「や~い。ば~か。あほ~。」
「…。」
「かさがぶさいく!つかいたくない!」
「…!」
突然だが、私には夢がある。
それは簡単に叶いそうな夢であって難しいもの。
生物なら誰もが持っているであろう欲求の一つで逃れられないもの。
お腹一杯ご飯を食べたい。
「まぬけ~。とんちんかん~。」
私の場合食事=驚きなので普通に何か食べ物を口に入れるだけでは全くお腹は膨れない。
お腹いっぱいになる為には私の驚かす技術をもっと引き上げて行かなければならないのだ。
以前まではあのお墓で人間がやって来るのを待っては驚かすということを毎日のようにしていたのだが。
最近の人間はどうにも反応が乏しい。驚かせてもまるで可愛そうなものを見るような目で見つめてくるだけ。
これは恐らくだが私がお墓に住み着いているという噂が広まってしまったことが要因であると考えられる。
だって事前に驚かせる妖怪がいるってわかったら心の準備が出来ちゃうじゃん。
相手の意表を突くのが私の得意分野なのに。
これじゃあお腹一杯になるという私の夢は遠くお星さまの彼方だ。
「…え、えっと。のぞきま!へんたい!」
そこで私は人間を驚かせる為の修行の旅に出ることにした。
まあ定期的にあのお墓には帰るつもりだけど。
この世界には人間以外にも色々な種族が住んでいる。だから打倒人間、目指せ満腹を掲げてまずは人間以外の者達で驚かせる練習をしようと意気揚々と旅路に付いた訳である。
だが現実はそう甘くなかった。
適当に道なき道を歩き辿り着いたのは森の少し開けたところにある妖精達の遊び場。
「…ひっぐ。酷いよ…。何でそんなこと言うの?」
現在、私は妖精達に囲まれていじめられている。
「ちょ、ちょっとないちゃったよ?どうするの?」
「わたしはほんとうのことしかいってないよ?ばかとかまぬけとかはただのわるぐちじゃん。」
「がらすのはーとなんだね~。かわいそうに。」
「ぎゃくにほめればもどるんじゃない?」
これでも自衛の手段は知っている。
弾幕ごっこ。
自らの妖力を形にして作った弾を相手と飛ばし合って、被弾の回数で勝敗を決めるという遊び。
困り事の解決方法は大抵この遊びに終着すると阿求ちゃんから聞いていたのだが。
「…私の傘は不細工じゃないもん。」
「…あ、きずついてたのそこだったんだ。」
言葉のナイフが深く突き刺さる。
悪口は言われ慣れてないのだ。
「でもどうするー?このあおいのさっきこそこそかくれてたしあやしいよー?」
「ぎゃくにうしろからこえをかけたらおどろいてこしをぬかしちゃったもんね。」
「でもこのかさちょっとおもしろそうじゃない?めがついててくちからしたがでてるよ。」
「いやだー。きもちわるいー。」
「うわーーーーん!」
弾幕ごっこで決着つけようよ。
何で輪になってか弱い妖怪をいじめてるの?
