Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した! 作:何処にでもある
天使とTSとのじゃロリが融合したキャラを見かけないのでやりました。
ちょいちょい休む感じの不定期更新です。
俺が死ぬ前にやっていたソシャゲの中で「エラ・タペストリー〜幻話の時織姫〜」というのがあった。
略して「エラッタ」と呼ばれていたそれは、大雑把に言ってしまえば中身が変わってしまった物語の中に入り、悪い奴らを倒して正しい姿を取り戻すという、それはまぁありきたりなストーリーにも関わらず6年も続いたそこそこ凄いソシャゲだ。
「真の話か…?」
(うっそでしょ…)
鏡に映った、金髪ロングウェーブと翡翠色の目の天使が唖然とした顔になる。
玉座に背中を押してずり落ちて、手を額に当て、眩暈を抑えた。
そしてこの前置きで分かる通り、俺はこのソシャゲのとあるキャラに転生した。
…ただし、それは主人公でもそこら辺のモブでもなく──Nランクキャラの「[黄金の愚王] ルシファー」という、ボスキャラの面汚しにしてルシファー界隈の小物というネタキャラ未満の扱いの……。
「
(「ノクターン・ヴェール」の
このままだと悪魔と強制契約させられて仕舞いには主人公に監獄送りにされる…なんとか…しないと…!
「女王様、どうされましたか? もしや、戴冠式でお疲れで…?」
「いや、なんとも無い…何をぐずぐずしている? サッサと下がるのじゃ!」
(いやー…なんでも無いです。ただ性別と種族の変化がちょっとね…受け入れられなくてね…)
「…はっ! 失礼致しました!」
俺の意思に反してこの口がそういうと、鏡を持って来た
俺はそれを見てため息を吐き、座り直してから小さな翼をはためかせて楽な位置を探し、これからするべき事を考える事にした。
「……女王様、突然鏡を持って来させてどうされましたかな? 良ければこのユダに…」
「何でもないのじゃ。…妾は国政を定める為に思慮に耽ける。眼を開けるまで決して声をかけるでない」
(あ、何でも無いです。…先ずは作戦ターイム! 死んだのに、目覚めたら9歳の天使族ロリになるのは予想外だよ!)
「ではそのように…皆のもの良いな! 女王様の最初のお達しだ!」
何せ最後にやったのは1年前、ストーリーや世界観などうろ覚えも良い所だ。
だが、それでもルシファーは最初のボスだったから大雑把な話は覚えている。先ずは其処からやるべき事を探すべきだろう。
何だかは知らないが転生…口調が強制だし憑依? 転生したんだ。それなら死なない方法を、将来助かる方法を探して然るべきだろう。俺の中の居る筈のルシファーもそう言っている筈だ。
「エラ・タペストリー〜幻話の時織姫〜」
ジャンルとしては爽快カードバトルRPGだろうか。
毎ターン各キャラの持つ二種類のカードがランダムに出される戦闘システムと、テンプレートなファンタジー物だ。
世界観としては現実世界の「エラトリア」と寓話世界の「ミソフィア」があり、お互いに影響を与えているという物。…現実側から一方的に受けるのが基本だけどな。
1つの世界の「エラトリア」と、6つの世界に分かれてる「ミソフィア」という構造だ。
通常なら現実側が絶対的に優先されて、完結してて有名な物語があれば、登場人物や道具が寓話側に現れて、物語通りに出現した人達が動く。
その際に不都合な土地や建物は虚空に落ちて消滅し、次の完結した物語に世界を明け渡す。ゲームでは生き残った登場人物の努力により独自の文化を築いたりもしたが…それはゲームが始まる100年前だった筈だ。
「ミソフィア」は不安定な世界で、現実側の創作物に翻弄されて来た訳で…ある意味「ミソフィア」は沢山の物語がオマージュされ、クロスオーバーし続けている世界と言ってもいいだろう。
だから「ディストリカ」はこの上位下位逆転させることで影響を逆流させ、現実側の歴史改変をしていた訳なのだが…ルシファーはストーリーだと確か…。
「…妾を利用するだけしておいて捨てる腹づもりの、不埒な連中か…不敬じゃのう?」
(ルシファーは能力も相俟って監獄でリソース源にされ続けた末に…だっけか…)
「…!?」
(まさか…傀儡にしようとしているのがバレているのか…!?)
