Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 「エラッタ」はストーリーで死んでも戦力に変化は無いので、平然と死人が出ます。
 死に戻りを持ってる奴くらい簡単に死んでそのまま進みます。
 代わりに、選択肢の巻き戻しは容易です。




ストーリーで死んでもガチャに影響が無い場合大体死ぬ

 

 

 ミソフィア 箱庭「黄金の愚王」

 精霊歴530年「黄金の時代」

 

 

「悪魔よ、朱鷺への手紙がそろそろ尽きてしまうのじゃ」

[……思ったより早かったな]

「一応3年先まではあるが、これを使い切れば妾は音信不通になるであろう」

[3年も経てば何か思い付いてるだろ。文字だってまた書けるようになるさ]

「その時に妾は此処におらぬよ。何故なら今年はあの男が来る年……来なければ未来に飛ぶ予定の年だからじゃ」

[よくもまあ黄金があるのに使わずに耐えたよな。俺は我慢出来ずに使うと思ってたぞ]

「友人との約束は守る。妾の唯一覚えているポリシーなのじゃ」

 

 あれから3年の月日が経ち、黄金が何故か100tまで増殖し、最近前世の記憶を男だったことしか思い出せなくなって来た。

 なんなら前は書けた筈の文字も最近は読めなくなったし、書けなくなった。最近は悪魔に頼んで読んでもらっている。

 恐らく年を取ってボケてきたのだと思うんだが、悪魔が言うには彫刻や絵、楽譜や楽器、お酒や料理を創っているせいらしい。

 「にゅうこん」って技法を常に使ってるからだとかなんとか。俺はもう手に染みついたやり方を繰り返してるだけなんだがなあ…?

 悪魔は必死に止めてくるけど……なんか、俺の後ろから創れって、産まれたいって叫んでる連中がいるんだよ。だから止まるのはなんだか申し訳ないし、結局いつの間にか作ってるんだよな。

 

 何よりやめようと思っても、この身体は乗っ取られたみたいに止まらないんだよね。

 悲しいもんだよ。俺は対価を払わずに何かを創れる者じゃないってのに。

 俺の後ろで叫んでいる連中は、俺を主神?とか、ブッタ?とか言っているんだから。

 他人と間違えてるって言おうにも、言葉が届かない相手だから伝わらないんだよなぁ…困ったもんだ。

 

[妾も遂にボケが来たからの。産まれてから27年……書ける内に書いた手紙を、中身も知らずに送る日々……悪魔よ、記憶残高は後どれだけ残ってるかのう?]

[……くそっ黄金から記憶に戻せるならとっくにやるのに……50t吐き出したんだ。もうそこまで残ってないだろうさ]

「そっかあ……悪魔よ、昨日の記憶も思い出せないんじゃよなあ……妾ってどんな名前だったかのう……」

[█████だ]

「聴こえんのう…困ったのう…難聴にもなったか。若しくは自我が揺らいでおるのか…」

 

 ふと、指先を見ると幻みたいに霞んでいた。

 ゆらりふらりと、煙のように先から消えていて、水面から覗いているみたいに歪んでいる。

 パチクリと瞬きしている間に元に戻るけど、そのうち本当に消えてしまいそうだ。

 シャボン玉にでも成った気分だぜ、いつパッと消えてもおかしくないな、これ。

 

[█████…? █████! 返事をしろ! おい!]

「なんだか因果を感じるのう…遠い未来の結末を辿っている気分じゃ。本来起こるべくして起きた、黄金の量産と……自己の崩壊を………はて、妾は今何と言ったのだったか」

[しっかりしろ! お前が死ぬと俺との契約もパァになるんだよ! また俺を半端な存在にするつもりか!]

「……ああ、すまんの。最近は眠くて眠くて……赤子に戻っていってる感覚なんじゃ」

[くそっこんな事なら全ての生産活動を全て禁止させとけば…!]

「そう嘆くでない。使うだけよりか、周りに命を与えた方が楽しいじゃろう?」

[それで死んだら元も子もないんだよ!]

