魔法少女育成計画PlayfulGale   作:皇緋那

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お茶会の使い方

 ◇ティーパティーナ

 

 ティーパティーナのお茶会で、大物が席に着くこと自体はこれまでも経験があることだ。ゆっくり話をする気分になってもらう。それがティーパティーナの魔法であり、役目である。それはわかってはいる。とはいえこんなふざけた状況に、それも自分より明らかに偉い人が複数、一斉に巻き込まれて、それでまだ何も打開策が見つからないのは異常事態に他ならない。

 こんな時こそ心の余裕が必要だ。それを教えてくれたのはプロウド局長である。局長はその突っ走る振る舞いから、戦えない自分はその逆を行けばいいと、背中で教えてくれていた。それを発揮する時だ。

 皆にお茶を注ぎ、行き渡らせたところで、自分の席に戻り、息を吐いた。そして、失礼いたしますと真っ先に自分からお茶を飲むことで、ひとり、またひとり、ぽつぽつとお茶に手をつけ始めた。これで多少は落ち着けるはずだ。

 

「それでは……対策を、考えましょうか」

「術中からの脱出ね。難しいと思うけど」

「仮にキークと同質だとした場合……次元の違う相手とやり合うようなものだ。ゲーム破壊知識に長けた人間でもなきゃ無理がある」

 

 リビングデビットがそれとなく、自信のありそうな者を目で探していたが、残念ながらデジタルの分野に強い者はいなさそうだ。そちらの方面による突破は期待できない。

 

「宿舎の人間なら脱獄の方法も知り尽くしているのではないかな?」

「現実の監獄とは話が違いますよ」

「オー、それもそうか!」

 

 監査の0・ショックは冗談を吐いている。こういう時、頼りになってほしい、のだけど。ティーパティーナからは何も言わない。

 

「ということは、ゲームルールへの対策が必要です。端末を確認したところ、大元のルールの他に、ミッションというものもあるようですが」

「8名以下にならなければ通行証が入手できない……」

 

 真顔で話を進めるフォーマルメイド。その言葉の間で、キューティーショコラがぽつりとこぼす。

 

「別に、人を減らさなきゃいけないとは書いてないよ?」

「と……いいますと」

「脱出方法は探す。でもそれまでは、ここで暮らす……っていうことかな。ちょっと長期の出張になるかもだけど」

 

 他にもゲームを進める方法があるなら、焦りプレイヤーキルに走る必要もない。雇われ魔法少女しかいないからこそ、どうにか通る話だろう。これが、もっと我の強い者が多いとなればそうはいくまい。

 

「はいそうですかと、閉じ込められたままでいろと?」

「研究部門ともあろう者が方法を模索しないつもりか」

「ゲームの研究など我々の業務には……」

「お願いフォーマルさん、あなたのお手伝いが必要なの。もしよかったら広報部門外部一時協力者としてキューティーヒーラーピンバッジを」

「ピンバッジは不要ですが広報部門外部一時協力者は魅力的ですね」

「あ、そっちなんだ……」

 

 意外にも血の気の多い研究部門だが、広報、というよりショコラ個人が丸め込んでくれている。銃を携えた魔法少女──エリと、その両隣で、不安げな方と、不服そうな方、研究部門であろう魔法少女たちも異論まではなさそうだ。

 

「もちろん監査も協力するとも。さっさとこんなところから出なければ、外の治安が大変になるからね」

「やった! それならすぐに出られそう!」

 

 ここで、外交も協力しますよね、という視線を局長に送った。彼女もそれには気づいているだろう。

 

「我々も協力させてもらう。君も帰りたいだろう」

「うん、ここ山しかなくてつまんないもん」

 

 アンブレン先輩の言うことには一理ある。出たいという思いにしては軽いようでいて、そういうことでいいのだと、そう気負うなと示してくれている。ティーパティーナも落ち着く。お茶を飲み、自分で淹れた飽き飽きした味ながら、今は緊張を和らげてくれる。

 

「あ、ついでに宿舎もよろしくお願いします」

「研究。広報。監査。外交。宿舎。これで全部が同盟に……あれ?」

「どうかしました?」

「人事部門は?」

 

 少なくとも確実に部門長と、その部下はいたはずだ。そのうえで、ここにいるのはそれ以外の者ばかり。と、いうことは、あるいは我々を害するために人事部門長が仕組んだことなのか。そういう深読みが始まる前に、先に無理やり進める。

 

「すみません。協力し合う前に、できることを共有しましょう。お名前と魔法を、まとめさせていただけませんか」

 

