大庭雨傘物語   作:Poko.bell

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視点がコロっと変わります。

(視点先のキャラ名書かなくて大丈夫かちょっと心配)




第23話

 

 

 

 

 

季節の移り変わりなど普段だったら気にも留めないのだが、今年の幻想郷の冬は体感長く感じられた。その理由を地上のことに詳しい知人に尋ねたところ、どこかの誰かさんが幻想郷の春を私的な理由で集めたことが原因であるとのこと。そのせいでお酒の美味い春の時間が短くなってしまったらしい。

 

 

 

春を集めるなんて馬鹿する奴は、きっと自分勝手で傲慢な性格をしているのだろう。出来る出来ない以前に思いついたとしてもまずやらない。春夏秋冬が巡るのはこの世界の理である筈なのに、それを捻じ曲げて自らの思いのままにしてしまうなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて面白い考え方だろうか。

 

 

 

 

 

 

欲しいものがあるなら無理矢理奪えばいい。それができるのは力ある者の特権だ。

 

弱肉強食。

なんて分かりやすい。

 

この世界にもまだそんな私利私欲に塗れた輩がいたみたいで嬉しい。

 

妖とは本来本能の赴くままに生きるべきであり、恐れられてこそ存在意義がある。最近の若輩者はそれをまるで分かっておらず、我が身可愛さに闘争心が抜け落ち、腑抜けた奴らしかいない。

 

太古の昔から繰り広げられてきた薄汚れた欲と欲のぶつかり合う闘争。その時代に身を置いた私に言わせればこの世界はぬるま湯でつまらない。

 

妖怪たちの最後の楽園?

 

あいつの作った世界にケチを付けるみたいだが、結局自分達の都合のいいように人間を飼い慣らして平穏を謳ってるだけだろ。いつかくる終わりにビクビクと震えながら生きることに意味なんかない。それをあいつは分かっていないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ愚痴愚痴と文句を垂れてしまったが、それも数百年前までの話。殆ど地底に篭っていた私には最近のことなど全く分からないのだが。

 

曰くその覗きが趣味の知人が言うには、最近の幻想郷は中々に活気付いていて面白いらしい。

 

こいつの言う面白いがどういうものなのかは知らないが、その話を聞いて私の闘争心にも少し火がついてしまったわけだ。

 

 

 

連中がどれだけ力を蓄えたのか知るいい機会でもあるし、短い春も少なからず満足できるものになるかもしれない。

 

口実なんてそれで充分。

暴れることさえ出来ればいい。

好きにやらせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がっかりさせないでくれよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は博麗神社で花見という名目で宴会が催される。最近勢いづいている例の人間、霧雨魔理沙が各方面に宴会の誘いを呼びかけ、多くの人妖が集まる規模の大きいものになったらしい。

 

やはりあの人間は観察対象として中々に面白い。出生を調べても何の変哲もない唯の人間が錚々たる面子に顔が知られているだけじゃなく、一個人として周知されている事実。きっとこれからも彼女は色んなことに首を突っ込んでくれて面白可笑しい物語を生み出してくれることだろう。

 

是非とも今後もよろしくさせてもらいたい。

 

 

 

さて、私は日頃からネタ集めに奔走している為、幻想郷の人妖共には顔がそこそこ広い。

私の顔を見ると大抵は嫌そうな顔をしてくることがその証明だ。新聞記者としては冥利に尽きる限りである。

 

そんな私にとって多くの人妖が集まる宴会とは、まさにネタの宝庫といっても差し支えない。皆お酒が入る分口元が緩みやすくなり、情報を突っつきやすくなる。楽しい空気をぶち壊しでもしない限りは、皆嬉々として聞いてもいないことまで語り明かしてくれるだろう。

 

そうして後日その新聞が見出し一面に載せられて意気消沈するところまでがセット。実に滑稽で面白い。

 

こんなことばかりやっているから嫌われているんでしょうが、まあいいです。

 

 

 

