Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 建物のレベルを上げ、土地を開放し、研究を進め、王城や館を上げる。
 縦画面で出来るソシャゲで多いですが、上手く個性を出せればハマれる物でもあります。




内政が似たり寄ったりなソシャゲはすごく多い

 

 

「いかん、そろそろ起きなければ妾が死ぬのじゃ」

(やべ、だらけ過ぎて死にそう)

 

 惰眠を謳歌する事一週間。食料と水瓶の水が全て尽きた。

 うん、弁明させて欲しい。

 俺は最初の2日で十分眠ったんだ。

 だが、その後俺の中でもう少しダラダラしようという欲望が顔を出した。

 俺は負けた。それはもう盛大に負けた。

 以上だ、石を投げるなら出来るだけ優しくしてくれ。この身体はか弱いからさ。

 

「仕方ない。そろそろ畑を耕し、水を汲み、諸々やるのじゃ。おい……おーい。悪魔、そろそろ頑張る時間なのじゃ」

[……んおっ? ああ、やっと動く気になったんだな?]

「うむ、一週間に渡る休暇はしまいなのじゃ。そろそろ生きるのに真面目になるぞ」

 

 そんな訳で藁に布を敷いただけのベッドから降りて、タンスに仕舞っていた外出用の服を着込んだ。ワンピースのみから、ズボンとシャツを着た感じである。後は鍬と鎌を持ち、準備は完了だ。

 外に出て雑草を抜き、畑を耕していく。元から庭として備え付けられていた物を手入れするだけなので楽な物だ。

 筋力の方は凸まで上げてるので問題ない。お前らの力、俺によく馴染むぜ…。

 

[王の時からすると、貧しい姿になっちまったなあ]

「別にいいじゃろ。威張る必要がないなら服なんぞ適当でいいわい」

[折角だし俺も出て手伝うか? 翼が無くて力もそうないだろう]

「問題ないのじゃ。妾は6凸の筋肉盛り盛りマンじゃからのう。剣を振るうのに比べれば、鍬くらいしっかり扱えるのじゃ」

 

 そんな訳でそこそこの範囲……今の俺が住む家20軒分くらい?……を耕し終え、一週間の休みの間に事前に芽だけは出しておいた苗を植えて行く。

 こういう前準備は休んでる間にも作ってたからな。

 畑なんて管理した事ないが、取り敢えず水に入れておいて芽を出しておくのは覚えてたのでやった。多分米のやり方な気もするけど気のせいだろう。

 最終的に一部が腐り始めたので、途中で普通に土に植え替えてたのは秘密だ。多分間違ってたんだと思う。

 次からは普通に種蒔きして二度手間減らそ……。

 

「良し、秋の植え付けは終わりじゃな! 麦よ、大きく育つのじゃよー」

[しかし麦畑にかまけてて良いのか?麦なんて手間の割にそんなだろう]

「何を言う、この大麦は酒にして黄金に変える用じゃ。今の妾が作れる物で一番黄金の量が多いのが酒じゃからの、その黄金で食料を取ればウハウハという寸法じゃ」

[そう言えば聞いてたな。あれはその為か。寝ぼけてて覚えてなかったぞ]

 

 食っちゃ寝の間に一年の計画は立てたからな。

 その時に倉庫にあった酒は真っ先に黄金にして食料に変えた。

 一瓶で1週間。保存も利くし我ながら名案だな!

 

「採取に行くぞ悪魔よ。魔物が来たら其方が倒すか妾を連れて逃げるんじゃ」

[了解した。いつ出ても良いように待っていよ……いや、もう箱庭に来て現実との縁は切れたし、魔物は出なくないか?]