そして俺が転生したルシファーが居るのは「ミソフィア」側だ。
6つある世界の一つ、天の世界「セレスティア・ミラージュ」の女王として、現実側で完結した[黄金の愚王]という話通りに齢9歳にして女王になる事になった。
「黄金…悪魔のう?……ただの横領と賄賂の責任を押し付けただけではないか。誰じゃそんなことしとるのは? ……ほう? 全員か」
([黄金の愚王]…キャラストーリーで読んだことがある。上の腐敗で革命を起こそうとした民を宥める為、ルーシーを黄金の悪魔として処刑する際に公布したプロパガンダ。ルシファーは、そのプロパガンダの登場人物だったっけ)
「………ハ!」
(…黄金…悪魔…間違いない。これは…予言! この娘には未来が見えている! なんと、王族には今だけでなく、未来を見通せる力もあると言うのか!)
現実側で傀儡政権を受ける事になり、半年間王冠を被っていただけの少女「ルーシー」をモチーフとした、人を殺すための話。
この作品は著作側が腐敗した貴族なだけあって、少女を傀儡政権の被害者としてではなく、悪魔と契約した悪者として書いている。
著者に何か思う所があったのか、裏設定で貴族側が悪になる傀儡に云々を設定していたみたいだが…最後は正義の貴族に裁かれて終わりだし、ルシファーの立場からすれば敵が増えただけだ。
「このままでは半年後に国が滅ぶのなら…よし。妾は決めたぞ?」
(…よし、やることは見えて来た)
ルシファーをリソースとして利用しようとする「ディストリカ」は厄介になりそうだが優先度が極限まで低い。なので…先ずはこれだろう。
虚空への消滅の対策だ。
[黄金の愚王]の裏設定のせいで敵は多いが…それとは別に問題なのが、後半年もすればこれまで消え去った物語と同じく、ずっと続いてきた再現と消滅の連鎖に囚われること。
「ミソフィア」で物語通りに動いた後に、別の物語の再現の為に消えることだ。
幸い口調はルシファーのものに変換されるが、自由に動けはする。
「宰相、仮に其方が誠に国と妾に尽くすつもりなら、今から言った物を3日以内に用立ててみせるのじゃ。出来ぬなら…」
(お前が従わない前提で言うけど、今から言った奴を準備してくれない?)
「はっ! なんなりと!」
(ならば……ここは従うのが吉! 未来の見える王ならば、従えば私達が傀儡にするよりも富を得られる筈だ!)
「おっ…? まあ、やる気があるのは良いことじゃな!」
(なんか知らないけどやったぜ!)
[黄金の愚王]はゲームの開始時期より大体…1500年くらい? 前の時代に書かれた物の筈だ。
これが「ディストリカ」が改変する為に復活させた方なら、その組織員がここにいる筈なので…今はゲームより過去なのだろう。
イレギュラーの俺が動くことで現実側が大幅に改変され、ゲームと展開が変わるかも知れないが知った事では無い。
「こほん…」
ゲーム知識でも国でも、何でも使って生き残ってやるのだ!
そして100年楽しく生きてみせる! この国が滅びようと生きてみせる!
「直ちに兵士、狩人、傭兵、魔法使いを集めるのじゃ! 国中の奴ら全員じゃぞ!──「精霊神石」収集の外征なのじゃ!」
王の間に宰相を始めとした貴族達の威勢のいい声が響く。
例えソシャゲではNランクのクソザコの愚王だろうが、王の強みは権力だ。
国中の民に罵られながら処刑される描写があるお陰で、民が大量に湧いているのが幸いした。
ゲームで道中のモブとしてやられる連中が、屍山血河を作っても天の世界「セレスティア・ミラージュ」に消えない土地を築けたなら大きなアドだ。
猫の額程度でも、俺1人暮らせる土地が有れば良い。どうせ原作より凄い昔だし何したって良いだろ。
こっちは世界5分前仮説がマジな方の寓話世界に居るんだ、消滅する前に何とかするんだよーォ!
そうしてバサリと天使の翼を羽ばたかせ、意気揚々と宣言した。
「死にたくなければ、妾に従うのじゃー!」
(俺の為に──従え!)
こうしてTS天使ロリ女王による、ソシャゲ世界の生存戦略が始まったのだった!
