Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した! 作:何処にでもある
箱庭「黄金の愚王」時系列
503年 箱庭建立、三賢者決定
523年 三賢交代が流行病の対処により遅延
527年 2人のルシファー会合
530年 三賢交代開始
なので三賢交代の遅延年数は4年ではなく7年が正解です。
過去話は修正しました。
1日目 朝
キィ──ン‼︎
剣戟が鳴り響き、音叉のように森に拡がる。
それだけでも只事では無いのは察しが付くだろうが──それが何度も続くとなると、今まさに揉め事が起きていると誰もが察する事だろう。
「なんじゃあ朝っぱらから騒ぎ立ててる輩は?」
[上の方だな。誰か上空で戦っているらしい]
「手紙送れないんじゃが?」
しかし……今はその言葉に1人を除かせる必要が有るだろう。
少なくとも、戦闘音を聞いて気にする事が手紙という平和ボケがこの場には居た。
「折角今から手紙を送ろうとしていると言うのに……迷惑じゃのう。下手に気付かれると死にかねないのが特にくそなのじゃ」
[おいおい、ルシファーの迎えかも知れないだろう?]
「どう見てもそんな様子ではないのう…うむ、妾としては畑やらで
[まやかしの魔法か何かじゃないか? 此処に人は全然来ないし、なにか有るのに気付かなくても不思議じゃないぞ]
家の近くの切り株に座り、真上で魔法や剣で殺し合っている人々を見て朝食のパンをモシャモシャと食べる。
誰もこちらを気にしていない所を見るに、どうにもこの地は見えなくする何かがありそうだと2人で話し合っていた。
「つまりなんじゃ、妾は飛べば直ぐにアクセス出来る場所で寂しく暮らしておった訳か? いやじゃのうそれ。まるで妾が馬鹿みたいではないか」
[もしくは、あの集団が此処まで遠出してたかだな。此処が秘境ならアイツらが物珍しい事になる]
「街近くにあった説は妾が愚か者になるからその説を採用するのじゃ」
パンを食べ、用を足し、朝の準備を終えて手紙を送りに向かう。
忘れたものが多くて人恋しさも消えたおかげだろうか? なんとか気付いて貰おうとするやる気と理由を失っていたが故の
「しかしなんじゃな、何で戦っておるのじゃろうな」
[27年も経てばそりゃあなあ? 争いの一つは起きるだろ]
「そうならぬ為に土地とか大量に用意したんじゃが? 18万の為に90万が過不足なく暮らせる土地を作ったんじゃが? それも今の技術、文明、作物基準の90万じゃぞ? 現代基準であれば1800万は余裕で食うに困らぬし、ちゃんと計画すれば1億は過ごせる土地なんじゃが?」
[俺の計算した数字を思い出したのか? キキキ、だが残念だったな! 余裕があると争うのが人間だ!]
「あやつら天使なんじゃが」
根本が人間なので仕方ないだろうと悪魔が締め括り、それを聞き流しながら上に上げる手紙を浮遊石に括り付ける。
今回は木簡に書いた物なので結び目も豪華にラッピングリボンのループ結びだ。
和洋折衷を履き違えた所業だが、結び目の豪華さで何番目に渡すのか分かるのでルシファーは多用していた。文字が分からないときに思い付いた浅知恵である。
そして浅知恵と言えば、今のルシファーが考えていることもそうだった。
「うーむ……いい事思い付いたのじゃ」
[それは戦闘が終わるのを待つよりも賢いことか?]
「浮遊石に妾を巻き付けて、ひたすら登って行けば朱鷺の奴に会えるのではないか? 名付けて気球作戦じゃ」
[途中で流れ弾に当たって墜落するに一票やろうか?]
「思い付いたなら早速実践じゃな! 有り余ってる黄金を使って浮遊石と交換するのじゃ!」
[予言してやる。お前は無様に落ちて死ぬ]
そんな訳で石を購入、気球も購入、取引相手の交代でメカニックな人形なども購入し……
『不本意極まる』
「おお、この人形…喋るのじゃ!」
『マスターに二束三文で売られたのもそうだが、こんな馬鹿っぽい奴に尋ねなければならねぇのが特に不愉快だわ』
「お主口の悪さで嫌われてそうじゃな」
『ふんっ!』
「前が見えねぇのじゃぁ!!」
ハートのシンボルを胸に持つ、偉そうな男性型の人形にオイルをぶっかけられたので一旦中止する事になった。
まさか生き物じゃない存在に意思があるとは思わなかったが、それがオイルをぶっかけて来るのも中止せざるを得なかった最大の理由である。
この人形、容赦せん!