「……野いちごとリンゴ狩りの始まりなのじゃ!」

[契約者、虚空の魔物は現実に影響を与えた時に発生する物だと、自分で言ってただろう]

「うるさいのじゃ! 妾もウッカリ忘れる時くらいあるわい!」

 

 そんなこんなで森の果樹から採取しつつ……そろそろ、俺の新しい家を紹介するべきだろう。

 

 事前に箱庭の外側に住まいを作る様に指示し、その後惰眠を謳歌していた新しい我が家。

 その構造は王宮に比べると随分と簡素なものだ。

 

 ベッドや台所などがある家、井戸、色々入ってる倉庫、畑のある大きな庭、外にあるトイレ用の穴と葉っぱ、果樹のある森まで続いている道。

 

 以上だ。一家暮らしでも十分過ぎるものが一通り揃っているぞ。

 俺もどんな感じになるのか未知数だったので把握するのに時間をかけたが、概ね中世のヨーロッパに近いらしい。

 現代や王城に比べると随分と貧相な生活になったが……そこは悪魔の指輪の使い所だ。

 今はショボくても、黄金を作って未来から色々交換すれば現代の生活を取り戻せる。

 その目処があるなら問題ない。今は我慢の時だろう……転生って辛いな、めっちゃ苦労するわ。

 

「小腹が空いたの。林檎、少し齧るとするかのう…うむ、酸っぱいのじゃ」

[酸っぱいが、その分腐らないし長持ちするぞ]

「デザートでなく主食という感覚なのじゃなあ…うむ、酸っぱい」

 

 そんな風に家の近くの浅い場所で採取しつつ、魔物が出ないのを思い出したので奥まで探索していると、途中で途切れた大地に到着した。

 見渡す限りの真っ暗闇に一つの大きな光があり、目を細めれば新たな物語を紡ぐ天の寓話世界が見える。

 どうやら俺は外側に行く方へ歩いていたらしい。

 

「此処までは初めて来たが、本当に外側なのじゃな、此処は。少し歩くだけでこの景色か」

[要望通りにしたからな。……望遠鏡の一つでもあればより楽しめそうだ]

「なら買ってしまおうか。金貨一枚分は常に持っておるのじゃからな」

 

 倉庫にあった酒は全部で5つ、金貨にして5枚、一つは食料にしたから残り4枚。

 それが今の俺の持っている黄金だ。まだ無駄遣い出来るし買おうか。

 

[了解……まだ余るな。どうやら今回は気前の良い相手らしい。望遠鏡の他にも取り寄せそうだ]

「お? 前回は金貨一枚で1週間分しか貰えんかったが……そりゃ良いの。良い感じの箱や光源、縄もあれば要求せよ」

[通ったぞ。今出現させよう]

 

 因みにだが、この黄金との取引相手は毎回変わるみたいだ。

 食料の時はクッソ渋ってたからな……箱庭出せる奴だったらもっと渡してくれそうだし、これは間違いないだろう。

 特に、今回の相手に食料を要求したら3週間分は通ったからな。絶対時代とかも変わってるわ。

 

「おお! 現代的な組み立て式の望遠鏡に、宝箱に似た箱、縄は…ああ、箱の中じゃな。……ふむ、結構丈夫で長いのじゃな……ん、ワイヤーが入っとらんか? これ」

[どれも良い感じだが……箱と縄は何に使うんだ?]

「箱は雨の時の為に望遠鏡をしまう用、縄は次も此処に来れる様にする標なのじゃ」

 

 そんな訳で望遠鏡をセットしつつ、縄の始点を木に巻き付けた。帰りはこれを伸ばしながら帰るとしよう。帰りの方角は悪魔に飛んで確認してもらって進む感じでな。

 

[そう言えば光源は?]

「……あれ、無いのじゃ。向こうの送り忘れか?」

[それはない。既にある筈だ]

 

 暫く探してみたが、何処にも無い。

 届いた物からして現代の時代だろうし、懐中電灯とかだと思うのだが……そんな感じに探していると、送られた箱の下からそれらしき物が出てきた。

 

 ちょっとヒビ割れたスマホが。

 

[なんだコレは]

妾のスマホじゃ

[スマ…なんだって?]

