魔法少女育成計画PlayfulGale   作:皇緋那

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拾い物と耳寄り情報

 ◇スワローテイル

 

「町の中やったら敵モンスターは出ない。安心や。魔法少女相手以外ならな」

 

 橋ノ下拾ヱが合流し、情報を共有してもらった。噴水広場から出ていないスワローテイルたちには、ゲームに関する情報が足りない。そもそもここが安全地帯であることも初めて知った。それを危険にしたのは病原三姉妹だったが、それはそれとして、モンスターは出現しない。

 基本的にはこれはゲームだ。モンスターを倒して、集めた通貨でアイテムを購入し、また戦いに出る。その末に、他の魔法少女と戦うことが設定されている。スワローテイルは……そうはしたくない。

 

「でもどうするんや? みんな仲良しで固まってても、ゲームは終わらへんで」

「他エリアのマスターをどうにかしなくちゃ」

「待ち伏せ?」

「同じことを向こうも考えてたら進まないやろ」

「……チッ……どうせアイツのことだから……後出しで何か言ってくる……」

 

 アイツ──というのは、あの電子妖精のことらしい。スワローテイルはファヴを知らない。確かになあと納得する拾ヱたちに、スワローテイルは恐る恐る声を出す。

 

「あ、あの! ファヴって、電子妖精のこと、ですよね? 一体、何をされたんでしょうか……?」

「……ん、なんや、知らんの?」

 

 拾ヱがとても意外そうな顔をしていた。同時に疑いの目を見せている。それに対してリップルが腰に提げた刃にそっと手をやるのが見えて、慌てて間に入る。本当に知らないんだと言うしかない。だって、なんとなくの見覚えくらいはあるとしても、それは恐らく別の話だ。

 

「皆さんご存知言うてたやんか。ほら、みんなわかるやろ? ウチらなら、なあ?」

「……まあそうだね。彼とは無駄に長い付き合いだったといったところかな」

 

 フレーズだけが返事をした。しかしリップルは無言。のっこちゃんも、ブギーも答えず。つまり、場には沈黙が流れた。

 

「なんやうちの勘違いか? んなことないよなあ。例の三姉妹はそれで有名。他にもそれっぽい面子やなかったか?」

「それ、っぽい?」

「んー、なんて言うんやろ。修羅場慣れ? っちゅーかなんちゅーか……」

 

 拾ヱが言葉を選んでいるのはわかっていた。衣を着せなければ、もっと酷い言葉で簡単に表現出来るんだろう。そのせいでまごつく彼女に代わって、ブギーの口からぽつりと呟かれた。

 

「……ひとごろし」

 

 ──。

 脳裏に浮かぶのは──自分が友達だと思っていた少女と──炎に沈む我が家と──彼女を、蛹の棺で殺したあの時の光景で──。

 

「今は関係ない」

 

 その思考を途切れさせたのはリップルの声だった。

 

「……ファヴは電子妖精。主は森の音楽家クラムベリーだった」

「クラムベリーって、あの」

 

 その名前を口に出した途端、また皆の表情が凍りついた。それもそう、だろう。スワローテイルの母が命を落とした事件の元凶だ。それだけでなく、それより前にも多数の事件……しかも、魔法少女試験と偽った殺し合いの主催という最悪の存在。それらを補佐していたマスコットが、あのファヴだという。

 

「……端末は……確かに破壊したはず……なのになぜ……」

 

 クラムベリーの持っていた端末は、リップルが壊したはずだという。しかし、あれは少なくともファヴと名乗っていた。だとしたら? 何者かがそのファヴのデータを復元した、のか。

 

「ま、ウチらはその、音楽家の試験の生き残り。いわゆる『子供達』や。あんたらもやんな?」

「あぁ。そうなるね」

 

 フレーズの返事に続き、ブギーも首を縦に振った。一方でのっこちゃんは縮こまっている。

 

「えーっと、なんやっけ、名前」

「あ、スワローテイルです」

「スワテちゃんな。スワテちゃんは紛れ込んじゃったみたいやけど、皆殺し合いの経験者や。気ぃつけやぁ? いつその気になるかわからんで?」

「ッ……」

 

 リップルからの警戒心が強くなっている。

 