「で、誰じゃお主は。種族に加えいつ産まれかも教えよ」
『っチ。精霊歴1966年、火の寓話世界の人間。ただし身体の全てを機械に置き変えた無機物! 名前は「クイーンドールIII」…答えたぞ、其方も此処は何処なのか教えやがれ!』
「ここは天の寓話世界の箱庭、今は530年じゃな。クイーンは久々の来客じゃよ」
『──っは?』
未来からやって来たクイーンにさらりと伝えると、クイーンは停止した後に長い読み込み時間が発生した。要はフリーズである。
ルシファーはその間に紅茶や菓子を机に並べ、急な来客のもてなしを終えた。
『──あんのクソマスターがっ!!』
『あぶね』
「うぼあ」
クイーンのちゃぶ台返しに茶菓子は舞い、ルシファーの顔にケーキと机が衝突した。
辛うじてお茶は指輪から人型に戻った悪魔が救出したので無事だが、もてなしは台無しとなった。
『伝説の悪魔の力の根源を探るとか言って送り出した結果がこれか! 1500年も昔じゃねぇか! ざけんなくそボケアーンチクショウがっ!』
「どうどう………妾が何か怒らせてしまったかの? 茶菓子が気に入らぬなら別のものを持ってくるから……」
『いらねぇ! こうなったからには今すぐ未来に戻る方法を探ぁす! そんでマスターを一発殴る! もう辛抱ならん! いっつも雑に放り出しやがって!』
扉が蹴破られ、クイーンは嵐のように去った。
ルシファーも悪魔もコレには呆然とする他なく、平和ボケも一発で覚める衝撃だった。
「……勿体無いから茶菓子食べてよいぞ。茶会続行じゃ」
『おう、壊れた机と扉はどうする?』
「脇に置けばいいじゃろ。後でのんびり直せばよい。妾の細工の腕は天下一品じゃからな」
潰れたケーキとお茶を床に並べ、茶会は続行となった。
吹き抜けの扉の在った場所から空の戦いにクイーンが乱入している様子が見えるが……自分達の手に余る相手なので放置する事にしたようだった。
「もぐもぐ……で、未来の物品……いや、人にしては何だかアレな奴じゃったのう。なんじゃ、悪役か?」
『顔のやつ取って食べたらどうだ? もぐ…そうなんじゃないか? 多分演目の真っ只中の奴と取引したんだろうな……俺を見ても無反応だったし……視野が狭くなってただけかも知れんが……伝説の悪魔は俺じゃないんだろう』
「にしては箱庭や寓話世界は理解しておったが……まあよい。また来たら未来に帰させてやるのじゃ」
パリ──ン‼︎‼︎
『もぐ……なんか割れたな……いいのか?
「100tあるからのう。半分は余分じゃし良いじゃろ。妾の無理のない範囲で何者にもチャンスを。それが妾の思い出したポリシーじゃよ。この箱庭もそうして造ったと薄ぼんやり覚えておるしの」
『それはお前が記憶を作品に使って……まあいい、その辺りは何を言っても曲げない奴だ。俺からはこれ以上何も言わん』
そんな訳で食べ終わった頃、空の上の戦いは終わっていた。
一体どんな理由で争っていたか分からず仕舞いではあるが……無事に手紙を送り出せるようになっただけ、クイーンの両成敗は悪い事じゃなかったとルシファーは考え、その日は机と扉の修理で終わる事になった。
何故か散らばっている灰の掃除が想定外に時間を食った為である。
なので結果的にではあるが──今日も平和な日々だった。
例え不可視と迷わしの守護結界が割れたとしても、そうなる訳である。
↙︎視点変更:N → SR
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「殺せぇぇ!!!」
「「「うおぉぉおお!!!」」」
『守れぇぇ!!!』
『『『うおぉぉおお!!!』』』
少しだけ時間を巻き戻して、空の上で巻き起こっていた争いの方に視点を合わせてみよう。
「邪教の神を蘇生させるなぁあ!!!」
「「「うおぉぉおお!!!」」」
『なんとしても儀式を成功させろぉお!!!』
『『『うおぉぉおお!!!』』』
と言っても流れは至極単純。
