復讐心ありのルーキーな剣姫ちゃんVS全部思い出した道化所属の英雄くんVSモニョモニョ顔のヘスティア様   作:ラトソル

1 / 1
衝動で書いた。悔いは無い。続かない。


はろーにゅーわーるど!

 きっと、この出会いは運命なのだろう。

 

「ッ、大丈夫で……す、か……」

 

 これは、下界における一種のターニングポイント。

 

 英雄に憧れた卵が、英雄街道を突き進む囚われの姫に出会う1ページ。

 

 それが少しの改竄を受けて、立場が逆になってしまうことは有り得てしまうのだろう。

 

「……ありがとうございます。けど、私一人で、倒せました」

 

「────」

 

「……?」

 

 この道はどこから枝分かれしたのだろうか。

 

 英雄と呼ばれるようになる少年が正史よりも数年早くオラリオを訪れ、道化の女神に拾われた時からなのか。

 

 ダンジョンの姫の目覚めが僅かに遅く、灰の魔女に救われた時からなのか。

 

 きっと、変わらないものもあるのだろう。

 

 正義の使徒は骸の竜に蹂躙された。

 

 絶対悪は確かに誕生した。

 

 ゼウスの孫は彼等とは出会わなかった。

 

 そして、やはり。

 

「あの……?」

 

「────逆ぅぅぅぅぅッッッッッ!?!?」

 

「え────」

 

 この光景だけは、変わらないのだろう。

 

 猛牛の返り血を僅かに付着させた金髪の少女は、その身に一切の穢れのない純白の少年が叫びながら走り去っていく姿を、ただ呆然と見つめるのみであった。

 

 そして、同時期に。

 

「……あるぇぇぇぇ?????」

 

 とある教会の地下で、一柱の女神が舌を巻きまくっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◈◈◈◈

 

 走る、走る。

 

 オラリオ最速を争うと言わしめる脚力を、敏捷を、最大限に発揮して、白兎は地上を走る。

 

 民衆にその姿を目視することは叶わず。

 上位の冒険者だけが、走る男の姿を目視しては目を丸くして振り返るばかり。

 

「【閃兎(ラピット・ラビット)】!?」

 

「違ぇよ! 前の神会で二つ名が変わってたろ! 確か……」

 

「にしても、ロキ・ファミリアはもう遠征から帰ってきたのかよ」

 

 走る、走る。ただ闇雲に、ただ我武者羅に。

 目的地を定めないままに、その男……ベル・クラネルは走り続ける。

 

(なんでなんでなんでなんでなんで……!!!)

 

 彼の頭に浮かび上がる疑問の言葉。

 その答えを指し示してくれる存在はここにはいない。故に彼は走り続ける。

 

「エイナさぁぁぁん!!!」

 

「ぅえっ!? く、クラネル氏……!?」

 

「あぁっ、そうだった!! エイナさん僕の担当じゃないんだったァ!!?」

 

 なんでもないですごめんなさいィィィ!? 、と叫びながらギルドを後にするベルの様子を、不思議そうにハーフエルフの女性は見つめていた。

 

「エイナエイナ。エイナってクラネルくんと仲良かったっけ?」

 

「え、ええ……ん〜、リヴェリア様を通じて一回話したことがあった、かも?」

 

「にしては真っ直ぐにエイナの方に向かってたし、親しげに名前呼んでたし……はっ!! これはチャンスなんだよ、エイナ!!」

 

「はいはい。もう、馬鹿なこと言わないの。仕事に戻るよ?」

 

「うぇー。つまんないの〜」

 

 駆ける、駆ける。

 答えを求めて、逃げるように彼は駆ける。

 

 この世界が異なるものであると気付いた少年は、ただひたすらに走り抜ける。

 

師匠(マスター)ァァァ!!!」

 

「【カウルス・ヒルド】」

 

「ぎゃぁぁぁあああ!!? 失礼しましたァァァ!?」

 

「チッ……何をやっているのだ、あの愚兎」

 

 携えていた装備を確認する。

 慣れ親しんだ軽装ではない。胸当ても異なるもので、何より武器がナイフや小刀といったショートレンジのものではなく、ありふれた剣だったから。

 その質は決してありふれたものではなく、ヘファイストス・ファミリア製の超一流レベルのものだと分かってしまったけれど、やはり今まで気づけなかった違和感がそこにはあって。

 

 それに、何やら身体が重い。こうして走っている中で自分の理想と身体とが乖離してしまっている。何度転けそうになったことか。

 

 ただ、走った。宛のない逃避行。入り組んだオラリオの街をくまなく、宛もなく、ただ走った。

 

 走って、走って、走って。

 そうしてたどり着いたのは、バベルの最上階だった。

 

 ダンジョンの蓋。最も天に近い建造物の頂点。

 雲を掴むことは容易であり、見下すことも可能であろう。

 

 オラリオ全てを一望できる地点から、ベルはぼーっとしながら、なんとはなしに街を見下ろした。

 

「────」

 

 様々な考えがベルの脳裏を駆け巡る。

 

 魅了という可能性は真っ先に除外した。そして、即座に思考を放棄して思い出されたのは世界一美しい金の髪。

 

 駆け出し冒険者と言うべき、支給品の軽装。

 細い剣もボロボロ。そして、鋭い瞳には甘えが見えず、強さへの渇望が見えた。

 

 ベルは彼女を知っている。いや、知らない。駆け出しの彼女なんて知らない。けれど、見間違えるはずがない。

 

 背中に熱を感じながら、ベルはその場に寝転がった。

 雲がなく、地上から見る以上に深く、暗い蒼を見つめて、対称的な鮮血の瞳を手で隠したベルは息を吸い込む。

 

「……アイズさん可愛かったァァァァァァッッッ」

 

 情報過多により、彼は一時的にアホになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま、ヘスティア様」

 

「……あー、うん。おかえり、アイズ君。怪我は無かったかい?」

 

「うん。いつもより深く潜ってみたけど、問題はなかった、よ」

 

「そうかい……うん。それは良かった良かった。うんうん、良かったよ」

 

「……あ、でも」

 

「ん?」

 

「獲物……横取りされちゃった」

 

「……あー。ちなみに、何を、誰に?」

 

「えっと、ミノタウロス。誰かは、分からないけど……兎みたいな人、でした。私の顔見て走って行っちゃったから、人見知りな人?」

 

「お、おう……それは……うん────そっかぁ……」

 

「ヘスティア様?」

 

「いやいや、なんでもないぜ、アイズ君……ふふんっ、体を洗っておいでっ! 今日は、じゃが丸くんパーティーさっ!」

 

「!!! 凄いっ! ヘスティア様大好き!」

 

「へへへっ! そうだろそうだろォ! ……ふ、複雑ぅ……」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。