A.S.125。
大戦から3年が経ち、地球圏は数々の問題を孕みつつも、一応の平穏を取り戻しつつあった。
しかし、ベネリットグループの解散は、世界に衝撃を与え、その混乱は決して小さいものではなかった。一時の平和の裏で、不穏な影が動き出す。

注)pixivにも同作掲載有

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別枠の方で投稿していました、「水星の魔女ダークネス」との間話になります。時間軸は、原作終了直後からです。


   

「いえ、止めてみせます!」

A.S.122、宇宙儀会連合とベネリットグループ傘下シン・セー開発公社が衝突した、いわゆる「クワイエットゼロ事変」の終結。宇宙議会連合のトップによって放たれた、惑星間レーザー装置は、スレッタ・マーキュリーのキャリバーンを始めとする、ガンダムのパーメットリンクによりオーバーライド、そしてシン・セーの持ち出したクワイエットゼロもまた、粒子レベルに分解され、消滅した。

戦線終結に伴い、デリングを始めとするベネリットの幹部達は、議会連合に対し、グループ解散を条件に、終戦を申し入れた。

その仲介には、セセリア・ドートの父、サンドロ・ドート ブリオン社CEOが奔走した。

 

クワイエットゼロ事変に貢献した学生達だったが、戦後はそれぞれの道を歩むことになる。

ラウダ・ニール、チュアチュリー・パンランチ、ロウジ・チャンテは、アスティカシアの学園に帰還、グエル・ジェタークとフェルシー・ロロは、ジェターク社の再建に従事すべく、本社フロント・レオへ移る。

そしてミオリネは、先の大戦でパーメットの体内流入により傷ついたスレッタの治療に付き添うため、地球まで共に向う。

その後、様々な衝突がありつつも、終戦は成立、地球圏にひとときの平和が訪れ、実に三年の月日が経った。

 

「帰りましょう。」

「はい!私、お腹すいちゃいました」

「フフッ

・・・・・・私も。」

ミオリネの差し伸べる手を、スレッタは掴み、立ち上がった。

 

♪はるか遠くに浮かぶ星を想い眠りにつく君の━━

 

トゥルルル

突然、ミオリネの端末が反応する。

「はい。」

「ミオリネ、エマージェンシーだ‼」

そこからは、緊迫したグエルの声が響いた。

スレッタとミオリネは、顔を見合わせる。

 

地球。ダイゴウ社傘下、軍需工場地帯。

工場長と数名の幹部が、会議を行っている。

「それで、売上の方はどうだ?」

「はい、先年のベネリット解散により、顧客数が下落、売上は低迷の一途を辿っています。」

工場長は唸る。

「ううむ、旧御三家ならばともなく、中堅であった我が社ですら、この有様か・・・・・・」

と、その時、突如として、工場全体に大きな振動が生じる。

工場長は叫ぶ。

「ッ!なんだ⁉」

すぐさま報告が入る。

「B地区より、所属不明機が数機侵入、銃撃が加えられています!」

しかし、その部屋にも、武装したテロリストが侵入、アサルトライフルを構えられ周囲を固められたため、工場長は投降した。

 

アスティカシアへ戻ろうとしていたミオリネ達だったが、急きょ転換、旧ベネリットフロントの会議室に赴いた。

スレッタ達地球寮の面々は外で待たせておき、ミオリネだけが中に入る。

「グエル━━エラン!?」

そこには、グエルのみならず、エラン━━強化人士5号もいた。その他、旧ベネリットの幹部面子も揃っている。

エラン5号が口を開く。

「ったく、地球を旅してたら、いきなりテロに合ったぜ。命からがらなんとかこっちに戻ってきたけど。」

ミオリネが顔を顰める。

「・・・・・・まずいわね。今のこの繊細な時期に、こんな騒動があるとは。」

緊急対策本部の招集人として、グエルが仕切る。

「皆、よく集まってくれた。改めて状況を説明する。

昨日未明、旧ベネリットグループ傘下の一、ダイゴウ社の地球圏工場の一つが、何者かによって占拠された。同時に、ダイゴウ社本社とも通信が途絶、おそらく襲撃を受けたと見える。