迷子になっていた「警邏隊」、「邪教団」の儀式を見つける。
ルシファーの自宅を越えた
戦闘したままルシファー宅まで移動。
以上である。どっちかが全員死ぬまで続く1時間の戦いは、そんな単純な経緯でおこなわれていた。
『ばぁくぅねぇつぅ……!!! ぶっ飛べぇ!!!』
「「「『『『ぐああぁぁあ!!!』』』」」」
『塵どもぉ!! ダイナミック尋問の開始じゃあ!!』
そんな折りに突如謎の絡繰仕掛けが両陣営を強襲‼︎
圧倒的な火力と何処からともなく現れた事による奇襲が完全に決まり両陣営は壊滅‼︎
この場で争っていた全員荼毘に付す‼︎
『あ? くそ弱っちぃな……ったく、核ナックルもオチオチ使えねぇのか……しゃあねぇ、メガトンパンチまで威力を落としてやるか!』
………そろそろ、彼についても説明を挟むべきだろう。
『だけど──ブースターはアリ! 壊したいきゃあなんか分かるって寸法──アリだろ‼︎』
彼の名は本人の主張通りクイーンドールIII、その物語の名前を[アトミックハート‼︎]
単行本3冊で構築される漫画であり──。
『さあ待ってろクソマスター! 今から全部ぶっ壊してその鼻へし折ってやるからよ!』
ヤマト愛読の週間少年漫画で連載されていた打ち切り漫画。
『アトミックブースターON‼︎──ぶっ壊していくぜ‼︎』
彼はその敵役の中でも特に悪名名高い敵役である。
何故なら──主人公と同じ機械設計に自爆特攻機能を加えた鉄砲玉だからだ。
『俺の演算回路が叫んでるぜ! マスターと同じ悪の臭いとアイツみてぇな正義の臭いが‼︎──そんなの、突っ込むしかねぇよなあ⁉︎』
登場する度に確実に主人公の仲間を1人ずつ爆殺していった正真正銘のストーリーキラー。
主人公と同じ顔で甚大な被害を撒き散らし、原爆投下と同じ規模の被害を毎回撒き散らすサマは正に非道。
「……ん? あれはなんだ?」
『何を……太陽が、落ちている?』
熱血爆殺極悪非道の被曝被害拡散装置。
『ここだぁ‼︎ メガトン──パァンチ‼︎』
登場すれば必ず何かを破壊して去るのがお約束。
一撃でなんでも破壊する様は圧倒的不評を誇り……結果として、彼個人の知名度は高まりSRまで格上げされる事となった。
その結果どうなったか? 物語以上の火力、物語以上の被害、物語以上の──引き金の軽さ。
『──自爆スイッチON‼︎』
フルコンタクト
「くそっ! 頭のおかしい奴だ! 逃げろ!」
『儀式だけは必ず完遂する! いでよ! 偉大なる──』
そんな人物が警邏隊も邪神団も巻き込んで自爆しようとしたらどうなるか?
ドォォォォ───ン………
南無三、森は灰と煙に包まれた‼︎
それを見てクイーンは満足気に笑い、唯一残った頭部の口角を上げる。
『へへっ…俺ぁやった──』
パリ──ン‼︎‼︎
『なにっ?』
何かが割れる音と共に、森を包む煙と灰が掻き消えた。
その先にある光景は──唖然とクイーンの方を見るモブ達と、傷一つなく健在している大森林。
何かに自爆を防がれた。
結論に至るまで然程の時間を掛けず、クイーンは顔を思いっきり歪ませる。
誰だ‼︎ 魔法か⁉︎ 俺の最高の瞬間に泥を付けやがった‼︎
『──クソガアアァァ‼︎‼︎‼︎』
怒りと憤怒と激怒の怒涛に演算回路が支配されるも、残された時間も動かす手足も存在しない。
仮にこれが彼の物語であれば誘爆の1つや2つ起きただろうが……悲しいかな、既に彼は成功を約束されて居ない立場だった。
カツン…タン…タ……。
壊れた人形の部位が儀式上に転がる。
思考が狂ってるだけの、奇妙な機会を得た人形は、当然の結末を迎え。
27年前、悪魔が念を入れて発注追加した結界はその役目を見事果たして華々しく散る事となった。
「……奇跡だ。女王のご加護が我々を導いている! 相手に兵は無し! 攻め込めぇ!」
『ぬぅ……しかし気狂いが稼いだ時間で準備は整った! 復活せよ、創造の女王よ──』
「しまった!」
だが、その死は無意味だったのか?
