Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した! 作:何処にでもある
SRまでなら低キャラを拾う要領で回収可能なのか「エラッタ」です。
稀にSSRも出るので、拾える環境は真っ先に整えておくべきでしょう。
突然だが、「エラッタ」には「釣り」の形式で低ランクのキャラを手に入れられる仕組みがある。
詳しいやり方は忘れてしまったが人手を集めるなら良さそうだと、早速試してみる事にしたのだ。
「……という訳で釣りをしようと思ってたのじゃ」
[突然どうした?]
「ほれ、秋口に妾が金をスッた時が有ったじゃろ?」
[そうだな、絶望的な転売の才能だった]
「で、思いついたんじゃよ。舞台から人を釣れば人手が増えて楽になるんじゃないか…とな」
[金のくだり要るか?]
「要るぞ、なにせ──」
冬の風に手を震わせて、雪化粧に染まった森を見渡す。
土一つだって見えないその光景は、俺を困らせるのに十分なものだった。
「人を釣るためにも先ずは望遠鏡を覗こうと、森に入ったら迷ったからのう。いやはや、冬の森を舐めてたのじゃ」
[もっと言うなら、俺が空を限界いっぱいまで見渡しても帰れなかったな]
「死ぬのはいやじゃ。死ぬ気で帰るのじゃ」
そういうことである。
あれから3ヶ月経ち、最近は木細工で金を稼ぐのにハマってるのだが、人手が居ないから中々出来ないでいたんだよな。
だから薪割りとかやれる筋肉マンを呼び寄せる為、舞台から人をおびき寄せようと画策した所、こうして遭難している訳である。
「いやーどうするかのう。幸い動物は冬眠しておるから襲われる恐れはないが、代わりに凍死しかねないんじゃよな」
[松明でも買ったらどうだ? 金ならあるだろう]
「地道に作った300gだけはの? そんなホイホイ使いたくないのじゃ」
[便器や食器、靴や諸々を買っておいて今更だな?]
「生活の不便には負ける。これは絶対の摂理なのじゃ」
くだらない話をしている間にも俺の体力はすり減っていく。
そろそろ夕方なので本当にマズい。冗談言ってる場合じゃない気がしてきた。
「こんな事なら布を持ってくればよかったのじゃ」
[あれが有ればどんな寒さも大丈夫だからな。服に仕立てるくらいはするべきだったんじゃないか?]
「妾はマントを引き摺るのはもう嫌なのじゃ。あれはあれで疲れるからの」
[その結果がコレなのは?]
「後悔はいつだって妾の前を歩かんからのう。常に三歩後ろで大人しゅうしとるのじゃ」
さて、日が沈んで本格的に寒くなって来た。
こんな所で終わりたくはない。四の五の言わずに貯めた黄金を使うべき頃合いだろう。
俺は腰に引っ提げた袋から三粒の黄金を取り出した。
「悪魔よ、長持ちする熱源、ありったけの防寒具、寓話世界でも使える方位磁石を寄越せ。三粒を小分けに買うか、まとめ買いかは其方に任せるのじゃ。足りんなら追加で10までは許す」
[了解した……粒7つで用意出来たぞ]
そんな訳で早速ゴロゴロと雪の上に転がる道具を検分する事にした。
「熱源は…ランタンと火打石か。防寒具は当たりじゃの、現代的な服なのじゃ。方位磁石は…これ羅針盤じゃないか? 何処の船から持って来おったんだか…」
[寓話世界で使える物となると存在する時代も先の話だろうしな。寧ろ、3回のリロールだけで済んだのは運が良い方だろう]
「取引相手が持ってない場合、適当に済ませるしかないんじゃよな…」
何回か使って分かった事なのだが、どうやらこの取引先は交換しないと変わらないらしい。
なので相手が持っていない物を取り寄せるとなると、こうして適当な物を追加で買う事になるんだ。
