Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 分岐確認の回想、視点を絞ったキャラスト、別ルートを模索する為の進行戻し……「エラッタ」の場合、ストーリー分岐による各報酬回収の為に進行を戻せる手段が幾つかあります。




ストーリー全回収の手段は回想だけじゃない

 

 

 1日目 深夜

 視点:SSR √BE1

 

 

‭─‬‭─‬地獄を見た。

 

「助け…助けて…熱い…」

「ねぇ…私の顔、どうなってるの?」

「……ガッ……息が……」

 

 街が燃えていた。

 

 人々が…身体が変異して苦しんでいた。

 

「オギャ…アウ…」

「死なないで…死なないで坊や! 生きて!」

『アア"ア"ア"‭─‬‭─‬!! 熱い熱い暑いアツイあつい!!』

 

 身体に蓄積した熱が広がり、自然発火した人が燃え、怪物に変異する。

 

 キッカケは私も知らない。ただ、いつの間にか私達は手遅れになっていた。

 

「……違う」

 

 立ち止まる。

 

 いつになっても、裁きの天使は来なかった。

 

「違う、違う違う違う違うチガウチガウチガウ!! こんな、こんな筈じゃ無かった! こんなの私は知らない!」

 

 どこで道を間違えたのだろう。

 

 破綻する前提の儀式がどちらも上手くいった時?‭─‬‭─‬いや、それ以上に野良共の被害が多かった。

 

 復活した()()()を旗にして、「アリアドネ」の正当性を公表した時?‭─‬‭─‬いや、明確な討伐相手を用意するのは間違って無かった筈だ。

 

 女王を見て、私達を裁く筈のアルカ達が仲間割れした時?‭─‬‭─‬いや、()()()()()()()()()()()()容姿も絵画のものよりも幼く(書き手モブが勝手に盛った)、幾つかの記憶だって欠如していた。振り切れる程度の再現性だった筈……。

 

 分からない。

 

 もっと前から間違っていた気もするし、最後の一歩を踏み間違えた気もする。

 

[あっはあ…良くやったわ、スーザン! 全て、全てあなたのおかげよ!]

 

「……お姉様」

 

[最高の景色よ! この大地も死体も、ぜーんぶ私達のもの! 素晴らしいわ!]

 

 唯一確かなのは、私は()()()()()()()()

 天界を破壊し尽くし悪意を振り撒き過ぎた。

 自分の実力を……見誤った。

 

[お姉ちゃん…]

「……ごめんなさい、お姉ちゃん…失敗しちゃった。ごめんなさい。生まれてきて…ごめんなさい…」

 

 どうしようもなく、打ち手を間違えられなかった。

 こんな事ならいっそ、自分の全てを消してしまえば‭─‬‭─‬。

 

「‭─‬‭─‬それはちと早計じゃのう?」

 

 蹲る私を、女王様が見つけた。

 

「……女王様」

「ようやく見つけたぞ、スーザンよ。妾を置いて行くとは、仮にも臣下か?」

「申し訳…ありません」

「全くなのじゃ。マジの鏖殺する奴がおるかって話なのじゃよ、マジで」

「……はい。その通りです」

 

 ()()()()()()()に向き直り、臣下の礼を取る。

 利用する為に蘇らせて、私の罪に付き合わせた。

 守ったものを破壊する様を見せた。無理矢理担いで、残酷な事をした。

 

 合わせる顔がなくて、俯く事しか出来ない。

 

「今にも死にたがってる顔じゃのう? なんじゃ、そんなに怖いか? 罪を受け止めるのが」

「実際……潰されそうですよ」

「なら始めからやるな。裁かれて軽くなる前提で、背負いきれぬ物を担ぐでないわ。愚か者め」

 

 言葉が心にのしかかる。

 正にその通りで、私から言えることは何もなかった。

 一瞬でも全部が消える前提で、考えなしに罪を重ねた。

 それは、言い逃れのできない私の過ちだった。

 

「しかしのう…この火の毒は妾にも責任があるっぽいんじゃよなぁ…あやつ呼んじゃったの妾みたいじゃし」

「‭─‬‭─‬どういうことですか?」

「お? 初めて妾の顔を見たのう?」

 