そうはならない。彼が把握することの無かった現状において、時間は邪教団の味方だ。
それはこの女王復活の儀式も──もう一つ、スーザンが時間稼ぎ用に計画していた邪神召喚も。
『ハッハァ! 邪魔が無いってのはイイなぁ! 出でよ、我らが神よ──』
今、この瞬間に全ての準備が整った。
森の手前と奥、二つの儀式───だけでは無い。
『キャハハ! そうだよねぇ、下水道って普通誰も気付かないよねぇ! あー箱庭サイコー! 現れよ、偉大なる救済の手よ──』
それは下水道の奥、地道に儀式を進めていた野生の快楽殺人鬼が──。
『時は来た──血の宴は今宵開かれ、我々は翼の呪縛から解放され、真の姿を取り戻せる──』
それはスラム街の特に霧の多い家、天使となって弱体化した吸血鬼達による、真の姿を取り戻す儀式が──。
『来たれ、来たれ、来たれ──怨念よ、呪いよ、この世全ての憎悪よ! 世界に復讐しよう!』
それは箱庭から少し離れた宙、霊を足場に浮遊する死霊使いの、奈落に落ちた者共の怨念の吸い上げが──。
それは、それは、それは、それは──。
キリがないので数だけ見ると、実行に移したものが"701件"、その内成功したのが"46件"。
それが今を機会だと行われ、そして成功した悪の活動である。
それが意味することはただ一つ──。
『テメェら! 今から此処は俺の──』
『ひれ伏せ──その罪を償う時だ』
『あ?』『ん?』
『『……死ねぇ!/死ね!』』
悪による共食いである。
当然だろう。政治的に不安な時に活動する者の目的なんて国の支配か虐殺が大半だ。
支配と虐殺で協力できる筈もなく、似た目的だと自分のやり方を押し通そうとして破綻する。
悪は孤独と仲がいいのだ。であれば、目と目が合えば殺し合いが発生する。
『此処は俺の国だ! テメェにはやらねぇ!』
『はっ! 人は罪深く原罪があるが故に死ななければならない! 死ね!』
「館が魔剣使いと禁書使いの戦場になっちまった!」
『───ォォォオオ!!!』
『アアァァアァ───!!』
「うおおっ! 邪神と大悪霊が潰しあっている!」
『これは我々の晩餐だ! 死ね!』
『家族達、奪い合いよ! 殺しなさい!』
「うわああ!? 俺たちを食べようとする吸血鬼が別家門で争っている!?」
その様子は正に蠱毒。
競合他社で争い、暴走した存在同士で争い、食料の為に同族で争う。
最悪なのは、その過程で死人が出ても彼らは気にしない事だ。
狙われてないが為に助かる命は多いものの、建物や流れ弾で死ぬ被害も多く出て…。
昼頃、箱庭に一時の静寂が訪れた。
逃げ惑っていたモブ達はその静寂に安堵して休息し、腕の立つ者達はそれが更なる抗争の前触れであるのを理解して備えを用意する。
そんな中で、雑多な勢力が纏める為の2通りの言葉が紡がれていた。
[ああ、これは念話って魔法です。周囲を見ても私は居ませんので悪しからず]
「さて諸君、君達が集められた理由は他でもない──この悪の宴を終わらせる為だ」
騎士達が生唾を飲み込む。
[おや、私を無視している者も居ますね──その調子では
「そう、三賢交代を機と勘違いしたバカ共の話だな。本当に困らせてくれる奴らだな?」
無視しようと歩き出した悪が立ち止まる。
[提案です。──この広大なパイを仲良く切り分けましょう]
「これはもう殲滅だな。この病巣を一切残さず、取り除こう」
悪が笑い飛ばし、正義が武者震いをする。
[馬鹿馬鹿しいですか? そう考えて貰って構いません。ですが、支援してあげるのは本当です]
「これ以上の言葉はない。此処まで被害が出た以上今更殺すのを躊躇する優しさは不要だろう?」
打算の結び目と、感情の結び目が増えていく。
[アリアドネ……それが我々の名前です。この名の下、共に協力し合いましょう]
「聖なる明星──それが私達の部隊名だな。この黄昏に、明けの
喝采と賞賛の拍手が都市に響き渡る。
時刻にして13時。
後に「明棘の乱」と呼ばれる事になる事態は静かに、しかし大きく動く事になる。
SR「[アトミックハート‼︎]クイーンドールI〜XXIII」
1963年、暗黒期のワトシト皇國で書かれた作品のキャラクター。
作品自体の知名度は高くないものの、本キャラの悪名の効果でSRまて成長した。
火属性の人間ではあるが、爆発する度にロールアウトされる都合で I 以降は魔道具判定、装備品となる。作中では23まで製造されて23の都道府県の首都を爆撃し、単行本は内容が内容なので直ぐに絶版となった。
性能としては燃焼と中毒を付与する殴りと自爆。更に固有状態の「被曝」を付与し、最大lVフェーズまで重症化、または進化させる。