イリヤ(魔法少女)のアトリエ ~ グラムナートの錬金術士2if~ 作:猿野ただすみ
原作:アトリエシリーズ
タグ:クロスオーバー Fate ヴィオラートのアトリエ ユーディー要素あり プリズマ☆イリヤ
そして目を覚ましたそこは、並行世界 ── ではなく、異世界だった。
イリヤ、グラムナートに推参!
……普通は中の人的にロロナかトトリですが、アーランドシリーズは一切やってないもので…。
まあ、ヴィオもある意味、中の人繋がりではあるので良しとする!
※プロローグ部分のみのお話です。ただし作者のいつものパターンで、気分が乗ったら続きを書くかも知れません。
「バカンスはもうお終いです」
「空が…!? いや、これは…、世界が割れているのか!?」
ズガッ!
「ミユッ!?」
突然現れた二人組の、赤毛の少女の方が美遊を蹴りつけ、イリヤが声を上げる。
「全く、手間とらせんなっての」
「粗末に扱うな。中身がこぼれでもしたらどうする」
二人はその様なことなど気にもせず、会話を続けていた。
「ホラ、揺り戻しだ」
赤毛の少女が言うと、辺りは白い光に包まれて何も見えなくなる。
「ミユッ! ミユーッ!!」
イリヤが叫ぶ中。
パキン!
……ん? あれ、わたし…。確か…!?
ガバッ!
さっきまで起きていたことを思い出し、わたしは慌てて身を起こす。と?
「……ここ、どこ?」
そこは、森の中。しかも、さっきいた場所とは明らかに違う、見たことも無い木や草が生えて…。
「……って、これ、人参?」
葉っぱの形が、セラがスープの浮き実用に育ててる人参の葉っぱに、よく似てるんだけど。
『試しに抜いてみたらいいんじゃないですかー?』
「うん。そうだ…って、ルビー!?」
気がつけば、わたしの顔の左横に、携帯モードでフヨフヨ浮かぶルビーがいた。
「び、びっくりしたぁ。でも、ルビーも一緒だったんだね」
『その様ですね。いやー、離れ離れにならなくって良かったですよー』
「ホントにそうだよ」
ルビーは性格が
『それで、人参(仮)は収穫するんですか?』
「収穫って、別にお野菜って決まったわけじゃないんだけど。でも、まあ…」
わたしは葉っぱを持つと、真上に引っ張った。するとちょっとだけ抵抗があってから、スポンと抜けて。
「このオレンジ色の根っこ。うん。わたしが知ってる人参そのものだね」
『いわゆる西洋系人参ですねー』
西洋系人参? ちょっとわかんないけど、どうやら人参で間違いないみたい。
『しかし、こういう作物って普通、改良された後の姿なんですけどねー?』
「そうなの?」
『はい。野生種は普通に、もっと細くて白っぽい根だって聞いてますよー?』
「そうなんだ? ……て言うか、ルビー、凄く詳しいね?」
ちょっと意外なんだけど。
『まあ、魔法薬には植物の知識も必要ですし、私の中の[割烹着の悪魔]的な人が、色々と余計な知識を教えてくれるので』
「何、ソレ」
『昔っからの型月ファンにとってのメタ発言です。ご新規さんにはわからないかも知れませんが』
……うん。この話題はこれ以上触れないでおこう。
『それはともかく、食糧は無事ゲットできましたね!』
「無事って、……あ、そうか。どこに飛ばされたのかもわからない今の状況じゃ、食べ物の確保は大事だよね。……って言うか、衣食住の全ての心配があるんじゃない!?」
『アハー、気付いちゃいましたか』
「気付いちゃいましたかじゃなくって!!」
おちゃらけるルビーに大声でツッコミを入れた、その時。草むらからガサリと音がして。
ポヨヨン
水色の、大きなお饅頭のような生き物が3匹現れた!
「って、ええっ!? こ、これってスライム!?」
『古典的なものではなく、ビデオゲーム的なデザインの方ですねー。ご丁寧に目や口があるのも、まさにそれっぽいですよー』
「お、落ち着いてる場合じゃないよっ!」
と言うか、こんなのが出てくるって事は、ここってもしかして異世界ってやつ!?
『ぷにー!』
「なあっ!?」
スライムが鳴き声を上げて、体当たりをしてきたっ!? わたしは慌てて身をひねり、何とかそれを避ける! と、とにかく早く、転身を。そう思ったその時。
「グリューネブリッツ!」
「ネーベルディック!」
火球と冷気、二つの魔術が、スライムをそれぞれ1匹づつ倒した。そして、残りは1匹!
「ルビー!」
『はい!
