『不屈』のダンジョンヒーローがいる   作:甘空

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ビール飲みながら執筆してる時が人生で一番幸せかも。


6.会議は踊る。されど

 白髪短髪に赤目と、属性盛り盛りの現代に現れたチートイケメン、月下祐樹が目の前にいる。……たしか、アイドルをやっているんだったか。納得の顔面パワーである。

 

 ていうか、そんなことはどうでもいいんだ。それよりもふざけんなよマジで。お前の声を聞いて周囲の連中、みんなこっち見てんじゃねえか。こんな目立つ状況で、声なんて掛けてんじゃねえよ。

 

 ……なんて、善意で話しかけに来たのであろう、このイケメンに言えるはずもなく、俺は溜息を吐く。

 

「久しぶり、遙真」

「久しぶりだな、祐樹。帰ってくれ」

 

 おい、ニコニコ笑いながら目の前に立つな、お前の顔面、輝いて見えて眩しいんだよ。

 ほら、隣に居る女子二人組が、顔赤らめてお前に釘付けになってるじゃないか。

 

 案の定、ざわつきが広がる。遠巻きにこちらを見ていた参加者たちの、こちらを探るような視線が全身に刺さってくる。

 

 上位の探索者達の民度……というか、振る舞いの傾向自体はそこまで悪くないのだ。彼らは、自分達のことを多かれ少なかれ、ある程度人類の代表だと思っている所があるため、それなりに規範意識が高い者が多い。

 その代わりと言ってはなんだが、自分は特別であるという感覚から、選民思想に染まっている者も多くおり、非探索者や、弱い探索者に対して直接的な差別はしないまでも、「見下しています」といった感じが伝わってくるため、相手にすると非常に面倒臭い。

 

 そんな中で、大してランクの高い訳でもない、言ってしまえば「モブ」と、頂点に君臨する祐樹が気安く話していたらどうなるか。……まあ、語るまでもないだろう。

 

 俺は祐樹に視線を向けたまま、周囲から小声で浴びせられる声に気づかないふりを決め込む。

 

「……あれって月下祐樹だよね? 一緒に話してるの誰?」

「あいつ……今回の出席名簿に載ってなくね?」

「やたら偉そうじゃなかった? もしかして関係者?」

 

 これだから、探索者の集まりは嫌いなんだ。

 どう足掻いたってランクの低い俺は異物になってしまうし、こいつら(ヒーローズ)に絡まれればそれだけ目立つ。

 

 ……悪目立ちはしたものの、佑樹が目の前にいて、こちらに絡んでくるほど馬鹿な奴はさすがにいないことが、唯一の救いだろうか。

 

 そこまで考えたところで、一人の男がこちらに歩いてくるのが見える。

 

「おい、君、先程から見ていれば、月下さんが話しかけてくださってるのに、その態度なのはどういうことなんだい」

 

 いたわ、馬鹿。

 

 いや、えぇ……。

 何考えてんだ、こいつ。話している中に割り込んでいちゃもんつける方が、明らかに失礼だろ。何考えてんだこいつ。(二回目)

 

 あまりに唐突に割り込んできた男に、呆気にとられて固まっていると、男は続ける。

 

「うん? 怯えているのかい? まあ無理もない、なんせ私はアナザーランキング12位、琉戸大和(るどやまと)()()()()()()()()()()()、だからね」

 

 ……何言ってるんだこいつ? ダンジョンヒーローって、ヒーローズに所属している探索者の呼び方であって、任期制とかじゃないだろ。そして、あいつらが、ゲームメンバー以外をクランに所属させるわけが無い。

 

 思わず、「どういうことだ?」という意味を込めて祐樹の顔を見つめるが、「いや俺も知らないけど」という言葉が聞こえてくる顔で、首を細かく振る祐樹。いや、お前も分からないのかよ。

 

 誇らしそうに言う琉戸に、どう反応したらいいのか分からず困っていると、俺がピンと来ていないことが分かったのか、琉戸が説明を加える。

 

「我々上位探索者の中にはね、こんな噂があるんだよ。曰く、『ダンジョンヒーローズは十二人目のメンバーを探している』とね」

 

 だからダンジョンヒーローを除けば日本の中で一番上位である自分がダンジョンヒーローに一番成りうる存在であるだろう、と琉戸は言った。

 

 ……いやまあ、そんな噂があれば、もしかしたら自分がヒーローズに入れるかもしれないと期待してしまうのも理解はできる。ここまで思い込んで自分に自信を持てるのはなかなかすごいと思うけれど。

 

 ここまで自信満々に話かけられると、どう返答していいものか分からず言葉に詰まっていると、間に祐樹が割り込んできた。

 

「まあまあ、琉戸君やめようぜ。こんな場で騒いだら周囲からもよく思われないぜ?」

「……む、月下さん。あなたが止めますか」

 

 流石に佑樹には先程のような態度は取れないようで、琉戸は言葉に詰まった様子を見せる。

 

『探索者の皆様。ご多忙の中お集まりいただきありがとうございます』

 

 ――場が硬直したそのタイミングを見計らったように声が響いた。

 周囲の照明が消え、一斉に静けさを取り戻した会場にコツコツと足音が響き、声の主がマイクを握って現れる。その声を聴いた俺達は誰一人として声をあげることなどできない。

 

 当たり前だ、今ここでこの声の主に軽々しく話しかけられるような人物は佑樹ぐらいしかいない。なぜならこの声の主は――。

 

