Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 寓話世界と現実世界の時間の流れは曖昧なので、物語の制作時期に対して多少、時間が前後することもあります。




運命と書いて性癖と読めたらガチャの合図

 

 

 ミソフィア 箱庭「黄金の愚王」

 精霊歴507年「黄金の時代」

 

 

「さて、今日の報告はどうかな?」

「農業は今年も豊作だ。故に税は変わらずに収穫量の5%、市場も問題はない。去年よりも活発な事くらいだな」

「ふむ……公共設備は?」

「上下水道異常なし。道路の崩壊もなし……まだ4年だし、気にしなくてもいいんじゃないか?」

「それなら頻繁に使われる所を調べ上げて欲しいな。真っ先に壊れる場所の予測はするべきだろうな」

「その為の予算は誰が出すんだ? ええ?」

「まあまあ…お二人共喧嘩腰にはならずに…」

 

 他よりも立派な創りの館にて、3人の男女が分厚い資料を前に話し合っていた。

 

‭─‬‭─‬‭─‬投票の末に箱庭を統治する事になった三賢者である。

 

「感情で選択するな…と言っても予防は得てして結果の解りにくいものだからな。そう思うのも無理はないだろう。しかし、危機管理とは最初期から始めなければ意味が薄くなってしまう。準備とは直ぐには出来ないものだからね」

 

 星詠みのアルカ。裏切り組の代表であるものの、その知恵と実力を買われ選ばれた者だ。

 政治方針はリスクに対する対処、転じて軍事重視。

 

「永久に続く楽園がそんな直ぐに崩壊する筈がないだろう。今の俺達に必要なのは、自分達の行いで発生する問題への解決方法。より多くの法律と住まう者達に自我を与える教育だ」

 

 伝令のセージ。元々モブだった身だが、急速に自我を得て名前を自ら与えた者だ。

 民の女王に対する支持をそのまま受け取る形で選ばれる運びとなった。

 政治方針は教育と法治、転じて民間重視。

 

「まあまあ…それよりも舞台からやって来た者達の受け入れの方をですね…」

 

 そして順当に選ばれた2人とは違い、団子になっていた者達の中から選ばれた実力者。

 今も多くの人々が落ち続けている舞台の問題への取り組みを掲げて選ばれた。

 その名を[アリアドネの指先]のスーザン。アリアドネの種子を心臓から生やした緑髪の女性だ。

 伝令セージの行動により舞台から救われた物語の主人公である。

 政治方針は移民の積極的な受け入れと農地の積極的拡大、転じて労働力重視。

 

「もし凶作だった時の作物が3万人分しかない。受け入れは今回も反対だな」

「…残酷な話だが、無知な者を徒に増やしても国が崩壊する。優秀な顔付きなら……だが、俺の感情としてはそんな不平等は受け入れられないな」

「なら農地を増やしましょうよ。兎に角食べ物がないと困るじゃないですか。その為にも人を増やしましょうよ。開発する土地なら有り余ってるじゃないですか」

 

 最初の三賢者はこの3人が選ばれる運びとなった。

 其々が主義主張を放ち、真剣にこの国の行末を考えている者達である。

 その為か館には日々大声が響き渡り、取っ組み合いになる事も少なくない。

 それでも、彼らは4年の歳月を無事に越えられる程度には安定した統治を行えていた。

 

「絶対ダメな訳ではないな。幾らでも人が湧き出る以上、全て受け入れると直ぐに破綻するというだけだ」

「俺も初めは全てを拾おうとしたが…飛行船の往復にも資源と人員が必要だ。移動にだって片道で7日はかかり、往復で半月……俺達は万能ではないんだ」

「あうう…それなら舞台への定期便の同意を…時間差を使ってやればより多くの者を助けられると思うんです」

「飛行船を飛ばす為のガスが懸念点だな。ガスの生成に必要な精霊神石は舞台から採取可能ではあるが、それは舞台の被害者を増やす選択だ。その犠牲を、少し寿命が縮まっただけだと受け入れられるかい?」

「無理だな。そんなことをすれば俺達は悪になる。その悪を関係者全てが受け入れられるとは思えない。自殺者、精神を病む者は確実に出るだろう」

「それなら「第三五回の舞台への小規模軍事演習兼魔道具収集」を…その際に難民を保護するという形で…」

 