 顔を上げて、その意味を問う。

 そして、この時初めて女王の顔を見たのだと気付いた。

 だって、こんな愛しむ顔を、私は他に見たことがなかったから。

 

「ま、なんじゃ。座って楽にせよ。妾も座る。ふぃー、歩き疲れたのじゃ…」

「……はぁ」

「ほれ、妾って黄金作れるではないか。で、黄金で色々未来から持って来れるではないか。久々に使ったら爆弾送られよったらしくてのう? 爆発の衝撃と身の回りの毒はなんとか出来ても、広範囲に撒かれた毒は無理じゃったそうじゃ」

「…え、説明…それだけですか?」

「うむ、それだけでこうなったわ。じゃから、愚か具合で言えば妾の勝ち、其方はマシ、なので凹むでない。まだ舞える余地はあるのじゃ」

 

 カラカラと笑って、まだ巻き返せると女王様が笑う。

 この程度の難題は造作でもないと、私の悩みも笑い飛ばしてしまった。

 少しだけ、気が楽になる。この人ならなんとかしてしまいそうだと、そう思わせてくれた。

 

「どうやって……」

「そこはほれ、契約の時間じゃ。黄金に糸目を付けず時戻しの魔道具でも買えばよい。そういうのがあるのは知っとるからのう。で、‬これがそうじゃ」

「買うのが早い…!」

「名を「目覚めの砂時計」、今より半日分の時を使い手の夢だった事にする未来の物語の魔道具で……御託は不要か。ほれ、この時計は其方にやろう。黄金換算で3t分じゃ」

 

 いつの間にか砂時計を持っていた女王様の手から、魔道具が手渡される。

 ひょいっと軽い調子で渡されて、私は慌てて落とさない様に受け取った。

 金粉のような砂がぎっしり入った砂時計で、見た目以上に重さを感じる。

 

 それが時間と命の重さだと気付くのに、理屈は要らなかった。

 

「私……私なんかでいいんですか? 女王様が使った方が…」

「其方賢者とかいうのをやってた癖して妾の事なんも知らんのう? 妾は誰にでもチャンスを渡す派じゃよ? お主にも与えてるだけじゃ」

「チャンス……」

「うむ、チャンスじゃ。一度きりじゃから次はないが、やり直せるだけマシじゃろ?」

 

 妾ってば優しいのう? 女王様はそう言ってカラカラと笑う。

 正直眉唾としか言いようの無い魔道具だったが……それでも、私の手に垂れた一筋の救いの糸だ。

 どれだけか細く夢のようでも、これを使わない道は考える必要もなかった。

 

「ありがとう……‬ございます! 女王様の与えた機会、絶対に物にします!」

「うむ。であればやるべき事も伝えよう」

 

 女王様は指を三本立てて助言する。

 

「1つ、妾が復活し(生成され)たら詰みじゃ。諸事情(クローン関係)で蘇生の24時間後に箱庭が破綻するからのう。2つ、あの人型爆弾が爆発しても詰みじゃ。火の毒がばら撒かれるからのう。3つ……これは其方なら重々分かっておるじゃろう?」

 

「‭─‬‭─‬はい」

 

 アリアドネの事は言われなくても分かった。

 それは私が今日に至るまで束縛して来た全ての元凶だったから。

 だからこそ‭─‬‭─‬今度こそ私は立ち向かわないといけない。

 

 ピシリと、砂時計がひび割れた。

 

「とは言え……全て解決する必要が無いのは忘れるでないぞ? なにせ時でなく()が戻るからのう。星を見上げれば違和感に気付く奴もおるし、最も防ぐべきものを最優先とせよ‭」

 

 その言葉を合図に、パリンと砂時計の硝子(ガラス)が割れ、黄金の砂が舞い巡り、私を中心として砂の螺旋を描いていく。

 

「待っ‭─‬‭─‬」

「─‬‭─‬ではな、精々頑張れ」

 

 手を振って私を見送る女王様を最後に、世界は逆しまに動き出した。

 

 

 ↙︎視点変更:SSR → SR

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 2日目(やり直しで実質初日) 早朝

 

 

「‭─‬‭─‬星の流れが途切れたな」

 

