼリアが庭園を気に入り、アシマリはずっとベッドで跳ね回っていた。帰る時間になってもベッドに寝転がってばかりなのでしびれを切らしたロゼリアが毒針を打ち込み、謎にどくけしを消費するなどした。くさ技じゃないだけ有情なのか?
数世代前の、フィルム式カメラで数枚撮った。ショボンヌ城で、パルファム宮殿で、コボクタウンで。ジムリーダー・ビオラから勧められたことだ。旅の中で覚えられる思い出は少ない。気にしなければいけないことは多く、旅をすると言うだけで覚えきゃならないことも多い(最初の頃はかなり苦労した。今は慣れてきた)。そんな中で細かいことまでいちいちおぼえていられない。フィルムに保存すれば、旅した証にもなる。記念すべき一枚目はビオラさんと撮った写真。ポケモンと人間と、全員で撮った集合写真。ジムの突破の度にこういうのを撮るのも楽しいかもしれない。
◆
あまり長居はせず、すぐに7番道路に出た。滞在は2日といったところ。
買い出しと、観光とバイト。それらをこなせば、路銀は少しだけ減って私のバッグを軽くした。コボクはカロスの中でも田舎の町であまりお金もない。こんなところだろう。
7番道路ではバトルシャトーと育て屋さんがある。育て屋さんはポケモンを育ててくれる。バトルシャトーではバトルができる。当然、駆け出しのトレーナーの足が向くのはバトルシャトーだ。私も一応トレーナーとして、寄るだけ寄ってみる。バトルは苦手だし、余計な消耗をするつもりもなかったが、まあ雰囲気だけでもと。
中では“爵位”が与えられた者のみバトルすることが出来、バトルによって景品を手に入れられることがある。バトルに幾つか勝つと上位の爵位が与えられるといった具合。
作戦変更の瞬間だった。景品が手に入るというのなら、物の種類によってはバイトより効率がいい。ネイティオ(ゲットしてないが、もう仲間みたいなものだ)も一緒に戦えば意外と稼げるのではないか。ミアレで博士に聞いた何とか団とかいう集団も気になるし、私もジムチャレンジの為にもバトルの腕を磨かなくては、少なくとも今の状態ではポケモンの足を引っ張ることになる。
ホロキャスターで博士やビオラさんとやり取りした結果、ビオラさんから推薦をいただくことが出来たので、無事“バロネス”の爵位を与えられた。
爵位、ゲットだぜ。
後は施設内のバロン・バロネス(同順位)たちと4回戦い、得られたのは真珠3個。キズぐすりを幾つかとまひなおし、どくけしを1つずつ使ったものの、結構実入りが良かった。あと1回戦えば――勝てば――1つ上の“ヴァイカウンテス”の爵位が与えられ景品もより豪華になるとのことだが、相手も相応に強くなる。回復薬の代金、ポケモンたちの精神的な疲労も考えてここらで切りあげることにした。
だいぶ稼いだ。次の街ではちょっと豪華な食事が摂れる――いや、ジムバッジのご褒美にでもしようか。それと、いい加減タウンマップを買わなくては。
バトルシャトーのメイドさんはとても可愛い。
バトルシャトーでは何度かバトルしたが、キズぐすりなど回復手段のおかげでポケモンたちは元気いっぱいだ。私の前を飛行するネイティオの背中は交代制らしく、今日はロゼリアが乗っている。一番の新人が今や旅の生命線になってしまったが、実は食事は毎回ポケモンたちの方が豪華なのだ。
ポケモンフーズがいちばん栄養素的にも安定していて安いのだが、その他にもおやつや主食の代わりとなる木の実、種類によっては人間の食べ物を与えてもいい場合もある。木の実でアレンジして調理したりなど、料理は以外と工夫ができて楽しい。野宿にしては、私たちの食糧事情は結構いい方なのだ。
おかげで私は、人間の食べ物を食べることが少ないのだが。木の実や木の実料理以外を食べる時といえば町に立ち寄った時くらいだ。それ以外はほとんど木の実料理だったりとか、木の実そのまま――主にモモンのみ――齧ることもある。うまい。
