魔法少女育成計画PlayfulGale   作:皇緋那

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お久しぶりです。
現実でパン・デ・ミクの攻撃を受け、寝込んでいました。
みなさんも病原三姉妹には気をつけましょう。


幽霊船はゲームに挑め

 ◇ロスト・セレスティア

 

 細戯遺失とパーティを組んで、ミッションとやらに挑み始めてから、どれだけの骸骨を倒しただろう。

 骸骨たち、このゲームの雑魚敵であるらしい彼ら『スケルトン』は、エリアを歩いているとそこかしこから湧き出てくる。決まって数体固まっていて、中には体色の異なる個体が混ざっていることもあった。赤いのは好戦的で、剣で攻撃してくる。青いのは弓矢を持っていて、取り巻きの中に隠れて射るなど知性的な行動をしてくる。そのうえ、青の個体は素手で殴ると衝撃を返してくる特徴があった。腹いせに矢を投げ返してやったところ、反撃もなく安全に倒すことができた。近接攻撃に反応するのか、反射にも射程があるのか。ということは、赤は遠距離に反応するのかもしれない。

 その答え合わせは、スケルトン討伐ミッションをこなしたことによって得たキャンディを使い、購入した『モンスター図鑑』機能で確認できた。

 

「うひゃー、反射率100%! 思いっきりビーム撃ってたら死んでたねーこれ」

 

 赤と青の骨、『スケルトンパワード』『スケルトンスマート』それぞれのデータを見ながら、細戯遺失は笑っていた。何も知らぬまま攻撃を仕掛けていたら笑い事ではすまなかった。それでも楽しそうにミッションの一覧を見ている彼女に深いため息を吐いた。セレスティアは殺し合いに付き合ってやるつもりはない。魔法で無理やり付き合わされているこのパーティーごっこだけだ。襲われたら殴り返す。それ以上のことをするつもりはない。

 

「あ! ほら見て見て! これ。ボスクラスの敵とか倒したりするとアイテムがもらえることもあるみたい。で、ここを開くとね」

「抽選券?」

「そう。ランダムにアイテムが出るって。で、そこに、通行証が含まれてるんだ」

 

 通行証そのものの値段はキャンディ数個で買える安価なものだ。恐らくは他の貴重なアイテムに対するハズレとして設定されている。現にランダムからの出現率の表記は二十パーセント超えと、数パーセント前後の他に比べ明らかに高い。これを狙うことができれば、コロニー内の魔法少女を減らす必要が無い。

 

「なんだろうねえ、設計ミス?」

「知らないけど」

「いいや。でー、このボスを探さなきゃいけなくってー」

「ヒントとかないの?」

「ヒントを得るにはまた別のミッションクリアしなきゃみたい」

 

 意外とゲームとしてちゃんと作られているらしく、そのせいで一朝一夕でクリアはさせてくれないようだ。しかしむしろ細戯遺失はヌルゲーじゃなくてよかったとだなんて言いながら、ミッション一覧とマップ上のメモを見比べており、真面目に攻略しようとしているらしい。わざわざ死人を出そうとするゲームマスターの意図に嵌るなんて、セレスティアからすれば御免こうむる。

 

「雑談してもいい? セレちゃんさー」

「……何」

「外、出たい?」

「コロニーの外? そんなのどうでもいいけど……」

「違うって。ゲームの外。現実、帰りたい?」

 

 セレスティアは──もう、大事なものは何もかも持っていない。最愛の妹を亡くしている。最高の友人を亡くしている。最大の恩人を亡くしている。現実に帰っても、やることは厭世くらいなものだ。高校には行っていないし、派閥としての活動の報酬にも限界はある。何をしたい、というのは、思いつかなかった。言い淀むセレスティアに、細戯遺失は笑った。

 

「じゃあ一緒だ。帰りたくない組!」

「……は?」

「ボクは帰りたくないよ。このゲームがずっと楽しく続けばいいなーと思ってる!」

「……命懸かってても?」

「ゲームは常に生きるか死ぬかでしょ!」

 

 これは話が通じているのだろうか。細戯遺失と話していると、かなり年下を相手にしているようだ。セレスティアとて今は17、魔法少女歴の割にはかなりの若輩者だ。『クラムベリーの子供達』であれば、大抵セレスティアよりも歳上だろう。それが集められたであろう場で、目をつけてきたのが、よりによって歳下だったら、どうも憂鬱が勝つ。

 

「そんなに楽しい、このゲーム」

「まだわかんない。今のところは楽しい。あーでも、そこはあんまり関係ないかも。ボク的には自由に動けるだけで楽しいし?」

「はあ……?」

 

