大戦から3年が経ち、地球圏は数々の問題を孕みつつも、一応の平穏を取り戻しつつあった。
しかし、ベネリットグループの解散は、世界に衝撃を与え、その混乱は決して小さいものではなかった。一時の平和の裏で、不穏な影が動き出す。
注)pixivにも同作掲載有
「いえ、止めてみせます!」
A.S.122、宇宙儀会連合とベネリットグループ傘下シン・セー開発公社が衝突した、いわゆる「クワイエットゼロ事変」の終結。宇宙議会連合のトップによって放たれた、惑星間レーザー装置は、スレッタ・マーキュリーのキャリバーンを始めとする、ガンダムのパーメットリンクによりオーバーライド、そしてシン・セーの持ち出したクワイエットゼロもまた、粒子レベルに分解され、消滅した。
戦線終結に伴い、デリングを始めとするベネリットの幹部達は、議会連合に対し、グループ解散を条件に、終戦を申し入れた。
その仲介には、セセリア・ドートの父、サンドロ・ドート ブリオン社CEOが奔走した。
クワイエットゼロ事変に貢献した学生達だったが、戦後はそれぞれの道を歩むことになる。
ラウダ・ニール、チュアチュリー・パンランチ、ロウジ・チャンテは、アスティカシアの学園に帰還、グエル・ジェタークとフェルシー・ロロは、ジェターク社の再建に従事すべく、本社フロント・レオへ移る。
そしてミオリネは、先の大戦でパーメットの体内流入により傷ついたスレッタの治療に付き添うため、地球まで共に向う。
その後、様々な衝突がありつつも、終戦は成立、地球圏にひとときの平和が訪れ、実に三年の月日が経った。
「帰りましょう。」
「はい!私、お腹すいちゃいました」
「フフッ
・・・・・・私も。」
ミオリネの差し伸べる手を、スレッタは掴み、立ち上がった。
♪はるか遠くに浮かぶ星を想い眠りにつく君の━━
トゥルルル
突然、ミオリネの端末が反応する。
「はい。」
「ミオリネ、エマージェンシーだ‼」
そこからは、緊迫したグエルの声が響いた。
スレッタとミオリネは、顔を見合わせる。
地球。ダイゴウ社傘下、軍需工場地帯。
工場長と数名の幹部が、会議を行っている。
「それで、売上の方はどうだ?」
「はい、先年のベネリット解散により、顧客数が下落、売上は低迷の一途を辿っています。」
工場長は唸る。
「ううむ、旧御三家ならばともなく、中堅であった我が社ですら、この有様か・・・・・・」
と、その時、突如として、工場全体に大きな振動が生じる。
工場長は叫ぶ。
「ッ!なんだ⁉」
すぐさま報告が入る。
「B地区より、所属不明機が数機侵入、銃撃が加えられています!」
しかし、その部屋にも、武装したテロリストが侵入、アサルトライフルを構えられ周囲を固められたため、工場長は投降した。
アスティカシアへ戻ろうとしていたミオリネ達だったが、急きょ転換、旧ベネリットフロントの会議室に赴いた。
スレッタ達地球寮の面々は外で待たせておき、ミオリネだけが中に入る。
「グエル━━エラン!?」
そこには、グエルのみならず、エラン━━強化人士5号もいた。その他、旧ベネリットの幹部面子も揃っている。
エラン5号が口を開く。
「ったく、地球を旅してたら、いきなりテロに合ったぜ。命からがらなんとかこっちに戻ってきたけど。」
ミオリネが顔を顰める。
「・・・・・・まずいわね。今のこの繊細な時期に、こんな騒動があるとは。」
緊急対策本部の招集人として、グエルが仕切る。
「皆、よく集まってくれた。改めて状況を説明する。
昨日未明、旧ベネリットグループ傘下の一、ダイゴウ社の地球圏工場の一つが、何者かによって占拠された。同時に、ダイゴウ社本社とも通信が途絶、おそらく襲撃を受けたと見える。
ようやく平穏を取り戻したこの時期に、議会連合にこのことを感づかれるのは大変によろしくない。そこで、内々でこの事態を収拾したいと考えるが、皆の意見を聞きたい。」
グエルの言葉に、皆が頷く。
この場に集まった面子は、若手がほとんどだ。旧ベネリットグループの大幹部であった、デリングやサリウス、ラジャン等は、すでに議会連合の審議官へと、職を移している。
そうなってくると、グエルの発言力はかなり大きい。
「ありがとう。まず重要なことが、多数の企業が合同で介入行動へ移ると、議会連合にベネリットの復活を誤解されてしまう。そこで、あくまで各企業が、それぞれ単独でダイゴウ社からのエマージェンシーを受け取ったとして、動きたい。
また、なるべくはモビルスーツの派兵は避け、対話による解決を試みたい。今まで培ってきた平和をここで崩すことは望まない。交渉には、サンドロCEOを動かし、護衛として何名かを同席させるのでどうだろうか?」
ミオリネも頷く。
「ええ。地球には私が行く。グエルはここに残って、緊急対策本部の指揮をお願い。」
他からも異論は出ない。
話がまとまりかけていた、その時!