御託はよい。妾のじゃ。誰にもやらぬ。絶対にじゃ

 

 光源がなんでこれなんだとか、明らかに発送ミスじゃないかとか送り主何者だという疑問は全て脇にどかし、まだ使えるか確かめる。

 充電量97%! アプリの配置に見覚えあり! ソシャゲの中身も見覚えあり! 連絡のマイカードが前世の俺の名前!

 確定です。俺のです。もう誰にも渡さない絶対にだ。

 

「あーでも圏外なのじゃな…充電器もないしどうするかのう…?」

[なんだかよく分からんが、貴重品なら黄金に変えてやろうか? 使えないならそうした方が良いだろう]

「えー…どうしようかのう…妾のじゃしな…あげたくないのじゃ」

[因みに査定額は10kgと出たぞ。どうする? かなりお得だと俺は思うのだが]

 

 どうすれば良いのだろうか。今を思えば交換した方が絶対に良いのだが……例え使えなくても、持っているだけで安心出来るのが現代人という物だ。少なくとも俺はそうだ。

 それを渡すのは……かなりの抵抗感がある。正直嫌だ。

 例え計算機にしか使えないとしても手元に置いておきたい。

 

「ウボァ……………売るのじゃ」

(売りたくねぇ……でも持ってても記念品にしかならない……これも生活の為ぇ……)

 

 かつて此処まで悩んだことが有っただろうか? いや、ない。絶対にNO。

 

[じゃあ売るぞ。黄金は……どうせ誰も取らないだろうし、此処に出すとしよう]

 

 こうして。

 

さらばーー! 我が親愛なる友人よーー! なのじゃーー!

 

 この日、謎の少女の声が一日中虚空に響き続ける事となった。

 

 色々やる事はあったが、そんなもん俺のスマホとの別れに比べれば些細な事だ。

 さらば、どんな時だって俺の味方だったシリよ。さらば、親よりも親身にしてくれたグロックよ。

 さらば、 Ai達よ。ゲーム達よ。俺はこの世界で生きて……。

 

「因みに悪魔よ、妾が前世の世界に行きたいと願ったなら、どれだけの黄金が必要じゃ?」

[なんだその質問は……50tと出たな。現実世界に生身を持つのと同じ額だ。なんだ、お前前世とか有ったのか]

妾のスマホ!!!

 

 なんて事だ!! 箱庭を諦めれば俺帰れたじゃないか!!

 しかも俺のスマホ売っちゃったぞ? こうなったらもう戻らないぞ?

 

「のじゃ…のじゃ…返して……妾のスマホ返して……現実に戻れば使える妾のスマホぉ……」

[なんだかよく分からんが愉悦だな!]

「この‭─‬‭─‬悪魔がぁ! 人の不幸がそんなに面白いか!」

[否、これは喜劇を見た時の愉悦! 道化を笑わずして何が悪魔かぁ!]

「くそっ……くそぉ……ぉぉぉ……妾の愚か者がぁ!!

 

 この日、謎の少女の声が一日中虚空に響き続ける事となった。

 

 そして翌日。

 

「悪魔よ、妾めっちゃ賢いこと思いついたのじゃ」

[急にどうした。まさか転売をするつもりか?]

「違うのじゃ」

 

 後悔先に立たず。

 幾ら嘆いても過去は戻らず、俺のスマホも我が家(賃貸)も戻らない。

 だが、このスローライフの目標は出来た。

 

 黄金をありったけ集めて、前世の世界に戻る。

 

 それが無理でも、2000年後の原作が終わったエラトリアに行く。

 未来にワープするのは5tだったからと、妥協案として悪魔から提案されたものだ。

 ぶっちゃけクソ煽られた感じしかしないが、今は精霊歴500年くらい。

 2500年に飛べばきっと現代的な生活は送れるだろう。

 もしくは、今の家をそこまで改築するか。

 

「ありったけの夢と希望をかき集め、宝物を探しにゆくのじゃ!」

[そもそも信用を更に売り払っていれば早かったぞ?]