妖精というのは私が知らないだけで極悪非道な存在だったのか。
旅路の第一歩なのにまさか教えてもらったことがここまで活かせないとは。
第一私の傘は決して変じゃない。
この妖精達の感性がおかしいのだ。
…ううう。
「こらー!皆なにやってるの!」
突然周囲に甲高い声が響き渡る。
声の方向に目をやると、緑色の大きな妖精がパタパタと羽を動かしてこちらに飛んできていた。
「泣いてる子をいじめちゃ駄目だよ!それも一人を集団で取り囲むなんて!」
それは私にとっての救い船であった。
***
「ごめんね?あの子達が酷いこと言ったみたいで…。その…大丈夫?」
場所は少し移って近くにあった木製の小屋の中。
紅茶と呼ばれる香しい飲み物と甘いケーキというお菓子をこの子が食べさせてくれて、色々落ち付くことが出来た。
「うん。ありがとう、助けてもらって。」
この緑色の妖精。周りの妖精からは大ちゃんと呼ばれていたが、この子のおかげでさっきの妖精達は別のところへ遊びに行ってくれた。
しかもこんなに美味しいものまでご馳走になっちゃえるなんて。責めるどころか感謝の言葉しか出て来ない。
ここはこの子のお家なのだろうか。
周りを見渡せば眠る場所と今座っている椅子と机、そして花を育てているようであり色鮮やかな花が所狭しと並んでいる。
簡素なお家にも見えるが、お花の良い匂いも相まって中々良いお家だと感嘆の声が漏れてしまう。
「その…悪い子達じゃないんだよ?ただちょっと好奇心旺盛というか…遠慮がないっていうか…。」
別に責めている訳では無いのにずっと申し訳なさそうな顔をしている妖精。
さっきの妖精達の性格を自由奔放と表すならこの子はしっかり者みたいな感じがする。
皆をまとめているリーダー的な。他の妖精と比べて何だか大きいしそういう立ち位置の妖精なのかもしれない。
「気にしないでいいよ。妖精っていうのは寧ろそうでなくっちゃ!」
私も少し妖精のことを見誤っていた部分がある。
彼女達が悪戯とか弾幕ごっことかそういう遊びが大好きなのはきっと間違いない。
さっきみたいなことになったのはこの子の言うように、ただ見かけたことのない私という妖怪に好奇心から向かってきたのだと。彼女達なりの挨拶なのだと。
そう思えばさっきまで泣いていたのも馬鹿らしくなってくるというものだ。
「小傘ちゃんはどうしてここに?木の陰に隠れて皆が遊んでいるところをじっと眺めていたって聞いたけど。」
ふふふ。よくぞ聞いてくれました。
それは私に与えられた宿命。
背負うべき責務。
私は立ちあがり、正面に座っている大ちゃんに向かって傘を広げ
「おどろけ~!」
声高らかに口上を述べる。
抱腹絶倒、一撃必殺。
受けた者は我を忘れ声も出せない。
「…え、えっと。ごめんね?ど、どう返せばいいんだろ…。」
…まあ今のは不意打ちでも無ければ少し加減したし流石に驚かないよね。
「妖精の存在意義が自由なら、私は驚かすこと!まだ未熟な私はこうやって出会った妖怪やら妖精を驚かす修行の旅に出てるのよ!」
「は、はぁ。」
何言ってんだこいつみたいな顔で見られている気がする。
異端者というのは総じて受け入れられない運命が待っているものである。悲しいね。
「要するに小傘ちゃんはまだ生まれて間もないってことだよね?色々と心配になる性格してるし。」
「その通り!つまりこれからまだまだ伸びしろがある妖怪の卵だよ私は。これが孵化して成熟しきった時、私は…!…どうなっちゃうんだろ。」
「あ、あはは。」
これからどんどん技術を上げて行けばいい。その為には実践あるのみ!
…ってことで、今の私の標的は今も尚外で楽しそうな声を響かせている、かの妖精達だ。
彼女らも運が悪い。私に目を付けられてしまったんだから。
そのキャッキャと騒いでる声を震えた悲鳴に染めてあげるよ。
……まあ今日はちょっと都合があるから見逃してあげるけど。
「そろそろ行こうかな。早くしないと日が暮れちゃうし。」
本来妖怪というのは夜型であるのらしいが、私は昼に活動するタイプである。
人間が活動しているのも昼なので私もなんとなくそれに従っている。
夜って怖い妖怪しかいないイメージあるからね。それを驚かせるのはまだちょっと私にはレベルが足りない。
「この後何処に行くかって決まってるの?」
「特には。でもまあ取り敢えず妖怪の山ってとこを目指そうかなって。」
少し遠くの方に聳え立っている凄く高い山。
あの場所にはその名の通り多くの妖怪達が住んでいるのだそうだ。
山籠もりっていう修行もあるみたいだし、自らを鍛え上げるのに適した場所なのではないだろうか。
「…止めておいた方がいいよ。あそこ余所者に結構冷たいし。」
「別に遊びに行く訳じゃないよ。危なそうだったらすぐ引き返すつもりだし大丈夫大丈夫。」
「…うーん。」
まあ修業とは言っても過酷だと最終的に弱音を吐くのは目に見えている。
だからこそ自由気ままに楽しむという気持ちは忘れないでいたい。
実はこの旅の主な目的は驚かせる技術の向上の他にもう一つある。
それはこの世界を巡り、色々なものを知ること。
自らの足でこの世界を練り歩き、見聞を広めるということも目的の一つなのだ。
まだまだ私自身この世界がどういう風に回っているのかとか先輩妖怪達の生き様がどんなもなのかとか、気になることはいっぱいある。
今この私を突き動かしているのは探求心。それが尽きない限り私のこの足が止まることは無い。
何て向上心に溢れた化け傘なんだろう。誰か褒めて欲しい。
「ドンガラガッシャーン」
「たのもー!大ちゃん遊びに来たよー!」
それは何の前触れもなくいきなりだった。
突然向かいにある窓の方から凄い音を立てて何かが入ってきた。
「え?な、何事!?」
砕け散った窓のガラス片と入ってきた何かを交互に見やりながら何とか情報を整理しようとする。
この子の羽からして大ちゃんと同じ妖精みたいに見えるが。
「…あー。チルノちゃん、いらっしゃい。」
大ちゃんはそういうと立ち上がりそのチルノという妖精の前へと向かっていき、少し屈んで散り散りになったガラス片の一つを手に取る。
「…窓の修理、今から一緒にやろうね。」
…え、何この地獄の底から出たようなおどろおどろしい声。
今のって大ちゃんの声?