「それで適当に交換したのはー…船で使うような強い照明灯、赤のスプレー、地味な服か。相変わらず謎相場じゃな」
[幾ら未来でもこれら全て金粒で交換できるとは思えないんだが……本当、どんな仕組みなんだか]
「なんでもよいが、目印になりそうなスプレーは持ってゆこうか」
俺の前世の物も取り出せるし、そこは永遠の謎である。
まあ、便利なので良いだろう。偶に現代的な物も出せるロマンがあるし。
そんな感じに体力も回復し、夜間行軍とばかりに適当にスプレーで印を付けつつ北へ歩いていた所、宝箱が在った。
秋に望遠鏡を仕舞うつもりで買った奴である。どうやら俺は運良く目的地に着いたようだ。
羅針盤ってすごいぜぇ、夜に歩いても何とかなるんだからよお。
「ふぅ……後はロープを辿れば帰れる……疲れたから此処で寝るのじゃ」
[良かったなぁ。今後は雪にロープが沈んだまま進まないようにしようぜ]
「じゃの。勘が信用ならんとよくよく思い知ったわい……じゃがアレじゃの、星が増えてる気がするのじゃ」
[そりゃあこれだけ分かりやすく近くに箱庭が在れば、物語から逃れようとする奴も増えるだろうな]
「どうやって逃げたんじゃろうな。妾には石の研究以外に思い付かんわい」
先人が居れば後続が増えるというのは本当だったらしい。
俺の苦労は何だったのかと思わなくもないが、なんであれめでたい話ではある。
色々忙しく、3ヶ月振りに冬の空を見た結果としてはかなり心が温まる結果だ。
「しっかしなんじゃのう。気が付けば3ヶ月か……人間慣れるものなんじゃな。あっという間だったのじゃ」
[大麦の畑とか全滅したしな]
「言うな、妾の苦い思い出としてじっとさせよ。小麦と大麦の撒く時期を逆で覚えていた事実は、決して振り返ってはならん。今は休閑にしているだけ。そう思い込むんじゃ」
[ぶ…無様]
「はははこやつめ煽りよってからに」
仕方ないだろ畑を持つなんて初めてだし。
教えてくれる人も居ない以上、失敗は約束されていたんだよ。
wikiを丸暗記している内政チート転生者とかじゃないんだし、そこは愛嬌で済ませてくれ。
「代わりに木細工の腕は上がったから別にいいのじゃ」
[餓死するかどうかの瀬戸際だったからな]
「命を賭けた芸術行為は、時に作品に命すら宿す事もある。入魂する感覚に覚醒せねば間一髪だったのじゃ……」
畑がダメになった分、木細工の腕はメキメキ鍛えられた。
そうしないと死ぬレベルだったからな。
林檎と野苺が減るたびに胃もすり減る感覚は二度とごめんだ。
代わりに金一粒程度の作品なら安定して作れるようになったので良しとしよう。
こう、クユゥーーって感じにやると良い作品になってくれるぞ。
「はぁ……色々有ったのぉ……星が綺麗じゃて」
余裕が出来たので雑談に興じつつ、望遠鏡で舞台の方を眺め見る。
そこには天使が行き交い、小綺麗な城下町が広がっていた。
王城は見えないのでどうやら今回の舞台は市民達が主役なのかな? 恋愛物か落語物だと見たね。
どうあれ、俺らの話より長続きするような物では無さそうだ。
[平和そうだな。平和過ぎて明日には落ちそうだ]
「うむ……彼らもいずれ落ちると思うと悲しくもあるのじゃ」
[助かった者達は増えたが、その過程でただ再現されて落ちるだけの話も無数にある…か]
「なんじゃ、歯痒いとでも言うつもりか?」
[まさか! ただ、俺はそうならずに済んで良かったと考えただけだ]
こればっかりは原作でもそうだったのでどうしようもない。
仮に俺が出来る事があるとすれば、それは彼らの顔を忘れない様にするか、此処から舞台へ違和感を与える要素を作ることだけだろう。
……違和感、か。
「…よし、ものは試しじゃな!」
[今度は何を思いついたんだ?]