 スーザンの言葉に2人が顔を見合わせてから悩むように言った。

 

「「それなら…まあ?」」

「良かったです! では引き続き「人の集中地帯調査及び公共施設拡張の試案」と「塾の増加と法学者への市場実態の調査」について詰めていきましょう!」

 

 スーザンが2人を宥め、ついでに自分の案を通し、それから少しスーザンの都合が良いように言語化された政策が決まる。

 こうしてこの箱庭は実質的な君主制として運営されていた。

 偉大な女王の創り上げた大地と空の狭間で、少しずつ成長する形で。

 

『‭─‬‭─‬では決定ですね! それでは……

 

……この政策に決定で!」

 

 アリアドネの手先(敵役の意のままに動く者)の指し手に従う形で。

 

 森の奥、飛行船に引っ付いていた種子から開花したアリアドネがほくそ微笑む。

 彼らは知るだろう。物語から解放されたからと言って、生態として組み込まれた特性には逆らえないのだと。

 

 物語から解放されたのは、争いから解放された訳ではないと。

 

 箱庭が破綻するのは今から僅か20年後‭─‬‭─‬多数の物語の住民が…特に主役が増え、モブに自我が宿り、諸事情で予定より4年も遅れた三賢者の再選出が行われる前夜。

 

 2人のルシファーが出会った日から、騒乱は始まった。

 

 


 

 

 ミソフィア 箱庭「黄金の愚王」

 精霊歴527年「黄金の時代」

 

 

「悪魔よ、妾は遂にやったぞ」

[お、漸く正気に戻った途端に急にどうした? 折角の箱庭創造24周年なんだから大人しくしたらどうだ?]

「なんじゃそのビミョい周年は。せめて後1年経ってから宣え」

 

 深い深い森の奥で、俺と悪魔がいつも通り切り株に座って雑談に興じていた。

 

「ほれ、妾ってば今年で前世の年齢と並ぶそうではないか。故に少しばかり贅沢をしようと思うんじゃよ」

[見た目が一切変わっていない癖に贅沢…?]

「贅肉がないと言え。妾だって不本意なのじゃよ、高い所に手が届かんしの」

 

 しかし、あれから24年か…思えば随分とあっという間に過ぎたと思う。

 畑耕して、酒作ろうとして失敗して、木を彫って……あれこれやっている内にいつの間にか現代並みの生活を手にしていた。

 途中で釣りや彫刻やゴーレム造りやらに手を出したせいで余計に時間が掛かった気もするが、当初の目標もいつの間にか達成しているんだから時間の流れは早いものだ。

 

「気が付けば朱鷺との文通しか外との関わりがないものなぁ…本当、どんな秘境なんじゃここは」

[途中から変に凝り始めてたからな。もっと普通で良いだろあれは]

「嫌じゃ、妾が飽きる。それにこの刺激のない場所の数少ない刺激じゃぞ? 凝って損はないじゃろ」

[……その内ネタ切れで自ら文通を絶たないといいな?]

 

 っと、気付けば余計な事ばかり話してるな。全く、年を取ると脱線が多くなって叶わない。

 独り言も増えたし、悪魔との会話は機械と会話しているみたいで、孤独感は埋められないのは悩み所だな。

 その間に貯めてたらしい黄金も精々49t…来年には目標の50tまで行きそうだけど、最後が一作品の完成までが長いんだよなぁ…此処まで貯まったのは仏像系列を彫ると凄く儲かる財テクのおかげだが、代わりに一作品の時間が掛かるんだよな。

 

「初めの話題に戻るぞ。妾は考えた訳じゃよ、思ったより人と関われんし、ちょっとくらい本気で人探ししても良いんじゃないか?…とな」

[今の作品をさし置いてか? 50t貯まって未来の現実か前世にでも移動すれば会えるぞ]

「妾は最後の最後で堪えるのに我慢ならなくなるタイプじゃ。今がその時と知れ」

[……で? 何をするつもりだ?]

「ほれ、最近金と交換した召喚符なるものが有ったじゃろ? それをそろそろ使おうと思うんじゃ」

 

 お値段金500g。広範囲に亘って同族を探し出し、相性の良い異性を呼び出す札なのだそうだ。

 説明書にそう書いてあったが、具体的にどう相性が良いのか、何故異性なのかは具体的には書いて無かった。

 呼び出しても相手を帰らせる事は出来るらしいので、もし仲良くなれない相手でも安心だな。

 

[セックスの相性だろ]

「せっくす…?」

[はっ? お前知らないのか? 子供を作る方法だぞ?]