 相手が重役ならば知っていることもあろうが、その部下までは知られていないだろう。ティーパティーナの顔を誰が知っていただろう。これは信用の問題だ。手の内は明かしてもらう。もちろんこちらも明かす。ひとりひとり、席の順番に名と魔法を聞くのだ。そのため、真っ先に、お茶会の主催者であるティーパティーナから口を開いた。それから順に一周し、その間に、わざわざ書記を買って出たショコラが、簡潔にまとめて画面を見せてくる。とはいえ十六人も座るテーブルはもちろん長い。遠く見えない者もおり、ここに居る者たちは、ひとまずショコラとは連絡先を交換することとなった。そうして送られてきたファイルを確認する。

 

 ・外交部門

 レディ・プロウド……自身の血液を変化

 アンブレン……魔法の傘

 ティーパティーナ……お茶会を開く

 

 ・監査部門

 0・ショック……弾丸を出現させる

 バックパッカーカムナ……背中に物をくっつける

 サンドリウム……砂を操る

 

 ・広報部門

 キューティーショコラ……二つのものをミックスさせる

 テレプシコーラ……映像を投影する

 キューティーレイヴン……カラスの使い魔を使役

 

 ・研究部門

 フォーマルメイド……情熱の炎を出す

 ジェリーマリー……水中での行動が得意

 プシュケ・プレインス……水鉄砲の中身を変える

 撃墜王エリ……飛んでるものを撃ち落とす

 

 ・第九宿舎

 リビングデビット……魔法のカードで買い物できる

 アルレッギーノ……アレルギーを起こさせる

 ミーツ・ミーツ・ミーツ……透明バリアで防御

 

「これで16人……」

「あぁ、覚えたとも。仲良くしようじゃないか。えっと、君は……サン……サンバカーニバルくん」

「さすがに直属の部下の名前は間違えないでくれますか」

「オー、ソーリーソーリー! 覚えてるともサムバディトゥナイくん」

「はあ……何こんな時にふざけてるんだか……」

 

 どうやら監査部門も大変らしい。同情しかけたところで、その0・ショックが急に真剣な面持ちとなり、今度は全員に向けて続ける。

 

「さて……しかしこの状況だ。仮にプレイヤーキルが起きたとして、殺したもの勝ちではたまったものではない。だろう? 我々監査としても、罪を犯してまで生き残るなんてことを容認してはならないわけだ」

「と、いいますと……」

「『裁判』を要求しよう。殺人への抑止力としてね。仮に人死にが出てしまった場合、犯人を全員の議論によって特定する。ティーパティーナくんの魔法は、お茶会中の暴力を禁ずるのだろう?」

「はい。この魔法のお茶が冷めてしまわないかぎり、暴力行為ができなくなります」

「邪魔も入らず弁論で決着ができるわけだ。最も穏当だと思うが、どうかね?」

 

 0・ショックの提案は各所への睨みである。特に、プロウド局長とフォーマルメイドに向けられている。それは仕方ないことだろう。従来の外交部門は暴力に訴えていた側面が強い。魔王塾が幅をきかせていた時点でそうだ。次いで、研究についてはここに来てからの言動だろう。

 

「んなことしたら疑心暗鬼が広がるだけじゃ……!」

「それなら尚更犯人を特定すべきじゃない? 私はいいと思うよ」

「……有罪と認定されたら、どうなるの? 宿舎送りなんてできないでしょ? 追放でもするの?」

「処刑……しかないでしょ」

 

 誰かが呟いた、処刑という言葉。空気は凍りつく。が、より確実に殺人を予防するならば、罰はむしろ重くなければならない。ここにいるのは魔法の国の重役、それも監査だって混じっている。

 

「ご、ごめんなさいで済んだら……わたし達、いりませんし……仕方ないことですよ……ね?」

「もっとも私は、そんなことは起きないと信じているがね」

「……そうですね。そんなお茶は美味しくないと思います」

 

 これは人殺しが出ないためのルールだ。最後まで協力し合えたなら、お茶会裁判が開かれることはない。だがもしそうなった時、そして有罪となったのが万が一にもプロウド局長だった時、ティーパティーナは耐えられないだろう。重たく、張り詰めた空気。またお茶を飲んで、深く、息を吐いた。

 

「……今の話は一度忘れて。そろそろ探索を始めませんか。色々、決めておいた方がいいと思うんです」

 

 魔法少女たちは頷いた。周囲が敵に見え続けることはあってはならない。

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