「すまんのう……しぬとはなにか、最近は分からなくなってきたんじゃ。分からないことを言われても伝わりやしない。……妾、もうダメじゃのう」

 

 怒られてしまった。悲しい。

 だがその理由を理解出来ない。これも悲しい。

 知恵が無いと相手を理解してやれない。

 不甲斐ないが、記憶が消えるとはこういうことなのだろう。

 俺はそれを自覚しているだけまだマシだと思おうか、どうしようか。

 最近は座っているだけで一日が終わる事もあるんだから、こうして学びがあるだけ今日は良い日かな。

 

「末期じゃのう……そろそろ手紙を出しに行こうか」

[立てるか? 転ぶなよ……早く来てくれ、ルシファー……コイツはお前が居ないとダメだ……]

 

 るしふぁー…ルシファー? あれ、それって俺の名前じゃないか?

 確か同じ名前だった筈だし……うん、俺の名前だわ。

 

「ルシファー……あ、そう言えば妾はそんな名前じゃったな。なんじゃ、他人の名前として言えば聴こえるではないか!」

[……もう俺、お前の症状がよくわからなくなって来たぞ]

 

 うん? 名前を思い出したらすこぶる体調が良くなってきたな。具体的には久々にご飯食べてギックリ腰と風邪が治ったくらい。

 意識もクッキリとして来た…やっぱ名前があると楽だな!前世の記憶も戻ってきたし!

 さすが寓話を元に創られた身体だ、名前を思い出すだけで元気になれるんだからいい加減だわ!

 

「よし、暫くはコレで乗り越えるのじゃ! 妾がぼーっとしたら妾の事をあの男の事の様に話せい!」

[……まあ、元気になったならそれで良いか]

 

 何だか微妙な声色で言われたが、どうせこんなの寓話世界特有の病とかそんなのだろうしな。

 それが治るなら何しても許されると俺は思うよ。治療ってそういうものだろ?

 

「では! 今日も元気に頑張るぞい!」

 

 

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 それは……そう、今から7年前の事だった。

 

「‭─‬‭─‬奇病だって?」

「はい! ある日急に身体が霞み始め、次第に透明になっていって、最終的に消えるんだそうです!」

「予兆はあるのかな?」

「幸い顔付きの方は持ち堪えてる人が多いので証言が集まりまして、自分が何者か突然見失って、それを取り戻せないと消えてしまうとか……」

「つまり、モブだった者ほど重症になり易いか…三賢交代の時だというのに間の悪い…」

 

 流行病。

 それはネズミや死体、汚れから生まれる死への誘い。

 人が多い程被害は多くなり、防疫や清掃を徹底することで大幅に防げるものだ。

 しかし、それでも想定していない病源は現れるもので、今回の病は正にそれ。

 何処からやって来たのか検討も付かない……現象とも捉えられるものだった。

 

「いえ、それが…」

「なんだい? まだ何か特徴があると?」

「はい。顔付きもモブもどちらも平等に罹りますが、致死率で言えば顔付きの方が圧倒的に高いんだそうです。その比率、どちらも10人罹ったとして、8:1! モブの8倍の顔付きが死んでいる状況です!」

 

 きっと、今の私は苦虫をを噛み潰したように顔を歪めている事だろうな。

 なにせ顔のある者は誰もが個性が強い代わりに有能な者が多い。

 それは、モブと顔付きの就いている職業として現れている事実だ。

 その状況でモブ側を無症状感染者にした、顔付きが死に易い病だって?

 これはもう、最悪国が滅びかねない大事で間違いないだろう。

 

「文官、これを現象ではなく病気と判断した理由は?」

「消えかけている者に風邪治しの魔法を使い続け、一命を取り留めた者が居た為です。その後他の患者でも同様の結果が得られた為、現場は病気だと判断したみたいですね」

「感染経路を徹底して洗い出せ。罹患した患者は隔離しろ。民衆には清潔と口に布を巻くように徹底させろ。予算は惜しまない、足りないなら私の私財も使うと約束する」

「良いのですか? 他の賢者様と会議してからの方が……」

「病との戦いは時間との戦いだ。他の賢者には事後報告とする。責任も私が取ろう。理解したら人と金を動かせ、燻った騎士共と医者を集めて「治療隊」を結成しろ。仕事の時間だな」

「はい! 承知しました!」

 

 それが7年前。

 三賢交代を目前に起きた出来事だ。

 幸い的確な政策と迅速な行動のおかげか死者数は300名以下に留まり、完治とはならずとも交代をする余裕は生まれた。

 

「あの時は大変だったな…」

 