「知らん。前世辺りで聞いた気もするが忘れた。まあ覚えてないということは大した事じゃないじゃろ」

[ダメだコイツ……仏を彫りすぎたんだ……やっぱ入魂が云々ってやばいやり方だったんじゃ……]

 

 なんだよ俺が編み出した物に命を吹き込む技法がダメだって言いたいのか?

 

 大丈夫だって、ここ23年の記憶が無かったり、その間の記憶が仏の事しかないだけだろ?

 

 そのおかげで目が動く人物画とか描けるようになったらしいんだから損ばかりじゃないって!

 恐らくこの世界特有の現象なんだ! 所詮技法だし極めなければ命に別状はない!

 

 記憶は吹っ飛んでたけどな! まあ体感一瞬だから問題ない!

 

「どうあれ妾の新たな友人になる相手じゃ! もてなしの準備を終えた以上呼び出すのじゃ!」

 

 どうあれ人を呼び出せるんだ! パーティの準備の一つでもしてもてなしてやろうぜ!

 この為にケーキのレシピと材料を買い取り、森でハントしてたらしい家畜も何匹か潰したんだ! 使った黄金の量はちょっと考えたくない!

 

「という訳で……いでよー妾の新たな友人候補よー…せめて善人であれー」

[あーあ…こうなったらもう俺には止められないからな?]

 

 

『─‬‭─十‬階天使、()()()()()。貴様の呼び掛けに慈悲深くも参上してやったぞ』

 

 

 札を投げて天に祈っていると、めっちゃ翼のある天使が出てきた。

 パッと見は浅黒金髪の……チャラ男? という人種だった。

 しかも名前被り。なんだか縁を感じる相手である。

 成程…確かに相性が良さそうな被り方だな! 友達には勘弁な人種だけど。

 

『……なんだ、惚けおって。我の美しさに見惚れてたか?』

「や、ちょっと友達にするには抵抗のある相手じゃなあ…と考えておっての」

『ほう、生意気な事を言うな、女よ。名はなんと言う?』

「ルシファー、最近の記憶を20年くらい吹っ飛ばしただけの元女王なのじゃ」

『カハハ! お前もルシファーなのか! これは愉快だな……良いぞ気に入った。暫く、お前の側に居てやる。感謝しろよ?』

「なんじゃお主、突然お泊り宣言とは図々しい奴じゃのう…?」

 

 少し話していると、彼の中で俺の家に泊まる事になっていた。

 別に部屋も空いてるし問題はないのだが、突然呼び出した割には随分と適応が早い。

 

『なんだ、お前が盛大に婚約相手が欲しいと呼びかけに、(めかけ)として引き取ってやろうとした我に対して頓珍漢な……もしや、知らずにあんな盛大に呼びかけたのか?』

「こんやく…? 妾は友達作りに使えそうな魔道具を使っただけじゃ。それで何が起きるのかは聞いておらぬ」

『……まじか、お前』

 

 話しているとなんだか噛み合わない。

 どうにも先程の悪魔みたいな謎の相手として来たみたいな感じだ。

 うーん……もしかすると俺は大事な記憶を使って仏像を彫っていたのかも知れんな。

 

『待て待て……先ずお前、何年だ? もしや見た目通りと言うつもりはないだろうな? ああ、この箱庭に来てからの年数のことだぞ? 物語の設定年齢は含まないからな?』

「ん? 1年じゃ」

 

 なんか細かい条件を出して来たので、取り敢えず記憶の続いている年数を答えてやると、途端に相手が頭を抱え出した。

 なんだ? 俺何か間違ったことを言ったか?

 だったら申し訳ないな。久々の人との会話だから失敗する事もあるだろう。

 

『自力で箱庭を作っ……にしては随分と豪華な土地を……はー…頭が痛くなるな……もういい』

「ぬ? 何処に行くんじゃ」

『帰る。無知な赤子を育てる程、我も暇ではないからな』

「わー待て待て! それならせめて妾のパーティに参加せい! 今日呼ぶ友人の為に拵えた物を、妾1人で食わせる気か!?」

 

 踵を返して始めに来たワープゲートに戻り始めたので、慌てて手を引いて呼び止める。

 流石の相手も強引に俺を振り払うのは気が引けるのだろう。困った顔で立ち往生し始めた。

 

『離せ生娘。我は翼すらないお前に、関わる価値を見出していない』

「だったら今からお互いを知れば良いではないか! それに態々来たのなら、今は時間があるのじゃろう? だったら食事の一つくらいよいではないか!」

『それなら帰って適当な女を抱いた方が有意義だ』

 

 なんだコイツムカつく奴だな。

 まさかお前もルシファーらしく愚か者って訳じゃないだろう?