「舞台から此処を見て、誰もが今に違和感を覚える作品を作るのじゃ」
[お、3ヶ月目にして芸術家気取りのつもりか?]
「まあまあ、取り敢えず見ておれ」
そうして取り出しますは小粒の浮遊石を先端にくくり付けたメッチャ長い釣竿。
本来の目的である人材釣りの為に用意した物だ。
浮遊石は箱庭の外側に浮いている粉レベルの物を悪魔に集めさせた。
余裕を持たせた作りなので多少取っても問題ないとは悪魔の言葉である。その言葉…信用するぜ!
「妾一回やってみたかった事があってのう。瓶に手紙を入れて海に流し、見知らぬ相手に渡すという物じゃ。これをボトルメールと言うらしい」
[……何の意味があるんだ?]
「自分の書いた手紙がいつか誰かに読まれるのじゃぞ? 浪漫溢れるじゃろ」
[……理解出来ないな]
「エラッタ」では人が浮かぶ大きさの浮遊石を使っていたのだが、最初からその規模でやるのは抵抗がある。何事も試作と試験は大事だと畑から学んだからな。
そこで俺は小規模の実験としてボトルメールをやってみる事にした。
浮遊石で浮力を得た瓶を舞台の方へ流し、その反応を見守るのだ。
「兎も角、手紙を書いてぶん投げなのじゃ!いつ着くかは計算しとらんが、失敗したらその時はその時じゃな!」
[手投げで上手く狙えるとは思わんが……まぁ、やってみたらどうだ?]
悪魔もこうして聞いてて不安になる声援をくれているし、試しにやって損はないだろう。
ピッチャー第一球……おりゃー!
「のじゃー!」
[へなちょこ]
ノロノロと進むボトルメールを見送り、紐が雪に引っかかってボトルメールは止まる事になった。
はは、まさか最初で躓くとは思わなかったぞ! 儚い作戦だったな!
「じゃああれじゃ。もう紐で括らずに投げるのじゃ。そおい!」
[俺の30分の結晶が! 2日分の努力の成果が! 舞台どころか真上の方向に!]
「結論として釣りはダメじゃな。向こうから来るのを待った方が確実なのじゃ」
[教えてくれ、それは運に頼るのと何が違うんだ?]
「ウェルカムと書いた看板とかを作れるのじゃ! どうじゃ、嬉しかろう!」
そんな感じで夜を越した3日後、改めて此処に立ち寄ってみるとボトルメールが地面に転がっていた。マジかよお返事あったわ。ペンも一緒に入れた甲斐が有ったな。
瓶から取り出して手紙の裏面に書かれた文を確認しうわ、メッチャ沢山書いてる!
見知らぬ手紙を拾ってくれてありがとう。
俺は物語から脱却し、一人と一つで冬籠りの日々を過ごしている者だ。
(中略)
俺を名前で呼びたいなら明星にして欲しい。
さて、本題に入ろう。
お前も
(中略)
では色良い返事を待っている。
敬具 明星より
季節を語るには何もない暗闇の世界に比べ、君の所には冬があるんだね。
毎日を孤独に機織りをして過ごすしかない僕と比べ、きっとそれは素敵な事なのだろう。
雪が降っているのかな。はたまた、霜の柱がざくざくと歩く度に鳴っているのだろうか。
ここは暗がりしかないから、例え峻厳な道だとしても魅力的に思えてしまうな。
(中略)
僕はそうだな…君が仮の名前を使っている事に乗じて、
それから、僕は鬼には成れないよ。この真っ暗な永牢を得る代わり、此処から出る事が叶わないんだ。
とても残念だけれど、その誘いは諦める事にするよ。
(中略)
初めて手紙を書けて楽しかったよ。
でも……わがままに願いを言うなら、もっと君と話したいな。
鬼にならないと断っておいて図々しいのは承知している。
でも僕は人恋しくて……五百三年振りに他人と触れ合ったんだ。
お願いだよ、明星君。せめてこの筆が尽きるまで、僕に繋がりを与えて欲しいんだ。
……長くなってしまったので、この辺りで締めくくろう。
またね、明星君。
敬具 朱鷺より
どうやら別の箱庭の子のようだ。なんだか大変そうな奴だなぁ。
シュロ君か…多分鳥っぽい奴だな。火の鳥のイメージだ。
それにしても上に箱庭なんて在ったんだな、暇つぶしに丁度良い相手が出来たぜ!