 流れで女王の配下に成って早くも27年……この箱庭を見捨てるのも偲びないので賢者として今日まで頑張って来たが……遂に肩の荷を降ろせると思うと気が楽になるな。

 未だ不安はあるものの、もう私は政治の舞台に台頭するつもりもないし、出来ることはやったという手応えもある。

 人も物の流れも創られ始めたし、天使ばかりの中エルフの私はアウェーだとずっと思っていたんだ。

 

「不安はあるが、()()()が沢山居るんだ…何とかなるだろうな」

 

 三賢交代の時期の為に解任され、もう住まうことのない館を見上げてそう呟く。

 コレからはこの広大な箱庭を旅してみようかと、機嫌良く旅立とうとしていた‭─‬‭─‬その時である。

 

『貴様、星詠みのアルカで相違ないな?』

「おや‭─‬‭─‬コレはまた随分と翼の多い人だね。余程素晴らしい話から生まれたと見えるな」

『ぬかせ。出自の些事など此処ではなんら役に立たん。下手な賞賛はやめよ』

 

 1人の浅黒の男が空から降り立ち、私の行手を塞いだのだ。

 見た目こそ多くの翼を持ち立派な鎧を着ているが……この世界では見た目の良し悪しで身分を測ることは出来ない。

 勿論ある程度は信用出来るが……それは、こうして突然訪れた者に対しては決して適用されない。

 特に此処数年は負け犬根性や悪運や実力のある連中が舞台から箱庭に不法侵入するケースが多い。

 命が懸かっている以上別にダメという訳ではないが……市民証を即座に提示しない以上、信用は出来ないだろう。

 

『まず、尊大な物言い失礼する。生来故に変えられんのだ』

「其処は私も分かってる。どれだけ頑張って言おうとしても言えない顔付きを沢山見て来たからな」

『その慈悲に感謝しよう‭─‬‭─‬単刀直入に言う。我の配下として働き、我を三賢者にして欲しい』

 

 ああ、ここ最近よくあるパターンかと、目前の存在への関心が消えていく。

 別に珍しい話では無い。演目では約束されていた…もしくは経験した栄光と成功を忘れられずに、三賢交代を機と見て勧誘する者が後を絶えないのだ。

 

「ふーん、他を当たってくれないかな。私はもうその手の物に興味はないんだ」

 

 立身出世は物語の王道で、それらの顔付きの元騎士や元王もこの箱庭には沢山居る。

 特に私は三賢者の内、軍拡を積極的に行い治療院や公共衛生を重視して成功させている。

 その手の者達にとって、私の知名度はさぞかし魅力的なのだろう。

 他の2人も決して悪い訳ではないのだが……モブ人気の伝令セージと内部の事務処理や根回しが優秀なスーザンでは、派手な活躍に欠けてしまうのだろうな。

 

「未だ自分を中心に世界が回っていると錯覚しているのかな? 物語の約束は此処では無いと、早く気付ける事を願っているよ‭─‬‭─‬ではな」

 

 今回も聞くに値しない話だったと、彼の隣を通り過ぎて‭─‬‭─‬。

 

『‭─‬‭─‬ルシファーの居場所を知りたく無いか?』

 

 その名前に、立ち去る足を止めた。

 それから嫌悪に歪む顔を努めて戻し、顔を少しだけ後ろにいる男に向ける。

 でないと‭─‬‭─‬殺そうと飛びかかってしまいそうだ。

 

「……珍しいな。外様が女王の名前を知っているとは。皆が普段口にしないから苦労しただろう?」

『ああ、奇妙な縁にもしやと思うまで……確かに苦労したさ。だがその甲斐は有った‭─‬‭─‬それで、知りたくはないか?』

 

 知りたい。

 正直に言えば、この感情が偽りと知って尚…死んでいると知って尚殺意を抑えられない相手だ。

 その居場所を知れるなら……その遺体を陵辱して気を晴らせるなら、私は何でもする程に。

 

「ああ知りたいな。だが‭─‬‭─‬その保証は何処にある?」

『ある。この溶けた黄金がそうだ』

「…っ!! 触れても熱くない…! 間違いない! コレを何処で!?」

『それは我が三賢者に成ってからだなあ?』

 

 浅黒の男の肩を引っ掴み乱暴に揺さぶる。

 この黄金は悪魔と契約したあの女にしか生み出せない物で、しかしこの箱庭を作る素材となってこの世から消えた筈のものだった。

 

‭─‬‭─‬‭─‬それがこの場にある。

 

 それが意味する事はただ一つ、まだこの箱庭の何処かで、あの女は生きているのだ!