 分かるぞー…お前からは「エラッタ」のルシファー界隈の大物側の臭いがする…男キャラは何故か殆ど覚えてないけど、絶対にガチャに出てるタイプの見た目をしているからなあ!

 

 たから、この言葉が有効になる筈だ。喰らえ!

 

お主も愚か者か!? 一目見てその為人を知れると思うな! 共に飯を食い、語らい、過ごしてやっと見えるものであろうが!!

(今のお前って小物の方のルシファーみたいだな)

 

 ビバ主人公の名台詞! なんか覚えててラッキーだったぜこの台詞!

 相手もムッとした顔になっているし、効いてるに違いないだろう。

 

『……良いだろう。そこまで言うのなら暫くお前に時間を割いてやる』

「おお! ならば‭─‬‭─‬」

『だが‭─‬‭─‬もし無駄な時間を過ごさせたなら、お前の首と身体は即座に離れると心得ろ』

「よいよい、そんなの話しておれば勝手に価値ある物になっておるわい。さ、ついてくるのじゃ」

『……胆力は既に我に並ぶな』

 

 なんか言ってるけどさー、そんなの黄金が49tもある俺からすれば余裕過ぎる条件なんだよね。

 脅しになってないんだわ。リソースとして優秀な黄金の愚王を舐めるなよ?

 

「さっ召し上がるのじゃ。この為に大枚叩いて買った食器に妾の手作り、たんと味わうがよい」

『ふん……』

「ぶっきらぼうじゃのう? なんじゃ、普段から食べておる物じゃったか?」

『当然だ。我が舞台の上に居た時、これに並ぶ物は幾らでも食べておったわ』

「ならば箱庭に来てからは久方ぶりか。良かったのう? 故郷の味ではないか」

『ぐっ……』

「素直じゃない男なのじゃ。美味いならば美味いと言えば良いというのに」

 

 そんな訳で始まった食事会だが、このチャラ男は凄まじく素直じゃない奴だった。

 完食する癖してツンとした態度だし、折角作った俺に対してお礼の一言も寄越さない。

 可哀想に…ツンデレキャラとして生まれちゃったんだな…。

 

「さっデザートじゃ。先ずはこうして……」

『おい、なぜ灯を消した』

「それはのう…こうする為じゃよ! ふぁいやー!」

『……!?』

 

 しょうがないのでデザートのケーキに蝋燭も立ててやった。

 詳しいことは忘れたが、ケーキに蝋燭を立てるとなんかお祝いになった気がするのでやった。

 具体的に何を祝うかは……まあ、忘れたなら大した事じゃないだろう。

 

「じゃーん、お祝いケーキじゃ! 今日出会った事を祝した物、妾でも食うのは久々なのじゃ! テンション上がるのう!」

『白くて…赤いのは苺か。そして黒い板には…おめでとう?』

「スポンジに生クリームをたっぷり塗り、更にふんだんに砂糖をまぶし、トドメに甘い苺とチョコを乗せたものじゃ。延べ棒一つと並ぶと思うがよい」

 

 マジで黄金の延べ棒を一つ使った食事会だからな。ケーキだってすごい価値がありそうな材料で作ったからなあ……木細工してて良かったのは、こういう所で器用に熟せるようになったことだな。

 

「では蝋燭を一息で消すのじゃ。妾と其方が出会った記念、盛大に祝おうぞ!」

『……認めよう』

 

 そうしてチャラ男が蝋燭の火を消すのを待っていると、なんか降参し始めた。

 なんだ? 食い過ぎて腹でも痛くなったか? 俺はここまでのフルコースを食べ過ぎてケーキを食えるか怪しいぞ?