私が野生児なわけでは決してないことを断っておく――誰に?――。木の実料理はわりとポピュラーな料理ジャンルで、それを人間が食すのもあまり特殊なことでは無い。さすがに素材が木の実だけだとか、ずっと木の実生活だとかになると変わり者に見られることもあるものの、栄養価的には――様々な種類を食べる必要があるので、一部レア木の実でしか取れない栄養素はサプリメントや補助食品で補ったりしてもよい――問題ないし、何よりポケモンと全く同じものを食べられるこれは気持ちの問題だけでなく、作る労力も少なくて済むし食材の保存なども簡単。旅人はだいたいこれだ。他の旅人にあったことはないけど。
私はポケモンではないのだ。いや、人間もポケモンから進化したという説はある。
と、薄暗い洞窟を抜け、山道をスケートでスイスイと――足元が悪く、進みにくい――進めば、すぐに、と言うよりは結構時間をかけて、次の街へと辿り着く。
コウジンタウン。ミアレから実に一ヶ月。しかしこの町にジムはなく、ジムがあるのは次の町らしい。長い道のりである。
◆◆
コウジンタウン。なんと言っても、カセキ研究所。それと水族館か。
発掘したカセキを復元して、ポケモンにする。そんなことできるのかと思う。できるらしい。かがくのちからってすげー。
一瞬ネイティオに見てもらってカセキを掘り当てて旅のトレーナーに売ると言う商売を思いついたが、綺麗な石を売る場合ならともかく復元できると知って売るのはさすがに良心が痛む。
カセキポケモンを仲間にすることも考えたが、やめた。ポケモンと出会い、仲間になる。その間にバトルは今のところ――ネイティオ、オシャマリ、ロゼリア――ないが、あってもいい。
だが、まあ、輝きの洞窟にはいこう。ネイティオも行けと言っているし、写真も何枚か撮りたい。ポケモンセンターによると、ロゼリアが私の足をつんうんとつついて両の花でベルトに取り付けてあるメモ帳を指差した。これは何かしら忘れている証だ。小さなサイズのメモ帳をペラペラめくると、なるほど、タウンマップとデカデカと書いてある。忘れていた。フレンドリィショップで購入し、ついでに木の実を幾つか。食事用には普段から取って集めるようにしているから、私のおやつ用だ。美味しいし人間のおやつより安い。コスパは抜群だ。
◆
サイホーンの足音は重い。
その事はテレビやスマホロトムで知っていたが、実際にこんなに大きく、肉厚で、大味だとは。大足だけにね。
ボロボロになってきたスニーカーすら受け付けないほど状態の悪いじめんは、主にじめんタイプ、いわタイプのポケモンによるもので。そんな場所は飛んでゆくか、もしくはサイホーンで突っきるかだ。街ポケモンとして登録のあるサイホーンのボールを投げれば、まるで私は乗り物ですと言わんばかりに腹這いになり、早く乗れと急かす。遠慮なく乗って進路を進む音に驚いたポケモンが飛び出してきて、サイホーンの鼻先あたりを陣取るオシャマリ(7番道路で進化した)の泡で撃ち落とされる。ここらでポケモンを捕獲したいが、誘っても頷いてくれるポケモンがいない。次のジムはネイティオもいるとしても、そろそろ不安になってくる。野生のポケモンも強くなっているし、夜の番をしてくれるポケモンが欲しい。さすがにそんなことまでネイティオには頼れないし、まだ子供のオシャマリや太陽光が生命線のロゼリアに任せる訳にも行かない。私が夜起きとくのは話にならないだろう。何も見えないし、ロングスリーパーだし。そもそも、移動の中でポケモンたちをボールの中に収めて(ネイティオと一緒に)移動することも多い。
ミアレまでは夜の番が必要だということに気が付かず、そのままみんなで寝ていた。思うに、旅の中での1番の危機的状況だった。ミアレでチルタリスのライブで寝落ちしてから、夜寝ている間の危険性に気付き、そこからは意識するようにしている。