「成果、友達一人じゃ!」
[良かった…のか? なんか重力が無いか?]
「なんじゃ? どうせ箱庭から出られんそうじゃし無害じゃろ? つまり都合の良い雑談相手じゃ」
[なんだかなぁ…図太いと言えばいいか鈍感と言えばいいのか…]
本来の目的とは違うものの、面白そうな奴との繋がりが出来た。
これはこれでアリな成果じゃないか? 暇があったら相手してみるとしよう。
ミソフィア? 箱庭「幻話の時織姫」
精霊歴───年「████████」
[──お帰り、ヤマト君。初めての冒険はどうだった?]
「可もなく不可もなく……と言いたかったが、波が乱れてな。騒動を幾らか起こしてしまった」
[それは君の後ろにいるエキセントリックな子達のことを言っているのかな?]
風の寓話世界に向かって数時間後、ヤマトはフィアの住まう箱庭に帰還していた。
何度か戦闘が有ったのだろう。服は乱れており、土汚れがあちこちに付いてしまっている
その上、何か厄介事を拾って来て申し訳ないという顔で、ヤマトは後ろにいる少女を紹介した。
「紹介しよう、俺の旅に同伴してくれる事になったネクロドールズだ。死体人形のエルフであり、やって欲しいことを汲み取るのが得意な
『ドーモ、ご紹介に与ったネクロドールズ、デス。以後お見知り置きヲ』
『『『ヲ!ヲ、ヲー、ヲ…』』』
[随分と風変わりな子を連れて来たなぁ。幾ら仲間になってくれる子が多いにしたって、敵役の子を連れて来ちゃったのかい?]
身体のあちこちに裁縫痕、があり、口が裂けた跡のある4体の死体。
不気味なのは全員が同じ顔で、同じ服を着ていることか。
まるで人形の様相のそれらは、しかし元々生きていた名残として血の痕があり、生々しくふらついていた。
「ご明察だな。緑髪の村娘を取り囲んでいた所を叩きのめし、その際に懐かれてしまったようでな。困惑している間に村娘も何処かに行ってしまって、仕方なく連れて帰る事にしたんだ」
[おや、その村娘はのっぺら顔じゃなかったのかい?]
「のっぺら…? いや、普通に顔は付いていたな」
[あちゃー…その子、多分ヒロインか物語の鍵を握る犠牲者役だよ。仲良くしていれば何かと都合が良かっただろうに]
おでこに手を当てて、フィアが残念そうにする。
その反応にヤマトはムッとした顔になるが、直ぐに気を取り直して問いかけた。
戦力としてはルシファーが居て尚押される実力者達、頼りになる筈だと。
[それはそうだが、戦うばかりで妹君を見つけられる訳でもないだろう? 人伝に聞き回る以上、話し上手が居なければ道のりは遠回りになる。本来求めていた者と得意分野がズレてやしないかな?]
「……そう言われれば返す言葉はないな。だが、何も同行させるだけが仲間という訳ではないだろう?」
『お茶ドゾー』
[君の為を思って…あぁ、助かるよ。……うん?]