 

「なんじゃ? 薮から棒に」

『だから、お前を認めると言っている!……ここまでもてなされたのは、産まれて初めてだからな』

 

 そう言うチャラ男の顔は……恥ずかしがっているのか、照れているのか分からないな。

 なんか複雑な感情を抱いているのは間違いなさそうだな。

 

「ならば、今日は其方が産まれた事も祝う日としよ……あーそうじゃった、これ誕生日か。やっと思い出せたのじゃ。ルシファー、お主何歳じゃ?」

『今度はなんだ?……設定年齢なら18歳だ』

「ならば18本挿すとするかのう」

 

 キリ良く10本挿していたが、思い出したからには追加せざるを得ない。

 チョコ板にも「誕生日」を上に追加して……バランスは悪くなったが、コレで本当に完成だな!

 人生で最大のお祝いは誕生日だと相場が決まってるし!

 

「ハッピバースデー♪トゥーユー♪」

『………』

「ハッピバースデー♪トゥーユー♪」

『………本当に、なんなんだか』

「ハッピバースデー♪でぃあ?…ルシファー!」

『なんで詰まった?』

「ハッピバースデー♪トゥーユー♪おめでとうなのじゃー!」

『……はは、面白い女で…あったかい奴だな。生まれた事自体を祝おうと考えるなんて』

 

 途中の歌詞が怪しかったが、そこは勢いで誤魔化した。

 この曲しっかり歌える奴いる? 俺はもう誤魔化すしかないぞ。

 

「さっ息を吹きかけて蝋燭を消すのじゃ! 今宵の主役はお主じゃぞ!」

『……! くくっお前、さっきルシファーを祝ったな?』

「…? そうじゃな」

 

 最後の最後で何か思いついたチャラ男は、悪戯っ子の顔でニヤニヤと笑い始めた。

 

『それだとお前自身も祝ってないか?』

「…は!? そこで屁理屈並べるのかお主!?」

『困ったなあ…? コレではどちらが蝋燭を消せば良いか分からないではないか!』

「ぐぬぬ……! だったら!」

 

 本当に素直ではない奴だ。だが、コッチにも意地というものがある。

 此処まで祝われる事を拒否するなら、強引にでも受け取って貰う!

 

「お主と妾、2人で消せば良いではないか! 2人揃っての誕生日会じゃ!」

『……ぬ!?』

「ククク…お手繋いでゴールしたいと申すなら、その通りにしてやろう…妾は優しいからのう?」

『……墓穴を掘ったのは我であったか!』

「…あ! 蝋が落ちかけておる! ほれ、いっせーので吹くぞ! 待った無しじゃからな!」

『なにっ!?』

 

 これ以上やると蝋が垂れるのでぐだぐだしながらも一緒に火を消す事となった。

 ふーっ間に合ったな…俺のお腹が限界なのどうしよう…火を消した以上食べないのは無しだよな。

 

「うっぷ…苦しいのじゃ…」

『ゲップ…コレが幸福か…』

 

 そうして2人でケーキを食べ終わり、夜も遅いので一緒に風呂に入って寝ることになった。

 一緒に入る時に何故かギョッとした顔をされたが、マジで無知な娘だな…と言われて終わりである。

 なんだか友人というより娘に対する扱いになって来た気がするぜ!

 

「生憎ベッドは一つでなあ…? すまんが妾と共に寝るのじゃ」

『……誘っているのか?』

「ん? なにがじゃ?」

『いや……何でもない。沢山食べて精が付いただけだ……なあ、本当に子作りの知識はないのか?』

「さっきからなんじゃあお主は。そこまで言うならお主から教えるのじゃ」

『身体に直接か?』

「言葉でじゃ。体罰はいかんぞ、痛いからの」

『気持ち良くするぞ?』

「余計ダメじゃろ。さては麻薬の類いか?」

 

 そんな風にやり取りを交わすと、深い深い……それはもう深いため息を吐かれた。

 えぇ? そんなダメな奴扱いされる普通? それならさっさと具体的にどうやるのか答えろよ。

 それをせずにその反応は違くないか?