野生ポケモンに頼んで寝ている間見てもらったり、数時間おきに腕時計のタイマーをつけて火を絶やさないようにしたり。野生ポケモンは以外と協力してくれるポケモンが多く、助かっている。とはいえ、このままだと本当にゴーストポケモンに連れていかれる。私はまだ死にたくないのだ。
ネイティオの背中はロゼリア、サイホーンには私とオシャマリがそれぞれ乗ってズンズン進む。途中邪魔する岩をサイホーンが突進で壊した時は酷い衝撃で、私の股ぐらに避難したオシャマリはケラケラ笑っていた。
私はといえば楽しむのもそこそこにずっとキョロキョロとポケモンを探していた。夜行性のポケモン。
結局、昼間に飛び出してくるのが夜行性のポケモンなわけが無い。私は成果を得られぬまま、洞窟の入口にたどり着く。
◆
洞窟内部はかなり入り組んでいて、オマケに暗すぎた。ライトで照らしながら、ネイティオを先頭にぞろぞろと歩く。ライトがあるとはいえ、こうも暗いとどこから襲われるか分かったもんじゃない。オシャマリたちをボールからだし、歩かせていた。
ネイティオが翼を広げる余裕くらいはある。もっとも、それくらいの通路幅なので飛ぶのは危険だ。
洞窟ないは本当に暗くて、ネイティオがいなければどちらがどっちか本当に分からない。ポケモンセンターで得た情報によれば、この洞窟は入口付近と最奥付近で全く様相が異なる。自然にできた入口付近と、坑道が広がる最奥付近。迷うのも暗いのも入口付近だけのようで、最奥付近になると一気に明るく、一本道になるとのこと。
つまり、入口付近をどれだけ素早く突破するかが勝負。焦らず、確実に進もう。
私はペースを確認しながら、ネイティオを見失わないように進む。
洞窟内部は、そこらの草むらとは比較にならないほどにポケモンが多い。特にこのような暗い洞窟は、ポケモンにとって隠れるのに非常に都合のいい場所だ。
実に様々なポケモンが見られるが、残念、洞窟自体暗く、よく見えない。
色々な場所でポケモン影が蠢いていて……と、ネイティオが立ち止まった。見たところ行き止まりだが。
「もしかして道間違えたー?」
とは言いつつ、その可能性はあまり考えていない。今までの旅の中でネイティオが道に迷ったことは1度としてなかった。そして今も、それを否定するように短く鳴いて、右に少し体をずらすことによってその奥のモノを私に見せた。
なにか重要な落し物なのかと思ったが、いやいや、それはポケモンだ。
三日月型の体というには丸みを帯びている。鼻のような突起があり、どこか数学のグラフのような印象を受ける輪郭。バトルの結果なのか体表面はでこぼこしていて、その凹みにあえて名前をつけるとしたらクレーターだ。
そのポケモン、ルナトーンは私達がみていることにも気付かず、何やらそこら中を見渡して、忙しなく動き回り、クルクルと体を回転させていた。
何をしているんだろう。
ポケモンは喋らない。鳴き声の調子や、仕草身振りで察するしかないが。
「なにか探してるの?」
もっとおしりをぷりぷり振ってくれればわかりやすいものだが、まあ様子をしばらく観察していればだんだん分かってくる。後はトレーナーの勘である。
果たしてそれは正解なようで、ゆっくり振り返ったルナトーンは困惑しながらも、その重そうな体をクルクル横に回転させた。これは分からない。
「私はルナ……名前似てるね。あなたはルナトーンって呼ばれてる。そう呼んでもいい?」
ふわりとルナトーンが回転した。目が回らないのだろうか。
ポケモンは、おおよそ自分の名前を把握している。固有のニックネームは基本は認識している(名前自体を言葉としては認識していないが)。その他にも、人間の居住区にほど近い場所で生活するポケモン(“やせい”のポケモン)も、自分の名前(ポケモン名)を把握しているという。これはある程度人に接触したことのある個体の話だ。また、高い知性と群れ社会を併せ持つポケモンのみの話になるが、場合によっては、ポケモンどうしで自分たちの名前を教え合うこともあるという。