 男のルシファーと協力を結んでから迎える、新たな日々を占おうとした時のことだ。

 朝と夜の間の時間、朝日が顔を覗かせる瞬間にその異常は起きた。

 

『……どういうことだアルカ?』

「この箱庭は中心を起点にゆっくりと回転し、一日で一周する。それ故に現実の夜空の様に夜に見える星、昼に見える星は定まっているんだ」

『それは理解している。それが途切れたとはどういうことだ』

「今は早朝なのに、12時間後の星空になっている。火の寓話世界が見える筈なのに、土の寓話世界の輝きが見えるんだな」

 

 時間が狂いでもしなければこうはならないだろう。

 27年この輝きの少ない夜空を見て来たから、いつ何が見えるのかは全て暗記出来ている。

 だからこそ、この異常は決して見逃せないものだった。

 

「考えられるのは‭─‬‭─‬誰かが時間か箱庭か、はたまた両方を過去に動かした。そうで無いと説明が付かないな」

『一体だれが何の為に……?』

「時間なら単純だな、単なるやり直しだ。箱庭は…検討は付かないな。特殊な事情なのは確かだ」

 

 この場合は時間の線で動きを決めるべきだろうな。

 これからとんでもない事が起きる。何が起きるかは……虱潰しで良いだろう。

 例えば下水道の奥やスラム街の怪しい場所、森の中に……緊急避難指示を出すのもありだろうな。

 その為に必要な軍隊は手元にあるのだから、足りない可能性も見越して燻っている騎士を集めても良い。

 

 それなら‭─‬‭─‬。

 

 

運命点(チェックポイント)

条件成立(フラグ:「ラメント」) 更新(クリア)

 

 

 よし、全部やろう。時間を逆しまに動かす事態でやり過ぎなんて事は起きえない。

 

「その為には、私だけ指示をするだけじゃ到底足りないだろうな。ルシファー、貴方にも働いて貰うよ」

『当然だ‭─‬‭─我はアイツを迎えるなら、何だってやる‬』

「頼もしいな。では警邏隊、治療隊、燻った騎士……それら全て纏めて貰おうか。その間私は色々やらせて貰うよ」

『んなっ!?』

 

 なーに、精々合わせて3000人の混合部隊を多方面に率いるだけだ。

 仮にも王をやってたんだろう? それならこの程度統制出来なきゃ話にならない。

 私? 私はほら、伝令セージの直轄である寺小屋の先生方もとい、魔導隊600人を吐き出さなきゃだから。後は避難させる為のあれこれもやらなきゃだから。

 

 という訳で頼んだよ、ルシファー?

 

 

 ↙︎視点変更:SR →  C

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『ここだぁ‼︎ メガトン‭─‬‭─‬』

「させま‭─‬‭─‬せん!」

 

 今にも爆発しかねない暴走爆弾が運命の螺旋によって拘束される。

 魔導隊隊長、[序曲『運命』]のプーラの行使した魔法によるものだ。

 

『なんだよ‼︎ テメェ‼︎』

「狼藉者に名乗る名前は有りません! 即刻鎮圧させて頂きます!」

『くそっ解けねぇ‼︎ こうなったら‭─‬‭─‬』

「その火も湿らせて貰います! イズクニ、魔法を!」

「もう掛けました。随分と派手な登場でしたから、先に詠唱出来て楽でしたよ」

『……畜生が‼︎』

 

 スーザンが時間を巻き戻し、それに勘付いたアルカの手によって森に向かう動員数が増えた。

 その結果1時間の戦闘が短期に決着。森の手前の邪神召喚と併せて鎮圧に成功する。

 クイーンも拘束持ちの魔法使いの手によって捕まり、自爆を封印されて連行されることになる。

 

「開けろ! 家内捜索だ!」

『ッチ。勘付かれたか! こうなったら逃亡あるのみだ!』

 

「こんな所で何をやっている! ひっ捕えろ!」

『キャハ‭─‬‭─‬バレちゃったなら…キルスコア稼いで死んでやらぁ!』

 

「我が剣の錆になれい!」

『テメェこっち側だろうが!?』

 