「
瞬間的に魔法少女に転身したわたしは、即座に攻撃を仕掛けた! 斬撃は見事に命中して、スライムをキレイに真っ二つにした。う…。さすがにちょっと、罪悪感が…。
「ねえ、大丈夫!?」
そんなわたしにかけられた声。慌ててそっちを向くと、二人のお姉さんがいた。わたしに声をかけたのは、年下の方のお姉さんみたい。
「あ、はい。大丈夫です。助けてくれて、ありがとうございます」
お礼を言ってお辞儀をするわたし。
「そう。よかった。それにしても、子供なのに強いね」
「え? あははー。色々とありまして」
『イリヤさん。あなたはカレイドの魔法少女なんですよ? もっと堂々としたらどうなんですかー?』
「ちょ、ルビー!?」
「ええっ、凄い! ステッキが喋った!?」
凄いで済むの!?
「……ねえ、あなた」
年上の方のお姉さんが声をかけてきた。何となく、出会った頃のリンさんと雰囲気が似てる。
「衣装が突然替わったことといい、喋るステッキといい、それって錬金術によるものなのかしら?」
「え? 錬金術?」
錬金術って言うと、パンッ!て手を叩いて…っていうのはさすがに違うのはわかる。そうじゃなくって、金を生み出す研究だったよね、確か。ファンタジーもののお話で、たまに出てくるし。要は、魔法…魔術?と科学の中間みたいなやつだ。
『そうですねー。錬金術の定義にもよりますが、私は魔法使いのくそじじいに作られた、最高位の魔術礼装です。世間一般で言うマジックアイテムですから、錬金術で作られたというのも、全くの見当違いということはないですねー』
「ふうん…」
お姉さんはそう呟くと、少し考え込む。やっぱり何だかリンさんに似てる。赤い服っていうのもリンさんっぽいし。
「魔術礼装っていうのは初めて聞いたけど、大体理解したわ。かなり規格外だって事が。
それを踏まえてもうひとつ聞くけど…、あなた達は何者なの?」
ドキリ、と心臓の鼓動が跳ね上がる。こんな事言って、信じてもらえるかどうか…。ううん。とにかく言うだけ言ってみよう!
「実はわたし達、こことは違う世界から来たみたいなんです」
「違う世界?」
「え? どういうこと?」
「えっと、空が割れて、ピカッと光って、パキッて音がして、目が覚めたらここにいたの」
……って、全然理解してない顔ですね。いや、わたしも言ってて意味わかんなかったけど。
『イリヤさんの語彙力の無さは置いときまして』
「せめて、もう少しマシなフォローが欲しいんだけど」
『わたしたちはある事件で、世界の境界を破るような戦いをしました。事件自体は終息を迎えたのですが、それがきっかけで並行世界と言う可能性の世界と繋がってしまい、その揺り戻し現象に巻き込まれたんです。
本来ならおそらく、その並行世界へと飛ばされるはずだったのだと思いますが、どうやら世界の境界は想像以上に破壊されていたのでしょう。わたしとイリヤさんは更に遠い時空の彼方、即ちこの世界へと飛ばされてしまったみたいなんですよー』
……ごめん、ルビー。フォロー受ける資格が無いほど、ルビーの説明は完璧でした。
「……なるほど。どうやら、時間と空間に作用した事象に巻き込まれたみたいね」
『おや、今の説明を正しく理解できますか。どうやらこちらの人間も、高等な魔術理論をお持ちのようですね。確かに今回の時空移動は、私達の世界における第二魔法と同じ理論に値する事象です。ただ、第二魔法…並行世界の運用とは違い、異世界にまで及んでしまったわけですが』
……えっと。もう、言ってる意味がわかんないんですけど。とか思ったら、もうひとりのお姉さんがわたしと同じように、頭を抱えてうんうん唸ってる。よかった。わたしだけじゃなかったんだ。
「……あの、アイゼルさん。私にはチンプンカンプンなんですけど…」
「あら、ごめんなさい。ヴィオラートにはまだ早かったわね」
おお。こんな形で二人の名前が判明した。ちょっとリンさんっぽい人がアイゼルさんで、もうひとりの緑の服を着てる人がヴィオラートさんかぁ。
……と言うか。
「あ、あの、わたし達の話、信じてくれるんですか?」
「そうね。確かに突拍子もない話だけど、錬金術士である以上、あらゆる可能性を否定したりしないわ。可能性を否定するということは、賢者の石や金の生成そのものの否定に繋がるもの」
……あ、そうか。金を生成することを目的とした学問だもんね。不可能を可能にする事を目指してるんだから、あらゆる可能性を求めることこそが大事なんだ。
「……って、アイゼルさん…ですよね?……は、錬金術士なんですか? いや、確かに錬金術がどうとか言ってたけど」
「そう言えば自己紹介がまだだったわね」
ああ、うん。何となくみんな名前を知ってる状態だけど、自己紹介は全然してないや。
「それじゃあ、私が一番年長者のようだから、私から。
私はアイゼル・ワイマール。ここから遠く離れた地、ザールブルグの錬金術士よ。修行のために旅をしている最中なの」
錬金術士のアイゼルさん。修行の旅って、なんかカッコいい。
「えっと、私はヴィオラート・プラターネ。親しい人はヴィオって呼んでるよ。
カロッテ村に暮らしてるんだけど、少し前にアイゼルさんと出会って、錬金術を教えてもらってるんだ」
「私は錬金術を見せて、あなたに初歩的な参考書をあげただけよ」
ヴィオラートさんの自己紹介に、そう注釈を入れるアイゼルさん。謙遜とかじゃなくて、本当にそう思ってるみたいだ。
ええと、次はわたしの番だね。
「わたしはイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。みんなはイリヤって呼んでます。
少し前にこのステッキに唆されて、魔法少女をやってます」
「「魔法少女?」」
あ、そうか。魔法少女がわからないんだ。
「ええと、いろんなパターンがあるんだけど、わたしの場合は変身して、魔法の力で戦う系の魔法少女です」
「他のパターンが気になるけど、とりあえずわかったわ」
少しだけ疲れた表情で軽く頷いたあと、アイゼルさんはルビーへと視線を移す。
『はいはーい。最後は私ですねー。私はカレイドステッキのマジカルルビー。気軽にルビーちゃんって呼んでくださいね。
先程も説明しましたが、私は魔法使いが作り上げた最高位の魔術礼装。無限の魔力供給とAクラスの魔力障壁を使用者に付与することが出来、魔力の攻撃や空中浮遊なども可能とする、物凄いステッキなんですよー』
自分で凄いとか言ったら台無しだなー。……あれ?