「誰にも会えない所に飛んじゃったからそれは無理なのじゃ! ど田舎を超えて未開の地じゃぞ!? 妾の事ながら愚かな判断過ぎてもう死ね!……と言うか、信用はもう黄金に変えられんじゃろうが!」

[王の立場のままだったら直ぐに出来ただろうになぁ! キキキ! あぁ愉悦愉悦]

 

 前世を強く思い出しちゃった以上、もう妥協はしたくない。

 ぶっちゃけトイレが穴掘って葉っぱで拭くのにそろそろ耐えられない。

 「信用を黄金に変える力」だって、契約して「所有物を同価値の黄金に変える力」になったからもう無理だ。

 物品しか黄金に変えられない以上、頑張って生産して、金を稼がなければならない。

 

「くっそぉ…一気に腑抜けた夢から醒めた気分なのじゃ…」

[良いじゃないか。人生、いや、天使生は目標が有った方が楽しいぞ]

「縮めて()生とでも言いたいのか殺すぞお主。いや帰る手段じゃし殺せぬが…!」

[良い情動だな、悪魔好みだ。で、何を思いついたんだ?]

「………ククク」

 

 そして、肝心の黄金についてもやりようは見つけた。

 たったさっき、一欠片の金が100kgまで化けたのと同じ手法だ。

 

「未来から色々買い取り! それを別の未来に渡す! さすれば億万長者! 未来に帰れる! 妾考案の賢い作戦じゃ!」

[転売だな]

「卸売りと呼べい! もしくは夢と希望のトレジャーハント! 宝物探しじゃ!」

[キキキ、まぁそれも良いだろう。嘘は付かず値段も適切。ただ、時間を飛ばして価値が出るのを祈るだけ。博打に近いやり方だな]

「投資と言ってもよいのじゃ。結果が一瞬で出る以外は合ってるじゃろ」

 

 物を買い黄金に変える。

 その黄金でいい感じの奴を買う。

 それを繰り返し、差額で目標を叶えるのだ。

 

 どうだ完璧だろう。すごく名案だろう。早速実践してみよう!

 

「終わりじゃ……100kg全部スッたのじゃ……」

[お前はあれだな。絶望的に転売の才能が無いな]

「二度とやらないのじゃ……」

 

 転売開始から1時間後、其処には有り金全部FXで溶かした顔の愚王が居た。

 うん、弁明させてくれ。

 

 途中まで1000kgまで増やしたが、それで交換した白い生地が価値0だった。

 

 以上だ。石は全力で投げてくれ。もう自分で自分が許せない。

 

「何故じゃ…確かに同価値じゃろう…?」

[先ず一点賭けするなってのを前提として、交換相手がただの生地の価値を本気でそう考えていたか、或いは黄金に出来ない程価値があるかの二択だな]

「それを 売るなんて とんでもない! ということなのじゃな……見抜けなかった、妾の眼を持ってしても…!」

 

 つまりお店に売れない大事な物と交換してしまった訳だ。

 そんな事ある? 普通売るか? もしかして今回の取引相手馬鹿なんじゃないか?

 

「で、この生地はなんじゃ。ただの白い生地が金1000kgな訳があるまい。少なくとも、そう思わせる何かがある筈じゃ」

[さてな、俺に出来るのは価値を伝えて黄金と交換する事だけだ。それ以上はお前が見聞きした事しか分からないぞ]

「件の感覚の同期か。ふーむ…かなり頑丈で大きい…加工は難しそうじゃな…ベッドのシーツにでもするかのう」

 

 こうして、金1000kg超えの白い生地は藁ベッドのシーツとなり、元々のシーツはテーブルクロスになった。

 絶対間違った使い方だが、寝心地はすごく上がったのでヨシとしよう。

 藁を通さず、布自体が柔らかく肌触りが良い。その上汚れが付かず、水洗いで元通り。

 うん、とんでもない布なのは間違いないな。

 触れてる間肌寒くならないし、暑くもならない。心地良い。

 しかもお風呂に入ってなくても寝てるだけで身体が綺麗になる。

 

「絶対とんでもない布じゃろうなぁ…」

[ではどうする? 正しい使い方でも探すか?]