ドゴン
突然、プラント内を、大きな揺れが襲った。
「何だ⁉」
一同に、動揺が広がる。
管制官からの通達が入る。
「Cブロックに攻撃を受けました!周辺にモビルスーツ10機確認、形式照合・・・・・・デスルター、所属、フォルドの夜明け‼」
『―ッ⁉』
その報告に、ミオリネとグエルは顔を見合わせる。
幹部達はざわめきが出る。
「テロリストだと⁉」
「どうするんだ‼ここにはモビルスーツも・・・・・・」
グエルは一喝して沈める。
「落ち着け‼
格納庫、ディランザを準備しろ。俺が乗る‼」
「グエル‼」
ミオリネは止めようとするが、グエルは微笑む。
「大丈夫だ、任せろ。」
そう言い残して、グエルは部屋から出て行った。
格納庫グエルのディランザが、発進体勢に入る。
「CEO、MS部隊の背後に、輸送船を一機確認。」
「さすがに俺一機じゃ手に余る。ケナンジ隊長に応援を頼め。ドミニコスは解散したが、MS何機かくらいは残ってるだろう。」
「承知しました━━ご武運を。」
「ディランザ・ソル、出るぞ。」
ついに、グエルの機体が発進した。
言葉では弱気だったが、操縦技術は全く衰えていない。次々と、敵デスルターを撃墜させていく。
グエルが戦闘を行っているのと、同じころ。
ミオリネの端末に通知が入る。
「知らない番号・・・・・・誰⁉」
電話の相手が話しだす。
「お久しぶりです、ミオリネ様。
ダイゴウ社CEO、ディーブ・トトです。」
「―ッ⁉」
件の消息不明だったダイゴウ社CEOが突然声を出したため、ミオリネは思わず驚いた。
「ディーブさん⁉今、どちらに・・・・・・⁉」
ディーブは質問に答えず、ただ呟くように言った。
「ミオリネ様・・・・・・貴方の父、デリング閣下は変わられてしまった・・・・・・貴方が、総裁の座をお継ぎください・・・・・・そして、ベネリットグループの再興を・・・・・・‼」
それだけ言うと、ディーブの音声は、プツリと切れてしまった。
「ディーブさん?・・・・・・ディーブさんー!!?」
ミオリネは、ただ呆然と立ち尽くした。
テロリストのモビルスーツを片付けたグエルのもとに、新たに報告が届く。
「CEO!11時の方向から、新たにMS20!これは・・・・・・ダイゴウ社のモビルスーツ、クリバーリ・ドゥンです!」
「何ィ⁉」
ディランザは、そちらの方角を向く。
「やはり、ダイゴウ社を襲撃したのもコイツらか‼」
しかし、グエルの予想は外れていた。
MSの背後の輸送船から、通信で映像が届く。
「私はダイゴウ社CEO、ディーブ・トトだ。我々は、フォルドの夜明けに協力し、襲撃をかけた。
我々の目的はただ一つ!ベネリットグループの再結成である!!