ようやく平穏を取り戻したこの時期に、議会連合にこのことを感づかれるのは大変によろしくない。そこで、内々でこの事態を収拾したいと考えるが、皆の意見を聞きたい。」

グエルの言葉に、皆が頷く。

この場に集まった面子は、若手がほとんどだ。旧ベネリットグループの大幹部であった、デリングやサリウス、ラジャン等は、すでに議会連合の審議官へと、職を移している。

そうなってくると、グエルの発言力はかなり大きい。

「ありがとう。まず重要なことが、多数の企業が合同で介入行動へ移ると、議会連合にベネリットの復活を誤解されてしまう。そこで、あくまで各企業が、それぞれ単独でダイゴウ社からのエマージェンシーを受け取ったとして、動きたい。

また、なるべくはモビルスーツの派兵は避け、対話による解決を試みたい。今まで培ってきた平和をここで崩すことは望まない。交渉には、サンドロCEOを動かし、護衛として何名かを同席させるのでどうだろうか?」

ミオリネも頷く。

「ええ。地球には私が行く。グエルはここに残って、緊急対策本部の指揮をお願い。」

他からも異論は出ない。

話がまとまりかけていた、その時!

 

ドゴン

突然、プラント内を、大きな揺れが襲った。

「何だ⁉」

一同に、動揺が広がる。

管制官からの通達が入る。

「Cブロックに攻撃を受けました!周辺にモビルスーツ10機確認、形式照合・・・・・・デスルター、所属、フォルドの夜明け‼」

『―ッ⁉』

その報告に、ミオリネとグエルは顔を見合わせる。

幹部達はざわめきが出る。

「テロリストだと⁉」

「どうするんだ‼ここにはモビルスーツも・・・・・・」

グエルは一喝して沈める。

「落ち着け‼

格納庫、ディランザを準備しろ。俺が乗る‼」

「グエル‼」

ミオリネは止めようとするが、グエルは微笑む。

「大丈夫だ、任せろ。」

そう言い残して、グエルは部屋から出て行った。

 

格納庫グエルのディランザが、発進体勢に入る。

「CEO、MS部隊の背後に、輸送船を一機確認。」

「さすがに俺一機じゃ手に余る。ケナンジ隊長に応援を頼め。ドミニコスは解散したが、MS何機かくらいは残ってるだろう。」

「承知しました━━ご武運を。」

「ディランザ・ソル、出るぞ。」

ついに、グエルの機体が発進した。

言葉では弱気だったが、操縦技術は全く衰えていない。次々と、敵デスルターを撃墜させていく。

 

グエルが戦闘を行っているのと、同じころ。

ミオリネの端末に通知が入る。

「知らない番号・・・・・・誰⁉」

電話の相手が話しだす。

「お久しぶりです、ミオリネ様。

ダイゴウ社CEO、ディーブ・トトです。」

「―ッ⁉」

件の消息不明だったダイゴウ社CEOが突然声を出したため、ミオリネは思わず驚いた。

「ディーブさん⁉今、どちらに・・・・・・⁉」

ディーブは質問に答えず、ただ呟くように言った。

「ミオリネ様・・・・・・貴方の父、デリング閣下は変わられてしまった・・・・・・貴方が、総裁の座をお継ぎください・・・・・・そして、ベネリットグループの再興を・・・・・・‼」

それだけ言うと、ディーブの音声は、プツリと切れてしまった。

「ディーブさん?・・・・・・ディーブさんー!!?」

ミオリネは、ただ呆然と立ち尽くした。

 

テロリストのモビルスーツを片付けたグエルのもとに、新たに報告が届く。

「CEO!11時の方向から、新たにMS20!これは・・・・・・ダイゴウ社のモビルスーツ、クリバーリ・ドゥンです!」

「何ィ⁉」

ディランザは、そちらの方角を向く。

「やはり、ダイゴウ社を襲撃したのもコイツらか‼」

しかし、グエルの予想は外れていた。

MSの背後の輸送船から、通信で映像が届く。

「私はダイゴウ社CEO、ディーブ・トトだ。我々は、フォルドの夜明けに協力し、襲撃をかけた。

我々の目的はただ一つ!ベネリットグループの再結成である!!