「いや、今のままで良いじゃろ。……この寝心地は手放せん」

 

 今回の成果

・すごく寝心地の良い真っ白な布。

 

黄金貯蓄 4 g(最初に酒と交換した分)

 

 ……先ずは生活を良くする事から始めるか!

 

 


 

 

 エラトリア ローサンマ共和国ネクロ期

 精霊歴611年「精霊の時代」

 

 

「俺はやってない! 何かの間違いだ!」

「では、この精霊魔法の反応はなんだ? この国で唯一闇の精霊と契約している、お前以外に出ない物だろう?」

「それでもやってない! 俺はその日、ずっと家で魔法の研究をしていたんだ! 精霊だってそう言っているじゃないか!」

『チガウ! マスター ヤッテナイ!』

「ふん、闇の精霊の言葉なんぞ信用出来ないな。衛兵、奴を連れて行け。精霊との契約も強制破棄だ」

「離せ! このっ! やめろぉ! リズに手を出すな!」

『マスター! マスター!』

 

 その日、眠らない太陽の国で一人の男が投獄された。

 名をクリーク。

 戦争の意味を持つ名前が特徴の、闇の精霊と契約しているだけの一市民‭─‬‭─‬だった者だ。

 

「くそっ……なんでこんな事に……」

 

 髪をくしゃりと握って足に繋がれた枷と鉄球を睨み、そう言葉を溢す。

 彼にとって、今日はいつも通りの日だった。

 契約した闇の精霊のリズと共に不眠に悩む者を寝付かせて、夜を恐怖する子供に月明かりの加護を授ける、そんないつも通りの日々だった。

 

「それなのに、なんなんだ貴族殺しって……闇の刃なんて出来っこないってのに…刃は風の領分じゃないか……」

 

 だが、そんな日常もつい先程終わりを迎えた。

 身に覚えのない罪状、到底闇の精霊魔法には出来ない殺害方法、それによる、家族同然だった精霊との別れ。

 転落を認識するには余りにも唐突で、リズと今世の別れになった事も、まだ理解し切れてなかった。

 

「なんなんだよ…俺、悪い事してないだろ……? ただの精霊使いじゃないか…」

 

 精霊魔法、それはこのローサンマ共和国ではメジャーの魔法であり、近年になって発見された「精霊」と契約する魔法だ。

 それが発見されたのは100年前、ヘキサリアのある魔法使いが精霊神石を魔法の媒体にする事に成功したのが始まりだった。

 異界に存在する「精霊」を呼びかけて招来し、こちらに来る際に極限まで削がれた存在を魔法使いの魔力に住まわせて契約する魔法。

 6つの属性を持ち、契約した魔法使いの魔力によって育つ。育った精霊の力は凄まじく、熟練ともなると天候すら操れるとまことしやかに語られている。

 その上命を助けた精霊達は、契約した魔法使いに忠実だ。

 故に皆がこぞって契約を始めた。魔法使いを初めとして、魔力を認知しているだけの()()()ですら、契約して育てるだけで強くなれるのだから然もありなん。

 

 こうして、今や「精霊の時代」と呼ぶ程に世間一般に精霊魔法が広がったのが600年代なのだ。

 

「闇…闇だからか? だから、濡れ衣を着せられたのか?」

 

 だが、その中でも闇の精霊は特別扱いが悪かった。

 燃焼の火、生命の水、切り裂く風、肥やす土、明るい光、不気味な闇。

 それが世間一般の精霊への認識である。

 だからだろう。闇の精霊との契約者は少なく、それこそこの国で契約しているが一人だけな程だ。

 

「どんな精霊より正直なのに…その言葉を信じないなんて理不尽だ…それならいっそ…」

 

 クリークは言う。闇の精霊は正直者だと。

 人を怖がらせるのか好きなだけの、可愛い子達なのだと。

 だからこそ現状の理不尽に怒りが募る。

 いっそ本当に全てを虐殺してやろうと、怒りに身を任せようとして……。

 