 また、各地で行われた儀式に関しても電撃的強襲により破綻。

 取り敢えずで調べればザクザク見つかる事から、今後の警邏方式の改善のキッカケとなった。

 また、この大規模捜索により大量の騎士や戦士、力自慢が戦果により市民権を獲得。

 警邏隊とは別に「神聖騎士団」として雇用され、土地を報酬として得る事になる。

 この成功体験は後に移民された者達の思想に多大な影響を及ぼすのだが……それはまた別の話だろう。

 

[‭─‬‭─‬悪よ、抗うもの達よ、集いなさい。今こそ我々の力を合わせる時です]

 

 そして訪れたのが、スーザンによる残党への呼び掛けである。

 1回目よりも遅い夕方のタイミングで呼びかけ、その話術により何も出来ず倒されるよりは……と残党の大半が森の奥、アリアドネの怪物の領域に集結。

 スーザンが前回の反省を活かして支援を貧弱なものにして、最低限マシ程度の檻を創り出すのに成功した。

 

 だが‭─‬‭─‬ここにスーザンやアルカ達にとって想定外の事態が発生する。

 

『‭─‬‭─‬なあ、吸血鬼、俺をお前の血族に入れてくれよ。その再生力なら俺の魔剣のデメリットを踏み倒せそうなんだ』

『あら?…いいわよぉ? 丁度家族を増やしたい所だったもの』

 

『ほうほう……この理論ならば確かに我が神への捧げ物足り得るな……感謝しよう、悪霊使いよ』

『いや、俺の方も良い事を知れた。神の怨念に純化…俺はまだ恨みに誠実では無かったと思い知らされた』

 

『キャハハ! その切り方おもすれー! 操糸術教えてやっからそれ頂戴!』

『糸か……いや、小道具に良し悪し無し。我が死の舞踏もより素晴らしい物になるやも知れん。試しにやってみようではないか』

 

『なるほど…天使性を捨てて真の姿に……私達、アリアドネに合ってるかも…』

『だろう? 我が思うに蜘蛛と植物の怪物であるレディ達に、天使の翼は余計だ。より素晴らしい姿になる為、是非血の晩餐に使う血を我に……』

『この森は栄養豊かだし、血の代わりにコレでいい?』

『……うむ、味見してみたが血より圧倒的に美味い。これなら少量でイケるぞ。今後、動物狩ったり人間の死体渡すから、継続的にくれたりしないか?』

『私達、吸血鬼となら共生行けそうね! 喜んで受けるわ!』

 

 悪による‭─‬‭─それはもう色んな垣根を超えた交流である。

 

 このままでは何も出来ずに倒されることを無意識に理解したのだろう。

 本来手を取り合わず、自分の縄張りの中で独自に目的を達しようとする自尊心は一旦脇に置いて、攻められるまでの短期間で実力を高める事を優先し始めたのだ。

 

 窮鼠猫を噛む。

 追い詰められた悪は友情と努力により勝利を掴もうと、手を取り合うのに成功していた。

 

 

 一方その頃、後は総本山を攻め込むだけで終わる政府(仮)側は……。

 

「はい会議。残党の親玉であるスーザンがしれっとこっちに居ることについて話そうな」

「俺、今は三賢者じゃないんだが…選挙してからではダメか?」

『この部隊の大将が我々だ。ならば、敵将がここに居る是非について決める必要がある』

「いやー私別に向こうに付くつもりはないっていうかー、倒し易い様に纏めただけっていうかー?」

「星はお前が原因だと言っている。具体的には私の身体に一回死んだ痕跡があったな」

 

 ぐだぐだに会議を踊らせようとしていた。

 

「いやいや、信用してくださいよ。私、念話一つで明確な終わりを設けたんですよ? 全員倒して終わりでいいでしょう」

「知ってるかな? もう首謀者は君だって事になっているんだ。悪者1人残さず伝える為に念話の質を下げたのが仇になっているんだよ」

「えぇ? 何とかしてくださいよぉ! 長い付き合いじゃないですかぁ!」

「それはそれとして、時間巻き戻したのは君かな?」

「知りませんよそんなの。ファンタジーやメルヘンじゃ無いんだから」

「どうでも良いから早く終わらせよう。此処で待つ意味あるか?」

『この後の褒賞をどうするかを決めないとならん。其処で待たせて暴れられても困るからな』

「そもそもお前は誰だ? しれっとこの場に居るのは?」

 