 

「長年……長年探していたんだ! ふとした時に黄金を目で追いかけ、落胆し続けていた! この感情を、死んだが故に果たせなかった思いを埋めておくしかなかった!‭─‬‭─‬諦めてたんだ!」

『ならば俺の手を取れ。その()()、改めて我の下で奮い立たせるがいい』

 

‭─‬‭─‬待て。この者は忠誠と言ったか? 私の事情を知らない…? この勧誘も、もしや忠臣と考えたから…ならば伝令のセージも‭誘うつもりか─‬‭─‬やるべき事は、これだな。

 

「ああ、そうさせて貰おう……と、言いたい所だけど、一つだけ条件を出そうかな」

『なんだ? 何でも言え』

「伝令のセージは決して誘うな。私を仲間にしたのなら、アイツを誘うのは今後禁止させて貰おう」

『……何故だ。その両翼さえ揃えば我は確実に賢者に成れるだろう?』

「私は彼と常々相性が悪くてね……何より、()()()()()()()()()()()()。何故かな? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()な」

『‭─‬‭─‬なに?』

 

 必要なのは、()()()()()()()()だろうな。

 私は生きているあの女を苦痛な限り殺したい。

 その為には、私が殺意を抱いている事を知る者からこの男を切り離して道案内させなければならない。

 だったら‭─‬‭─‬事実を上手く並び立て、私の正当性を証明するのが最も良い。

 

「だってそうだろう? 私が彼女が生きていると知ったのはたった今で……対して彼は、この箱庭が出来る直前、彼女と密室で2人きりになっていた!」

『つまり……何を意味する?』

「分からないかな?‭─‬‭─‬彼は、彼女を陥れたその人だよ」

『‭─‬‭─‬‼︎』

 

 ああ‭─‬‭─‬その顔に見覚えがあるな。

 自分が成功する為の、演目に囚われている騎士達が踏み台(敵役)を見つけた時の顔。

 

 操り易くて助かるな。

 

『どういうことだ!?』

「君のおかげで辿り着いた()()だ─‬‭─‬最初から最後まで、しっかり話してあげよう」

 

 曰く、自我を芽生え始めたセージは王になる事を決意した。

 曰く、その為には箱庭と女王の排除が必要だった‭─‬‭─‬だから、無理矢理悪魔と契約させ、その身と立場を、様々な物を対価に箱庭を創らせた。一石二鳥という奴だな?

 曰く、女王がせめて少しでも生き残って欲しいと送り出した我々を、裏切り者の烙印を押し、己の立場を更に堅牢な物にした。

 

「それでも、私は諦めずにこの箱庭を良くしようと、名ばかりの三賢者の席に座った。しかし実質的な王に成った彼は……」

 

『‭─‬‭─‬よい。それ以上語る必要はないとも』

 

 ああ……魚が掛かったな。

 私は運が良かった。彼が最初に私に声を掛けたから、此処まで理想的に進んだ。

 

『無知なる者を利用し繁栄する様‭─‬‭─‬罪ありき。例え数多を救いもする選択だとしても、その罪は雪がれるべきである。今すぐ死を以て‭─‬‭─‬』

 

「いや、罪はないな。当時は皆が死ぬか、1人が死ぬかの違いしかなかった。その時に何を考えていたか、誰を犠牲にしたかは罪に問うべきではない。生存競争、食うための殺しは原罪でしかないように、この罪はそれ以上の意味を持たせるべきではないな」

 

『ならば、俺は罪を裁かないでいよう。当事者の星詠みがそう言うのならば、過去の罪を問うのは無しだ‭─‬‭─‬これから宜しく頼むぞ、星詠みのアルカよ』

 

「ああ‭─‬‭─‬必ずや三賢者の席に座らせてみせよう」

 

 さあ忙しくなるぞ。

 コイツ用の10年モノの市民証を発行させ、人々への認知を広げ、魅力的かつ出来そうな政策を打ち出し、確実に一票を集めなくては。

 全てはあの‭─‬‭─‬。

 

「そういえば名前は?」

『言い忘れていたか?俺もかつての女王と同じく()()()()()だ』

「‭─‬‭─‬本当に奇妙な縁だな。ああ、宜しく」

 