解散により、我らは莫大な損失を被った。そして地球側の要求は日に日に増すばかり・・・・・・
世界には、一つの秩序が必要だ!そのために我々は、フォルドの夜明けと交渉を行い、幹部として取り立てることで、手を取り合った。
そして、我がダイゴウ社には、大規模戦略兵器の用意がある‼地球から照準を向け、議会連合の月面基地へと発射する。猶予は一時間、それまでに議会連合の我らへの全面降伏を要求する‼」
これを最後に、映像は終了した。
皆呆然として、誰も口を開けない。会議室の空気は、静まり返っていた。
そこへ、帰還したグエルがやってくる。
グエルもまた、一瞬黙り込むが、やがて口を開いた。
「・・・・・・とにかく、悠長にはしていられない。今すぐ、その大規模兵器の照射をなんとしても止めなくては。これまで続いた僅かな平穏の一時、決して壊すわけにはいかん!」
すると、ミオリネも口を開く。
「ええ。それに、ダイゴウ社本部へも、同時に強襲をかけなくてはね。相手が約束を守ってくれるとも限らない。すぐにでも、兵器の制御を奪わなくては。」
二人の言葉に、議場の全員は、顔は強ばったままであるが、頷いた。
グエルが、号令をかける。
「・・・・・・よし、やるぞ!」
士気は十分に上がったものの、致命的な問題が残っていた。
モビルスーツ、及びパイロットが圧倒的に足りないのだ。
クワイエットゼロ事変終結後、しばらくしてドミニコスは解散した。もちろん完全にゼロとは言わないが、所属モビルスーツの大部分はすでに処分、もしくは企業に返還されたのである。
そしてなにより、パイロットは各地に散らばっている。それを再結集させるには時間がかかる。もはや旧ドミニコスは当てにならない。
他の民間企業も同様だ。テロを鎮圧できるほどのモビルスーツ部隊は持ち合わせてはいない。
この甚大なる問題に、ミオリネとグエルは頭を悩ませる。
しかし、しばらくして・・・・・・
「「あ!」」
ミオリネとグエルは、同時に思いついた。
だがそれは、別の意味で、口にするのは憚られた。
しばし沈黙が続く。
・・・・・・先に口を開いたのはグエルだった。
「━━━ミオリネ、悔しいが、もはや他に手はない。」
「━━ッ!でも!それじゃあまた、あの子達を戦場に巻き込むことに・・・・・・‼」
「だが、このままではまた地球と宇宙との戦争が再開される。それだけは、阻止しなければ・・・・・・」
再び重い沈黙が、その場を支配する。
だがついに、ミオリネは覚悟を決めた。
「・・・・・・そうね。」
フロントの控え室で待たされていた地球寮の面々に、ミオリネは状況を説明した。
「━━━という状況で・・・・・・その・・・・・・」
「・・・・・・」
スレッタは黙って聞いている。
すでに、ミオリネの言いたいことは分かる。
一方、チュチュは声を上げる。
「あーしは反対だ‼ミオリネ、分かってんのか⁉ただでさえスレッタは、前大戦でこんな大怪我負ったんだぞ⁉これ以上自分の花婿を、辛い目に合わせる気か?」
ミオリネは、再び暗い顔をする。
「そう、よね・・・・・・」
・・・・・・
やがて、スレッタが口を開く。
「ミオリネさん・・・・・・もう他に、戦いを止める手段はないんですよね?」
「・・・・・・えぇ。」
するとスレッタも、いよいよ覚悟を決めた。
「なら私・・・・・・やります。」
「―ッ⁉ ッ!!!!」
ミオリネが顔を抑えて踞る。
当然チュチュは反対する。
「待てよ!それって、お前がやんなきゃいけねーことなのか!?」
スレッタが、笑顔を作る。
「それが、みんなを守ることになるなら。」
すると、チュチュも立ち上がる。
「なら、あーしも行くよ。」
「僕も行くよ。」