 アルカが問い詰め、スーザンが誤魔化し、セージが武器を片手に席を立とうとして、ルシファーがしれっと居座る。

 場は混沌とし、収集が付かない方へと進んでいた。

 

『‭─‬‭─‬一度、現状を成立しよう。進行は此度の賢者に立候補した我が努める』

 

 その流れが変わったのは日が暮れる頃。

 悪側が少年漫画のような修行と強くなる儀式を行っている最中の事だった。

 

『まずスーザン。其方は此度の乱でより確実に相手を殲滅する為に念話で集めた……相違ないな?』

「はい! 倒し易い様に色々頑張りました!」

 

 スーザンの主張は本当である。

 一度本当に滅ぼしたスーザンは反省し、今回は本当にそのつもりで集め、アリアドネを確殺する準備を終えて此処にやって来た。

 しかしそれを全て正直に話すのは自分を殺すのと同義だ。一度やったという事実はそれだけ重く、この点をスーザンは誤魔化すしかない。

 

『次にアルカ。此度の件はスーザンが元凶であり、その上時間を巻き戻しもしている。恐らくは試してダメだったのでもう少し味方面しようと企んでいる…その主張で間違いないな?』

「ああ。彼女の内心は私の予想だが、事実が合ってる自負があるよ」

 

 アルカの主張は嘘だが殆ど事実である。

 一日目の出来事から見れば結果的に事実だが、その予測はアルカの都合のいい解釈の結果だ。

 スーザンからすれば一日目の事を覚えているのかと疑わざるを得ない主張なので強く出れないのが厄介この上無いが、彼女からすれば強く否定すれば引き下がるくらいの主張だった。

 

『それはそれとして、部隊にはスーザンが元凶だという噂が拡がっている…と』

「今みんなの前に出すと問題になる。後から説明しても暗殺の危険がある。疑いを晴らすのは難しいな」

「その暗殺者アルカの所から出てません?」

「ははは、そんな事はないよ」

 

 2人の主張を纏め、ルシファーはスーザンの現状を纏めた。

 

『要は滅茶苦茶怪しいから殺そう派と、みんなの為だったと弁明する本人か……拘束して後で裁判で判決を下せばよいではないか?』

「俺は賛成だな。大人しく会議の席に着いてる時点で無害だろ?」

「…なら、私からはこれ以上言う事はないな」

「理性的な判断ありがとうございます!」

 

 そういうことになり、司法とは偉大だった。

 この結論になれたのも法律を推し進めたコープのお陰である。

 議題は漸く前に進もうとしていた。

 

『感情の結論が付いた所で現実の話だ。このまま討伐しても褒賞がないのはどうする? 大赤字だぞ?』

「それこそ三賢者になる為の票の餌にしよう。君が勝ったら土地を渡すって感じでな」

「なら私はお金を他より多く払う感じにしますね? 個人的にまだやるべきことがあるんですよね」

「あー…三賢者が払うって空気を作れば他も票の為に言い出すか。よし、その方針で。俺は市民権を保証しよう」

『これはあれか? 順当に欲しい物のセット販売で票を固定する奴か?』

「アルカの後任、こういうのは内々で決めておくものだ。慣れろ」

 

 無茶な褒賞を掲げて3000票を集める懸念は置いて、褒賞に関しても決まった。

 3000は全体を見れば大した事のない数字だという判断である。

 

『後は何かあるか?』

「どう攻める? 夜の森は相手の舞台(フィールド)だぞ?」

「先に攻めてれば…と私が言っても仕方ないな。朝まで待とう。吸血鬼が懸念だ」

「時間を与えますが…一日で何か出来るとも思えませんし」

『では騎士達は街で休ませておこう。場所は避難が終わっている空き家を使おうではないか』

「で、殺し? 生け取り?」

「生け取りだな。今後舞台からの侵入を防ぐ為に情報が欲しい」

「それなら…生け取りで褒賞が増える様にしましょう。3人殺すより1人捕える方が得くらいで」

 

 一度始まれば早いのが三賢者の良いところである。

 長時間の会議の疲労でダレているだけなのはご愛嬌だろう。

 