‭─‬‭─‬‭─‬怒りの苦痛を持たせたルシファーを殺す為に。

 

 

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「‭─‬‭─‬やはり、狩人小屋の動物や木材に不自然な流れがあるな」

「そうですね……流石に20年も経てばそういうことを考える者が出ても妥当かと」

「全く……厄介な話だなあ?」

 

 箱庭を管理する館にて、忙しなく書類を片手に人が行き交い、相談の声も絶えず行き交う。

 それは三賢交代で一番上の者が居なくなっても変わりなく、明日を待てない案件を協力して片付けていた。

 

「しかし何故狩人小屋が? 金を得るなら市場の方が……」

「だからこそ発見が遅れて今になって問題になってる……ってか、狩人達は結構良い立場だって分かってるか新人?」

「いえ…獣を狩るイメージくらいですね」

 

 眼のないモブがそう言って頭を掻き、顔が完成しているモブの先輩は仕方ないとため息を吐いた。

 

「仕方ないとはいえ……案外役目ってなあ頼りにならないもんだなあ?」

「すみません……演技なら上手くやれるのですが……」

「そりゃみんな同じだよ。だからサボりとか一瞬で分かる訳だし」

「あはは……」

 

 つい最近補充された文官モブだが、その役割があるからといって一から十まで出来る訳ではない。

 あくまでも()()()()()()()()が上手いだけだ。

 それもその筈。演目に求められるのは中身ではなく外面(ガワ)だ。

 演じる都合でモブ達は()()()振る舞うのは得意だが、実際にやるとなると成長が速い代わりに間違いもするし分からない所も直ぐに出てくる。

 かつての女王はその事を知らずに任せ、結局アドバイスという形で研究の基本を教えていたのだが……それはまた別の話だろう。

 そのおかげで研究に関しては初めから鍛えられたモブを持てたのだから、この箱庭にとってはいい事である。

 

「いいか? 現実側だと狩人の仕事は大きく分けて3つだ。獣の管理、木の管理、森を荒らした賊の討伐だな。獣はお前さんのイメージ通り殺しもするが、それは森全体を見て増え過ぎた奴や貴族の獣狩りの為だ。予め弱らせて誘導して、貴族様に気持ちよく狩らせるとかあるんだぞ?」

 

「へぇ、そうなんですね」

 

「次に木の管理。森から必要な分を取れるか確認して許可を出したり、植林して次に繋げたり、間引いたりなんだりする。この辺は狩人ってより森番の仕事だが、其処は兼任も多いそうから含めてるぞ? なにせ森は資源の宝庫。その土地の、転じて貴族の財産だ。それを任せる奴も当然、普通よか偉いんだよ。……勝手な事させない為にな?」

 

「へぇ、意外ですね。もっと単純かと思ってました」

 

「そこは現実が細切れにした土地を争ってるから……と、説明に戻るぞ。最後は賊殺し。さっき森は財産って言ったろ? ならそれを盗む奴は誰であろうと賊だ。盗人だ。相手の事情なんて関係なく殺していい相手だ。なんでコレも狩人の仕事だな。んで、他の土地から攻めてくる傭兵やら軍隊は上に報告……とまあこんな感じ。だから其処の流れる資材の数字が不自然なのヤバいのよ。理解したか?」

 

「つまり……宝物庫の番人が不正してるも同義?」

 

「理解してるな、これアルカ様直伝知識だから忘れるなよ。んじゃあ案件の厄介さも分かった所で解決に移るぞ」

 

 新人が理解したのを見て、実際に起きている不自然な流れ……ここ数年の森の管理報告書と市場の木材と皮の仕入れ量を並べて見比べる。

 

「ここ7年間が特に顕著だが……市場に流れている資材の量と報告書の数字が合っていない。値下がりしてるってのに支出が少ないんだ」

「最も考えられるのは私服を肥やしてる事ですが……誰にも見られない開けた場所が必要で、其処で()()する為の物を揃える為に売っているって線もありますね」

「薄い線だが……7年前に舞台-箱庭の定期便が完成したからな。そのせいで奇病が流行ったり……今は関係ないか」

「三賢者の発表では関係はないって話ですしね。それなら我々が一番信用しないと」

 