エラトリア パシェード王国ルーシー期
精霊歴503年「黄金の時代」
「──外征、ですか」
「は…はい! あの、私なりに…この国に足りないのは何かなって…それで思いついたんです。新大陸に沢山ある精霊神石があれば、もっと豊かになるんじゃないかなって…!」
「ふむ…」
時計の針がカチコチと部屋に響く。ジッと資料を見つめるユダ宰相の眼が、まるで私自身を隅々まで見ている様に感じられて、思わず生唾を飲み込んだ。
「先ず結論から」
私はルーシー。
王族だが、本来なら王権を継げるはずのない末席に座る娘だ。
次代も本当なら兄様達の中から選ばれる筈だったのだが、私とユダ様の政略婚約が決まった時期から謎の奇病が蔓延し、結果的に私が王座に座る事になった。
とはいえ私は未だ9歳の身。決して我が大国を支配できる実力はない。なのでこうして、婚約者のユダ様が代わりに国の運営を行う事になったのだ。
それはとっても有難いことだし、私なんかが口を出して良いものじゃないのだが…ある日、ふと天啓が降りたのだ。
精霊神石を集めて研究すれば、この国はもっと良くなる筈だ…と。
ただの小娘の戯言だと、自分でも失笑してしまうような根拠のない思いつきだ。
しかし…何か妙な確信があったから、私は居ても立っても居られずにユダ様に直談している。
「今のこの国は貴女以外の王族が、謎の病によって死にました。…政治的に不安定なんですよ。なので、この案をただやりたいから、という理由だけで行う訳にはいきません」
「で、でも! 私すっごく自信があって…! これがあれば民達が食べる為のパンを他国から買う事だって…!」
「石ころ一つで何が出来ますか?」
正論が投げかけられ、息が詰まる。その通りだ。
王宮で教育を受けていたから、言っている意味が分かる。
だから、それを感情で跳ね返すことは出来なかった。
「石材は確かに様々な事に使えます。鉱石ならもっと多岐に渡る。……ですが、それらは使い方を見つけ、沢山の積み重ねで発展させたからです。確かに新大陸は夢がある。この国の船ならば数百kgは持って帰る事も可能でしょう……しかしそれはごく僅かであり、沢山載せるならそれだけ沢山の魔法使いを載せなければなりません」
「そして、魔法使いが少なくなった我が国に攻め入らない程、周囲が呑気にする事もないでしょう」
そして……ユダ様は言葉にしなかったが、海を渡る船が積荷を態と落さない保証がないのも、否定材料だろう。学者が作った保険とやらのせいだ。
我が国家は他国と比べても人材と技術が突出している。
それは私の父が築いた魔法使いの為の学校が成果として実を結んだ結果であり、傲慢な学者達に高待遇を約束しているからだ。お陰でこの国の戦略は周辺国よりも桁違いとなり、日々目覚ましい物を作り出している。
私が産まれる前の馬車は酷く揺れていたと聞いて驚いたくらいなのだから、私の生活に関わらないものも含めるとどれだけあるか……想像も把握もし切れない。
「王が死んで、我が国家に残された唯一の特色を賭け金にする。しかも、利益が出るかは分からないもの…今私がこうして真面目に取り合っているだけ、相当破格なことです」
だが……その特色の対価はこの国の大半を貧弱にした。
パンを作る麦も、冬を越す為の薪も、家を建てる為の石も、我が父は全て注いだ。
魔法使いと学者以外の全てを軽視したのだ。
その結果、王族は医者の1人も雇えずに死んで、政治は貴族が取って代わった。
王族に残ったのは、ただの生意気な小娘、1人だけ。ユダ様だって、権威を無くした王族を引き取るというババを引いているのだから救えない。
「既にかつての栄光と富を賭けた結果がこれなのです。大国だからこそ未だ保って居ますが、いずれ破綻は来るでしょう。…ですが、それは国を投げ捨てる理由になりません。私は40年生きて来た貴族としての面子と矜持があります。…ルーシー、貴女を妻として迎えたのもそれが理由です」
ああ、正しい。
私の愚かさを指摘して、何もさせない。
この屋敷に来てから、何をしてもそうだ。
ただ生きてさえいればいいと、身分だけを見て、私を見ない。
それが当然だと、40年の経験を以てして私を鳥籠に閉じ込めている。
それが酷く、愚かしい私には我慢ならなかった。
だからこそ──私は今日、正しい彼に言わなければならないだろう。
「……ます」
「なんと言いましたか?」
「納得しないなら! 私1人でも海に行きます!」
「…出来ませんよ。子供の戯言に従う人は居ません」
「ならば! 私は預言者にでもなってみせましょう! 我が父と同じように、愚かしく未来を叫ぶのです!」