「そう言えば、唆したことは否定しないんだ?」
『いやー、騙したとか言われたら否定しますけど、唆したこと自体は事実ですからねー』
自覚あったんだ!? と言うか、確信犯!?
「なんか、面白いステッキだね?」
「面白いじゃ済まないと思うけど」
うん。第三者から見たら喜劇だと思うけど、当事者にとっては悲劇だからね?
「それはともかくとして。イリヤスフィールはこれからどうするの?」
「う…」
アイゼルさんが、核心部分を突いてきた。今まで考えないようにしてた、でも、重要な事。もしかしたら、そんなわたしを見て、あえて聞いてきたのかも知れない。
「……やり方はわからないけど、どうにかして元の世界…ううん、もうひとつの世界に行きたい。わたしの大切な親友が、きっとその世界に連れてかれちゃったから」
「……そう。ところでヴィオラート。あなたの家、今は部屋が余ってるのではないかしら?」
「え? うん。お父さんとお母さんは大きな街へ商売に行っちゃったから…。あ、そうか!」
ヴィオラートさんが、漫画で見るようにポンと手を打って、わたしの前までやって来る。
「ねえ、イリヤ。私の家で一緒に暮らさない? それで、一緒に錬金術の勉強をするの」
え? わたしが、錬金術を?
「錬金術ならもしかしたら、イリヤが帰るための方法が見つかるかも知れないよ!」
あ…。
『それにイリヤさん。アイリさんが聖杯戦争について語ったときに、アインツベルンについても軽く説明されていたではないですか。アインツベルンは錬金術に特化した、魔術師の家系だって』
「……あ。すっかり忘れてた」
「……どんくさいわね。ヴィオラートにはお似合いかも知れないけど」
うう。穴があったら入りたい。
「それじゃあ決まりだね! お兄ちゃんが文句を言うかもしんないけど、力尽くでも納得させるからっ」
「あはは…。お手柔らかに、ね?」
こうしてわたしの、異世界錬金術ライフが始まったのでした。
カナーラント王国から長い坑道跡を抜けた先。フィンデン王国。その王都メッテルブルグを街道沿いに、更に東へ進んでいった、ヴェルンの街の近くの森の中。そこに一軒、朽ちた家が建っている。
その家の中に、まだ十にも満たない金髪の少年がたたずんでいた。
「全く。我ながら、随分と変わったことに巻き込まれたものだよ」
そう言って部屋を見渡して。
「……ふぅん。およそ200年前の、錬金術士の家か」
まるで知っているかのように言う少年。
「なかなか面白いことがあったみたいだけど…、だめだ。ここじゃあ全ては見通せないか」
そう言って踵を返し、表へと出る。
「ホント、ここはいいね。僕の知る人理から外れているのか、過去は見えても未来は見えない。こんな楽しいことは久しぶりだよ」
まさに楽しそうな表情で言っていたが、ふと、表情を変えた。
「いや、あのお姉さんとの戦いも、結構楽しめたね。ランク落ちしてるとはいえ、まさか[エア]を撃ち破れるとは思わなかったなぁ」
さっきまでとは、また違った楽しさを表情に浮かべる少年。
「……ま、それはいいや。それよりも、せっかくこんな楽しい場所に来たんだから、今という生を謳歌しなくちゃね」
そう言って木々の間を抜け、街道へと出る。
「さて、まずはヴェルンか。過去にここで何が起きたのか。せいぜい楽しませてもらうよ。ユーディット・フォルトーネさん?」
少年はそう言うと、ヴェルンに向かって歩き出すのだった。
因みにPS2版ではなく、PSP版【群青の思い出】の設定です。もし続きを書いた場合は、あの二人も出ます。