ミアレで見学した研究所“ルミナ”のパンフレットに書いてある内容だ。良く考えれば、ポケモンは自分の名前なんて知らないはずだと。たしかに、と思ったが、草むらもよっぽど深くにいかないと人間と接したことの無いポケモンなんて見つけづらい。あまり気にする必要も無いのかもしれない。
「ここには何も無いみたいだけど」
でしょー! というふうに私のまわりをふわふわと浮かぶルナトーン。そもそも何を探しているのかわからんが。こと探し物において、私、いや、“私たち”の右に出るものはいない。
「別のとこ探そう。……ネイティオ、分かる?」
ネイティオはなんでもできる。バトルには積極的に参加しないものの、道案内や探しもの、野宿の場所選び。私たちの旅はネイティオ中心にまわっているといっていい。そんなネイティオなら、ルナトーンの探し物がなにか分からずとも見事探しあててくれるはずだ。
五分ほど棒立ちのネイティオを見守ると、何かが分かったのかいきなりネイティオが動き出す。ネイティオのまわりをくるくる回っていたルナトーンはぶつかりそうになり、オシャマリはネイティオの肩に飛び乗った。
「肩に乗るなら声をかけてから、いいよって言われてから」
オシャマリとネイティオは短く鳴き声を交わして、再び歩き出す。ロゼリアがチクリと足をつつき、小さく鳴く。重いんだけどなぁ。
いわタイプが多いし、何かあったら頼むよと一声かけて抱き上げた。この辺りのポケモンにはオシャマリやロゼリアの攻撃がよく刺さる。ロゼリアもよく活躍してくれているし、これくらいのご褒美ならあげてもいい。
「花粉飛ばさないでよ」
大丈夫かとは思うが。
先頭を歩くのはネイティオ、それを追う私とルナトーンの格好になった。ルナトーンの視野の広さに期待している。
◆
ネイティオに従って歩いていると、入口付近の部分はすぐに抜け、あっという間に最奥に辿り着いた。右の翼でビシッとその場所を示すと、ルナトーンとオシャマリが一斉に駆け出す。別に何か特別なものがある訳ではない、普通の地面な訳だが、何かが埋まっているのか、落ちているのか。
――。
何か視界がおかしい事に気付く。
「ネイティオ! きりばらい!」
最奥に着くなり、あたりを侵食していったのは霧。白く、雨上がりによく見るあの霧だ。
なぜこんな洞窟の霧が。私は体勢を低くしてキョロキョロ辺りを見回す。温泉があるとか、燃えているとかそういう話は聞かなかった。つまりは、ポケモンの仕業。怪しい匂いがする方向を探す。
例えば、最奥に見えるあの黒い影。壁を背にして立つ推定人型のポケモンだ。
『遅かったですね。……そして、良い判断です、“運命の子”』
「ゴチルゼル」
ミアレの研究所の写真で見た姿だ。黒いドレスコートのような外皮、リボンのような白い器官が付いていて、耳の部分はウパーの髭のように広がっている。
きりばらいの効果で霧も晴れてきて、その全体像がくっきりと見えてきた。
『そう構えないでください。今日は――挨拶に来ただけです。霧は演出ですよ。普通に飛び出してもつまらないでしょう?』
この言葉は、どうやらゴチルゼル自身がテレパシーにて喋っているようだった。
私は静かに後ずさりした。とんでもないサイコパワーだ。もはや質量すらありそうな圧力。これ程相手を威圧して『挨拶』? そんなことはない。
あえて、この後の展開を言ってみよう。バトルに負けて、敗走出来ればいい方だ。
『ふん……会話くらい、してくれたっていいでしょう?』
「あなたにその気があるならね」
ロゼリアとも、オシャマリとも、ネイティオとも違う圧倒的な存在感を放っていた。それは、ロゼリアやオシャマリが進化した時の爆発するような力の奔流ににている。彼女(彼)が私たちを威嚇しているのは明らかだった。ならば、あまり挑発的なことを言うのは良くないのだが、この口はそう都合よくできてはいない。
『先程から言っているでしょう? 挨拶に来ただけと。わたしはあなたを待っていた』
『“運命の子”――。あなたの名前を教えて頂けますか?』