 

『今度、転移門を潜らずに此処に迎えにこよう。……ちゃんとした講師を付けてやるから、それで基礎から学べ生娘』

「なんなんじゃもう……」

『我が我慢してやってるのがどれだけ有り難いことか知るといい』

「で、その日はいつじゃ?」

『3年。それまでには全て用立てて迎えに来てやる』

「長いのう…まあ、そのくらいなら待っておいてやるのじゃ。なにせ、妾は優しいからのう?」

 

 別に今の生活に困ってる訳でもないし、直ぐに未来や前世に戻らなくなっていいだろうしな。

 

「くう……くう……」

 

 その日は2人仲良く川の字で寝る事となり……それから3年後、まぐろの飛行船で迎えに来たチャラ男の言う()()()()()()()()が見せた光景で悲鳴を上げる事になるのは……また、別の話。

 

 いや、ど忘れしてた俺も悪いけどドギツイわ……まさか本番を直で見る事になるとは……すごく久々に「えっち」を思い出したぜ!

 でもヤらねぇ! 女になってるから! くそっこれなら忘れてた方がマシだったぜ!

 

 

 

 ↙︎視点変更:N → LR

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

「ルシファー、最近の記憶を20年くらい吹っ飛ばしただけの元女王なのじゃ」

 

 その生娘を初めて見た印象は、お世辞にも良いものではなかった。

 当然だろう? 記憶を無くした、元女王と聞いて笑わない者がどれだけ居る?

 しかも婚約相手が欲しいと念話で乞われ、気まぐれに潜った門の先で出会った相手だぞ?

 どれだけ無様で惨めな女だろうと、慈悲を与える我でなければ門を潜りもしなかっただろうさ。

 

お主も愚か者か!? 一目見てその為人を知れると思うな! 共に飯を食い、語らい、過ごしてやっと見えるものであろうが!!

 

 しかしどうした事だろう。

 此奴は友人が欲しいからと曖昧な知識で魔道具を使い、それに呆れて適当な嘘で煙に撒いて帰ろうとした我を、引き留める言葉すら投げかけてみせた。

 侮蔑の言葉と共に、確かな道理を持ち合わせていた。

 故に、ただでは殺さぬと相手のもてなしを受け取る事にしたのだ。

 そこまで言うのなら、その言葉通りにして、やはり時間を割くに値しなかったと切り捨てるつもりで着いて行った。

 

「さっ召し上がるのじゃ。この為に大枚叩いて買った食器に妾の手作り、たんと味わうがよい」

 

 家に上がった感想としては、ボロい見た目とは裏腹に豪華な部屋と食事会だと思った。

 確かに年季の入ったボロの小屋なのに、中は赤レンガの壁と黄金のテーブルが飾られ、あらゆる小物や装飾には中身の詰まった金細工が上品に部屋を飾っている。

 魔道具か何か、我の知恵の蔵にない物が使われていると確信した。

 

 我は予言者より生まれた存在だ。

 神の知恵、万物に知恵を与える叡智の炎を権限に持つ大天使である。

 故に明星のルシファー、知恵のプロメテウスの二つの名を持ってしてこの寓話世界に生まれ落ちた。

 故に早期にこの世の理を掌握し、こうして箱庭に舞い降りて虚空に落ちる事を免れた。

 飛行船の救いは我々には訪れなかったから、我の治める王国を、全て捨てて逃げ仰せた。

 

「さっデザートじゃ。先ずはこうして……」

 

 物語に浸れば約束されていた祝福も、喝采の欠片も受ける事なく、ただ死ぬ未来を理解したが故に逃げて、この箱庭のスラムにひっそりと暮らす事になったのだ。

 法の整ったこの箱庭では、飛行船の救い無く侵入した者への慈悲は無かったが故に。

 ただ、死んだように今日までを生きて来た。

 

「じゃーん、お祝いケーキじゃ! 今日出会った事を祝した物、妾でも食うのは久々なのじゃ! テンション上がるのう!」

 

 だからこそ‭─‬‭─‬眼の前に広がる祝福は、ただ逃げるだけだった我には無相応な程無償の愛と慈悲が込められていて……我は自分が何を捨てて来たのかを、この日初めて心から理解した。

 祝福がどれだけ甘美であるのか、それを与える存在がどれだけ狂おしい程愛くるしい存在か。

 

「ハッピバースデー♪トゥーユー♪おめでとうなのじゃー!」

 

 その愛すべき者達の顔も見ぬ間に捨て去った自分が、どれだけ愚かな男だったのか。

 

「さっ息を吹きかけて蝋燭を消すのじゃ! 今宵の主役はお主じゃぞ!」

 

 きっと、禁断の果実を齧るとはこんな気分なのだろう。

 罪深くて、甘くて、苦しくて、幸福で、愛おしくて‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬死にたくなる。