 

 

まだ陽も落ち切っていない時間。天狗秘蔵のお酒を手土産に博麗神社に辿り着くと、そこは既に多くの参加者で賑わいを見せていた。見知った妖精から妖怪に至るまで名だたる連中が集まりながらも、それぞれがそれぞれの領域の中で騒ぎ散らかしている。周囲は桜の木々が提灯でライトアップされて中々に風情があるというのに、その騒音と痛々しい光景が色々と台無しにしてしまっている。

 

まあ妖怪連中の宴会なんてこんなものだ。いつも山で催される宴会でも言葉に言い表せない風情のへったくれもない光景が広がっているので、もう見慣れてしまっている。

 

私はその景色をパシャリと一枚写真に収め、神社の入口へと降り立つ。境内の人妖はそれぞれ少数のグループで色々なところに散らばってグラスを片手に肴をつまんでいる。

 

さて、何処からお邪魔しようか。

 

 

「あ、天狗のお姉さん!」

 

 

境内の参加者らを見渡していると、見知った妖精が私に気付いてふわふわとやってくる。

 

 

「おや?チルノさん。貴方もいらしてましたか。」

 

「とーぜんだ!今日も私のえーゆーたんを聞きに来たのか?」

 

「ええ。それももちろんですが、今日は他にも色々な方からお話を伺おうかと。」

 

 

彼女らがよく遊んでいる霧の湖は妖怪の山にも面していることもあり、何かと取材する機会がある。内容はほとんど中身は無く、記事に出来るものは多くは無いが話を聞く分には面白い。何より妖精は警戒心が薄く、こうやって自ら話しかけてくれるので私にとっても気負う必要が無いのがまたいい。

 

 

「大妖精さんは一緒ではないのですか?」

 

 

いつも一緒にいるはず緑髪の妖精の所在を聞く。いつもなら自由奔放なチルノの後を追いかけて後ろからやってくるのだが。

 

 

「大ちゃんなら今人形の作り方を教わっているぞ。」

 

 

チルノの視線の先には、一から人形を作って見せているアリス・マーガトロイドの姿とそれを真剣に聞いている大妖精の姿があった。魔法使いと妖精。中々に珍しい組み合わせである。あの人形遣いは人里でも子ども相手に人形劇を披露したりと中々に面倒見が良い性格をしているので不思議ではない。

 

 

 

しかし常々気になっているのはアリス・マーガトロイドの目的。

まさか小さい子の相手をするのが好きだからこんなことをやっているわけでもあるまい。外面だけ見れば人間側に近い所に位置はしているように思えるが、彼女の本質は魔法使い。果たしてその胸の内に何を秘めているのか。

今の所彼女の行動にボロはない。しかしいつか貴方のその化けの皮が外れる日が来ると思うと楽しみで仕方ないですよ、私は。

 

 

「天狗?アリスをじっと眺めてどうしたんだ?天狗も人形作って欲しいのか?」

 

「あはは。そうですね。また機会があればお願いしましょうかね。」

 

 

あそこに集まっているのは大妖精、アリス・マーガトロイド、パチュリー・ノーレッジ。大妖精はともかく警戒心の強い魔法使い二人のところに今私が行ったところで相手してくれる筈もない。そもそも二人がお酒に酔って口が軽くなる姿もあまり想像できませんが…。まあ後でまた見に来るとしましょう。

 

 

「それにしても大妖精さんも勤勉な方ですね。態々宴会の席で人形の作り方を教わるとは。」

 

「誰かにプレゼントしたいんだってさ。誰なんだろうな。」

 

 

多分貴方のことでしょうに。それに気付かないのもらしくはあるが。

 

 

 

友達の為にプレゼントを作るなんて愛に溢れてていいものですね。

私だったらきっとそいつの油断しきったあられもない姿をカメラでこっそり撮って送りつけてやる。人里にばら撒いて欲しくなかったら仕事しろと強迫材料に使うことだろう。泣いて私の家に押しかけてくるそいつの姿が目に映る。