「……私はルナ、ネイティオと、オシャマリ、こっちがロゼリアにルナトーン」
電子図鑑を持っていないのが悔やまれる。ゴチルゼルのことなんて知らないぞ。
紙の図鑑はホテルの部屋の中。ここら辺で遭遇するポケモンでもないのに、予習なんてしてない。見た感じエスパータイプっぽい、というか、この全身を圧迫する力はサイコパワー以外にありえない。
エスパータイプの相性ってどんなのだっけ。
『そう。ルナというのですね。では、ルナ……』
どうやら相手の標的は私だ。いちばん弱いやつを狙うとは。
『――さようなら』
その一言に、我慢できなくなったオシャマリが飛び掛った。アクアジェット。
水飛沫を纏って、ゴチルゼルの立つ位置――私の眼前に一直線に飛び込む。私は咄嗟に体をひねりつつ、腕で顔を覆うなか、叫んだ。
「“どくばり”!」
果たして期待したような衝撃はなく、腕を下ろすと、嫌な想像通り、オシャマリもどくばりも、そしてロゼリアまでも空中で制止している。サイコパワーで拘束されたのだ。二匹は苦しそうな表情こそすれど、指一本動かせる状況にないようだ。
全身から血の気がひく。
いくらエスパータイプだからって、強いポケモンだからって、こんなことが有り得るのか。こんな、1体2で一方的に。
『争うつもりは無い、と言いました。あなたと敵になるつもりは無いのです』
「……は。よく言うよ」
ゴチルゼルはゆっくりと、オシャマリたちを地面におろして解放する。
ロゼリアが自由になってすぐさま放っ二度目のどくばりは、やはり空中で制止し、音を立てて地面に落ちた。
ベルトにつけたボールを触る。サイホーン。こいつは私のポケモンじゃないし、言うことを聞いてくれるかも分からない。この状況を何とかできる保証もない、というよりは無理だろうが――。
ス。
ネイティオの翼が私を静止した。ルナトーンは私を守るように目の前にゆらりと浮かぶ。
私はネイティオを見た。ネイティオも私を見ていた。いつも宙を見つめているか、一瞬しかこちらを見ないのに。その瞳の奥には何も見通せず、私の姿すら移らない。ネイティオを初めて怖いと思った。
「……それがもし、本当なんだとしたら。あなたは何のためにここに現れた?」
『言ったでしょう。貴方に会うためだと。ルナ――“運命の子”』
運命? 先程も言っていた言葉だ。人間がそういう言葉を使う時、大抵頭がイカれてるか体の調子が悪いかのどちらかだが――ポケモンの場合はどうなんだ。
ネイティオを見る。こちらをずっと見つめたまま、微動だにしない。
「まって。色々あるから」
「第一にさ。さっきのは明らか殺そうとしてたじゃん。第二に、運命がどうしたっての?」
ゴチルゼルは、壁の中から大きな岩を掘り出して来て、それを地面に置き椅子にして座る。私の分も寄越してきたので、有難く座った。膝の上にオシャマリの飛び乗ってくる。さっきは嬉しかったので思い切り撫でてやる。
ロゼリア、ルナトーンは未だ油断なく、私の両側に立っていた。
『テレポートで帰ろうとしたのです。私の棲家は遠いですから、サイコパワーもそれなりに必要になります。言葉とは、本当に難しい』
「私より喋るのうまそうだけど」
『あるいは。言語を学問として学ぶ人間は少数派でしょう? ……2つ目の質問の答えは、私の力に関係します。さて、ポケモン図鑑はお持ちですか?』
ポケモン図鑑。
主に流通しているのは紙でできた、辞書よりもまだ分厚いもの。世界中のありとあらゆるポケモンを網羅した『全国図鑑』は重く高く、それでも人気は高い。読んでいるだけで一年分の暇つぶしにはなる。
その下に各地方の図鑑があり、こちらは各地方での生息ポケモンを掲載している。カロスだとカロス図鑑、といった具合に。私が持っているものもこれ。しかし普段の使い方としてはポケモンセンターで得られた周辺のポケモンやジムリーダーのポケモンなどから索引で調べると言った方法を取っているので、当然、この辺りで生息していないゴチルゼルの情報を私は知らない。