解散により、我らは莫大な損失を被った。そして地球側の要求は日に日に増すばかり・・・・・・

世界には、一つの秩序が必要だ!そのために我々は、フォルドの夜明けと交渉を行い、幹部として取り立てることで、手を取り合った。

そして、我がダイゴウ社には、大規模戦略兵器の用意がある‼地球から照準を向け、議会連合の月面基地へと発射する。猶予は一時間、それまでに議会連合の我らへの全面降伏を要求する‼」

これを最後に、映像は終了した。

皆呆然として、誰も口を開けない。会議室の空気は、静まり返っていた。

そこへ、帰還したグエルがやってくる。

グエルもまた、一瞬黙り込むが、やがて口を開いた。

「・・・・・・とにかく、悠長にはしていられない。今すぐ、その大規模兵器の照射をなんとしても止めなくては。これまで続いた僅かな平穏の一時、決して壊すわけにはいかん!」

すると、ミオリネも口を開く。

「ええ。それに、ダイゴウ社本部へも、同時に強襲をかけなくてはね。相手が約束を守ってくれるとも限らない。すぐにでも、兵器の制御を奪わなくては。」

二人の言葉に、議場の全員は、顔は強ばったままであるが、頷いた。

グエルが、号令をかける。

「・・・・・・よし、やるぞ!」

 

士気は十分に上がったものの、致命的な問題が残っていた。

モビルスーツ、及びパイロットが圧倒的に足りないのだ。

クワイエットゼロ事変終結後、しばらくしてドミニコスは解散した。もちろん完全にゼロとは言わないが、所属モビルスーツの大部分はすでに処分、もしくは企業に返還されたのである。

そしてなにより、パイロットは各地に散らばっている。それを再結集させるには時間がかかる。もはや旧ドミニコスは当てにならない。

他の民間企業も同様だ。テロを鎮圧できるほどのモビルスーツ部隊は持ち合わせてはいない。

この甚大なる問題に、ミオリネとグエルは頭を悩ませる。

しかし、しばらくして・・・・・・

「「あ!」」

ミオリネとグエルは、同時に思いついた。

だがそれは、別の意味で、口にするのは憚られた。

しばし沈黙が続く。

・・・・・・先に口を開いたのはグエルだった。

「━━━ミオリネ、悔しいが、もはや他に手はない。」

「━━ッ!でも!それじゃあまた、あの子達を戦場に巻き込むことに・・・・・・‼」

「だが、このままではまた地球と宇宙との戦争が再開される。それだけは、阻止しなければ・・・・・・」

再び重い沈黙が、その場を支配する。

だがついに、ミオリネは覚悟を決めた。

「・・・・・・そうね。」

 

フロントの控え室で待たされていた地球寮の面々に、ミオリネは状況を説明した。

「━━━という状況で・・・・・・その・・・・・・」

「・・・・・・」

スレッタは黙って聞いている。

すでに、ミオリネの言いたいことは分かる。

一方、チュチュは声を上げる。

「あーしは反対だ‼ミオリネ、分かってんのか⁉ただでさえスレッタは、前大戦でこんな大怪我負ったんだぞ⁉これ以上自分の花婿を、辛い目に合わせる気か?」

ミオリネは、再び暗い顔をする。

「そう、よね・・・・・・」

・・・・・・

やがて、スレッタが口を開く。

「ミオリネさん・・・・・・もう他に、戦いを止める手段はないんですよね?」

「・・・・・・えぇ。」

するとスレッタも、いよいよ覚悟を決めた。

「なら私・・・・・・やります。」

「―ッ⁉ ッ!!!!」

ミオリネが顔を抑えて踞る。

当然チュチュは反対する。

「待てよ!それって、お前がやんなきゃいけねーことなのか!?」

スレッタが、笑顔を作る。

「それが、みんなを守ることになるなら。」

すると、チュチュも立ち上がる。

「なら、あーしも行くよ。」

「僕も行くよ。」

そこへ、エランもやってきた。

「このまま話を聞いただけでおさらばって気分じゃないね。僕も手を貸してやろう。」

スレッタが、ミオリネの手を握る。

「行きましょう、ミオリネさん。」

 