 

或いはそれも一つの愛の形なのかもしれない。

 

 

 

「よし、天狗!取材を一緒に手伝ってやるぞ!」

 

 

突拍子もなくそう言い放ち、私の手を引っ張って先導し始めるチルノ。まあ思考や発言の過程等を色々すっ飛ばしてしまう妖精と接するならこんなことも日常茶飯事だ。今回の場合きっと大妖精がいなくなって暇だったからなのだろう。この子は退屈凌ぎに私の取材に同行したいのだ。

 

 

「そうですね。一緒に取材しましょうか。」

 

 

こういう場では取材と言う体よりも、話しを巧みに誘導して相手から自然体のままに話を聞く方が色々と情報が得やすい。そういう意味ではチルノが傍に居てくれるだけで取材をしているという認識が薄れ、警戒心が解けて色々話してくれる可能性が高い。

 

要は人数が多いに越したことはないということ。この宴会もどうせ夜遅くまで続くのだ。ゆっくり話を聞いていくとしますかね。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

チルノの後に付いていくと珍しい顔が意外な面々とお酒を飲んでいた。

 

 

「こんばんは、妹紅さん。貴方がこんなところにいるなんて珍しいですね。」

 

 

行動範囲が狭く、人里以外で中々話を聞く機会が無い藤原妹紅。その隣には美味しそうにお肉に齧り付いている宵闇の妖怪ルーミアと、小さいおちょこでちびちびとお酒を飲んでいる春の妖精リリーホワイト。繋がりの全く見えない三人が一緒に座って飲んでいた。

 

 

「ミスティアの奴に誘われたんだ。…小傘も飲める状態じゃないらしいし仕方なくな。」

 

 

藤原妹紅は不機嫌そうに手元の一升瓶をそのままごくごく飲み始める。この人間は付喪神の妖怪、多々良小傘と人里の飲み屋で飲み明かしている姿が人里で度々目撃されている。その他にも寺子屋で子どもと遊んでいたり里の自警団の駐屯所で人間を鍛えていたりと、中々に里に馴染んでいるようだが、その実態は唯の人間ではないことは分かっている。

 

十数年前から里に忽然と姿を現した彼女。その前までは恐らく今の住居と同じ竹林に住んでいたのだろうが、初めて出会った当初から外見が一切変わっていない。纏っているものは人間のものと遜色ないので先程は人間と称したが、実際どうなのかは本人に聞いてもはぐらかされてしまう。

 

アリス・マーガトロイドと同じく、最近は人里でもそれなりに知名度が上がってきているので、記事にするのにうってつけのカモである。しかし多分彼女は私よりもお酒が強いので平時と変わらない素面の状態で聞き出すしか無い。

 

ここで秘蔵のお酒を出すのは勿体無いので辞めておこう。

 

 

「その両隣の方々は?」

 

 

取り敢えず今一番気になっているこの状況について聞いてみる。彼女も子どもの相手を普段からしているとはいえ、まさか小さい子をお酒で酔い殺していかがわしいことをする変態でもあるまい。

 

 

「…ああ。ミスティアも厨房の方に行っちゃって知り合いもほとんどいないもんだからさ。どうしたもんかと思ってたんだけど。」

 

 

そう言うと藤原妹紅は手近なところからお肉を取ってきて自然な動きでそのままルーミアの方に持っていくと、ルーミアはそのお肉に妹紅の手ごと嚙り付く。妹紅の指が何本か噛み千切られ、血が溢れ出ながらもルーミアは美味しそうに噛み締める。

 

その異常な光景に理解が追い付かず固まってしまう。

 

 

「餌付けしたら何か集まってきた。」

 

 

 

 

 

…ああ、成程。少し理解が出来た気がする。

 

 

こいつ、頭がイかれているんだ。

 

 

 

「あ、ルーミア!腕までは駄目だって。」

 

 

 