 言っている意味はわからない。いや、こいつの言っていることで意味のわかったことの方が少ないか。諦め交じりに、次のミッションクリアに向かう。ボスの出現に必要なフラグのうち3つは、赤、青、緑のスケルトンを倒すことだ。緑の『スケルトンスキルド』に関しては、まだ遭遇もしていない。今度は何を反射してくることやら、警戒は必須だ。そんなところにもワクワクしているのが細戯遺失であるらしい。

 

「こっち側の方はまだ行ってない。行くならこっちの方。パワードとスマートの出現した位置は少し離れてる。ならこっち側が有力」

「おお! セレちゃんもやる気になった?」

「なってない。記憶してるだけ。役に立つかもしれないから」

 

 そちら側は遺跡風のオブジェクトが多数見える場所で、いずれかの魔法少女が隠れ家にしていることは容易に想像がつく。だからこそ、セレスティアはなるべく接近を避けていたのだが、ゲーム上行くしかないならそうする。セレスティアは憂鬱を抱えつつ、細戯遺失に先導させると不安がゆえに、彼女よりも先に歩いた。

 

 そして。師匠のせいで無駄に鍛えられた直感が、ふと歩いていく先のことを予感する。ろくでもないことになると思い、さっさと下がろうとして、かなりの勢いで走り回る影が見えた。

 

「おー? なんだろあれ」

「知らないふりをした方がいい。そうだ、あそこに隠れよう、行こう」

「えー?」

「ちょっちょっちょっ!!! 待つウサ止まるウサ助けるウサ!!!」

「何も聴こえない。よし、行こう」

「ウサァ!!!」

 

 緑色の、魔法少女にも追いつけそうな速度で追いかけてくる、槍を持った骸骨がいた。あれがスキルドで間違いないだろう。このあたりにスキルドが出現する、というのはありがたい情報だ。だが、追い回されているあのバニーガール魔法少女には、正直なところもう関わりたくはない。噴水広場での出来事からして、明らかに面倒なことになる。だから介入しない。しない、絶対しない、しないはずだったのに。

 

「まずはお試し近接攻撃! ってね!」

 

 細戯遺失がゲーム機──実際はショップで購入した『武器』がゲーム機型だった──を振り回し、横から乱入してスケルトンをぶっ飛ばした。助けたかったとかそういうことではなく、これまで探していた敵だから、というのが一番なのだろう。次は試しに、そのゲーム機を投げて遠距離攻撃をしてみたが、反射はされなかった。特性が謎のまま、そのまま殴って倒す。本体は他の上位種スケルトンと変わらない耐久力だった。

 

「た、助かったウサ……おお救世主! 命の恩人ウサ!」

「え? 討伐数稼ぎたかっただけだけど?」

「お、ツンデレウサ? 流行るウサよ〜」

 

 細戯遺失が首を傾げる。そして、視線を落とし、彼女の手が謎の球体になっているのを発見し、何それ変なの、と呟いた。バニーガールは言いづらそうに声を出した。

 

「これには深い訳があるウサ。この緑の骸骨がそのへんに立ってたから、ウサの魔法を使って弱くして、ボコろうと思ったウサ」

「不意打ちだね!」

「手始めに武器を奪おうと、骸骨の手にウサの魔法を使うと……なんとびっくり、その効果がそのまま、ウサの手に跳ね返ってきたウサ!!」

「なるほど。魔法を跳ね返すのかな?」

「……厄介」

 

 飛び出したのがセレスティアでなくてよかったかもしれない。元より人を助ける気なんてないから、そんな心配もないが。

 

「そうだ! ウサをパーティに入れてほしいウサ! ね、きっと人数多い方がいいウサよ!」

「いらない」

「そこをなんとか〜、ほら、ウサを助けると思って〜」

「助けない」

「ミッション攻略あるからじゃあね!」

「なっ、そ、そんな、ウサ……ちょっと待って! 待ってってば! 見捨てないでぇー!」

 

 彼女は勝手についてくる。こちらはミッション消化、つまり戦いに出るというのに、戦えないくせについてくる。エンカウントがある以上、単独行動よりは安全か。セレスティアたちが敵にならない保障があればの話だが。

 

「ウサはウサ・アハっていうウサ。見つめ続けることで、その場所を変化させることができるウサよ。例えばそう、人の手をドラ〇もんの手に変えるとか! この手、スマホ持てなくて酷いウサ!」

「あーはいはい。サザ、ゲームの話でもしよう」

「えっ! いーの!?」

 

 これならそっちに付き合っている方がマシだと思い話しかけた。

 が、細戯遺失は予想外にテンションを上げていた。ウサ・アハの声をかき消すくらいに気持ちよく喋りだしてしまい、セレスティアは早くスケルトンに出てきてほしいと思うのだった。

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