「──愚か者が!!」
怒声が屋敷を震わせた。足がすくみ、思わず後ずさろうとして──それでも、今日だけは負けられないと、腹に力を込める。
──何処からか勇気が湧いて来る。勇ましく前に進もうという、そんな勇気が湧いてきた。
「やはりあの愚王の娘であったか! 今まで澄ましたような顔の裏ではそんな事を考えていたのか!? お前みたいな愚か者でも、居なくなれば国が滅ぶと何故分からない! 軽々しく口を開いてはならない立場だと分からないのか!!」
「分かる訳がありません! 貴方は私をここに閉じ込めているではありませんか! この3ヶ月間ずっとそうでした! 貴方は…! 私を一切見ようともせずにただ生きていろと言う! 一体それで、どうやって世界を知れと言うのです!! 国一つ終わったとしても、私には王宮とこの屋敷しか関係がありません! 今の私には……それしか知らないのです!」
だからこそ──私はこの石ころに可能性を見た。
微かな、今よりも幼い頃の記憶だ。
貴重品として爪程の大きさの石が王宮に献上され、綺麗な七色の光を放つからと、指輪された後に私の玩具として使われた。
幼い私はそれを齧ったり、何かにぶつけて居たのを覚えている。
それて──幼い頃の私が、原因不明の酷い火傷を腕に負った話を、執事が話して居たのを覚えている。それ以来、綺麗な石ころは見なくなったことも。
新大陸の先住民が言っていた名前を船乗りがそのまま翻訳した、精霊神石という石ころの思い出だ。
「それでも……! 私は未来を見たいのです…! 広い筈の世界を見て…! その先を見たい…! 明るい未来を見たいのです…それだけの願いなのに…!!……どうして正しい貴方は否定するのですか…」
「──────」
涙と言葉が溢れて止まらない。
こんな筈ではなかった。いつもならここまで感情が溢れることはない筈なのに……獣がただ生きたいと思う心のように、今の私の胸には純粋な感情でいっぱいになっていた。
「……少し、大人気なく怒鳴ってしまいましたね。女王よ、申し訳ありません」
「……赦します。王として、諫言した貴方を赦します」
その言葉を最後に、部屋を出る為に背を向ける。
説得は失敗した。元からダメ元だったから、私の予定通りだ。
だから、悲しくなんてない。
「王よ、話は終わってませんよ」
「終わりました。だから、今の私はただの少女です」
「では少女よ、一言だけ言わせて頂きたい」
「…………」
背中越しに言葉が投げかけられる。
「──私は、40年生きてきて、初めて付き従うべき王を知りました。どうか貴方が1人の少女して赦してくれるなら、私はその王に付き従いたいと思います」
「ッそれは…何故!?」
思わず振り返った。すぐ近くまで寄って膝を付いているのを見て、思わずたじろく。
和やかに笑うユダ様が、今は理解できなくて恐怖すら感じた。
「──先ほど言った通り、初めてなんです。あの愚王と同じ未来を語っているのに、どうしてか.貴女の言葉が心に響いた。従って、支えたいと思った。だからです」
「……────」
初めて、認められた。
正しい彼に、認められた。
呆然とする。私に王としての器があるとは露にも思っていなかった。
だが事実として、彼は私に膝を付いていた。
なら──私は彼を率いて、そして国を素晴らしいものにしよう。
きっと、沢山の人が死ぬ。
きっと、取り戻せないことが沢山ある。
それでも、私は手が伸ばせる限り未来に繋ぎたいと思う。
だからこれはその一歩目だ。
………──────────ン。
「………?」
ふと、機織り機が石を噛んだような、運命から外れたような音が聞こえて。
直ぐに錯覚だと忘れて、彼の手を取った。
「では──共に参りましょう。新大陸へ!」
こうして、何も成し遂げられなかった筈の少女による、運命を変える話が始まった。
N「[黄金の愚王]ルシファー」
精霊歴503年、黄金の時代のパシェード王国で書かれた作品のキャラクター。
プロパガンダとして制作された実在の人物の偶像であり、口伝の評判、人物像に近い。
物語としての強度は弱く、しかし当時の知名度から天の寓話世界で再現されることとなった。
天の世界で再現された影響で天使族になっているが、彼女自身は悪魔との契約で天使族本来の実力すら引き出せなくなっている。その為、天使族のキャラでは異例のNランク、最弱となった。
性能としてはHPと防御力が低く、鈍足で天使属なのに飛べず、2回に1回は自重で動けなくなるタンク。つまり、黄金で出来た産廃のカカシ。売却や素材としてはRランクよりちょっとだけ価値が高い。