 思い出すのは、スーザンを筆頭とした積極的移民政策の象徴が完成した日。

 その日こそは街も賑わっていたが……その日を境に「忘却病」が流行ったせいで、舞台から救出した者達への目線が悪くなったのは事実だ。

 偶然の結果だと三賢者は言っているが……それだけで疑う心を晴らせはしない。

 悪役が船に紛れているかも知れないという疑いは、そのせいで病が広がったと疑う心は決してなくならないのだ。

 

「それはそうなんだが……俺たちには」

 

 そんな住民と移民の間の対立問題には悩まさせると、文官達は頭を抱えていた。

 そのせいでスラム街が出来上がり、住民トラブルで駆り出されるのだから溜まったものではない。

 

「兎に角「警邏隊」に掛け合って、戦力並べて捜索しよう。コレに関しては何が有っても黒に変わりはねぇ。新人、行くぞ」

「はい!」

 

 それでも彼らは今日を懸命に生きる。

 三賢交代で蠢き始める影に対抗する為に、武器とペンを突き立てるのだ。

 だが、それはそれとして……。

 

「あ、そうだ先輩。先輩は何処に投票します? 俺はセージさんなんですけど」

「あ? そうだなぁ……セージさんだな。なんだかんだ文官が増え易いように学び場作ったのはデカいわ。商人や平民も同じじゃないか? 他は"様"って感じだけど、セージは"さん"って感じだし。身近な相手だとやっぱ任せ易いわ」

「警邏隊はどうなんですかね。やっぱりアルカ様?」

「警邏隊作ったのアルカ様だぞ? 再出馬するなら全員選ぶだろうし、衛生関係で医者や職人、ドブさらいや川の治水やらで食い扶持稼いでる、都市の貧困層や大工職もそこだろうな」

「スーザン様はどこが入れるんでしょうね」

「開拓してる連中、地主にしてくれた元農民とその部下になった移民組。都市以外はスーザン様に行く感じだろ。セージさんの寺小屋は農民は行く時間がないし、いってる地主の子供はまだ投票出来ないからな」

「何処も強いし、新しく賢者になろうって人は大変ですねぇ」

「だな。相当やりたい事と裏技でも無いと、この壁は越えられないだろうな」

 

「裏技とかあるんですか?」

「3人が実は悪い奴だった事に賭けて粗探しする。または3人の誰かを部下にする。部下にすればマルっと人気獲得だからな。後は‭─‬‭─‬」

 

 少しだけ言い淀んでから、先輩のモブは言った。

 

「女王様を生き返らせて協力させる‭─‬‭─‬とかだな」

「……俺も一目見てみたかったです。この箱庭を創り上げた偉人を」

「ま、どうあれ俺たちはやれる事をやるだけさ。行こうぜ、新人」

 

 この世界は、演目としてあらゆる物語が集まる場所だ。

 死者蘇生が完全に無い‭─‬‭─‬などと、否定する事は誰にも出来なかった。

 

 

 ↙︎視点変更: C → SSR

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「‭─‬‭─‬以上、事は順調に進んでおります」

「ならそのまま続けて下さい。私はこの後忙しいので」

「‬っは」

 

 塵芥が扉を閉めて立ち去る。

 スーザンはそれを見送った後、視線の先をあらぬ方へ向け、茫然と立ち尽くした。

 ……いや、スーザンは確かに何かを見つめている。よく観察すれば、ピクピクと指先も動いていた。

 

「‭─‬‭─‬分かった。めいいっぱい頑張るね、お姉様達」

 

 [アリアドネの指先]の中の話になるが……。

 スーザンは産まれた時から心臓が無く、薬剤師の母が処方として半分に切ったアリアドネの種を植えた。

 その結果種は心臓の代わりとして赤子のスーザンと癒着。

 臍の緒を切る迄の僅かな時間の中一命を取り留める事になる。

 その後はすくすくと育ったスーザンだったが、それは同時にアリアドネもゆっくりとその身を修復する時間を与えるのと同義だった。

 

「……うん、うん、分かってる。お姉様達の為にも一緒に頑張ろうね」

 

 満月の夜だった。

 スーザンの心臓として植え付けられた種は、不完全ながらも心臓と頭部の二つの役割を成立させた。

 そうして不完全な復活を果たしたアリアドネは本能を忘れ、スーザンの中にだけ居る妹として活動する事になる。

 

「‭─‬‭─‬最後は、とびきりの笑顔で終わるんだ。なんだってやるよ、今まで通りね」

 