こんな奴がよく人里に出入りできてるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、隣のリリーさんはどうしてこんな所に?」

 

「天狗―。前が見えないぞー。」

 

 

現在進行形で血が噴き出している妹紅の手。それを見せないようにチルノの目を覆いながら、隣にいるリリーホワイトに話を振る。

 

 

「…ふぇぇ?」

 

 

今まで俯いていたリリーホワイトが頭を上げると、顔があの紅魔館の外装よりも真っ赤に染まっていた。

 

…明らかに酔い潰れている。頭をふらふらと動かしていたと思ったら、突然前のめりになって肩を掴まれると

 

 

 

 

 

「わ、わらしはねぇ。かなしいんれすよぉ!」

 

 

 

 

 

目の前で叫び始める。呂律も回っておらず、恐らく私が誰かすら認識もしていない。

 

 

「リ、リリーさん?」

 

「こがらはんはふるとおほってきはほひ、ほうしていなひんれふか!」

 

 

…呂律が回っておらず何を言っているのか理解できない。

まだ宴会も始まってそこまで時間は経っていない筈なのに、どうしてこんなことになるまでもう飲んでしまっているのか。

 

 

「小傘さんが来ると思って来たのに、どうしていないんですか!だって。」

 

 

隣で何故か聞き取れたチルノが翻訳をしてくれる。

同じ妖精どうしで繋がるものがあったのかもしれない。

 

 

 

もうそういうことにしておこう。

 

 

「こいつは何故か小傘に懐いているらしい。しけた面して俯いてたもんだからお酒をちょっとね。」

 

 

この現状全部貴方のせいじゃないですか。

 

というか腕にルーミアを付けたままこっちの話に入って来ないでください。

 

 

「…ううっ。」

 

 

リリーホワイトはそのまま俯いて泣き出してしまった。

どうやら彼女は泣き上戸らしい。肩を掴まれているこの現状は側から見れば私が泣かせているように見えていることだろう。酷い濡れ衣である。

 

こうやって冤罪というものは生まれていくんですね。勉強になります。

 

 

 

 

 

 

…はぁ。…仕方ない、こうしよう。

 

 

 

 

 

「リリーさん。私は昨日小傘さんに会ってきたのですが、貴方が来るのを心待ちにしていましたよ。」

 

 

 

丸投げ作戦。勿論嘘である。でもまあ多分あの方なら上手くやってくれるでしょう。

 

 

 

「…ほんほに?」

 

「ええ。リリーさんの元気な声が聞きたいと。ですので今からでも小傘さんの家に向かわれてはいかがでしょう。」

 

「…えへ~。ひょうがないは〜。こがははんったら〜。」

 

 

何の疑いも持たず、あからさまに嬉しそうな反応をしながらそのままフラフラと人里の方面へ飛んでいくリリーホワイト。その後ろ姿は途中で落ちてしまわないかと心配になる程おぼついているが…まあ何とかなるだろう。

 

 

「ああ…。話し相手が…。」

 

 

ここで聞いたことは全て無かったことにしておきましょう。

 

リリーホワイトのはともかく藤原妹紅のことを記事に載せでもしたら逆にこっちに飛び火して来ることになるでしょうから。

 

 

 

それにしても…

この方は私が新聞記者であることを知りながら、新聞として大衆の面前に触れられる危険性を理解していない。

 

…いや、或いはこれは藤原妹紅にとっての常識の範疇だからなのか。

 

 

 

…。

 

 

 

この異常な一面を里の人間が知らないのは間違いない。

 

藤原妹紅の認識は改めておく必要がある。平然とした顔で人としての域を逸脱しているこれは何者なのか。

 

 

 

 

 

少なからずこれは人間じゃない。“化け物”だ。

 

 

 

 

 

そう頭の中で情報を書き替えておく。

 

 

 

 

 

「中々ゆーいぎな話が聞けたな!」

 

 

…ほんっと、能天気なチルノさんが羨ましいです。

 

 

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