スレッタ達地球寮の面々は、急きょ輸送船の手配を取り付け、地球への大気圏突入準備に入っていた。

それに協力したのは、なんと宇宙議会連合査察官のグストンであった。

「議会連合としても、この事態は看過できない、しかし表立っての協力も厳しいとのことで、自分への支援命令が出ました。地球へは、自分がお送りいたします。」

ミオリネは会釈し返す。

「協力、感謝するわ。」

ブリッジのその他の席には、アリヤやティル、リリッケらが座る。

一方、スレッタ達パイロットの面々は、ブリーフィングルームにて待機する。

ジェターク社の輸送船から、通信が入る。

そこには、グエルを始め、ラウダやフェルシーの顔も見える。

「ミオリネ。巨大兵器の方は任せろ。お前達には本部の方を頼む。」

ラウダとフェルシーも続く。

「俺達まで出張ったんだ、抜かるなよ!」

「ポンポン頭にもよろしく頼むっす!」

ミオリネは微笑む。

「お互い、無事任務を完遂しましょう。」

その言葉で、ジェタークの面々との通信は終了した。

 

「大気圏突入完了!目標点到達まで、残り150!」

グストンの声が、船内に響く。

ミオリネはブリッジにいない。

どこへ行ったかというと・・・・・・

ブリーフィングルーム前の廊下にて、スレッタに寄りかかっていた。

「・・・・・・ごめん、スレッタ。本当は貴女を巻き込みたくなかった。貴女は一生幸せな世界で過ごして欲しかった。でも・・・・・・」

「分かってます、ミオリネさん。この火種、放置しておけばいずれ世界に拡大する。だから私は、できることをするだけです。

・・・・・・必ず帰ってきますよ、貴女のところに。」

そう言うスレッタの姿は、どこか大人びて見えた。

まだあの事件から、3年しか経っていない。

でも、自分の花婿は、あの時の彼女ではない。いつの間にか、頼れる存在になっていた。

ミオリネは緩急極まり、思わず号泣してしまっていた。

 

スレッタが、自身の乗機を起動させる。

機体は、ブリオン社の新型、デミ・バーディング、さらにスレッタ用にダリルバルデのドローンビットが組み込まれていた。

チュチュから通信が入る。

「スレッタ・・・・・・大丈夫か。」

「はい。私にできることは、戦うことだけです。」

そして、通信を終了させる。

いよいよ、モビルスーツ発進地点に到達した。

「スレッタ・マーキュリー、デミ・バーディング、出ます!」

チュチュとエランも続く。

「チュアチュリー・パンランチ、デミ・トレーナー、行くぜ!」

「エラン・ケレス、ザウォート、出る。」

3機のモビルスーツが輸送船より発進した。

目標は、ダイゴウ社の地球本社。

周囲には、ダイゴウ社のクリバーリ・ドゥン、並びにフォルドの夜明けのモビルスーツが多数展開していた。

 

スレッタとエランは、ダイゴウ社敷地内部に侵攻し、敵MS部隊を無力化する。

一方チュチュは、後方より支援攻撃を行う。

エランが嘆息する。

「しかし、数が多いな。キリがないぞ。」

「・・・・・・」

引き続きMSを一掃するスレッタだが、その顔には陰りが見えた。

「このまま続けていてもジリ貧です。犠牲も増える。

━━指揮系統、社長さんの身柄を抑えましょう。エランさん、援護お願いします‼」

エランは思わず目をむく。

いつの間にかスレッタは、こんな大局的な思考ができるようになったのか。学園にいた時とは違う、確かなる成長を感じた。

エランは首肯する。

「分かった。」

デミ・バーディングは、急速前進する。

エランのザウォートも、その後を追う。

 

