魔法少女育成計画PlayfulGale   作:皇緋那

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第一章:子供達の唄
草原に蝶と忍者


 ◇スワローテイル

 

「ぅ……こ、ここ……は?」

 

 目の前でシャドウゲールが機械の天使に変わり果て、突如として巻き起こった旋風に包まれた途端に、スワローテイルは気を失った。そして目を覚ましてみれば、これだ。ここはどこだろう。とにかく立ち上がる。周囲を見る。だだっ広い草原のような場所だ。これまで居た、儀式のために用意されていた裏山のような場所とは違う。寝ている間に、誰かに連れてこられた? にしては不自然だ。あれだけの人数がいて、スワローテイルだけを、こんな場所に置き去りにするなんて。

 だったら夢の中の話だろうか。夢の中だったら……幻の中だったら……と、考えるが、手にした箒がそうではないことを確信させている。これは現実……に、限りなく近い場所だと思う。よくわからないまま、それなりに周囲を調べてみようとする。草は、見た事のない形だ。空は、なんだか同じ形の雲が流れている。太陽の方向は、真上だ。正午なのか。それだけの時間を眠っていた感覚は、正直ない。

 そうやって歩いて、飛んで、ふらふらしていたら、急にバチッと、何かに触れたような感覚がある。結界にぶつかった時とは、少し違うものだった。

 

「なっ、何!?」

『チュートリアルをスキップしますか?』

「えっ? チュートリアル? って、なに?」

 

 目の前に浮かび上がったのはメッセージのウィンドウだ。よくわからないので、スキップしてはいけないものかと思い、いいえ、を押した。すると、いきなり電子音とともに、目の前に地面の中から這い出した骸骨たちが現れた。

 

『スケルトンが5体現れました』

「スケルトン!? ……あ! わかった! これは……ゲームだね!?」

 

 スワローテイルはあまり遊んだことがないが、そういえばいつだかスワローテイルの父が、妻──つばめはゲームにハマっていたことがあると、何気なく話していたことがある。それ自体はあまり関係ない話だが、これがゲームならばそうだ、敵が現れたら戦う他にないだろう。

 

「何かウィンドウが出るとかなのかな……わっ!」

 

 コマンドがあるのかと思いきや、スケルトンたちは単純に襲ってきた。手にした簡素な造りの槍を振るって、攻撃してくる。スワローテイルは咄嗟に飛び上がって避けて、反撃に拳を繰り出した。するとスケルトンはろくに避けようともせずにそのまま直撃を受け、ばらばらに砕け散った。残りの連中も似たようなものだ。これまで戦ってきた相手の誰よりも、手応えがなく、あっさりと倒せてしまった。

 

『おめでとうございます。マジカルキャンディーを5コ入手しました』

「マジカルキャンディー?」

『魔法の端末を確認してください』

 

 書いてあるとおりに、端末を見てみる。するとなんだか普段は見かけないアプリケーションが入っていて、せっかくなので起動してみる。すると目的地の方向と、『草原の町に向かおう』という次の目的が書いてあった。これに従えばいい、らしい。ついでに、アメのマークと一緒に、『5』と書いてあった。先程入手したらしいキャンディーは、実物ではなくこういうアプリ内の、いわゆるポイント的なものらしかった。

 

「あっちが町! だね」

 

 行けというなら先に進むまで。実際、何が起きたのか、スワローテイルには何もわからない。だったら、わかるまで、この状況に乗っかるほかにない。風もなく日光もあまり心地よくはない環境だが、空は空、飛び回って上から入ってやろうかななんて、箒に跨ろうとした。

 

「……ねえ、待って」

 

 呼び止められた。振り返ると、そこには忍者みたいな格好の魔法少女。呼吸のリズムからして、さっきまで走ってでもいたのだろう。ずんずんと近付いて来たかと思うと、掴みかかられるかと勘違いする勢いで顔を近づけてくる。

 

「その魔法の箒……どこで手に入れたの」

「え、あ、ラピッドスワローのこと?」

「……!!! どこで手に入れたの!!」

「それはその、えっと……裏城南で」

「裏? 城南地区なのは確かなの?」

「う、うん……だけど……」

「名前は!!!」

「す、スワローテイル、です」

 

 すごい勢いとすごい剣幕で、普通に話せる雰囲気ではまるでなかった。怒られているのだろうか。……裏城南絡みともなれば、確かに怒られるのも、仕方ないのかもしれない、が、忍者の魔法少女は瞳孔をすごく小さくして、より呼吸が乱れる。そんな姿にほんのりと既視感を覚えて、恐る恐る口に出した。

 

「ええと……お姉さん、わたしとどこかで……?」

「スワロー……つばめ……貴方は……」

「あ! お母さんのこと知ってるの? この箒のこと、知ってるってことは」

「……お母、さん? その箒は、貴方のお母さんのものだったり……」

「うん、だったりするよ。えーっと、確か魔法少女の名前は」

「トップスピード」

「そう! トップスピード! ……ってことは、お母さんの、魔法少女のお友達!?」

 

 母の魔法少女時代のことについては、正直なところスワローテイルもよくは知らない。彼女が命を落とした試験には生存者がいたとは聞いていたけれど、会いには行く暇がなかったのだ。

 

「お姉さんのお名前は?」

「……リップル」

「リップルさん! よろしくね!」

 