こっちから彼女の顔はよく見えないが、窓を割った本人はまるでこの世の終わりみたいな顔をしているのが見えた。
「…ごめんなさい。」
…まあ
取り敢えず大ちゃんを怒らせるのは金輪際辞めておこう。
***
「大ちゃんが家に招き入れるなんて…。お前は何者だ!」
窓の修理を終えて心機一転。
私を指差してそう問い掛けるチルノという妖精。
心なしか家の中が少し涼しくなっているような気がする。
何か寒さに関係する妖精なのかな。
「この子は小傘ちゃん。最近生まれた妖怪でこの辺りを冒険してるんだって。」
ぼうけん…冒険。いい響きだ。
さながら私は道なき道を進むさすらいの付喪神といったところか。
私の明日の行方や如何に…ってね。
「…この子からはなんとなくチルノちゃんと似たものを感じるんだよね。」
「んー?確かにこいつも私と同じで青いな。…もしかして、お前も氷の妖精だったりするのか!?」
「全然違うよ。」
この子の青と私の青は色合いが違うと思うんだけどなぁ。そもそも妖怪だし。
何をもって似ていると評したのやら。
「まあいいや。大ちゃんが似てるっていうってことは多分お前も強いんだろ?ならどっちが最強なのか勝負しよう
弾幕ごっこで!」
次の瞬間、チルノちゃんは私に向かって氷の弾を撃ってくる。
「…ちょっ!」
身体を逸らして何とか避ける。
氷の弾はそのまま家に当たること無く開いた戸の隙間の向こうへ飛んで行った。
「いきなりすぎない!?」
弾幕ごっこってこんな突然始まるものなのだろうか。
こっちにも色々と心の準備とかがあるのだけど。
…っていうかこのままじゃ家の中の物を壊して大ちゃんに怒られるのが目に見えてる。
「…。」
ちょっと笑顔になってるのが逆に怖い!
このままじゃ私までお説教の対象になってしまう。
「…もう!」
私は開いた戸から外に飛び出す。
チルノちゃんの望みは私との弾幕ごっこ。
「待て―!」
外に出れば自然と私の方に向かって来てくれる。
広い場所なら弾幕の対処も何とかなる筈だ。
弾幕ごっこ初心者なのでその辺りは感覚だ。
でもこういう日の為にスペルカードとかは準備してきたし大丈夫。
「…よし!」
いい勝負を目指して頑張ろう!
凍符「パーフェクトフリーズ」
……と思っていた矢先。い、いきなりスペルカード!?
こういうのって普通ちょっと撃ち合ってから使うものなんじゃないの!?
でも確かに相手の虚を突くという意味ではあり…なのか?