そこへ、エランもやってきた。
「このまま話を聞いただけでおさらばって気分じゃないね。僕も手を貸してやろう。」
スレッタが、ミオリネの手を握る。
「行きましょう、ミオリネさん。」
スレッタ達地球寮の面々は、急きょ輸送船の手配を取り付け、地球への大気圏突入準備に入っていた。
それに協力したのは、なんと宇宙議会連合査察官のグストンであった。
「議会連合としても、この事態は看過できない、しかし表立っての協力も厳しいとのことで、自分への支援命令が出ました。地球へは、自分がお送りいたします。」
ミオリネは会釈し返す。
「協力、感謝するわ。」
ブリッジのその他の席には、アリヤやティル、リリッケらが座る。
一方、スレッタ達パイロットの面々は、ブリーフィングルームにて待機する。
ジェターク社の輸送船から、通信が入る。
そこには、グエルを始め、ラウダやフェルシーの顔も見える。
「ミオリネ。巨大兵器の方は任せろ。お前達には本部の方を頼む。」
ラウダとフェルシーも続く。
「俺達まで出張ったんだ、抜かるなよ!」
「ポンポン頭にもよろしく頼むっす!」
ミオリネは微笑む。
「お互い、無事任務を完遂しましょう。」
その言葉で、ジェタークの面々との通信は終了した。
「大気圏突入完了!目標点到達まで、残り150!」
グストンの声が、船内に響く。
ミオリネはブリッジにいない。
どこへ行ったかというと・・・・・・
ブリーフィングルーム前の廊下にて、スレッタに寄りかかっていた。
「・・・・・・ごめん、スレッタ。本当は貴女を巻き込みたくなかった。貴女は一生幸せな世界で過ごして欲しかった。でも・・・・・・」
「分かってます、ミオリネさん。この火種、放置しておけばいずれ世界に拡大する。だから私は、できることをするだけです。
・・・・・・必ず帰ってきますよ、貴女のところに。」
そう言うスレッタの姿は、どこか大人びて見えた。
まだあの事件から、3年しか経っていない。
でも、自分の花婿は、あの時の彼女ではない。いつの間にか、頼れる存在になっていた。
ミオリネは緩急極まり、思わず号泣してしまっていた。
スレッタが、自身の乗機を起動させる。
機体は、ブリオン社の新型、デミ・バーディング、さらにスレッタ用にダリルバルデのドローンビットが組み込まれていた。
チュチュから通信が入る。
「スレッタ・・・・・・大丈夫か。」
「はい。私にできることは、戦うことだけです。」
そして、通信を終了させる。
いよいよ、モビルスーツ発進地点に到達した。
「スレッタ・マーキュリー、デミ・バーディング、出ます!」
チュチュとエランも続く。
「チュアチュリー・パンランチ、デミ・トレーナー、行くぜ!」
「エラン・ケレス、ザウォート、出る。」
3機のモビルスーツが輸送船より発進した。
目標は、ダイゴウ社の地球本社。
周囲には、ダイゴウ社のクリバーリ・ドゥン、並びにフォルドの夜明けのモビルスーツが多数展開していた。
スレッタとエランは、ダイゴウ社敷地内部に侵攻し、敵MS部隊を無力化する。
一方チュチュは、後方より支援攻撃を行う。
エランが嘆息する。
「しかし、数が多いな。キリがないぞ。」
「・・・・・・」
引き続きMSを一掃するスレッタだが、その顔には陰りが見えた。
「このまま続けていてもジリ貧です。犠牲も増える。
━━指揮系統、社長さんの身柄を抑えましょう。エランさん、援護お願いします‼」
エランは思わず目をむく。
いつの間にかスレッタは、こんな大局的な思考ができるようになったのか。学園にいた時とは違う、確かなる成長を感じた。
エランは首肯する。
「分かった。」
デミ・バーディングは、急速前進する。