ダイゴウ社の司令部に動揺が走る。

「敵モビルスーツ二機、こちらに接近してきます!・・・・・・止まりません‼」

デミ・バーディングは、周囲のモビルスーツは全てビットにて殲滅し、自身への被弾も構わずひたすら前進を続ける。

「なぜだ!なぜ歩みを止めない‼」

ディープCEOは、焦りを募らせる。

「防衛部隊を全て出せ‼なんとしても、相手の動きを止めるのだ‼」

 

一方、驚くのはミオリネも同様だ。

「スレッタ‼」

慌てて止めようとするが、それをグストンは止める。

「ミオリネ様、今は英雄(・・)殿(・)を信じましょう。━━━こうでもしないと、ダイゴウ社は止められない。」

後方のチュチュも呆れた様子だ。

「ったく・・・・・・無茶しすぎだ。」

 

ついに、スレッタのデミ・バーディングが、司令部のあるビル前までたどり着く。

スレッタはビームライフルを構えつつ、社内へ通信を繋ぐ。

「こちら、スレッタ・マーキュリーです。

降伏してください、ディープCEO。どうか、これ以上の抵抗は・・・・・・」

しかし、この通信は、ディープの逆鱗に触れた。

「スレッタ・マーキュリー、だと⁉まさかあの、水星の・・・・・・魔女‼

・・・・・・ふざけるな!今や影では英雄などともてはやされているが、貴様は英雄などではない‼貴様が来てからおかしくなったんだ‼ベネリットも、デリング閣下も!」

「―ッ⁉」

「優位に立ったつもりだろうが、この基地はもはや、貴様らを取り囲む檻となった。地獄の業火で焼かれて死ね‼

社内地下爆破装置、最大質力で機動‼この当たり一帯を焼き払う‼同時に、巨大兵器を自動発射に変更、直ちに議会連合月面基地に向け、発射する‼」

次の瞬間、本社ビルが炎に包まれた。同時に、周囲のビル、モビルスーツも全て爆散、火の海がスレッタ達に襲いかかる。

「―ッ!逃げるぞ、スレッタ‼」

エランが叫ぶが、もう遅い。

「「うわぁーーーーーーー!!!!!!」」

 

「スレッタ‼」

この光景を見て、ミオリネが絶叫する。

「グストン、すぐに輸送船を基地に突入させて‼早くスレッタ達を助けないと‼」

「ッし、しかし!そんなことをすれば、この船も!」

ミオリネの無茶な命令に、グストンは悲鳴を上げる。

しかし、ミオリネはそれを一蹴する。

「いいから!言うとおりにしなさい‼」

自身もハンドルを握り、強引に突入を強行する。

『うわあーーーーーー!!!!!!』

乗っている地球寮の面々は、力の限り叫ぶ。

輸送船は、猛スピードで基地の一角に衝突し不時着する。

それにも構わず、ミオリネは輸送船から飛び出し、走り出した‼

 

「・・・・・・はあはあはあ。」

スレッタのデミ・バーディングは、ボロボロになりながらも、なんとか爆発に耐えた。

『大丈夫?スレッタ。』

コックピット内の上部に吊り下げた、ホッツさんのキーホルダーから声がする。

エリクトだ。

「うん、エリクトがシステムに介入し、防御してくれなかったら、危なかった。ありがとう。」

そこへ、ミオリネがやってくる。

「スレッターーーーーー!!」

「ミオリネさん⁉」

スレッタは驚愕しつつ、直ちにコックピットを開ける。

「ミオリネさん、どうしてここに━━むぐぅ⁉」

「良かった、本当に良かった、スレッタ‼」

スレッタの心配を余所に、ミオリネは抱きつく。

ミオリネは、スレッタが爆発に巻き込まれたと思い、失意の内だったのだ。

スレッタも、ミオリネが心配してくれていたことを感じとり、思わず言葉を漏らす。

「帰りましょう、ミオリネさん。」

その時、デミ・バーディング内にアラートが鳴る。

その情報を見、スレッタの顔から笑みが消えた。

「━━ッ⁉これは‼」

 