フィアの心配に対してヤマトが苦し紛れの言葉を並び立てていると、良いタイミングでお茶を手渡された。
それだけではない。気が付けば別の人形が目の前に机を置き、その後ろでは機織りの修理とヤマト用の家の建築も始まっていた。
素材は有ったものの、体力と精神力の不足でそのままにしていた案件が
[えっ? 君達大工や接待なんてできるのかい?]
『人形ですから、持ち主の知ってることは大抵ですまスね』
[ヤマト君、どうやら僕の方が間違っていたようだ。この子達はこの箱庭に居なくてはならない人材だよ]
「分かってくれたか…! いや、俺も此処まで出来るのは初めて知ったが!」
『一体の人形に一つの専門的な事を刻み、意識をリンクする事で技術を共有させ、持ち主の知識を元に動く事で万能とする。私達はそのような存在なノです』
[……そうか、君達は今、箱庭の主人の僕を持ち主として動いているんだね。簡単にマスターが変わるのは不安要素だけど……此処にいる限りは変わることもないってとこかな]
こうして、ネクロドールズは受け入れられる運びとなった。
その結果どうなるのか、翌日の箱庭を見たヤマトは彼女達の実力を思い知る事になる。
「……その、一晩経っただけで随分と様変わりしたな? 小綺麗になって…それは和風メイド服…で良いのか?」
『私達は人形、眠る必要のない者達です。ですからフィア様の行おうとしていた私達の服の仕立てもこの通り。一晩で終わらせておキました』
[ドールズ達、今度から人がプレゼントしようとした物は用意しなくても大丈夫だからね。プレゼントに大切な気持ちが欠けてしまうから]
『了解しまシた』
この箱庭に欠けていた人手が来た影響は凄まじかった。
壊れた機織りは応急処置を済ませ辛うじて動く様になり、何処で落ちると何処に着くのか看板が立てられ、魔物が侵入しても良い様に罠の設置が終わり、ヤマトが暫く泊まる事になる家が建ち、その食卓には色彩豊かな食事が並んでいた。
「……幾つかこの箱庭に無さそうな物もあるが?」
『私達は全員ガ同じことが出来ますが、私だけが喋れられるようニ、元々備わった技術による得意不得意が有ります。魚や筍などは戦闘と探索が得意ナ姉妹達に獲らせました』
「結局何処から…夜の間に寓話世界に落ちて、帰りは小瓶を使ったのか」
『何度も使えるものだそうなのデ、採取の代行を担いました』
「そうか…いただきます。あむ…俺の舌に合わせて調理したのか。食べ易い」
『お褒めに与りリ恐悦至極』
思わぬ所で素晴らしい掘り出し物をしたと、ヤマトは自分の判断を褒め称えた。
無理もない。敵役に気に入られたと思えば仕事の出来る者が五人も仲間になったのだ。
最初に風の寓話世界を選んで良かったと思うのは道理だろう。
[しかしなんだね。思えば昨日の内に其々の名前を聞きそびれてしまったね。能力の仕組みを聞く限りだと個性もありそうだし、良ければ教えておくれよ]
『畏まりましタ』
喋る人形がそう言うと、ぞろぞろと他で作業をしていた人形達も集まって来た。
最初に最も背の低い少女が前に出て、お辞儀をした。
『ヲ!』
『個別の名前は有りませんのでご自由にお呼びくだサい。今お辞儀をしたのは長女、学習と暗殺、力持ちデす』
『ヲ』
『長女よりは背が高くジト目なのが次女。探索と採取、毒の嗅ぎ分けが得意で手先が器用でス』
『ヲー』
『背も性格も私達の中で真ん中の三女。大工や庭園整備を始め外仕事なら彼女が一番でシょう。正面戦闘なら頼もしい姉です』
『ヲ…』
『四女、魔法と内仕事が得意デす。偶にジッと私を見ているのが不気味だと思っテいます』
『ヲ…!?』
『ヲ。そして私が最も背丈も胸もある末妹、会話と接待、交流が得意です』