 隻眼で隻腕の忍者という風貌は確かに魔法少女の中では威圧感を放つものだったが、そもそも常に周囲を睨んで威圧感を放っているような魔法少女なら、大親友ふたりがそんな感じだ。もはやそのくらい普通である。

 

「リップルさんはこの状況について何か知ってたりする?」

「……何もわからない」

「そうだよね。わたしもなんだ。気がついたらここにいて」

「直前には何を……?」

「それは……」

 

 儀式のことは話していいのだろうか。そもそもの儀式は終わったことだし、いいんじゃないか。そういうことで、スワローテイルはリップルの手を握った。そして、プフレに頼まれた内容をかいつまんで話した。主にシャドウゲールと協力して、装置を修復してくれ、といった類の話だ。するとリップルはまた、驚いた顔をする。

 

「あの場にいたの……?」

「うん。リップルさんも?」

「いた……レーテの付き人をしていた」

 

 ということは、あの風を受けたはずだ。つまり儀式と、シャドウゲールに何かが起きた可能性が高い。見るからに何かが起きていた……というのは置いといて、プフレかシャドウゲールなら知っていることがあるはずだ。そして同じ儀式の場にいたリップルとスワローテイルは同じ草原にいた。他の魔法少女もいるかもしれない。そして、集まるとしたら、端末に指示された「町」だろう。

 

「とにかく行ってみよう! はい!」

「……はい?」

「せっかくだから、乗っていかないかな、って」

「ッ……」

 

 リップルは苦虫を噛み潰したような顔をして、弱々しく首を振った。……嬉しい提案じゃなかったみたいだ。ラピッドスワローのことを知っているなら、それが仲良くなる切っ掛けにできるかと思ったが、そううまくはいかないらしい。なんというか、リップルは、こう明らかにツンケンしているのがスワローテイルの友達に似ているから、どうも放っておきたくないのだが。

 そして乗らないなら、自分だけ飛んでいるのも変で、スワローテイルも歩いて町に向かった。道中、色々追加されているらしい魔法の端末に触る。後から追加されるらしい、今は使えない項目もある。『ミッション』はどんな感じになるんだろう。楽しみだ。

 

 そんな画面の上の方には『100/100』と書かれていた。タップしてみると、表示が切り替わり、『16/16』になった。もう一度触ると元に戻る。

 

「なんだろうこれ?」

「16……」

 

 数字の意味はわからない。首を傾げるだけで、それ以上発展することはない。リップルとふたりで歩くだけの時間が続く。スワローテイルは一通りアプリを触ってみた後、リップルの方を振り向いた。彼女はずっとこちらを見ていたらしい。何か用かと首を傾げてみた。リップルは気まずくなったのか、目を逸らした。

 

「落ち着いたら聞かせてほしいな、お母さんの話」

「……チッ」

 

 ほんの小さく、舌打ちで返してくれた。

 

「あっ! あれかな?」

 

 草原の中にいきなり現れた建造物の群れ。廃ビルがたくさん並んでいるだけみたいな光景だ。町、とはいうものの、人の気配はほとんどない。リップルはずっと警戒している。こちらも同様に、モンスターを警戒してみる。とはいえ何も出てこないままで、やがて噴水の広場が見えてきた。そこには人影もある。他の魔法少女だろう。目標とされていた地点だ。端末の表示も『クリア』に切り替わって、一安心だ。そして次には、効果音とともに切り替わる。噴水広場で説明を聞こう、だ。

 

 顔を上げる。周囲には、バラバラの世界観を持つ、魔法少女たちが複数人。数は……リップルとスワローテイルも含めて16人いる。あの表示はこのことだったのだろうか。リップルは魔法少女たちに対しても最大限に警戒心を向けている。確かに中にはちょっと異様な魔法少女も含まれているが、そこまで剥き出しにするほどか。それならスワローテイルから話しかけてやろうとして、前に出る体を止められた。

 

「……不用意に前に出ないで。魔法少女だからってお人好しばかりじゃない」

「心配してくれてるの? ありがとう、リップルさん。大丈夫! わたしだってわかってるつもりだから!」

「……チッ」

「あ! また舌打ち!」

 

 遠慮がないのもリップルなりに仲良くしようとしてくれている証拠……だったり、しないだろうか。

 

「そろそろ話しかけても大丈夫かな?」

 

 こちらに歩み寄ってきたのは真っ赤な魔法少女だ。リップルは身構えるが、スワローテイルの方が彼女を知っている。儀式の前にも会って、握手までしてもらった。大丈夫だからと彼女を宥め、

 

「大丈夫だから! お姉さんはキューティーフレーズ。苺のキューティーヒーラーなんだから」

「あぁ、全部言ってもらってしまった。そういうことで、間違いなく味方だから安心してほしい」

「……」

 

 リップルはフレーズを睨む。対するフレーズはやれやれといった顔をして、リップルからは一歩距離をとった。

 

「各々、連れてこられた理由の心当たりくらいはあるだろう? もっとも、正義の味方にはまるで見当はつかないけど。この空間が何者かの策略であることは明らかだ。乗せられるだけが最善策でもないんじゃないかな」

 

 饒舌に話すフレーズ。アニメではこういう時早回しになっていたが、実物はそうはならなくて、それなりに長い。

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