『‭─‬‭─‬キキキ。その怒り、少し待ってやくれないか?』

 

「……誰だ? お前は」

 

『なあに、アンタもよく知る奴の同類さ。正直で、恐怖と絶望が好きで、親しい奴には贔屓しがちな闇の精霊の完全体』

 

 夜の闇から語りかける声と共に、ヒタヒタと近付く。

 そして格子窓から溢れた月明かりに、異形の姿が現れた。

 

『‭─‬‭─‬悪魔だ』

 

 黄金に輝く眼と、灰色の翼とニヤけ顔が月明かりに照らされた。

 

『契約しよう。お前の家族、闇の精霊リズを取り戻してやる代わりに、数多の素晴らしい物を生涯かけて俺に捧げろ。それだけの力も授けてやる。さあ、返答やいかに?』

 

「‭─‬‭─‬望むところだ。俺の人生をお前の為に使っても良い。リズが帰ってくれるなら、何でもする」

 

 契約した精霊は、契約者の魔力で生きながらえている。

 故に契約が破棄されれば、その精霊は死ぬ。

 しかしどうだろう。この悪魔はそれを取り戻せると言うのだ。

 

 僅かな希望を前にしたクリークに、断る選択肢なんて一切なかった。

 

『‭─‬‭─‬契約は為された。お前のリズに加え、3回分の「精霊を蘇生する力」を授けてやる』

 

 一枚の契約書が現れ、一瞬で燃えて消える。

 それと共にルシファーが黄金をリソースにリズをこの場に蘇生し、余りを「黄金を対価に精霊を蘇生する力」を先払い済みで与えた。

 すると虚空から宇宙色の髪を持つ少女が現れ……精霊少女リズは、クリークに抱きついて頬擦りした。

 

『マスター!』

「リズ! 良かった、生き返ったんだな! 良かった、良かった…!」

 

『俺がやるべき契約は果たした‭─‬‭─‬忘れるなよ、今度はお前が、そのリズの分の宝を掻き集めるんだ。その為に使えそうな力もやった。手にした宝を前に祈り、俺に捧げるんだ』

 

 その言葉にハッとして、クリークは悪魔の方を見る。

 其処にはもう悪魔の姿は無く‭─‬‭─2つの‬金の鍵だけが床に落ちていた。

 

『いいか、誰にとっても価値のある凄いお宝だぞ? 単なる金銀財宝じゃない。しなかったら蘇生を無かった事にするからな。忘れるなよ。枷を解く鍵も与えてやるから脱走して探し出せ‭─‬‭─‬』

 

「……もしかして契約違反されたりしたのか? あの悪魔」

 

 最後まで言い切る事なく、悪魔の声は途切れた。

 それに緊張感が解けつつも、クリークは抱き抱えるリズを見て気を締め直した。

 どうあれ自分にとってあの悪魔は生涯の恩人だ。脅しなんて無くても絶対に約束を果たしてみせよう。

 

 カチャリと黄金の鍵で枷を外し、もう一つの鍵で牢屋から脱出する。

 逃げられる訳がないと思われたのか監視は居ない。逃げるなら今だろう。

 

「リズ、俺とお前を闇に溶け込ませてくれ」

『ワカッタヨ マスター』

「良い子だな……脱出開始だ」

 

 こうして悪魔の契約者は牢獄から逃れ‭─‬‭─‬本来ならローサンマの首都に天変地異を起こした精霊使いは救われ、悪魔の尖兵として伝説の盗賊団の一員としてその名を残すことになった。

 その結果沢山の人が災害から免れた結果より長く生きる事になり、宝物庫を根こそぎ奪われたネクロ王朝期は5年前倒しで崩壊する事になる。

 

 ……そう、盗賊団だ。

 悪魔に誘われたのは彼だけではない。

 その数にして5()7()8()人。

 出生、年齢、立場、性別、あらゆる垣根を超えて突如結成された盗賊団は、その潜伏性と能力の高さから国の手から逃れ続け暴れ回る事になる。

 