『皆さん、改めてこんにちは。知っている人も多いでしょうが、私はダンジョンヒーローズ、()()()()青柳玲央(あおやなぎれお)です。今回も私のような若輩者が司会進行を執り行うこと、ご容赦ください』

 

 青柳玲央。

 世界最強の探索者と言われており、発足時からダンジョンヒーローズのリーダーを務め続けている男。

 こいつを見ているとアニメの主人公がそのまま現実に現れたような錯覚を覚える。

 

『さて、我々には常に時間がない。挨拶はこれくらいにして今回の集会の趣旨について話していこうと思います』

 

 会場全体の意識が玲央の言葉に向いているのが分かる。

 

 過去に絡みがあり、その人柄がある程度分かっている俺でも感じるほどに玲央の言葉にはカリスマがある。

 強力な能力はあるものの、実戦においては何の訓練も受けていない素人集団と、魔法等に触れてこなかった一般人を纏め上げたこのカリスマこそ、日本をここまで救うことができた大きな要因だろうと俺は思う。ゲームの中で得たの力をただ引き継いだだけの俺には持っていない、人としての本物の「強さ」だ。

 

『皆さんの一部でもどうやら噂が回っているようですが、私たちダンジョンヒーローは現在新たにメンバーを一人増やすことを検討しています』

 

 ……あ?

 

 俺が動揺で一言も声が出せなくなっているのをよそに、玲央の言葉で周囲は大いに盛り上がる。

 

 『実は、その候補の人物についてはメンバーの中では()()満場一致で決まっているのですが、何分現在その人物は現在目立った実績を持っていない状態です』 

 

 チラリと玲央がこちらを見たような気がした。冷や汗とともに、周囲の声が遠のいて聞こえるのが分かる。

 

『それでも今後激化することが予想される戦いに向けて、私達には彼の力が必要不可欠であるとの判断を下しました』

 

 そうしておもむろにこちらに向けて玲央が指をさしてくる。

 

『彼こそが私たちの推薦する人物。黒種遙真です』

「へぁっ」

 

 は、嵌められた……!!

 

 会場中の鋭い視線が一斉にこちらに突き刺さるのが痛いほど感じられる。

 

 ……とりあえず、こちらをニヤついて見ている佑樹と、企てに確実に参加しているであろう玲央、松笠さん辺りはいつかボコろう。

 決意を固めつつ、この状況をどう打開したものかと悩んでいると、すぐ近くで声が上がる。

 

 「納得いきません!!」

 

 半ば予想はついたが、声の主を見ればやはりというか、琉戸だった。

 

 こいつマジかよ。この状況で玲央相手に堂々と意義唱えられるのは、英雄の素質あるだろ。

 とはいえ、渡りに船。琉戸の後ろに隠れて「そーだ!そーだ!」と煽っておく。

 

「何故、私含め実績も才能もある探索者は大勢いるというのに、このような何の実績もない男が栄誉あるヒーローズへの加入候補として名を上げられるのですか!!」

 

 正論すぎる。

 お願いだから代わってくれないかな。

 

『そういった意見が噴き出るのも当然理解しているとも。それについては私の方から説明しよう』

 

 玲央の声とは違う、低い声が会場に響く。

 

 ……ああ、そりゃ当然いるよな。なんせ俺に対して名前を出してまで手紙を送ってきたんだから。

 言葉とともに、玲央の横に堂々と歩いて現れたのは、黒い和服に身を包んだ一人の男。俺の知っている限りでは彼は今年で70歳であるはずなのだが、その様子を全く感じさせない、覇気が感じられる。

 

『改めて特異境界統制庁長官、松笠瑛大より説明させていただこう』

 

 松笠さんはそう自己紹介をして堂々とした立ち振る舞いで、言葉を続ける。

 

『まず、大前提として先ほど青柳君が説明したように、彼、黒種晴馬をダンジョンヒーローズに所属させることはこれからの日本防衛において必要不可欠な事項であると考えている。これは紛れもない事実であり、そしてそれが世間から受け入れられないことも理解している』

 

 ヒーローズは結成当初から十一名構成で、これまで他のクランと協力することなんかはあっても、人員を増やすことは頑なにしてこなかった。世界一位のクランに加入したいと希望する声は世界中からあっただろうし、その中には琉戸のような実力と実績に富んだ優秀な人物も多く含まれているだろう。だというのに全く実績のないぽっと出の俺を参加させるなど、普通の人から見ればおかしな話であるし、受け入れられることもないだろう。

 

『そこで、我々は多くの人に彼の加入を納得させる手段として、探索者によるダンジョン攻略の能力を競う大会を公開で行い、そこで優勝した人物をヒーローズへ加入する権利を与えようと考えている』

 

 その言葉を聞いて会場内が一気に大騒ぎとなる。当然だ、だって今の提案は自分にだって加入の権利が得られる可能性があるのだから。

 ……というか、俺はこの大会に参加しなければ万事解決なのでは?

 

 そのまま、松笠さんは大会の概要、日時について話していき、熱狂のまま会合は終了を迎えた。

 

 

 

 ……みんな、そうまでしてヒーローになりたいものかね。




Tips:ステータス
自身の能力値について表記されたもの。第一次ダンジョン侵攻時から全人類が見れるようになった。表記される能力は自身に含まれる最大魔力量・現在の魔力量、所持しているスキル、能力である。ちなみに平均的な探索者のステータスは以下の通り。

ENG-25/25
SKILL 1/6(大体0~1個。日本では探索者になるときにスキルを一つ以上所持していることが義務付けられている)
能力 無し(基本的に先天的なものだが、後天的に発現する可能性もごくまれにある)



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