「え、えと、わたしはその、お母さんがその『クラムベリーの子供達』? で、だからかも……」

「はぁ、なるほどなぁ。クラムベリーの子供達の子供っちゅーわけや。クラムベリーの孫やな」

「ま、孫?」

 

 意味はわからなかったし、拾ヱも意味なんてないわと笑っている。しかし明るく話し続ける彼女の存在とは対照的に、魔法少女たちの間に流れる空気は重くなっている。リップルは警戒していて、のっこちゃんも可哀想なくらいに怯えている。拾ヱは本当に味方だとしていいのだろうか。

 

「あの……拾ヱさんは……他の人のところには、行かれないんですか」

「他ぁ?」

「私も戦えませんし、さっきみたいに狙われたら……」

「言うても、あのお強いキューティーヒーラー様も一緒やろ? 多数派でいたいんよ、うちは」

「そう、かもしれませんけど……」

「他の連中は血気盛んすぎや。話しかけたら殺されましたーじゃ笑えんやろ? それに」

「……それに?」

「他の連中の中には……幽霊が混じっとるからなぁ!!」

「え、ゆ、幽霊!?」

 

 急な大声でスワローテイルも驚いた。そこに拾ヱの笑い声だけが響く。ここまで話した印象では、拾ヱに悪意は感じない。ただ、どこか信用出来ない雰囲気なのもわかる。リップルの警戒も、彼女ならそうするだろう、納得ができた。

 

「ほんでな? うち、提案があるんよ。端末にパーティ機能っちゅーのがあるやろ? これ、最大4人やけど、せっかくやしここで」

「待つ、待って、ストップ」

 

 止めたのは意外にも、ブギーだった。

 

「別れる、よくない」

「ん? いや、別行動しよ言うてるわけやあらへんし」

「差、できる」

「キャンディかいな? そんなもん譲渡機能使って割り勘すればええだけやろ」

 

 拾ヱと半ば言い合いのようになり、デメリットとメリットが連ねられていった。現在ここにいるのは6人。半々にするにしても、4人組と2人組に分けるとしても、それぞれに難しいところは含まれる。特に戦えないのっこちゃんの存在のせいか。ブギーは恐らく彼女を守るために拾ヱに色々意見している。

 

「水を差すようですまない。私は全然平気なんだけど、皆先程の三姉妹との戦いの疲れもあるだろうし、探索に出るメンバーと出ないメンバーを作るのはどうだろうか?」

「お、さすがキューティーヒーラーはんは言うことが違うわ! ほな半々かいな?」

「ブギー、のっこ、必要。のっこ、戦えない。街、病気、危ない、外、拠点」

「……確かに、また連中が病気を広めようとしたら厄介やな。どこか別の場所が欲しいっちゅーのもあるわな」

「私は全然まったく平気だから、のっこちゃんを背負ってエリアの端から端まで走り回れる自信があるよ」

 

 そうは言いつつフレーズはふらついていた。しかし、のっこちゃんと拾ヱは相性が良くなさそうだ。リップルとだってもちろん良くないが、スワローテイルが間に入れるならまだいい。ということは、自然と、スワローテイルとリップルに拾ヱが同行し、残るフレーズ、ブギー、のっこちゃんが別行動になる。

 

「ま、ほな、そういうことにしときますか。行きまひょ」

「え、あっ、うん、えと、どこに?」

「知らん! とにかく探索や。勧誘でもええで? スワテちゃんは殺したくないんやもんな?」

「……うん」

 

 仮にゲームに則るのなら、他のコロニーに行くための通行証には8人の脱落が必要だ。8人……あまりに重い。そうならないための道を探さないと。

 

「アイテム集めはたぶん得意やから任せといて! 通行証も拾ってなんとかしたる! うちは落し物マスター拾ヱや! な! スワテちゃんや!」

「……チッ」

 

 拾ヱがそのままのノリでスワローテイルの背中に触ろうとした途端、リップルからの牽制の舌打ちが響いて、途中で止まった。拾ヱは「まずい」という顔をして、少し黙ったあと、またこのゲームのことについての話題に戻り、何かありそうな場所として遺跡地帯を挙げた。まずは行ってみるしかない。スワローテイルは立ち上がる。

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