ミオリネからの連絡を受け、グエルは気合いを入れ直す。

「・・・・・・よし、行くぞ!」

グエルは、自身の機体・ダリルバルデを機動させる。

すでにジェターク社の輸送船は、ダイゴウ社巨大兵器の近距離まで接近しつつあった。

周囲には、フォルドの夜明けのモビルスーツ部隊が多数護衛している。

輸送船のハッチが開く。

「グエル・ジェターク、ダリルバルデ、出撃する!」

「ラウダ・ニール、ディランザ、出撃する!」

「フェルシー・ロロ、ディランザ、出ます!」

3機のモビルスーツが、輸送船から発進した。

敵MSから、集中砲火を受ける。

「チッ、時間が惜しい。俺は敵兵器を破壊する!ラウダ、フェルシー、周辺の敵は任せたぞ!」

グエルはそう言うと、攻撃用ドローン「グスサー・イーシュヴァラ」を機動。前面のデスルター数機を破壊した。

 

ダリルバルデは基地内部に侵入していく。

途中、フォルドの夜明けのプロドロスやダイゴウ社のクリバーリなどから攻撃を受けるが、ものともせず突き進む。

ラウダとフェルシーの援護も欠かせない。

ついに、巨大兵器の発射台正面までやってくる。

グエルは、背面に背負った、大火力バスターライフルを取り出す。

出力は、改修エアリアルの最大火力にも及ぶ。

「これで終わりだ!」

 

しかし、その行動は一歩遅かった。

敵兵器の自動発射とダリルバルデのバスターライフルの発射は同時であったのだ。

互いのビームが衝突するが、圧倒的にグエル側の質量が足りない。

すぐさま打ち消され、ダリルバルデに直撃する。

「兄さん!」/「グエル先輩‼」

そしてその砲撃は、そのまま基地上空を貫き、宇宙まで発射される。

しかし、議会連合月面基地は直撃を免れ、ビームは空を切った。

 

「・・・・・・はあ、はあ、はあ。」

ダリルバルデは、咄嗟に防御体勢に全力を注ぎ、機体の86%を破損させつつも、なんとか爆散を避けた。

グエルはビームサーベルを抜く。

「今度こそ!」

そして、兵器発射口へと特攻した。

 

 

燃え上がるビルの中。自機から降りたスレッタは、一人駆け出していた。

後からミオリネも追いかけてくる。

「ちょっと、スレッタ⁉」

スレッタは耳を貸さない。

ただひたすら、前へと進む。

 

「おぎゃあー、おぎゃあー、おぎゃあー!!」

燃え上がる爆焔の炎の中、一人の赤子が鳴き声を上げている。

その両隣には、この子の両親だろうか、建物の瓦礫の下敷きとなり、息絶えていた。

そして、この赤子もまた、炎に包まれるところであった。

そこに。

「―ッ!」

スレッタが、火を躊躇わずやってきた。

ミオリネが後に続く。

「何やってんの!?こんなとこ入ったら、あんたも死ぬわよ!?」

「でも!建物の中から、子供の鳴き声が聞こえるん、です!!」

そしてスレッタは、赤子の前までやって来る。

その両隣の、おそらく両親であろう遺体を見て、彼女は口を抑えて絶句する。

「ちょっと・・・・・・―ッ⁉」

ミオリネもまた、その光景を見て言葉を失う。

スレッタ、我に返ると首を横に振り、赤子の体を抱えてミオリネの方を見る。

「とにかく、今はこの子を助けましょうッ!」

ミオリネも頷き、この建物からの脱出を試みる。

 

その後、後に影においてA.S.125政変と呼ばれるこの事件は、世界への衝撃を与えないようにするため、公的記録からは抹消された。

旧ベネリットの幹部達は、グループの必要性を再認識、再建に向けて動き出した。

しかし、旧グループの失敗だけは、繰り返してはならない。

そのため、グループは事変を経験した若手のみで構成し、デリングを始めとする旧幹部は引退した。

そして、新生ベネリットが誕生し・・・・・・その総裁に、英雄・スレッタ・マーキュリーが招へいされた・・・・・・


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