[うーん、改めて見ると個性的だ。これから宜しく頼むよ、ドールズ達]
『はい。これから宜しくお願いしマす』
[……うん、今ので確信したけど、君達はお話における幹部枠だね。ちょい役と言うには個性派集団だ]
改めて自己紹介も終わり、彼女達は先程やっていた作業に各々戻って行く。
その最中、フィアは末妹を相手にそう言葉を続けた。
[演目を途中で抜けても物語が破綻するだけなんだけど、余りに破綻が酷すぎると物語の途中で落ちてしまうんだ。重要な立ち位置の抜けはそれを助長させてしまう。こっちに居てくれるのは有り難いけど、演目がある間は向こうに居た方がいいね]
『畏まりました。故郷が消えるまでは此方はお休みを頂きマす』
[そうすると良い]
演目は基本最後まで行われるが、舞台から降りようとする者が多い程、降りた者が多い程途中で終わってしまう。
道理だろう。演者の居ない舞台を続けようとする程、不毛なことは無いのだから。
なのでフィアは彼女達が一時でも離れる事に名残惜しそうにしながらも、もう少し向こうに居た方が良いと命令を下した。
「物語の破綻…フィアは本当に何でも知っているな。一体何処からその知識を得たんだ?」
[……今は時間もあるし答えようか。大したことじゃないんだけど、これは昔の友人から教えて貰ったことなんだよ]
そうして再開した食事の間、ヤマトはフィアに知識の出所を尋ねた。
最初から気になっていた事を聞く良い機会だと、そう考えたのだ。
フィアはその質問に少し顔に影を落として、直ぐに懐かしそうに、いつもの様子を取り戻した。
[もう手紙のやり取りはしてないし、彼の知識は随分と…豪胆というか、大雑把だったからね。より詳しく些細を知れたのは10年前、とある悪魔と契約してからだった]
尤も、当時の事を思えば彼はとても賢い知恵者だったんだろうけどね。
フィアはそう付け加えると、目元を一撫でする。悪魔との契約で眼に関する事が有ったのだと、ヤマトは何となく察した。
「もう彼とは連絡してないのか?」
[大体1500年も前の話さ。とっくの昔に死んでしまったのだろうね。30年は続いてたんだが、ある日を境にパタリと消えてしまったよ]
「成程…どの寓話世界だったんだ?」
[さてね、彼はその辺雑だったから……それに、彼は自分の大事な物を幾つか犠牲にして10万人は住める箱庭を作ったそうでね。「600年は寿命を消し飛ばしたぜ」、「途切れたらくたばったと思え」、「どうだ凄いだろ。永久にみんなが暮らせる土地だぜ」と書いていた……しょうがない話だけど、友人が死ぬのは悲しい気持ちになる]
その言葉にヤマトは舌を巻く。そんな前から生きているフィアの事もそうだが、本題はそこでは無い。
長い寿命を、その大半を消し飛ばしてまで他の者が住める永遠の大地を創り上げた。
それは舞台の演目としていずれ消え去るこの世界の住民にとって、問答無用の偉業に他ならないからだ。
「凄いな…確か箱庭が増え始めたのは100年前からだろう? それよりも昔に10万人…砂漠に水を引き、人が暮らせる土地にした様な物じゃないか」
[そうだね……だけど]
ヤマトが感心していると、フィアが歯切れの悪そうに顔を歪める。
喜んでいいことだけど、それだけじゃ無い。彼女の眼は既にそう主張していた。
[彼は死ぬまで1人だった。箱庭を創る為に使った道具と共に、死ぬ迄失敗し続けてたんだ]
「……どういう事だ?」
[対価だよ。彼は箱庭を創る為、寿命だけでなく、それ以外の様々な物を犠牲にした。彼は常に1人だけで、成功することもなく、鬼の力も失ったまま、落魄れ続けた末に孤独に死んだんだ]
「……箱庭とは、それ程の物なのか?」