よく分からないけど。
「おらーー!」
豪快な掛け声とともにチルノちゃんから色とりどりの弾幕が飛んでくる。
えーっと…こういうバラバラで規則性のない弾幕はあまり動かず軌道をしっかり見ながら避けて…
「ここぉ!」
カラフルな弾幕が急に雪の結晶のような真っ白くなったと思ったら、その場でピタッと制止した。
弾幕の動きに集中していた頭が一瞬真っ白になる。
そしてなんと、制止していた弾幕が軌道を変えて再び動き始めたのだ。
「え、えー!」
放心していたことが仇になり、前後左右全ての弾幕がどのような位置にありどのような軌道で動いているのか把握出来ず、直感で避けることになる。
弾幕自体の密度はそれ程でもないのだが、慌てふためいた状態で全ての方向の弾幕を避け切れるはずもない。
仕方ない…ここは
「…よっと。」
身体を丸めて広げていた傘に自分の体を押し込み、傘を畳む。
こうすれば体全体が傘に包み込まれて被弾は無くなる。
名付けるなら完全防御モード。
三百六十度死角はない。
「え!?何それ!?」
「…っっっ!」
加えてこの傘は視覚を私自身と共有できるので、辺りを見回すこともできる。
…まあ痛覚とかも共有してるから体裁だけの防御なんだけど。雪の弾幕、冷たくて気持ちいい。
目の前には目を丸くして驚いているチルノちゃん。……と、下の方で声を噛み殺しているがお腹を押さえる程笑っている大ちゃん。何を笑っているんだろ。
でもまだ驚くのは早い。
この完全防御モードはなんとこのまま弾幕を撃つことが出来る。
攻防一体の私のスペルカード。喰らって驚け!
大輪「からかさ後光」
全方位に放射状の弾幕を放つ。
シンプルなスペルだが、途中で弾幕の形状を変えることで少し避けづらくなっている筈だ。
弾幕ごっことは美しさを競う遊びでもあるらしい。
被弾させたら勝ちなのか綺麗な弾幕だったら勝ちなのかその辺りはよく分からない。
まあでも美しくかつ避けづらいスペルカードを作ればいいということなのだ。
私のスペルカードは様々な試行錯誤を夜な夜な繰り返して作って生まれた自信作。
つまりは負ける気がしないということ!
でもこのスペルはあれだ。
傘を振り回すという類のスペルである性質上、傘を操って中にいる私も一緒に振り回すことになってしまうので
「ぶべべべべべべべべべべ」
ちょっと使うスペルの選択を間違えたのかもしれない。
攻防一体かと思っていたがまさか私の三半規管が試されるものだとは。
「その傘どうなってるのよ!?」
「あっははははは!!!」
一度傘から出て立て直したいところだが、チルノちゃんは何故か弾幕の動きに集中できていない。
集中砲火するなら今である。
「あばばばばばばばばばば」
「ちょ…う、うわあああああ!」
作戦が功を奏し、チルノちゃんはリズムを崩し始め、しばらくするとあっさり弾幕を受けてそのまま落ちて行く。
おお!初めて当たった!
頭がグワングワンして気持ち悪いけど、これは…私の勝ちでいいのかな?
***
「納得いかないわ!もう一回よもう一回!」
完全防御モードを解除し、落ちて行ったチルノちゃんの元へと向かうと、元気そうに駄々を捏ねているところだった。
やっぱり遊び好きの妖精だけあって負けず嫌いなのだろうか。私としても楽しかったし、望むところである。
「負けは負けだよチルノちゃん。不意打ちまでしたんだから。」
ところがそれを止めに入る大ちゃん。さっきまで笑い続けていたせいでその顔は少し涙目である。
「だって卑怯じゃん!あんなのどうやって闘えばいいのよ!」
「多分あのまま避け続けてれば先に音を上げたのは小傘ちゃんの方だったと思うけど。」
…まあ、うん。
正直自分でもなぜ勝てたのかよく分かっていない。
あのまま続けていれば確実に吐いていたし。
…傘が汚物で汚れなくて良かった。
「でも傘で弾幕を防ぐなんて反則だって!」
「チルノちゃんも弾幕凍らせたりしてるでしょ?小傘ちゃんは傘の付喪神みたいだし…一つの能力だと考えれば、私は有りだと思うなぁ。」
「むむぅ…。」
大ちゃんが凄い私の味方をしてくれている。
それも聞いてる限りチルノの言い分にしっかりと論理的に言葉を返している。
やっぱりすっごく頭いいよね。