「そう言えば後任、お前名前は?」

『……言ってなかったか? ルシファーだ。それ以上言う言葉はない』

「お、少しお前に興味が出て……つれない奴だな」

 

 こうしてスーザンはクイーンと同じ牢屋に、騎士達は休息を、アルカは兵糧の管理に向かい、セージとルシファーの会話はルシファーが立ち去る形で終わった。

 会議中は全員が好嫌に関わらず話し合っていたが、個人的な関わりは別だ。

 アルカから悪評を聞いていたルシファーは、セージと会話する気はサラサラ無かった。

 

「何か悪い事をしたかな…俺。女王様と同じ名前だし、良くしてやりたいんだが…」

 

 セージの呟きを誰も聞く事はなく、彼もまた自分の仕事を行いを向かう。

 

 

 こうして、各々の夜が過ぎていった……。

 

 

 ↙︎視点変更:C →  LR

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 3日目 昼

 

 

『……可笑しい』

『レディどうされたかな? 何か違和感が?』

(奴隷)からの連絡がないの。討伐隊を内部崩壊させると言っていたのだけど、その報告がないのよ』

『こちらから声をかけるのは?』

『だめよ。普段なら繋がりを強くしても問題ないけど、荒事の時に繋がればバレる危険がある。あれは魔力で繋げるから』

『だとすると向こうの判断……裏切りは?』

『あり得ない。27年ずっと従順だったのよ? 今になって裏切るならもっと昔からしてる筈』

 

 合理的に、人間以上に理性と頭脳を動かして判断する。

 今はアリアドネの繁栄を左右する子の巣立ちの時期だ。

 失敗が許されないからこそ、より一層判断に理性を施していく。

 

『それが今だった……それだけではないですか』

『私達も最初はそう考えようとした。だけど、それならこの死体はなに?』

『こ…これは!』

 

 蔓で丁寧に包んだ死体を吸血鬼に見せる。

 それだけで眼を開き、その死体の立場を考えてより驚愕していた。

 それもそうだろう。私達の(奴隷)の成果はそれだけ確たるものだ。

 

『‭─‬‭─‬女王の死体!』

『その通り……()()()()()()()()()()()()()よ。蘇生し脅しに使えば、それだけで私達は勝てる』

『ならば、今すぐ蘇生すれば…!』

『もうやっている…やっている最中よ。此処にいる全員の技術と知恵を集め、もう6分もすれば蘇生する』

『全員……レディ、いつ話し合ったのです? 失礼ながら我はそんな話題は何も……』

『ふん、読心程度大した事ではないわ、人を操りもする怪物が私達よ。技術の読み取り程度一晩で終わる』

 

 だからこそ、コレを寄越せた(奴隷)の秘匿がバレたとは考えづらく、裏切りもまたこの様な重要物を渡した事からあり得ない。

 

 故に本当に細い線だが……まさか本当にバレ‭─‬‭─‬。

 

『‭─‬‭─‬来たぞ! 連中だ!』

『っ! 来たか! おのれ…もう少しという時に!』

 

 しかし、思考は途中で中断された。

 それ以上に考えるべきことが出来たからだ。

 (奴隷)は居ない……故に天使共を私達自ら殺し、この箱庭を私達の楽園にする。

 

『‭─‬‭─‬蜘蛛の樹海(アリアドネ・ツリー)!』

 

 地面に張り巡らせた根を地上に晒し、木々の内側からその皮を乗っ取る。

 地上に降りれば最後、木々の中から根で襲う算段だが……天使共は一向に降りる事は無かった。

 

『…降りて来ない?』

『そうか! 相手は魔導隊が居る! 飛べない相手は引き撃ちで殺すつもりか!』

『っ! ならば吸血鬼、私達の樹液を持って行って!』

『有り難いな、レディ! これならば朝日も無効化出来る!』

 

 吸血鬼はそう言って空に舞い踊り、その爪と牙で天使と斬り結び始めた。

 情けない話だが、相手がそういう戦いをするならば私達にも考えがある。

 

『回復したい者は私達の下へ! 吸い取った森の生気で癒してみせる!』

 