一方、一部のトレーナーのみ所持している電子版図鑑は、全国図鑑だろうが地方図鑑だろうが機械が1台あれば、信じられないダウンロード時間に耐えさえすればオールマイティに使える。一部の地方ではわりと一般的なもの――例えばアローラではロトムが中に入ったロトム図鑑が出てきたりしている――らしいが。
「ゴチルゼルって名前も、ミアレの研究所でチラッと写真見かけたくらいでね」
『ああ、あそこに言ったのですね。なるほど、なるほど……。あの写真はわたしですよ。たまに研究を見に行くのです。メタグロスとは友達でしてね』
「元気そう……かは分かんないけど、調子が悪いとかではなさそうだったよ」
『表情まで“はがねタイプ”ですからね、やつは』
『……図鑑の話でしたね。人間の図鑑、ゴチルゼルの説明文はこう書いてあります。“星の配置や動きから未来のできごとを予知する能力を持つ”。未来のできごとの中で、わたしにとってとある人間が運命の鍵を握っていた』
それが、私ということだろうか。
「ふーん。……どういう未来なの」
『知らない方がいいでしょう。……そろそろ帰ります。すみませんでした、あなたの仲間に手を出す気はなかった』
待ってよ、と言った頃には、目の前のどこにもゴチルゼルの影はなかった。テレポートか。ケーシィが一瞬で消えたのを見た事がある。
ぐらりと体の重心が揺れて、そのまま地面に転がった。頭に血が上る様な格好だが、それも仕方ない。今だけ、お行儀の悪い自分でいよう。
死ぬかと思った。いや、完全に死んだと思った。
彼女のサイコパワーはそれだけ強力だったのだ。まるでX線にかたみたいに全てを見通す瞳、圧倒的な存在感、無限の宇宙を写した耳のような器官。そのまま不思議な力で心臓を止められていても何も不思議ではなかっただろう。というか、一瞬だけだか本当に星空が見えた。宇宙を背景に立っていたのだ。瞬きの後に洞窟の景色に戻ったが。
「……やばかった」
生殺与奪の権利を握られるとは正にこのこと。あの場の全員でかかってもおそらく勝てない。あれがポケモンの範疇なのか、今でも疑問に思う。守り神とかそんな類だ、あれは。
その内、考えるのも億劫になってくる。
オシャマリやロゼリアが仮に進化して、そのまま順調にみんなが力を高めていっても、そしてトレーナー限度の6匹のポケモンが全員そのレベルに達したとしても、恐らく勝てる相手ではないだろう。ならもういいじゃないか。
あいつの言うことを鵜呑みにするなら、あいつは恐らく私に敵対しない。いずれもう一度会う機会もあるはずだ。少なくとも、その時までできることは無い。
なら、いい。疲れた。
ゴチルゼルが座っていたあたりでなにやらクルクルしていたルナトーンがこちらへと寄ってきた。サイコパワーでその体の窪みにすっぽりはめこんであるのは“つきのいし”だ。プレゼントだろうか。
「帰ろうか」
ルナトーンがくるりと回った。
◆◆
アマルスの特性“フリーズスキン”。氷の体でもって、ノーマル技ですらこおりタイプの技になる。そして、高威力わざとして知られる“とっしん”。ノーマル技だが、アマルスの特性によりこおり技となる。
いわ、ドラゴンタイプのチゴラスは特に注意すべきところはないものの、シンプルに強いし、タイプによる耐性も優秀。
ポケモンセンターには情報が集まり、私の持つ紙の図鑑の情報もあればジム突破くらいは当然できなくてはならない。ポケモンに対する最低限の知識、責任、理解そして経験を問う2つ目のバッジ。トレーナーを名乗るなら大前提、トレーナーでなくとも持っていて不思議でない資格だ、というのは、ポケモン図鑑の前書きに書いてある。
「いわなだれ!」
ロックカットによって一層丸みを帯びた体がサイコパワーで歪んで見える。
無数の岩が雪崩のように押し寄せ、アマルスの体を打った。効果抜群だ。
「アマルス、先頭不能! ジムリーダーは次のポケモンを出してください! 挑戦者には回復・交代が認められます」