チルノちゃんはしばらく頭を捻って考え込み、思考が纏まるとガバッと顔を上げて私の方を指差してくる。
「…ま、まぁ今回は私の負けでいいわ!次は絶対に負けないから…覚えておきなさい!」
そう捨て台詞のように言葉を吐き捨てて、チルノちゃんはどこか飛んで行ってしまった。
…あの顔は少し拗ねているようにも見えた。
友達である筈の大ちゃんが味方してくれなかったのが悔しかったのかもしれない。
「チルノちゃんったら…。ごめんね?チルノちゃん、熱くなったら周りが見えなくなっちゃうから…。」
初めに妖精にいじめられた時と合わせて二回目の謝罪である。やっぱりこの大ちゃんという妖精は他と比べて大人びている。
「私は良いけど…。チルノちゃんちょっと怒ってなかった?大丈夫?」
チルノちゃんが駄々を捏ねた要因には、私がちょっと初見で反則めいた動きをしてしまったせいもある。
それなのに友達からここまで自らの言い分を否定されてしまうと、少なからず裏切られたという気持ちになってしまうのではないだろうか。
「大丈夫。チルノちゃんは口ではああ言ってるけど全部分かってると思うから。」
それなのに大ちゃんの顔からは言いすぎてしまったという気持ちは全く感じられない。寧ろ笑顔でチルノちゃんが飛んで行った方向を見つめている。
「ただ負けず嫌いなだけ。そこが可愛いんだけどね。」
こう言えるのはきっと二人が私の想像以上にお互いを分かりあっている関係だからなのだろう。
阿吽の呼吸と言うやつである。ちょっと羨ましい。
私にもいつかそういう友人が出来たらいいのになぁ。
***
『森の少し開けた場所にある妖精達の遊び場。そこには悪戯好きで好奇心旺盛な妖精達が集まり、仲良く楽しく遊んでいる光景が見られる。そんな素敵な場所だった。』φ(..)メモメモ
「…小傘ちゃん?何書いてるの?」
「旅の記録を忘れないように紙に残しておこうと思ってね。」
こうやって形に残るもので残しておけば後々見返した時に色々と役に立つ…と、阿求ちゃんから教えてくれてもらった。
紙とペンは人里のもの。曰くかなり高価なものであるのだとか。
彼女にはかなり色々とお世話になっている。子どもと侮ること無かれ。
まあこうやって何か印象的な出来事に出くわしたら最後には忘れないように旅の記録を取る。
ゆくゆくはその記録が本になってこの世界皆の目に入るものになったりするかもしれない。飛躍しすぎかもしれないけど。
「…じゃあもうここを出ちゃうの?まだゆっくりしてくれてもいいんだよ?」
何だかちょっと寂し気な様子の大ちゃん。
そんなこと言われると次の場所に行く決意が鈍っちゃうんだけど。
一期一会とも言うし、出会いは大切にしたいと思っている。
でもこの世界は広くもあり狭くもある。
お腹がすいたら
「またここに遊びに来るよ。チルノちゃんとも因縁が出来ちゃったみたいだしね。」
気楽で楽しい旅にしたい。
そう思うのは別に悪いことじゃないよね?
「…何か困ったことがあったらまた頼ってくれてもいいからね。」
「ありがとう!助かるよ!」
本当に頼りになりそうなので有難くお言葉に甘えさせてもらう。
主に妖精にいじめられた時の助け舟として。
大声で大ちゃんの名前を呼べば今日みたいに駆けつけてくれるかもしれない。
…想像したけど私ちょっとかっこ悪いかも。
「また今度会ったら驚かすから、それは覚悟しておいてね!」
傘をパッと広げておどける。
事前に宣言してしまうと成功率は下がりそうなものだが、まあそれも試練ってことで。
…ってあれ?大ちゃんが下を向いて震えてる。どうしたんだろ。
「ご、ごめん。私小傘ちゃんの傘ツボ、かも。っっっ!」
そうして声にもならない声をだして必死にお腹を押さえる大ちゃん。
…私の傘、そんなに面白いかなぁ。さっきチルノちゃんとの戦闘中も笑ってたけど。
「傘に小傘ちゃんが入った時傘が大きく膨らんで…それで…目と口があるからそれが…可愛くて…っっ!」
…………まあ、変な傘だって笑われてる訳じゃないなら良かった。
自分じゃ見えないからよく分からないけど…多分、一頭身のまん丸い物体に目と口があるみたいな感じになっているんだと思う。
それが…可愛い、か。
「っっっふふっ!」
この世界には色んな妖精がいる。
いい教訓になったのかもしれない。