 これでも後方支援には慣れている。(奴隷)の世話はお手の物だ。

 だが…それでも1人、また1人と倒れ、落ちて、死ぬ事も出来ずに拘束されていく。

 吸血鬼の羽で飛んでいた魔剣使いは複数の熟練の騎士に取り押さえられた。

 邪神を信仰している教祖はキリス教の奇跡で祈る術を封じられた。

 解体の達人と死の踊り子も、火の矢の雨で凡庸に気絶した。

 

『っく! 魔法使いの大群がコレほど厄介だなんて! こうなったら…』

 

 しかし、交流してしぶとくなった彼らのお陰で女王の蘇生は終わった。

 盾にすれば私達は確実に逃げられる。

 相手を殺し尽くすのはもう無理だろうから、私達だけでも生き残る方へ舵を切る。

 

 蔓を開き、拘束した女王を頭上へと掲げた。

 

「……むっ? どういう状況じゃ?」

『お前達! こいつが眼に入らない!? 私に攻撃すればコイツは死ぬわよ!』

「ふぅん、妾は人質か……じゃが其方よ。これにさしたる意味は無さそうじゃぞ?」

『……なんですって?』

 

 女王に言われて見上げれば‭─‬‭─‬其処には杖先に炎を集める魔法使いの大群の姿が在った。

 

『え? なんで…』

「……映し身と生霊という概念がある。鏡に映る像と、生きたまま一部が死んで霊になる現象なのじゃ」

『兎に角逃げな‭─‬‭─‬』

 

 意識を切り替え、根と身体を切り離し逃げようとして、全身を炎が蹂躙した。

 思わず女王を手放して、抱えて逃げるより生き残れるとそのまま放置する。

 

[此度の蘇生はこの二つが関わっておってな。過去に妾を映した鏡を身体に、作品に…黄金に溶け込んだ記憶と魂が死者の物として宿った訳よ]

『…くそっ…何処に逃げれば…!』

[それなら右手の方が安全じゃよ]

 

 頭に女王の声が響く。

 それを無視して進み、見つかって全身を焼かれた。

 まだ動けるので、ダメになった種を捨てて身軽になって走る。

 

 私達は私だけになった。

 

[元は黄金に宿っていた自我であるが故に契約も有効に扱え、クローンも同然が故に死ぬ定めじゃが……残り滓の本体が忘れた成長と記憶其の物じゃからのう。ある意味、本人よりも本人な訳じゃ]

『隠れて…土の中に…!』

[川の方がよいぞ、そっちならば川の中に攻撃の届かぬ窪みがあるのじゃ]

 

 隠れたのに気付かれて、火の雨は爆撃の雨となった。

 土を掘り起こされ、そのまま全身のより深く燃やされる。

 それでもまだ動けたから、再生出来る部位は捨てて走る。

 

[所で、妾はコレでも生身にしてくれた分の恩には報いようとしておる訳なんじゃが、いつになったら人を信用するのじゃ?]

『人の王と私は相慣れない! どうせ騙すでしょ!』

[自分ならそうするって考えか…そこ、立ち尽くしてると危ないのじゃ]

 

 挙句、回避して火の雨免れた。

 ……違う、女王に従った訳ではない!

 これは偶然。合理的な判断と被っただけだ!

 

[いいぞーそのまま山の方に走るのじゃー。お主助ける為に千里眼の魔道具と念話機買ったからのう、既にお主黄金600kgの価値あるから死ぬなー?]

『黙れ…私は私の判断で生き残るのよ!』

[それ合理的か? 合理を名乗るならば情も利用せよ。あ、そこを左じゃ]

 

『‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬』

 

 左に避ける。火の雨から逃れられる。

 言葉に従わず、火の雨に焼かれる。

 言葉に従う。痛みを感じずに済む。

 

 女王に命を預ければ、私は助かる。

 

『……お前を助けた、私を助けろ! 人の女王!』

[よいぞ。妾の方もちょっとヤバいが、まあお主が生きてれば復活した意味は出てくるかのう?]