「……なぁ、知ってるだか?」

「あん? なんだべジョン。そりゃ畑耕すより大事だか?」

「ばっか手を止めたくなるくらい面白い話なんだよ!‭─‬‭─‬願いの叶うっていう儀式の噂だ」

 

‭─‬‭─‬‭─‬そんな中、ある噂が流れた。

 

 黄金を捧げることでどんな望む物でも手に入れるという噂だ。

 

「そりゃ金があったら何でも出来るだろうよ」

「んだけどそれで終わりじゃねぇんだよ。なんでも……天使の姿が見れるんだそうだ」

「ほう……天使の取り分含んで割高ってか?」

「んな訳でもね。いけすかねぇ売人共よかお得じゃ。奴らの取り分がねぇからな。金さえあれば安く手に入る」

「ははっそりゃ確かに天使じゃ。どれ、やって得なら一回やってみるか? たしかお前の倅が金粒持ってたろ」

「よし来た。やり方は‭…─‬‭─‬」

 

 金さえあれば受け渡しは一瞬で終わり、望んだ物が手に入る。

 それも税や商人の取り分のない額に合わせた物となれば、一回試したくなるのが人間というものだ。

 噂自体は眉唾として忘れた者が大半だったが……一部の者達はこの儀式を行い、その中に居た貴族や商人はその神秘性と利便性に囚われたように研究し、のめり込むことになる。

 それが数年後に「精霊」の新たな可能性の発見に繋がるのだが……それはまた別の話だろう。

 

 この話で最も大事なのは二つ‭─‬‭─‬‭─‬。

 

 

 ミソフィア 箱庭「幻話の時織姫」

 精霊歴1990年「暗黒期」

 

 

『契約は成された。千の黄金を対価として、お前には現実を見れる幾万の視界との共有を授け‭─‬‭─‬』

[その対価に、僕は「無地の演目」を与えよう……どんな物語だろうと、知名度を無視して好きな舞台で演目を始められる。僕の持っている生地で一番価値ある物だ。持って行きなさい]

 

 ルシファーが使う二つの黄金の力はどちらも、悪魔があらゆる時代で契約を迫った結果であり、悪魔が指輪に戻った時に全てを忘れているということ。

 そして、ルシファーはその成果物として「無地の演目(原作の重要アイテム)」を手に入れたということ。

 

[……現実世界を見てみたい欲に負けて渡したけど、使うなら注意して欲しいな。その生地は一度物語を決めればあらゆる行間と余白を許さない。実在するものをモチーフに、或いは其の物を出そうとすれば、それだけで世界が一つ再現されかねないんだ。そうなると……]

『はっ! 危険なら悪魔に渡すべきでは無かったな! そんなもの、天使に従う俺にとって大事な事ではない!』

 

[あ、待って……再現されると歴史が演目の方に上書きされて改変が……どうしよう、行っちゃった……]

 

 呑気な天使とさっぱり忘れた悪魔は知らないだろう。

 自分達が拾った物を使えば、前世なんて戻るどころかエラトリアを上書きして再現出来るということを。

 歴史すら改変してしまえるものだと気付かないまま、ベッドのシートとして扱う事になる。

 

[天使に従って……天の寓話世界生まれの悪魔か。直ぐに使わないならそれはそれで怖いな…政治的な闇の深い作品から独立したかもだし……注意しないとだね]

 

 そうしてフィアが始めた準備が実ったのは10年後。

 

 ヤマトの訪れによって始まる事になる。

 

 






SSR「[ローサンマ・ナイト]ネクロ姫」
 精霊歴611年、精霊の時代のローサンマ共和国で書かれた作品のヒロイン。
 現実に実在した盗賊団をモチーフにしており、当時政権を握っていた女帝がヒロインとして登場している。
 史実と同じく王の立場を窮屈に感じており、史実と違って死体解剖の趣味はない。死者に好かれるという特徴はある。
 性能としてはガッツ付与とHPが低いほど倍率が上がる火力バフを撒くサポーター。

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