エランのザウォートも、その後を追う。
ダイゴウ社の司令部に動揺が走る。
「敵モビルスーツ二機、こちらに接近してきます!・・・・・・止まりません‼」
デミ・バーディングは、周囲のモビルスーツは全てビットにて殲滅し、自身への被弾も構わずひたすら前進を続ける。
「なぜだ!なぜ歩みを止めない‼」
ディープCEOは、焦りを募らせる。
「防衛部隊を全て出せ‼なんとしても、相手の動きを止めるのだ‼」
一方、驚くのはミオリネも同様だ。
「スレッタ‼」
慌てて止めようとするが、それをグストンは止める。
「ミオリネ様、今は英雄(・・)殿(・)を信じましょう。━━━こうでもしないと、ダイゴウ社は止められない。」
後方のチュチュも呆れた様子だ。
「ったく・・・・・・無茶しすぎだ。」
ついに、スレッタのデミ・バーディングが、司令部のあるビル前までたどり着く。
スレッタはビームライフルを構えつつ、社内へ通信を繋ぐ。
「こちら、スレッタ・マーキュリーです。
降伏してください、ディープCEO。どうか、これ以上の抵抗は・・・・・・」
しかし、この通信は、ディープの逆鱗に触れた。
「スレッタ・マーキュリー、だと⁉まさかあの、水星の・・・・・・魔女‼
・・・・・・ふざけるな!今や影では英雄などともてはやされているが、貴様は英雄などではない‼貴様が来てからおかしくなったんだ‼ベネリットも、デリング閣下も!」
「―ッ⁉」
「優位に立ったつもりだろうが、この基地はもはや、貴様らを取り囲む檻となった。地獄の業火で焼かれて死ね‼
社内地下爆破装置、最大質力で機動‼この当たり一帯を焼き払う‼同時に、巨大兵器を自動発射に変更、直ちに議会連合月面基地に向け、発射する‼」
次の瞬間、本社ビルが炎に包まれた。同時に、周囲のビル、モビルスーツも全て爆散、火の海がスレッタ達に襲いかかる。
「―ッ!逃げるぞ、スレッタ‼」
エランが叫ぶが、もう遅い。
「「うわぁーーーーーーー!!!!!!」」
「スレッタ‼」
この光景を見て、ミオリネが絶叫する。
「グストン、すぐに輸送船を基地に突入させて‼早くスレッタ達を助けないと‼」
「ッし、しかし!そんなことをすれば、この船も!」
ミオリネの無茶な命令に、グストンは悲鳴を上げる。
しかし、ミオリネはそれを一蹴する。
「いいから!言うとおりにしなさい‼」
自身もハンドルを握り、強引に突入を強行する。
『うわあーーーーーー!!!!!!』
乗っている地球寮の面々は、力の限り叫ぶ。
輸送船は、猛スピードで基地の一角に衝突し不時着する。
それにも構わず、ミオリネは輸送船から飛び出し、走り出した‼
「・・・・・・はあはあはあ。」
スレッタのデミ・バーディングは、ボロボロになりながらも、なんとか爆発に耐えた。
『大丈夫?スレッタ。』
コックピット内の上部に吊り下げた、ホッツさんのキーホルダーから声がする。
エリクトだ。
「うん、エリクトがシステムに介入し、防御してくれなかったら、危なかった。ありがとう。」
そこへ、ミオリネがやってくる。
「スレッターーーーーー!!」
「ミオリネさん⁉」
スレッタは驚愕しつつ、直ちにコックピットを開ける。
「ミオリネさん、どうしてここに━━むぐぅ⁉」
「良かった、本当に良かった、スレッタ‼」
スレッタの心配を余所に、ミオリネは抱きつく。
ミオリネは、スレッタが爆発に巻き込まれたと思い、失意の内だったのだ。
スレッタも、ミオリネが心配してくれていたことを感じとり、思わず言葉を漏らす。
「帰りましょう、ミオリネさん。」
その時、デミ・バーディング内にアラートが鳴る。
その情報を見、スレッタの顔から笑みが消えた。
「━━ッ⁉これは‼」