 

「生憎ベッドは一つでなあ…? すまんが妾と共に寝るのじゃ」

 

 だから……いっその事、この愚かな女を巻き込んで底の底まで堕ちてしまおうかとも考えた。

 

『今度、転移門を潜らずに此処に迎えにこよう。……ちゃんとした講師を付けてやるから、それで基礎から学べ生娘』

 

 だが……我は知恵を与える存在であるが故に、無知な獣を貪る事を己自身が許せなかった。

 純粋無垢な祝福を我に与えようとする存在を前にして、知恵の慈悲を先に与えずには居られなかったのだ。

 自由に空を飛ぶ翼も無く、その手にマメを使って日々を過ごす者を、()()を我が導かずして、どうするというのだ?

 この世界で、漸く見つけた、我が導くに値するか弱い人間だぞ?

 しかも番も増える知恵もないと来た! まんま我の民の特徴ではないか!

 いや、もしやすると本当に生き残りなのやも知れぬ……尚更、慎重に保護しなければならぬな。

 

『3年。それまでには全て用立てて迎えに来てやる』

 

 全て我が面倒を見てやらねばならぬ。

 少し眼を離した隙に寿命で死んでるのが人間というものだ。

 故に可能な限り早く、そして可能な限り万全の加護と環境を与えてやらねばならぬ。

 幸い元の話から持って来たのか、元女王と名乗るのに相応しい物は揃っていた。3年ならきっと持ち堪えてくれる筈だ。

 

「くぅ……くぅ……」

『寝たか…あぁ、愛おしいな。人に愛を語る程残酷ではない故に我慢したが……いや、これから娶る相手だ。最初こそは適当に相手をしてしまったが……今宵より、我は其方に誠実であろうではないか』

 

 我も待たせるのは心苦しいが、その苦労を乗り越えた末には我の姫として迎え入れよう。

 地に満ちる程の子を産ませ、我の王国を、今度こそ……この永久の地に満たせてみせよう。

 そも、翼のある者が大地を占領すべきではないのだ。今の社会は歪でしかない。

 理想とすべきは、この娘と同じく翼のなき者がこの地を支配すべきなのだ。

 

 きっと、この地を創り上げたという女王も同じ事を考えているに違いない。

 

『さあ、行くぞ我よ。愛すべき姫を迎える為、この地を支配してみせようではないか』

 

 アダムが居ないのなら、我が代りにリリスを生涯愛そう。

 

 それこそが‭─‬‭─‬我の新たな正義である。

 

 






SSR「[アリアドネの指先]スーザン」
 精霊歴504年、黄金の時代のドールチェ王国で書かれた作品のキャラクター。
 主人公な事に加え、オペラ役者の名演技によって人々の心に刻まれた事からSSRまで押し上がった……だけで無く、逆説的にSSRを支配しているアリアドネの方もLRまで引き上げられている。
 その内容は怪物アリアドネに支配された主人公が犯人のミステリー物。舞台上で繰り広げられるミスリード満載の演劇は、文字だけでは到底表せない興奮と熱狂の渦へ観客を叩き込んだ。
 性能としては召喚される事でLRのアリアドネも次回で確定召喚になる、ガチャシステムへの反逆者。戦闘面では時間経過で編成していないアリアドネのスキルも発動するフルアタッカー。


LR「[アリアドネの指先]怪物のアリアドネ」
 精霊歴504年、黄金の時代のドールチェ王国で書かれた作品のキャラクター。
 主人公がSSRであるが故に、その支配者はより強くなければならないという演目の理論によりLRまで押し上げられた者。
 闘技場の女剣闘士スーザンの全てを支配しており、夜な夜な開花に必要な血を捧げさせていた。箱庭では根付いたのが栄養豊かな森だったので、血を使わずに普通に開花している。
 一度に増える量が凄まじく、一体で7000の種を撒く。種を人に宿して運ばせ、その死体から開花するのが本来の生態。その為戦乱の時期は絶好の繁栄の機会の為、知略を尽くして戦乱を起こす性質を持つ。
 性能としては遠隔操作でスーザンを操る完全後方支援。スーザンに与えられたバフの時間の延長と、自身の能力値をスーザンに加算するスキルで編成外から支援する様はまさしくLR級の置物だろう。

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