[全ての舞台の固有物資を集めて形作ったものだぜ? どうにかして長い距離を飛べる手段を用意しないと、正攻法では絶対に成立しないものだ]
フィアは言う。過去に創られなかったのはそれだけの理由があるのだと。
だが、そう言われると一つ引っかかる事がある。天の寓話世界が長い歴史を持つ点だ。
「もしや、彼は天の寓話世界出身だったんじゃないか? それだけ昔に作ったのなら、長い歴史にも納得出来るのだが」
[僕もそうだと思うよ。鬼なんて種族はどの舞台にも居なかったし、物語の中の種族だろうね]
「ふむ……情報の出所が分かったし、そろそろ俺も行くとしよう」
ヤマトは食べ終えた食器をドールズに渡し、小瓶を取り出す。
そうすると自然とドールズ達も集まって、ヤマトに触れて共に転移する姿勢になる。
既に建築その他の中断は終えた様だった。
[行ってらっしゃい。次は悪魔との契約した時の話でもするとしよう]
「ああ、俺もその彼に倣い、人の為にも動いてみよう」
『ヲ!』『ヲ』『ヲー』『ヲ…』『ヲ。また会いましょう、フィア様。「虚空釣り」の準備は済ませたので、暇でしたらやってみてクださいませ』
「──では、行ってくる」
ヤマトが小瓶を開いて匂いを嗅ぐと共に忽然と、幻でも見ていたように消えた。
フィアは彼らが行った後を暫く見つめた後、
[……明星君、君は僕が寂しくならない様にいつも使い終えた手紙を入れていたね。それに僕の手紙を忘れていた事もあった。記憶力を対価にしていたのかな。もう分からないけど、出来れば一度顔を見てみたかった]
和紙、羊皮紙、プラスチック、木板、刺繍で文字を書いた布……その引き出しには多種多様な媒体があり、一目でいつ書いた物なのか分かる様になっていた。
フィアはその中から一枚の粘土板を取り出す。最後のやり取りに使った媒体だった。
[これを警句…と言ったかな。未来に対する予言を彼は最後に残した。1500年後の……今の話だ]
明星の彼が最後に残した一文。
彼女が悪魔と契約してでも現実世界を見渡す眼を欲した最大の理由がそれだった。
歴史は棄却される
即ち現実世界の破滅なり
されど兄妹の救世主あり
かの者ら片割れを失い探すだろう
その末に救済が成される
精霊が二千の刻を知らせる時
寓話と現実が交差する時
時織姫は結末の岐路に立つだろう ]
三節の、雑にそれらしく並び立てた言葉の調べ。
しかし、その中には明星には明かさなかった自身の事を名指しで忠告していた事で、ずっとフィアの思考の片隅に居座り続けていた警句だ。
果たしてどんな選択を迫られるか……不明瞭だからこそ、彼女は悪魔との契約に踏み切ってまで情報を集める選択をした。
[君が結末の岐路とまで言った未来に、僕は全力で立ち向かおう──それが、全てを皆に捧げた君への、唯一の友人が送る手向けだ]
フィアは改めて決意を固めた。
どんな未来が来ようとも、自分は最大限幸福を求めると。
失意の中死んでいっただろう友人が、今も見守ってくれているだろう友人が安心できる様に。
その警句が手紙に書く内容のネタ切れの末に出した物とも知らずに──。
R「[死者の行軍]ネクロドールズ」
精霊歴1970年、暗黒期のエジロマ共和国で書かれた作品のキャラクター。
レギオンを題材に当時の戦争倫理を揶揄した作品の敵役にして、人体実験の告発として創られた。
時代の犠牲者が更なる被害を齎すという内容であり、知名度も余り高く無いことからRランクとなった。「エラッタ」のメタ的な事情としては確定枠な為。
纏まると箱庭の様々な機能として動き、戦闘に於いては個別に分けるとSSR相当に強くなる。性能としてはスキル枠をパッシブにした、自動で追撃と攻撃バフをする置物。居るだけで働く枠。