ミオリネからの連絡を受け、グエルは気合いを入れ直す。
「・・・・・・よし、行くぞ!」
グエルは、自身の機体・ダリルバルデを機動させる。
すでにジェターク社の輸送船は、ダイゴウ社巨大兵器の近距離まで接近しつつあった。
周囲には、フォルドの夜明けのモビルスーツ部隊が多数護衛している。
輸送船のハッチが開く。
「グエル・ジェターク、ダリルバルデ、出撃する!」
「ラウダ・ニール、ディランザ、出撃する!」
「フェルシー・ロロ、ディランザ、出ます!」
3機のモビルスーツが、輸送船から発進した。
敵MSから、集中砲火を受ける。
「チッ、時間が惜しい。俺は敵兵器を破壊する!ラウダ、フェルシー、周辺の敵は任せたぞ!」
グエルはそう言うと、攻撃用ドローン「グスサー・イーシュヴァラ」を機動。前面のデスルター数機を破壊した。
ダリルバルデは基地内部に侵入していく。
途中、フォルドの夜明けのプロドロスやダイゴウ社のクリバーリなどから攻撃を受けるが、ものともせず突き進む。
ラウダとフェルシーの援護も欠かせない。
ついに、巨大兵器の発射台正面までやってくる。
グエルは、背面に背負った、大火力バスターライフルを取り出す。
出力は、改修エアリアルの最大火力にも及ぶ。
「これで終わりだ!」
しかし、その行動は一歩遅かった。
敵兵器の自動発射とダリルバルデのバスターライフルの発射は同時であったのだ。
互いのビームが衝突するが、圧倒的にグエル側の質量が足りない。
すぐさま打ち消され、ダリルバルデに直撃する。
「兄さん!」/「グエル先輩‼」
そしてその砲撃は、そのまま基地上空を貫き、宇宙まで発射される。
しかし、議会連合月面基地は直撃を免れ、ビームは空を切った。
「・・・・・・はあ、はあ、はあ。」
ダリルバルデは、咄嗟に防御体勢に全力を注ぎ、機体の86%を破損させつつも、なんとか爆散を避けた。
グエルはビームサーベルを抜く。
「今度こそ!」
そして、兵器発射口へと特攻した。
燃え上がるビルの中。自機から降りたスレッタは、一人駆け出していた。
後からミオリネも追いかけてくる。
「ちょっと、スレッタ⁉」
スレッタは耳を貸さない。
ただひたすら、前へと進む。
「おぎゃあー、おぎゃあー、おぎゃあー!!」
燃え上がる爆焔の炎の中、一人の赤子が鳴き声を上げている。
その両隣には、この子の両親だろうか、建物の瓦礫の下敷きとなり、息絶えていた。
そして、この赤子もまた、炎に包まれるところであった。
そこに。
「―ッ!」
スレッタが、火を躊躇わずやってきた。
ミオリネが後に続く。
「何やってんの!?こんなとこ入ったら、あんたも死ぬわよ!?」
「でも!建物の中から、子供の鳴き声が聞こえるん、です!!」
そしてスレッタは、赤子の前までやって来る。
その両隣の、おそらく両親であろう遺体を見て、彼女は口を抑えて絶句する。
「ちょっと・・・・・・―ッ⁉」
ミオリネもまた、その光景を見て言葉を失う。
スレッタ、我に返ると首を横に振り、赤子の体を抱えてミオリネの方を見る。
「とにかく、今はこの子を助けましょうッ!」
ミオリネも頷き、この建物からの脱出を試みる。
その後、後に影においてA.S.125政変と呼ばれるこの事件は、世界への衝撃を与えないようにするため、公的記録からは抹消された。
旧ベネリットの幹部達は、グループの必要性を再認識、再建に向けて動き出した。
しかし、旧グループの失敗だけは、繰り返してはならない。
そのため、グループは事変を経験した若手のみで構成し、デリングを始めとする旧幹部は引退した。
そして、新生ベネリットが誕生し・・・・・・その総裁に、英雄・スレッタ・マーキュリーが招へいされた・・・・・・