 新たな転換期は、軍隊による略奪。

 スーザンはせめて食べられる場所に行けと、両親に奴隷として売られ……その心意を理解出来ないまま、奴隷剣闘士として18まで戦いに明け暮れ‭─‬‭─‬ある日、そのコロシアムの土地に根付いたアリアドネを見つけたのだ。

 

「移民政策として定期便を構築した。その検閲と検査の基準を緩くして悪人が入り易くした。狩人や森番だって支配の種を植えたし、森の奥で女王様の蘇生儀式、手前には偽装用の邪神召喚…どっちが成功しても目的は達成される手筈だ」

 

 それが悲劇の引き金だった。

 不完全なアリアドネは支配の種‭─‬‭─‬植え付けた生き物の行動を縛る種‭、植え付けるのは大変難しい─‬‭─‬の役割を半端に果たし、スーザン達ととても親しい姉として"お願い"出来る立場を与えたのだ。

 

「……悩む事なんてないよ。お姉様達の言う通り、これは正統な復讐で、審判……どんな罪だって? そんなの……お姉様達は私達が言うんだから正しい。考える必要なんて無いって、言ってたから…その通りにすれば良いんだよ」

 

 半端でも話合える立場なら、狡猾なアリアドネは容易く人心に入り込む。

 試合で負けた選手を捧げさせ、足りなければ殺させて捧げさせる。

 何でも言う事を聞くスーザン達を良いことに、暴食の限りを尽くした‭─‬‭─‬のが、物語における彼女達だった。

 

「だって‭─‬‭─それだけ戦渦が拡がれば、とっても強いあの人達ならお姉様達を残らず殺してくれる。私達に終幕を与えてくれる。それはきっと‭─‬‭─‬正統な復讐で、私達を裁く審判だ‬」

 

 変わった事。

 

 "殺す相手が天使であり、親族以上に尽くすべき相手(女王様)を知った"。

 

「……うん、きっと多くの不幸があると思うし、お姉様達を裏切った方が良いことも分かってるよ」

 

 変わらなかった事。

 

 "物語に居る母譲りの、深い家族愛"。

 

「でもね、これはお姉様の為でもあるんだ。死んだら天国に行ける様に審判して貰う為に、私も罪を背負わなきゃいけない。頑固なお姉様達が死ぬ前までに間違いを認めさせる為に、多くの悲劇を見せなければいけない。その為にも‭─‬‭─‬女王様(偉大なる神)には、冥界から帰って来て貰う必要がある」

 

 その二つが合わさった結果として、スーザンは一つの選択をした。

 多くの死を対価にして偉大なる神(女王様)を蘇らせ、間違いを宣告して貰う。

 その為に死んだって構わない。死ぬ直前だけでも、正しい道に引き戻してみせる。

 それが、スーザンの下した選択だった。

 

「大丈夫。何をしたって、もう結末は決まってるんだ。後はもう踊るだけ。やるだけやろう、その為に27年積み重ねたんだから」

 

 斯くして、此処に悪の華は蕾から満開し、全ての陣営が出揃った。

 

 女王の居場所を求めるアルカと迎える為の準備をしているルシファー陣営。

 本人が差配するまでもなく優秀なモブ達が動くセージ陣営。

 繁栄を目的としたアリアドネと埋伏された猛毒のスーザン陣営。

 一旗上げようと物語に未だ囚われている悪役と主人公他、顔付き達。

 誰も想定してなかった流行病「忘却病」とその治療隊。

 

 またしても何も知らない[黄金の愚王]ルシファー。

 

 これは、ルシファー(黄金)がセッ◯スを直視して悲鳴を上げるまでに起きた、怒涛の3日間の話である。

 

 






SR「[誕生日占い]アスクレピオス」
 521年、黄金の時代のローサンマ共和国で広まった星座と誕生日を混ぜた占いの蛇使い座。
 他の舞台なら Nランクでもおかしくはなかったが、天使族と占いという媒体が相性が良く、モチーフ元の魔法が凄いのでSRまで押し上がった。
 11/30〜12/17が誕生日のあなた、今日はガチャを引いても最低50連は欲しいキャラが出ないでしょう。ラッキーアイテムは優しいピンク色のハンカチ。涙はコレで拭いてみて! 
 性能としては回復と状態異常解除の癖のないヒーラー。ストーリーでは瞬間蘇生薬を事前に服用させて死を逃れることも出来る。

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