「大丈夫です」
ここまでは想定通り、そしてこれからも想定通り、のはずだ。
フィールドには置き技はなしだが、どくびしはチゴラスに効果が悪い。それより、外したいわなだれでフィールドは狭まっている。ルナトーンが苦手とする鋼、霊、悪、虫、草、水のタイプの技をおそらく相手は使ってこないだろう。アイアンヘッドは一応警戒すべきか。逆に、相手のチゴラスが苦手とする妖の技、フェアリータイプのムーンフォースをルナトーンは使える。今日は満月を三日後に控える日の夕方。月は既にガラス窓越しの遠くの空に見えている。ルナトーンが月の満ち欠けに呼応してパワーを増大させるという話は未だ確証はなく、都市伝説よりちょっと信憑性のある話として信じられている。私自身半信半疑だが、ジム戦前満月の話をしたら嬉しそうにしていたので、少なくともモチベーションは高いはずだ。ポケモンどうしの戦いにおいてはタイプ相性の次に大事とされる。
ジムリーダーが何事か祈り、ボールを投げた。
中からとび出たのは茶色の、大きな牙を持つズガイドスの体にナックラーの頭を持ったポケモン。いわ、ドラゴンタイプ。ルナトーンはいわ、エスパータイプ。
ロックカットにより、素早いのはこちら側だった。
「リフレクター!」
その大顎から、図鑑を開かずとも物理型だと分かる。実際図鑑を見てみるとやっぱり物理攻撃主体のポケモンらしく、のしかかりや噛み付く、頭突きなどをしてきた。
「ムーンフォース!」
「チゴラス、戦闘不能! よって勝者、アサメタウンのルナ!」
3回ほどムーンフォースを放てば、すぐに倒れた。キズぐすりありとはいえ、ルナトーン1匹で突破できた形だ。少しはトレーナーとして成長できているだろうか。
ルナトーンがくるくる回る。観客席で見ていたオシャマリやロゼリアも集まってきた。オシャマリは回るルナトーンの周りをはねまわり、ロゼリアが両の花を合わせてぽんぽんと私の足を叩いた。勝利を労っているのだ。本来“それ”は私ではなくルナトーンに与えられるものだが、今回に限っては何も言わず受け取った。情報を集め、ページをめくり、必要な技マシン――“リフレクター”――をミアレにて(ネイティオが)購入、ルナトーンと事前打ち合わせも入念にした。戦闘中の指示出しやフィールド状況の把握なども頑張ったし、最低限“トレーナー”を名乗れるだけの事はしたのではないだろうか?
「ありがと」
勝負を終えたあとはバッジの贈呈がある。ジムリーダーがポケモンを戻してゆっくり近付いてくるも、ルナトーン達はまだ不思議な踊りを続けていた。放っておこう。
私はロゼリアを抱き上げた。何となく。いつの間にか傍に控えるかのように立っているネイティオも一言鳴いて、祝福してくれた。こいつは最近私の執事気取りだ。まあ、私もかなりこき使ってしまってるから何も言えないが。
「……あなたは今、ひとつ壁を登りきりました。いえ、既に登っていたところだったかもしれませんね。ジム制覇の証に“ウォールバッジ”をどうぞ」
でこぼこした不思議なバッジを受け取る――前に、ロゼリアに奪い取られた。バッジケースを渡すと花の手で器用に嵌め込む。うーん、締まらないなあ。
今回のジム、私結構頑張ったんだけど。
主にボルダリングを。
ショウヨウジムは挑戦者がボルダリングで高い壁を登らないとジムリーダーに挑戦できないつくりになっており、トレーナー側にもある程度の膂力・体力が必要とされた。旅で鍛えられていたとはいえ、普段使わない筋肉を使った。明日は筋肉痛で動けないかなあ。最悪、今日の内に来るか。
その後は技マシンを貰って、砂で作られた滑り台を滑って入口まで降り、そのままジムを出た。
早めにホテルに帰って、ご飯食べて寝よう。予定通り、ちょっと豪華なご飯を。
と、その前に。
「ウォールバッジ、ゲットだぜ……てね」
ちょっと恥ずかしく思ったが、ルナトーンはいつもより若干強い勢いで、くるくる回った。