『何があった!?』

[スーザンの奴、妾を模倣する魔物とか言って殺しを正当化しようとしておるわ。まあどうせ助からんし気にせんでよい。これで最後、そこ真っ直ぐで到着じゃ]

 

 目の前に、薄暗く…深い洞窟が現れた。

 入れば最後…きっと永遠に出られないだろうが、永遠に安息を得られるだろう。

 奥から水と空気、豊かな栄養を感じる。風に乗っている物だけでそう思うのだから、其処は間違いなく私達の楽園だ。

 

『…………』

 

 進めば良い。利用関係は終わった。

 信用した相手が死ぬだけだ。

 

[…ん? はよう進め]

 

 私は助かる。

 

[もたもたしとると折角撒いた連中に見つかるぞ?]

 

 私だけが助かる。

 

[中が心配か? 問題ない。其処は妾が彫刻の練習に使ってた洞窟じゃ。デッカいキノコの森とかあるし、生きるのに不足はないのじゃ]

 

 私()は……助からない。

 

 

運命点(チェックポイント)

 選択(リンク)

 

 

 私は、私達が助かる為の、最も合理的な選択をした。

 

「……なあに戻って来とるんじゃ。愚か者が」

『愚かじゃない。一個体が生き残っても意味がないから、助けに来ただけ』

「その内入った奴捕まえれば良かったじゃろ。折角与えた機会を不意にしよって……」

『不意にしてない。私は選べる上でこっちにした』

「ならば、妾はもう何も言うまいよ」

 

 女王は青く輝く目玉を片手に、呆れた顔で、嬉しそうに言っていた。

 不思議と戻るまでに火の雨は降らなかった。

 当然だ。自ら罠の中に入ろうとする者を撤退させる者は居ない。

 

「お姉…いや、クソ蜘蛛(アリアドネ)。誰の許可を得て女王様(偉大なる者)と話している?」

 

『妹…いや、反乱奴隷(スーザン)。誰の許可を得て女王(盟友)を殺そうとする?』

 

 奴隷と相対し、互いに武器を構えた。

 

 私は蔓を硬化した鎌を、奴隷は使い古した鋭い剣と‭─‬‭─‬ハート型の何かを。

 

「む? スーザンそれ爆弾じゃよな?」

治療隊隊長(アスクレピオス)が無毒化した爆弾です! 此処なら結界の影響下なのでコイツだけ殺せます! 牢獄に居た奴から抜き取って来たとっておきです!」

「阿呆、そんな都合よくいかん。それ敵味方関係ないやつじゃ」

「ぐび…えっ? みんな治療隊隊長(アスクレピオス)の不死薬を飲んでるから大丈夫ですけど」

「それ今お主が飲んだやつじゃな?……はぁ」

[アトミックハート‭─‬‭─‬自爆スイッチON‼︎]

 

 白くて青い光が、奴隷の持つハートから溢れていく。

 青い光は途中で壁の様な物で阻まれたが…白い光と爆風は全てを呑み込んで広がった。

 私も同然それに飲み込まれて……その直前、確かに女王達の声が聞こえた。

 

「悪魔、結界にある妾の席をあやつに譲れ」

『キキキ! お望み通り……結界効果とオマケもやろう!』

「太っ腹じゃが、黄金はしっかり50tは残すのじ……」

 

 意識が遠のき、守りたかった…連れ出したかった者が手から零れ落ちる。

 どれだけ手を伸ばしても届きそうになくて……私は初めて眼から水を溢した。

 

 

 4日目 朝 √GE3

 

 

『我は寛大だ、お主には女王にセッ◯スを教えたりする専属メイドにしてやる!』

 

 全てが終わった時、私は何故か人に身体が近くなり、女王の奴隷(メイド)になっていた。

 

………解せぬ。

 

 






SSR「[百合のともがら]メイジョウ」
 精霊歴1890年、暗黒期に書かれた作品のキャラクター。
 冥婚、同性愛、死体◯、その他狂気的な作風により爆速で国の検閲に引っ掛かり、僅か77冊の絶版となったが、脳に強烈な衝撃を与える内容の一点で新聞に取り上げられて一躍有名に、ランクが上がった。
 人魚なので陸地では効果が下がるものの、彼女の死体管理はドールズ達の水着verを作れる程の効果を持ち、幾つかの水着イベントの参加条件にもなっている。
 性能としては「水死体」が多い程強くなる軍団系。範囲攻撃と種族特性の強化、単騎殲滅向きの能力となっている。

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